2012年8月21日火曜日

Oceania : The Smashing Pumpkins


Oceania : The Smashing Pumpkins

プロレス団体を立ち上げたり、いつまでもスマパンの亡霊に囚われているなど、迷走が続いている(と思われる)Billy Corgan。前作「Zeitgeist」(過去レビュー )があまりにもアレレな出来だったので、5年ぶりの新作と言えども全く期待しておりませんでした。ここ最近は「Teargarden by Kaleidescope」という、44曲にも渡るフリー・ダウンロード・アルバム・プロジェクトを進行させていたのを横目で見つつ。どうやら本アルバムは当該プロジェクトから抽出されたトラック群らしいです。

そもそも「Zeitgeist」ではオリジナルメンバーがBilly CorganとJimmy Chamberlinの二人だけだったんですが、本作に至ってはBilly Corganのみがオリジナルメンバー。メンバー総入れ替えのG'n'R状態ってどうよ?って思ったのは僕だけじゃないはず。そんな思いを抱きつつ本作を聴いてみたところ、「…なかなか良いじゃない」と思ったのが率直な感想。「Zeitgeist」ではあくまでもオリジナルなスマパンを再現しようと躍起になっていたように思えていたんですが、ここにきてBilly Corganは新しいスマパン像を模索・構築しようとしているんじゃないか?とさえ思える。つまり、スマパンのスタイルは継承しながら、バンドメンバーの個性を尊重しようとしているんじゃないか?と言うことです。

スマパンの極北とも言える、メランコリーを炸裂させながらの轟音ギターは健在。Jimmy Chamberlinの転がるようなドラミングから、新ドラマーであるMike Byrneの粘着力あるドタドタしたドラミングへ移行したものの何ら違和感はない。70年代におけるプログレッシヴ・ロックや80年代におけるニューウェーヴの切なさといった要素もふんだんに盛り込まれている。しかもそれぞれの楽曲クオリティが極めて高く、Billy Corganのソングライティング能力には唸らざるをえない。スマパンのスマパンたる所以である美しいアートワークも健在。ああ、もうこれは申し分ないほどスマパンだな。しかも、かつての物理的なスマパンではない。Billy Corganの脳内にあるスマパンを、他者の力を借りながら表現した新スマパンだ。何かもう複雑な気持ちで悲しくもあるんだけど、僕らはかつて凄まじいケミストリーを放っていたスマパンではなく、Billy Corganプロデュースの新世代スマパンに馴れなくちゃいけないのかもしれない。

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