2012年3月29日木曜日

ラーメン凪 煮干王 渋谷店

先日紹介したラーメン凪 豚王 渋谷本店(過去の記事)が渋谷に新しい店舗をオープンさせました。


凪のルーツとも言える、新宿ゴールデン街にある煮干王が渋谷にもできたのです。お店に「煮干が苦手な方はご遠慮下さい」と書かれていたり、提灯に「我が煮干に一片の悔いなし」と書かれているので、煮干に相当のこだわりがあるのが伺える。別に煮干は苦手じゃないし、かと言って好きな方でもないけどね。場所は豚王よりも駅寄り、渋谷警察署の裏手にあります。


まず店内に入った瞬間に、強烈な煮干の香りが鼻孔をつく。食券機で特製煮干ラーメンをオーダーし、麺固めでお願いする。待つことしばし、濃厚な色の煮干ラーメンが供された。具材には味付け玉子に、大きめにカットされた刻みネギ、メンマ、海苔に香ばしく柔らかいチャーシューが4枚乗っていた。醤油塩分高濃度スープを一口啜ると煮干の香りがガツンと脳髄を直撃するが、自家製手打ち麺と思しきコシのある縮れ麺との相性が抜群だ。しかもいったんもめんと呼ばれる、ワンタン皮のような幅広麺まで添えられている。ただしこの店は食べる人を選ぶだろう。スープを全部飲み干せるほど軟弱な塩分・濃度ではないからだ。うーん、僕は塩分控えめ派なので、こちらよりは豚王の方をお奨めしたいな。

ホームページ:http://www.n-nagi.com/
住所:東京都渋谷区渋谷3-7-2
ラーメン凪 煮干王 渋谷店ラーメン / 渋谷駅神泉駅

2012年3月26日月曜日

StarFes.

今年から始まった「StarFes. 」に行って来ました。「日本一早い夏フェス」という触れ込みですが、まだ桜も開花していない春手前だというのに夏フェスって何なんだよ!と突っ込みたくなります。お台場というアクセスの良さに加えて、電気グルーヴ/UNKLE/Agoria/SYSTEM 7/DJ NOBU...etc.というラインナップの良さ、更には早割で3,000円というコストパフォーマンスの良さに惹かれて足を運んだわけです。結局、タイムテーブル は前述アーティスト群がダダかぶりという最悪さ。止むを得ず電気グルーヴとUNKLEに絞りこむことにしましたよ。



16:00頃に会場到着。そもそもStarFes.ってどういう意味だよ?と思っていたら、JTのセブンスターがスポンサーだったのね。



予想以上にしっかりしたステージ作り。メインのStar Stageでは仏KITSUNEのレーベル・チーフであるGildasがニューエレクトロを連打しておりました。体を温めるには丁度いいや、と思いつつ軽くダンス。この日はまあまあ暖かかったとは言え、夕方近くになると冷え込んできます。やはり寒さには勝てないようで、オーディエンス全体も動きが鈍かったようです。



17:30からお目当ての電気グルーヴ登場。1時間にも及ばない時間枠ながら、さすがの存在感を知らしめる中年二人組。石野卓球も「寒いね~」と言ってました。サポートはagraphこと牛尾憲輔。



全体的に最近の曲が中心で、ややおとなしめな雰囲気。とは言っても、かなりレイヴィにアップデートされており、アシッドテイスト溢れる演奏となっていました。ちょっと前まではジャーマンアンダーグラウンドな味わいでしたが、これから先はアシッド復権となるのでしょうか?セットリストは以下の通り。

1.Upside Down
2.モノノケダンス
3.新曲
4.新曲
5.Acid House All Night Long
6.Fake It!
7.少年ヤング
8.ガリガリ君
9.Flashback Disco
10.スコーピオン2001



日が暮れるにつれ、だんだんと寒くなってきたので屋内のForest Stageへ退避。UNKLEは後回しにして、還暦おしどり夫婦ユニットのSYSTEM 7を堪能することにします。場内はかなり混み合っており、至る所にオラオラ系のギャル男が幅を効かせている。ガラの悪そうな野郎どもがフロアでスパスパとタバコ吸っているのを見て辟易。スポンサーがJTだからって、フロアでタバコ吸ってんじゃねぇ!と文句言いそうになる(が、怖いので言えない)。



途中でUNKLEが気になってメインステージへ移動。が!オーディエンスは身体も数もお寒いものとなっていた。ああ、James Lavelleよ!可哀想だが、盛り上がりに欠けていたステージだったので、SYSTEM 7へと引き返すよ!



ハードバンギンなトランスで筋金入りレイバーを踊らせる。みんな心からの笑顔いっぱいで音楽を楽しんでいたよ。そんな僕らを見て、おしどり夫婦も幸せそうだったのが印象的でした。それにしても、都内で行われるフェスってマナーの悪いギャル男が多いよな…。

2012年3月23日金曜日

極東慰安唱歌 : 戸川純ユニット

1984年リリースの本作も「玉姫様」(過去レビュー)に劣らず素晴らしい。


極東慰安唱歌 : 戸川純ユニット

「玉姫様」でやりたいことを出し切ったらしく、本作ではエンジニアに飯尾芳史、キーボードに吉川洋一郎を迎えてユニットとして新機軸を打ち出そうとしています。その甲斐あってか、「玉姫様」が豪華絢爛な作風だったのに比べ、本作ではソリッドかつミニマルな感覚に満ちています。タイトル通り、日本をテーマにした作品というだけあって、沖縄民謡や出身小学校校歌、戦後昭和歌謡風トラックなどが揃い踏み。

まずは冒頭の「眼球綺譚」では高橋幸宏が実にタイム感のある素晴らしいドラミングを提供。音数が少ないながらも極めてポップな名曲に仕上がっています。沖縄民謡の「海ヤカラ」では現地人と何ら遜色のない可憐なボーカルを披露し、「戸山小学校校歌~赤組のうた」では重たいインダストリアルビートが鳴り響く。アンデス民謡の「無題」でも音数をそぎ落とし、「極東花嫁」ではソリッドな80年代エレクトロ、「ある晴れた日」や「極東慰安唱歌」では牧歌的に展開し、「勅使河原美加の半生」でも重々しいインダストリアル、最終曲を細野晴臣の「夢見る約束」カバーで締め括る。この「夢見る約束」は「青い山脈」や「高校三年生」を彷彿とさせるような戦後歌謡メロディを使いながらも、80年代細野氏の面目躍如とも言えるテクノ歌謡に仕上がっています。なおCD化にあたってはボツネタだった「家畜海峡」と「人間合格」をボーナストラックとして収録。タイトルからして詩人だ。

2012年3月20日火曜日

裏玉姫 : 戸川純とヤプーズ


裏玉姫 : 戸川純とヤプーズ

「玉姫様」(過去レビュー)をリリースした後、アンダーグラウンドシーンの歌姫はラフォーレミュージアム原宿でライヴを敢行。その実況録音盤がカセットテープのみというフォーマットでリリースされたのが84年のことでした。今でこそネット配信とCDの2種フォーマットでリリースされるのが主流ですが、当時はアナログ盤とカセットの2種でリリースされるのが主流だったのです。何はともあれ、今こうして高音質リマスタリングされて再入手できるのが非常に嬉しい。

さて本作では、サエキけんぞうが在籍していたハルメンズを母体とするヤプーズをバックバンドに迎えています。その後ヤプーズは、戸川純を本格的にメインに据えて活動することになります。言ってみれば本ライヴ盤がヤプーズ登場の瞬間となるわけです。本作ではおそらくオーバーダブと思われるテクノなインスト「OVERTURE」で始まります。その後は強力なバンドサウンドにアップデートされている「玉姫様」へと怒涛の展開。アルバム「玉姫様」には収録されていない、この作品にのみ収録されているオリジナル曲やカバー曲も挿まれています。

何にもまして素晴らしいのが「玉姫様」収録曲で聴かせてくれる純ちゃんのボーカル。ロリータボイスや超音波のようなファルセットボイス、アイドル的なボーカルにパンキッシュな絶叫ボーカルとボーカルスタイルを七色変化させていきます。「踊れない」や「昆虫軍」で披露する、狂気をにじませる歪んだボーカルは彼女ならでは。最終曲「パンク蛹化の女」はパッヘルベルのカノンをカバーした「蛹化の女」をパンク的に解釈した曲ですが、これはまさしくエモ以外の何物でもない。ジャパニーズパンクの雄であったスターリンのライヴでは豚の臓物が飛び交っていたそうですが、彼女のライヴでは生理用品が飛び交っていたという逸話も有り。多くのフォロワーを生んだ彼女ですが、高音質音源やさまざまな情報が入手できる今でこそ、再評価されてしかるべき存在だと思います。死ぬ前に彼女の声を聴け!

2012年3月17日土曜日

麺場 浜虎

何の気なしに始めたグルメカテゴリーですが、当ブログで徐々に比率を高めている分野。最近はネタのためにラーメンを食べ続けるという本末転倒状態に陥りつつあります。


この間、横浜鶴屋町で「鶴一家」(過去の記事)を訪問した時に見かけたお店。その時は行列が出来ていたので、次はここに来てやると決意していた次第。店名に掲げている「浜虎」はハマトラファッションの意味ではなく、ハマトラフードの意味らしい。つまり横浜のトラディショナルなラーメンになりたいという思いが込められているとのこと。


券売機には「醤そば」やら「塩鶏そば」やら「活力醤そば」といった文字が並んでいる。何を注文するかって?決まっておる、基本に忠実に、オーソドックスな「醤そば」を注文するのだ。確かに横浜のトラディショナルなラーメンといえばとんこつ醤油な家系だから、醤油ラーメンっていうのはチャレンジャーだもんね。


濃厚な色を醸し出している醤油ラーメンが出てきた。色からして塩辛そうなんだが啜ってみると…なかなか香ばしい。焦がしネギと胡麻がアクセントとなっているようだ。スープのだしも鶏がらと魚介(鰹)系が中心となっており、動物臭さは全く感じさせないあっさりさ。にも関わらず醤油に独特のものをつかっているようで、非常に味わい深い。鶏油もそれなりに投じられているようで、スープの熱を封じ込めて熱々。具材には柔らかい鶏チャーシューとたっぷりのメンマが使われている。麺はコシのある中太縮れ麺で、スープの絡み具合と相性がばっちり。オーソドックスながら店のこだわりを感じさせる、独特で深みのある味となっていました。今後も是非頑張って、この地の活性化に取り組んで頂きたいと思います。

住所:神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-12-1
麺場 浜虎ラーメン / 横浜駅神奈川駅反町駅

2012年3月14日水曜日

玉姫様 : 戸川純

今回は日本を代表する女流パンクロッカー 戸川純について。


玉姫様 : 戸川純

当ブログのプロフィール欄にも書いてありますが、80年代初頭~中盤を中学生~高校生として過ごしました。当時はサブカルチャーやオタクといった単語は存在せず、情報入手経路も雑誌やラジオなど極めて限られていた時代。情報が瞬時で手に入る今では、メインカルチャーとカウンターカルチャーの境目が分かりやすいようになっていますが、情報伝達速度が遅いその昔ではその境目が曖昧だったんじゃないかな。だからこそ、多くの人が戸川純を「傍流」だなんてことを意識していなかったように思います。その証拠に、僕の周りは好んで彼女の音楽を聴いていたもの(勿論たまたまだったのかも知れない)。

いずれにしても彼女が登場した時にインパクトは強烈だった。まずは製品化されたばかりのTOTOウォシュレットのCMに登場し、キュートながら儚げな外見を披露した。お尻を水で洗うという概念は今でこそ当たり前になっているが、当時としては画期的とも言える未知の技術分野だった。そこに彼女がテレビに登場し「おしりだって洗ってほしい」とアピールした時、僕らは彼女こそ新世代のアイドルだと確信したもんだ。

その頃、夢中になっていた宝島やビックリハウスといった雑誌から、彼女がゲルニカというユニットを組んでいることを知った。更には1stアルバム「改造への躍動」が細野晴臣主宰のYENレーベルからリリースされ、細野プロデュースだという事実が俄然僕の興味をひいた。その後84年には彼女が同YENレーベルからソロアルバムをリリースしたことを振り返ると、カウンターカルチャーでもなんでもなく、大きなうねりだったと確信できる。

さて、日本のロックを占う上でのマイルストーンとなる本作は、細野晴臣が関与していることから、彼女の他作品とは異なりテクノ的色彩が濃い。彼岸から聴こえてくるようなボーカルと足踏みオルガンがサイケデリックな雰囲気を醸し出す「怒涛の恋愛」、ミニマルなドラムが危ういボーカルを支えるアンデス民謡「諦念プシガンガ」、サエキけんぞう率いるハルメンズの楽曲をカバーした、アルバムの中で最もパンキッシュな「昆虫軍」、合唱教本「コールユーブンゲン」をアヴァンギャルドに解釈した「憂悶の戯画」、日本印度化計画よりもはるか前にインドを歌い上げた「隣の印度人」、「神秘 神秘 月に一度 神秘 神秘 神秘の現象」と女性の生理を歌ったタイトル曲「玉姫様」、無垢で幼いボーカルを披露するワルツ「森の人々」、ゲルニカの上野耕路が在籍していた8 1/2のカバー「踊れない」、パッヘルベルのカノンに歌詞をつけた「蛹化の女」など一切の捨て曲なし。アルバムの随所に「虫」や「森」のキーワードを散りばめ、唯一無二の世界観を構築していることにも成功している。

これ以降の彼女の足跡をたどると、その後の女性アーティスト達に絶大なる影響を与えたのは一目瞭然だ。控えめに見ても、彼女はこの分野のオリジネーターであり、表現者として彼女を越えているアーティストは未だ現れていない。

2012年3月11日日曜日

Music for Daydreams : Ken Ishii presents Metropolitan Harmonic Formulas

六本木の防衛庁跡地にある東京ミッドタウンがオープンして、早5年が経とうとしています。六本木ヒルズのような派手さや複雑さを控えめにし、簡素かつスタイリッシュな空間を演出しているこの複合施設は非常に魅力的です。NYの代表的複合施設であるロックフェラーセンターをモチーフにしていますが、正面から眺めると建物全体がアシンメトリーになっています。日本庭園に据え置かれる石の「ずらし」を意識しており、宇宙の中心性を象徴する石組みを演出しているんだとか。施設随所にも日本的概念が取り入れられており、大いなる気を感じざるを得ない素晴らしい場所だと思います。

その東京ミッドタウンが「Tokyo Midtown Galleria Soundscape」というBGMプロジェクトを主宰しているんですが、これまでのプロデューサーである菊地成孔や細野晴臣から受け継いでいるのが我らがケン・イシイ。様々なアーティストの楽曲をチョイスしてクールな空間を演出していると同時に、このBGMプロジェクトの3作目として位置づけられるアルバムをリリースしました。しかも新たなる名義、新たなるプロジェクトとして。


Music for Daydreams : Ken Ishii presents Metropolitan Harmonic Formulas

ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、異種格闘技的に様々なアーティストとコラボレーションをし、テクノというジャンルにこだわらない音作りをしているのが本プロジェクト。結論から言うとまず素晴らしい。古典的名曲であるMr. Fingers「Can You Feel It」のカバーからこのアルバムが始まります。オリジナルに最大限の敬意を払いつつ、ベースラインをそのまま引用しながらも、菊地成孔のサキソフォンで艶やかにすることに成功。菊地成孔とはM10「Light in The Solitude」でも共演しており、夕暮れを思わせるメロウなチルアウトトラックを聴かせてくれます。Masaki Sakamotoと共演しているイタロハウスクラシック「Soft House Company」のカバー、日米で活躍するジャズボーカリストのEmi Meyerをフィーチャーしたファンキートラック「Equinox」、Alex from TokyoのユニットであるTokyo Black Starとの浮遊感溢れる長尺ハウス「Midnight Supremacy」、陽光が降り注ぐかのようなJazztronikとのコラボレーション「After The Rainstorm」など聴きどころ盛りだくさん。クラブミュージックの枠にとらわれない、ジャンル横断的に空間演出するリスニングミュージックとして出色の出来になっています。もちろんケン・イシイの特色ともいえる透明感のある電子音が綴られており、オリジナリティは決して忘れられていません。

2012年3月8日木曜日

麺やまらぁ


友人があしげく通っているのを見て、前から気になっていたお店。「新参者」の影響で注目を浴びつつある人形町界隈にあります。この日は仕事でこの近辺に来たんですが、日本橋界隈は風情というか情緒があっていいよね。で、全く予備知識もないまま、お店に辿り着きました。らぁ麺とつけ麺の二刀流なのは一目瞭然。


入店して自販機で食券を購入。通常のらぁ麺とつけ麺において、やまらぁ/しおらぁ/みそらぁという3種類の味がある。迷わずやまらぁにするが、金髪の店主からランチサービスとして無料で大盛 or 玉子付きが選べると告げられる。よって玉子付きを選んだのであった。

席について卓上の能書きを読んだところ、僕が頼んだ「やまらぁ」は鶏白湯と魚介でダシをとっている醤油味であることが判明。やがて供されたやまらぁは見るからにクリーミーな風合いを醸し出していた。そしてとろみがかったスープを一口飲んでみると…正直言ってかなりの衝撃を受けたので記憶が曖昧になっている。それほど素晴らしい味だったのだ。

まるでポタージュスープのようなクリーミーさ加減に、濃厚で芳醇な味わい。その上、極めて上品であっさりした風味。ほのかに魚介系の香りがしながらも、主軸である鶏白湯や野菜中心のダシがしっかりと味を支えている。更には具に使われているカイワレ大根とネギがスープとのバランスを絶妙に保っている。麺は食べ応えのある中太縮れ麺で、スープとの絡み具合がいい塩梅なので夢中になって啜ってしまう。他の具材である炙りチャーシューは香ばしく、味付け玉子の甘みも丁度良くクオリティが高い。あっという間に食べてしまったので、味そのものへの集中力を欠いてしまったようだ。食べ終わった後も、口内に全く味が残らない。おそらく化学調味料は無使用だろう、金髪店主のこだわりを痛感させられる至高の逸品だ。

ホームページ:http://www16.ocn.ne.jp/~deslab/men_yamara/men_yamara_top.html 
住所:東京都中央区日本橋人形町2-29-3
麺 やまらぁラーメン / 人形町駅浜町駅水天宮前駅

2012年3月5日月曜日

Street Halo / Kindred : Burial

社会人になってからかれこれ20年弱、ITと呼ばれる業界で働いています。その間に目の覚めるような技術革新が結構あったんですが、名前を変えただけで概念そのものは変わっていない技術もたくさんある。例えば最近では「ビッグデータ」という単語がバズワードになりつつあるんですが、本質的に言えば20年ぐらい前からある概念です。「クラウド」という単語もそうです。IT企業はそういったハイプ的な動きをしないと、ユーザの気を引くことは出来ないんだと思う。何故こういったことを書いているかというと、クラブミュージックの世界も似たような動きをしていると思うから。


Street Halo / Kindred : Burial

数年前に新潮流となり、いまやメインストリームへと躍り出ているダブステップ。既にその後を占うジャンルとしてポスト・ダブステップが主流となっているのは御存知の通り。それらのシーンにおいて代表格と言えるアーティストがUKのBurialであることは言うまでもない。本作は去年リリースされた「Street Halo」と、今年リリースされた「Kindred」をカップリングした日本独自企画盤。これが良くない訳がない。相変わらずドープでダビーな暗黒空間を構築しており、雨がそぼ降る裏路地あたりを歩いているような感覚に襲われる。重々しく響く低音と奇怪に刻まれるグリッチノイズ、変調されたメランコリックなボーカルは唯一無二の存在感を叩き出しています。

ただし、世間が猫も杓子もダブステップとなると、リアルな本流なのか?またしてもハイプな動きなんじゃないか?とも勘ぐってしまう。いや、ダブステップの成り立ちが2ステップやドラムンベースから派生したのは知っている。でもこの周辺から聴こえてくる音楽って、20年前にブリストルから聴こえてきたMassive Attack周辺に近似しているよね。Burialが作る音楽が本当に素晴らしいのは認めるけど、クラブミュージック自体があまりにも細分化してしまい、一巡した感覚を覚えてしまうのは僕だけなのかな?メディアにここまでカテゴライズされると、冒頭に書いたような疑念に駆られてしまう。こういった状況って、アーティストにとって幸福なことなのかな。

2012年3月2日金曜日

TKOL RMX 1 2 3 4 5 6 7 : Radiohead

去年の9月にリリースされた瞬間に購入したくせに、どこかで「大したこと無い」という評判を耳にして放ったらかし。何とはなしに聴いてみたら、想像を超えるほど良かったので絶賛ヘビーローテーション中のリミックス盤。


TKOL RMX 1 2 3 4 5 6 7 : Radiohead

The King of Limbs(過去レビュー)収録曲のリミックス12インチ/デジタルフォーマットが夥しく切られたのが2011年7月から。その後、同年10月まで計7枚がリリースされましたが、9月にはそれらをパッケージしたCDがリリースされたという仕掛け。意外だったのが、これがRadiohead初のリミックス盤だってこと。Thom Yorkeのリミックス盤(過去レビュー)や「コム・ラグ:2+2=5」みたいな作品があったので、全くそんなことに気づかなかった。はたまた、エレクトロニカ方面に意識的な姿勢を持つバンドだから、ということもある。何はともあれ、ここで起用されているリミキサー陣は旬で新進気鋭なアーティスト達。つまりはエレクトロニカ~IDMだけではなく、ポスト・ダブステップを含めたベース・ミュージックまで裾野が広がっている。当然ながらThom Yorkeの趣味を完全に反映したアーティスト群なんだろう。

で、冒頭に書いた通り、全く期待しないで(完全な先入観を持って)聴いてみたら、オリジナルの素晴らしさに勝るとも劣らない出来だったので驚いた。オリジナルが最新型クラブミュージックと親和性が高いこともあるんだろうけど、リミキサー陣がオリジナルに最大限の敬意を払っていることも作用しているはず。リミックス盤なので統一感がないのは当然としても、オリジナルが持ち合わせているクールな世界を拡張することには成功している。コアなクラブヘッズには物足りないかも知れないけど、オリジナルを再検証する意味では聴き応えのある作品となっています。

Tracklist

[Disc-1]

1. "Little By Little" (Caribou Rmx)
2. "Lotus Flower" (Jacques Greene Rmx)
3. "Morning Mr Magpie" (Nathan Fake Rmx)
4. "Bloom" (Harmonic 313 Rmx)
5. "Bloom" (Mark Pritchard Rmx)
6. "Feral" (Lone Rmx)
7. "Morning Mr Magpie" (Pearson Sound Scavenger Rmx)
8. "Separator" (Four Tet Rmx)

[Disc-2]

1. "Give Up The Ghost" (Thriller Houseghost Rmx)
2. "Codex" (Illum Sphere Rmx)
3. "Little By Little" (Shed Rmx)
4. "Give Up The Ghost" (Brokenchord Rmx)
5. "TKOL" (Altrice Rmx)
6. "Bloom" (Blawan Rmx)
7. "Good Evening Mrs Magpie" (Modeselektor Rmx)
8. "Bloom" (Objekt Rmx)
9. "Bloom" (Jamie xx Rework)
10. "Separator" (Anstam Rmx)
11. "Lotus Flower" (SBTRKT Rmx)