2012年8月26日日曜日

WIRE12



WIRE 12 COMPILATION

夏の終わりを告げる風物詩 WIRE。地元で行われることもあり、行くかどうかはその年の気分で決めています。ただし、今年は我が愛読誌TVブロスで石野卓球インタビューが特集されていたこともあって、行く確度が一気に高まった。何故ならTVブロスで不定期的に特集される電気グルーヴや石野卓球インタビューがこの上なく好きだからだ。インタビュワーは敬愛する天久聖一先生。面白すぎて電子書籍化(過去の記事 )されているぐらいだからね。買う人は少ないと思うけど。

卓球 「本番開始と同時にクラクションが鳴ってスタート。そこから一切笑ってはいけない」 


天久 「ちなみに笑うとどうなるんですか?」 


卓球 「どこからともなく『石野~アウト~』って声が聞こえて、カンボジア国籍に変えられる」 


天久 「強制的にですか?」 


卓球 「うん。オリンピックとはまったく関係なく」


なんと今年は「笑ってはいけないレイブ」というコンセプトらしい(笑)。こいつは何が何でも参加せねばなるまい。しかも今回はまりんこと砂原良徳も初参加となるのでこいつは見逃せない。

卓球 「彼は今年のWIREでピン芸人としてデビューする」

天久 「意外です。では芸名も変わる?」

卓球 「ミスター・サイゴンという名前でね。1986年のマリリンを歌った本田美奈子.がミス・サイゴンってミュージカルに出てたでしょ」

天久 「まりんとマリリンが掛かってるんですね。でもずいぶん遠くから引っ張ってきましたね。」


ミスター・サイゴンのデビューとなる瞬間も見逃すわけにはいかない。



18:00開演を待つオーディエンスで横浜アリーナ入口には行列が出来ています。今回は電気グルーヴが19:10からライヴを行うというので早めに会場入りしたんだけど、おそらく朝まで持つまい。

【DJ Tasaka】





オープニングアクトは毎度おなじみDJ Tasaka。まだまだ空いている会場を、ぶっといボトムの黒っぽいグルーヴで盛り上げています。相変わらずこの人のプレイは手堅くて、クールさと熱さが共存しているよなあ。今回は時間早めにもかかわらず入り具合がいいのは、僕と同じく電気グルーヴ目当てのオーディエンスが多いからに違いない。

【電気グルーヴ】







早い時間にもかかわらず、既に最初のピークタイムとなった電気グルーヴのアクト。アシッドテイスト丸出しの「ハロー! ミスターモンキーマジックオーケストラ」で会場が爆発的に盛り上がる。シルクハットをかぶったビエール瀧の掛け声で更に盛り上がるはず…なのに掛け声なし、歌もなし。なんだか完全ダンスフロア仕様にバージョンアップされているアレンジメントだ。更に「SHAMEFUL」(過去レビュー )へとなだれ込んでいき、この時点でアシッド地獄。ピエール瀧は「SHAMEFUL」のPVで出てくる箱型人形に扮して会場を盛り上げる。更には「Shangri-La」や「キラーポマト」、「誰だ!」、「虹」といった曲のリフを多用しながらも、ここでもボーカルやサビなど一切なし。ハードエッジなテクノ地獄へと変貌を遂げた過去の名曲たちは、今の彼らの最新モードを反映させているかのようでした。



WIREもう一つのお楽しみといえばWIREガール。Device Girlsが巨大スクリーンに仕掛けるVJが会場を盛り上げていますが、その中でもWIREガールがテクノ野郎どものハートを鷲づかみにする。毎年キュートな女の子がコスプレしながら笑顔を振りまきますが、今年の格好はなんとくいだおれ太郎。今年のイメージカラーを見事に引用したコスチュームです。今年の女の子は劇団ハーベストの久保田紗友さん 。2000年生まれというからまだ12歳。しかも初回WIREの時には生まれていないじゃん!

【砂原良徳】





今回の目玉アクトの一つ、ミスター・サイゴンこと砂原良徳。電気グルーヴのアクトが終わる間際にセカンドフロアへ猛ダッシュ。開演前にもかかわらず長蛇の列が出来ていた。しばし待つこと会場に入れば、ノイズとアトランダムなビートがフロアを直撃していた。そのさまはまるでオウテカのように無機質で、聴き手の想像力をひたすらに喚起する。しかもここで演奏されるのは全く聴いたことのない新曲ばかりで、叙情性を限りなく排除したミニマルなエレクトロ。観客も踊ることなく、ひたすら緊張感を持ってステージを見守るだけ。とんでもない音圧に包まれながら、ノイズと電子音、複雑なビートにまみれたハードセットが粛々と演奏されていく。既発曲は最後に演奏されたLOVEBEAT(過去レビュー )収録の「the center of gravity」のみ。それ以外は全て新曲だったので、このステージを目撃できて幸運だったと思います。セットリストはこちら で公開されています。ちなみに写真の左側に写っているのがミスター・サイゴンです。右側の方じゃありません。

【石野卓球】



ミスター・サイゴンの演奏を見終えて、メインフロアへ移動。オーガナイザーの石野卓球がフロアをアゲていた。卓球氏ならではのユーモア感覚と、エレクトロニック・ボディ・ミュージック志向のマッチョなテクノは相変わらずの安定感。懐かしいところではAlter Egoのブリーピーなエレクトロ「Rocker」がスピンされていました。



巨大スクリーンに目を見やると「笑ってはいけない」の文字が。やはり「笑ってはいけないレイブ」だったんだ(笑)。大勢いる観客の中で、このメッセージの意味を理解した人はどれだけいるんだろうか?

【Hell】




この世にテクノ地獄があるとすれば、それはドイツ帝国のミュンヘンを指すのだろう。そんな街からやってきた地獄大使 ヘルムート・ヨゼフ・ガイアー。通り名はHell。DJブースを見ても、暗闇にうごめいているのは影だけで、そのご尊顔を拝めることはできない。この不気味さがまさに地獄大使たる所以だ。ハードミニマルであろうと、アシッドテクノであろうと、ジャーマンニューウェーブであろうと、この男が繋ぎあわせれば独自の耽美的な世界が構築されていく。クールでスタイリッシュで伊達なプレイは健在でした。

【Ken Ishii】





テクノ界のイチロー、もしくはラストサムライことケンイシイ。0:10からスタートしたプレイが始まった瞬間にフロアは阿鼻叫喚。徹頭徹尾アゲまくって、疾走感溢れる圧巻のプレイでオーディエンスの身体にムチを入れまくっています。相変わらずのハードさ加減で、時にはURの「Sonic Destroyer」を挟んでオールドファンを狂喜させる。ケンイシイのプレイが終わったのは1:20。この先には3:15からRobert Hood、4:25から最後までDerrick Mayというドス黒いグルーヴプレイが控えていたんだけど、さすがに開演から終演までいる気力が萎えてきた。それというのも、良いのか悪いのか家の近くだから帰りたいという気持ちがあるからなんだな。この時点で会場を後にしました。

国内最大のレイブであり、今年は「笑ってはいけないレイブ」だったWIRE。アリーナ独特の開放感と、暗闇が持つ密閉感がほどよくミックスされ、ここでしか体験できないような空間は非常に貴重です。この微妙なバランス感覚が僕にとっての魅力なんだろうな。

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