2012年10月5日金曜日

夏至 À la verticale de l'été


夏至 À la verticale de l'été

ベトナム旅行でかの国にすっかり魅せられたこともあって、帰国してからベトナム映画を観ました。予備知識は全くなく、誰が撮って誰が出てどんな映画なのかも全く知らず。ストーリーはというと、ハノイで暮らす三姉妹やそれぞれの夫や恋人、不倫相手や愛人が織りなす群像劇。筋を追っていく映画ではないんですが、熱帯特有の湿気に満ちた空気感、食物や植物が持つアジア独特の極彩色、むせ返るようなエロスが本当に素晴らしい。台詞は極めて少なく、極限まで切り詰められた空気感覚が観客の想像力を喚起させ、絵画をじっくりと観るフランス映画のようです(と思いきや、ベトナム・フランス共同制作映画でした)。

ハノイやハロン湾が出てくるといっても、大部分が屋内で撮影されているので、ベトナムがどんな国なのかを参考するために楽しむ映画ではありません。実際のベトナムはこんなに静謐で美しくないし、もっともっと猥雑でけたたましく生活感に溢れています。まるで「ノルウェイの森」のような映画だな、と監督を調べたら、なんと同じトラン・アン・ユン監督でした。ベトナム系フランス人というバックグラウンドが思い切り頷ける、監督独自の美学を堪能できる秀作です。とにかく鮮やかな色彩感覚とゆったりとした時間感覚を楽しむべき映画です。

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