2012年4月28日土曜日

ヤプーズ計画 : ヤプーズ


ヤプーズ計画 : ヤプーズ

1987年にリリースされたヤプーズのデビューアルバムにして最高傑作と言い切ってもいいレベル。純ちゃんの代表曲が目白押しのアルバムとなっています。そもそもヤプーズはハルメンズを母体としたバンドというのは前に書きましたが、これまでは戸川純のバックバンド役に徹していたわけです。なので純ちゃんがヤプーズを結成したというのは間違いで、ヤプーズが純ちゃんをボーカリストとして迎えた、というのが正しい認識となります。故に、バンドのデビューアルバムと言えども、活動歴の長いバンドならではの、恐ろしくも完成度の高いアルバムとなっています。しかも万人に訴求し得るほどのポップネスを兼ね備えた作品です。

【バーバラ・セクサロイド】

戸川純の代表曲。セクサロイドとは元々あった単語で、セックスに特化したいわゆる娼婦アンドロイド。その単語をモチーフにしながらスパイソングへと昇華させており、ブラスの使い具合とスネアドラムの鳴り具合が実に見事。何を隠そう、片側から聴こえてくる縦横無尽なギターワークが素晴らしい。

【キスを】

純粋なラブソングながら「誰も/他に/好きに/ならないで」とキスをせがむ、女心のおどろおどろしさ。こんな後ろ向きなラブソングを歌えるのは純ちゃん以外他にいまい。妖艶なストリングスが美しい。

【肉屋のように】

これも代表曲の一つ。愛しい男を「肉屋のように」チェンソーで切断し、脳や目玉を食べたいというカニバリズムの極北。インダストリアルサウンドが鳴り響く、絶対に放送を許されないであろうホラーな波動渦巻く名曲。

【Daddy the heaven】

作詞が純ちゃんではなく高橋修となっているので、退廃的かつデカダンスな詩の世界を堪能することは難しい。それでも純ちゃんならではのキュートで不安定なボーカルが光りまくっている。

【ラヴ・クローン】

これも代表曲の一つで、ここでもポップネス炸裂。クローン人間をモチーフとしており、詩の世界を抜きにしても80年代ポップセンスの溢れる曲調が素晴らしい。この曲で改めて、純ちゃんが作る詩の世界とバンド側のプロダクティビティが相互補完していることに気づく。

【コレクター】

代表曲中の代表曲とも言える名曲。愛を拒んだ男を無理やり飼いならすという猟奇的な世界。ロックスタイルなボーカルを核としながら、変態的なロリータボイス、低音ドス声、背筋を凍らせるようなファルセットボイスと、純ちゃんの七変化ボーカルを十分に堪能できる世界。嗚呼。

【労働慰安唱歌】

プリミティブなボーカルを堪能できる、働く民を労る唱歌。極東慰安唱歌(過去レビュー)にも通じる世界観を持ちながらも、ヤプーズならではの狂い気味なギターが楽しめる。牧歌的なり。

【ロリータ108号】

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?ミサイル搭載した恋するサイボーグは自爆する夢をみるか?サイバネティックな本作を補完するに足る名曲。恋するロボットは切なすぎて、もはや絶望感しか覚えない。終盤の転調と憂いのあるアコースティックギターが胸を締め付ける。

【宇宙士官候補生】

これぞパワーポップ。宇宙へ飛び立とうとする、マーチ的曲調が僕らの希望を宇宙へと運んでいく。80年代に僕らが夢見た宇宙時代。ここに表現されていた。

【素敵な時間】

散文詩で構成される終盤曲は、純ちゃんだからこそ表現できる世界なんじゃないか?他のボーカリストが歌ったら何の変哲もない曲なんだ。 





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