2012年3月20日火曜日

裏玉姫 : 戸川純とヤプーズ


裏玉姫 : 戸川純とヤプーズ

「玉姫様」(過去レビュー)をリリースした後、アンダーグラウンドシーンの歌姫はラフォーレミュージアム原宿でライヴを敢行。その実況録音盤がカセットテープのみというフォーマットでリリースされたのが84年のことでした。今でこそネット配信とCDの2種フォーマットでリリースされるのが主流ですが、当時はアナログ盤とカセットの2種でリリースされるのが主流だったのです。何はともあれ、今こうして高音質リマスタリングされて再入手できるのが非常に嬉しい。

さて本作では、サエキけんぞうが在籍していたハルメンズを母体とするヤプーズをバックバンドに迎えています。その後ヤプーズは、戸川純を本格的にメインに据えて活動することになります。言ってみれば本ライヴ盤がヤプーズ登場の瞬間となるわけです。本作ではおそらくオーバーダブと思われるテクノなインスト「OVERTURE」で始まります。その後は強力なバンドサウンドにアップデートされている「玉姫様」へと怒涛の展開。アルバム「玉姫様」には収録されていない、この作品にのみ収録されているオリジナル曲やカバー曲も挿まれています。

何にもまして素晴らしいのが「玉姫様」収録曲で聴かせてくれる純ちゃんのボーカル。ロリータボイスや超音波のようなファルセットボイス、アイドル的なボーカルにパンキッシュな絶叫ボーカルとボーカルスタイルを七色変化させていきます。「踊れない」や「昆虫軍」で披露する、狂気をにじませる歪んだボーカルは彼女ならでは。最終曲「パンク蛹化の女」はパッヘルベルのカノンをカバーした「蛹化の女」をパンク的に解釈した曲ですが、これはまさしくエモ以外の何物でもない。ジャパニーズパンクの雄であったスターリンのライヴでは豚の臓物が飛び交っていたそうですが、彼女のライヴでは生理用品が飛び交っていたという逸話も有り。多くのフォロワーを生んだ彼女ですが、高音質音源やさまざまな情報が入手できる今でこそ、再評価されてしかるべき存在だと思います。死ぬ前に彼女の声を聴け!

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