2012年12月30日日曜日

Total Breakdown : DJ Shadow

僕の義父が鬼籍に入って4年以上経つが、死の間際まで技術者であり実業家であり続けた人だった。大学を卒業して藤倉電線(現フジクラ)に入社し、数年してから当時としては珍しく転職をした。転職先はオーディオ機器メーカーの赤井電機で、それから仕事の脂が乗りきっている時に独立を果たし、最後は経営者となった。

前述の赤井電機はハイエンドのカセットテープデッキで名を馳せ、70年代はベトナム帰りの米国兵が大挙して買って帰ったという。クイックリバース機能をいち早く採用して、80年代初頭に成長ピークを迎えたが、やがてデジタル化の波にもまれて経営破綻した。その後、AKAI professionalという電子楽器ブランドが独立したが、こちらも経営破綻。その後AKAIというブランドはNumarkに引き継がれている。

さて、AKAIと言えばAKAI MPCというサンプラーだ。今ではPCがハイスペック故にDJユースのメイン機材になっているだろうが、80年代後半~90年代前半のサンプラーといえばMPCであり、サンプリングのみで作られた史上初の作品として有名なのが、DJ Shadowの「Endtroducing...」(過去レビュー)だ。おそらく義父はDJ Shadowのことを知らなかっただろうし、今日紹介する作品のことも当然知らない。


Total Breakdown : DJ Shadow

前置きが長くなってしまったが、今年の夏にリリースされたDJ Shadowの未発表音源集がおそろしく素晴らしい。

サブタイトルの「Hidden Transmissions From The MPC Era.1992 - 1996」から分かる通り、この作品はAKAI MPCを駆使して作られた92~96年の未発表アーカイブだ。つまり96年にリリースされてサンプリングミュージックの金字塔となった「Endtroducing...」の前に蓄積された音源集だ。当然ながら途方もない量のヴァイナル、そしてターンテーブルとミキサー、MPCで作られているトラック群は有り得ないほどのグルーヴに満ちたヒップホップ~ブレイクビーツで構成されている。決して日の目を見ることもなく、溶かされるビニールとしての運命を辿っていったであろうファンクチューンやレアグルーヴが、DJ Shadowにより引き揚げられて再構成されていく。単なるリズムマシーンで打ち込まれたビートではなく、無名のドラマーが叩いたであろうドラムパターンが繰り返されることにより、リスナーは途方も無い快楽を得ることができるのだ。

これらの作品が作られたのが今から20年前。全く色褪せていないどころか、今の時代でも完全に有効だ。おそらく亡き義父に聴かせたら驚くことだろう。

2012年12月28日金曜日

The Orb featuring Lee Scratch Perry present The Orbserver In The Star House

ボブ・マーリーは歌のみでレゲエを成立させるというが、「笑っていいとも!」に出演したリー・ペリーはその存在のみで周囲をカナビススモーカーにしてしまうだろう。


The Orb featuring Lee Scratch Perry present The Orbserver In The Star House

90年代初頭のUKから宇宙や異次元に向けて音を流し続けるThe OrbのAlex PatersonとThomas Fehlmann、そしてYouth。60年代末のジャマイカから煙を吸い続ける、生ける伝説Lee Scratch Perry。現代地下ベルリンで重低音を発し続ける、共同ミキシング担当のTobias。彼らが個々に作っていた地下水脈は、今年になってようやく必然的邂逅を果たした。ジャケットを見てほしい、宇宙の中心はジャマイカで、その周りを囲む宇宙はThe Orbによって作られているかのようじゃないか。

いつかこういった作品ができることを予感していましたが、完成度は予想を遥かに超えていました。リー先生の存在感があまりにも強すぎて、ここで聴けるのは Lee Scratch Perry featuring The Orbかのよう。The Orbのいつものような効果音や電子音は控えめになっており、リー先生のトースティングが新たな小宇宙を構築。それを支えるのは地下ベルリンで鳴り響く硬質な圧倒的重低音。しかも初期の名曲「Little Fluffy Clouds」がここでは「Golden Cloud」というオマージュカバーへと変貌を遂げている。これは奇跡の邂逅なんかなじゃい、運命の必然的出会いだったのだ。

2012年12月26日水曜日

せたが屋 品川店

品川駅高架下に「麺達七人衆 品達ラーメン 」というラーメンテーマパークがあります。できたのが2004年だというから、かれこれ8年前の話。にも関わらず、僕が品達を知ったのは去年の話。お隣の大崎に2007年から働いているにも関わらず、彼の地 品川はほとんどノーマークだったわけです。これはいかん、と自分を恥じながら、そそくさと行って来ましたよ。



魅力的なお店が軒を連ねている中、名店「せたが屋」へ入ることにしました。言わずもがな、世田谷の駒沢に本店を構えるお店。駒沢以外に各地にも店舗展開をしており、しかも別ブランドでも営業展開しています。これは気になるというもんじゃないですか。



トッピング全部入りの「せたが屋らーめん」を頼みます。麺は中細ちぢれと極太平打ちの二つから選べるというので、中細ちぢれを頼むことにしました。丼の中にひしめき合っている具材は、味付け玉子、チャーシュー三昧、メンマ、海苔、ナルトに加えて何とアオサ。スープは想像通り、魚介系と動物系のWスープ。煮干強めで魚介系の主張が強く、割とあっさりした醤油味になっています。取りあえずアオサを食べてみましたが、磯の香りが口内に広がり好感度大なお味。甘く味付けされた玉子、太くて食べ応えのあるメンマ、とろっと柔らかい炙りチャーシュー等どの具材もなかなかイケる。かんすい率高めの縮れ麺はスープとの絡みがなかなかいい。あっという間に丼の底が見えるまで食べつくしました。

敢えて言うならば、系統的には僕の大好きな「きみはん」(過去の記事 )に似ています。美味しいラーメンであることは確か。でも強烈なインパクトを残したわけではなかったな。たぶん麺が普通の出来だったことと、スープの奥深さがそれほど感じられなかったのが原因だったと思う。

ホームページ: http://www.setaga-ya.com/shop/t_sinagawa.html http://www.shinatatsu.com/raumen/kaku_kumo.html 
住所:東京都港区高輪3-26-20
せたが屋 品川店ラーメン / 品川駅北品川駅高輪台駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.0 
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2012年12月24日月曜日

Tinsel and Lights : Tracey Thorn


Tinsel and Lights : Tracey Thorn

EBTGのTracey Thornが2年半ぶりに新作をリリース。しかも今回はホリデイシーズン向け企画アルバムとなっています。クリスマスに浮かれていたのは遠い昔のこと…今は無事に一年終えようとしていることに感謝し、大切な家族や友人たちと行く年や来る年を祝福するのみ。というか、そもそもホリデイシーズンってそうあるべきだし、かつてのバブル全盛時の日本がトチ狂っていただけなんだよね。さておき、静かに年末年始を過ごすには最適な心温まる内容となっています。しかもBen Wattがギターやピアノで深く関与しているので、ほとんどEBTGの新作と言い切ってもいいでしょう。

さて、内容はトラディショナルな「Have Yourself a Merry Little Christmas」にThe White Stripesの「In the Cold, Cold Night」、Joni Mitchellの「River」、Scritti Polittiの「Snow in Sun」、Ron Sexsmithの「Maybe This Christmas」といったウィンターソングのカバー、そしてオリジナルが2曲という具合。決してきらびやかにならず、彼女の繊細で深い歌声が暖炉のように優しく心を温めてくれます。「クリスマスアルバムだなんて…」と全く期待していなかったんだけど、ここまで訥々とセンスよく作り上げられているとは思いませんでした。これは多くの人にぜひ聴いてもらいたい、クリスマスアルバムの新しいマスターピースです。

2012年12月22日土曜日

Aninha Mission : Piano Overlord


Aninha Mission : Piano Overlord

Prefuse 73やSavath & Savalasなど多種多様な名義で活動するScott Herren。今年7月にPiano Overlord名義で新作をリリースしています。その名義通りに様々なピアノを駆使した、ジャジーでサイケデリックでヒップホップなエレクトロニカを堂々と披露。新作と言いながらも、どうやら2004~5年頃に作られた未発表音源のようです。

「様々なピアノ」と書きましたが、アコースティックピアノに限らず、フェンダー・ ローズやウーリッツァーといったエレクトリックピアノ(電気ピアノ)がメインに使われています。この記事を書くにあたって初めて知ったんだけど、エレクトロニックピアノ(電子ピアノ)とエレクトリックピアノ(電気ピアノ)には歴然とした違いがあるとのこと。簡単に言えば、前者は生ピアノの再現を目標とした楽器で、後者こそいわゆるエレピと呼ばれる楽器で、特徴についてはWikipedia 大先生に聞いてください(と逃げる)。

本題が逸れてしまいましたが、本作では多様なエフェクト処理が成されているので、鍵盤楽器とドラムだけで表現されているとは思えない。ざらついてローファイな音は白日夢のようにドリーミー、郷愁を覚えるようなエレピやぶっといボトムはサイケデリック。TortoiseのJohn McEntireや元BattlesのTyondai Braxtonが参加していることから、ポストロック的要素も満載です。

2012年12月20日木曜日

らぁ麺屋 飯田商店



或る三連休。何もすることがなく、取りあえずラーメンでも食べに行くかと思い立つ。どうせ行くなら神奈川県で上位にランキングされるレベルの店に行ってやれ!と思い、このお店がヒット。場所は湯河原、神奈川県の一番静岡寄りの温泉街だ。僕の住まいは横浜北部で東京寄りにある。ええい!行ってやれ!と車に飛び乗って1時間で湯河原に到着。住宅街の中にある地味な佇まいながら、1時半にもかかわらず行列ができていた。



何の予備知識もなく、ワンタン麺を注文した。店員さんが二人だけで切り盛りしているせいか、結構待たされる。そんな中、麺が切れてしまったようで2時には看板をしまっていた。麺は自家製で、お店の2階で手打ちしているよう。御覧のように清らかなスープの表面に浮いているのは鶏油(チー油)で、ダシには上質な比内地鶏、かえしには複数の生醤油を使っているとのこと。啜ってみると…雑味が一切なく、実に繊細でシルクのような喉越しの醤油スープを味わうことができる。麺はストレートの細麺で、こんなに滑らかなつるつる麺は味わったことないよ!というぐらいに上品だ。まるで伊庭うどんのように喉を通りぬけていく。ワンタンも同様につるっとした喉越しで、具も味わい深い。チャーシューは鶏肉と豚肉を使っており、こちらもこだわりぬいた品質を感じることができる。化学調味料を一切使ってないそうで、全体的に職人がこだわりぬいたようなバランス取れた逸品を堪能することができる。これほど完成度の高い麺を味わえたのは久々だ。

帰りは小田原方面の道路がとんでもなく混んでいたので、箱根経由で御殿場ICから帰りました。そこでも大渋滞で、結局家まで3時間もかかったという…。

ホームページ:http://r.iidashouten.com/
住所:神奈川県足柄下郡湯河原町土肥2-12-14
らぁ麺屋 飯田商店ラーメン / 湯河原駅 ) 
夜総合点★★★★ 4.0 
昼総合点★★★★ 4.0

2012年12月18日火曜日

Rock & Roll Love Affair : Prince


Rock & Roll Love Affair : Prince

我らがプリンス殿下が唐突にシングルをリリース。CD、アナログ、ピクチャーディスクの3種類が「Dance 4 Me」(過去レビュー)と同様にPurple Musicからリリースされています。どれほど大層な曲なのかしら?と聴いてみたら、地方のスーパーにでも流れてきそうな気の抜けたシンセ、タイトルとは裏腹に全くロックしていないギター、グルーヴの欠片もない平坦なドラム、全く印象に残らない殿下のボーカルとメロディ、分厚さが感じられない薄っぺらいサウンドプロダクション…と突っ込みどころ満載なつまらない曲になっていました。なんだこれ、殿下の才能は本当に枯渇してしまったのか?

カップリング曲はこれまた「Dance 4 Me」と同様にJamie Lewisのリミックス。これまたつまらないEDMになっているんだろうな~と聴いてみたら、思いの外オリジナルよりも良かったりして。「Jamie Lewis Club Mix」ではマイナー調に変化したメロディをぶっといボトムが支え、幾層にも積み重ねられたシンセリフが印象的に鳴り響く。「Jamie Lewis Stripped Down Mix」ではシンセリフが細かく刻まれるギターにとって代わり、オリジナルよりも遥かにロールしている。オリジナルよりもリミックスのほうが出来がいいなんて、殿下にしては珍しいこと。いや本当にどうしちゃったのかしらね。

2012年12月16日日曜日

Beak II : Beak


Beak II : Beak

PortisheadのGeoff Barrowが2009年に結成したスリーピースバンド「Beak」。一過性のプロジェクトかと思っていましたが、なんと今年になって2ndアルバムをリリース。今年初頭にはヒップホップユニット「Quakers」としてアルバム(過去レビュー)をリリースしたりと、かなりのハードワーカー振りを発揮しているGeoff Barrowです。

で、本作も1stアルバム(過去レビュー)の延長上にあるような音作り。敢えてグルーヴを排除したかのような直線的なドラムは、まるで70年代ジャーマンロックのよう。サイケデリックであり、エクスペリメンタルでもあるバンドサウンドの狂気が、Geoff Barrowの構築するざらついたローファイなプロダクションで増幅されていく。Portisheadに繋がるような密室感覚やダークネスがありながら、そこはかとなく乾いて能天気さすら感じさせる音、これこそこのバンドの持ち味でしょう。ミニマル感覚~アシッド感覚が満載なので中毒性が極めて高く、気が付くと延々とリピートしている自分がいる。これは要注意作品!

2012年12月14日金曜日

らーめん桃源



神奈川県のラーメンといえば言わずと知れた横浜家系。最近では神奈川端麗系なるジャンルも幅を利かせているが、数年前から塩ラーメンの人気もじわじわ伸びているらしい。その「しお」人気に一役買っているのがこのお店。日吉・綱島エリアでは絶大な人気を誇る名店として知られています。僕がお店に行ったのは午後2時前ということもあったので、それほど行列はできていませんでした。



メニューはご覧の通り、ものすごく細分化されている。基本となるのがやはり「しお」で、そこから「辛しお」や「うま辛しお」、「コッテリうましお」といったメニューが派生している。他にはやはり基本の「醤油」や「味噌」、「辛味噌」といった味も。トッピングもいろんなものが揃えられているんだけど、ここはやはり基本に忠実な「しおラーメン」を頼むことにする。



「塩ラーメンはタレで誤魔化せない分、だしや塩の味で勝負するんだよなぁ」とぶつぶつ言いながら待っていると、出てきましたよ「しおラーメン」。具材に使われている肩ロースのチャーシューは柔らかくて旨みあり。他にはしゃきしゃきしたメンマやきくらげ、かまぼこ、海苔に隠れた味付け玉子など。

ともあれ、ここのメインであるスープを啜ってみると……旨い。間違いなく旨い。すっきりした塩スープなのに、実に味わい深いだしが効いている。鶏がらや魚介系、野菜などを複雑にダシへ引用しているだろうに、この旨みこそ間違いなく、あさりや帆立といった貝の旨み。この旨みをテキストで表現するのは非常に難しい!だがとんでもなく美味しい!

麺はかんすい率高めのしこしことした縮れ麺で、実にスープとの相性がいい。半分ほど食べてから卓上にある柚子パウダーをふりかける。ここでさっぱりさ加減が強まって、別の風味を楽しめる。更にはすりおろしニンニクを加えて、コクのある味へと変化させた。いつの間にやらスープを全部飲み干して、期待を裏切らない満足感を得ることができた。お店を出ると長い行列が!なるほど人気店たる理由が良く分かりましたよ。

住所:神奈川県横浜市港北区樽町2-2-19
らーめん桃源ラーメン / 綱島駅 ) 
夜総合点★★★★ 4.0 
昼総合点★★★★ 4.0

2012年12月12日水曜日

Dependent and Happy : Ricardo Villalobos


Dependent and Happy : Ricardo Villalobos

アルバムとしてはMax Loderbauerとの共作「Re: Ecm」(過去レビュー)以来となるRicardo Villalobosの新作を聴きました。幸いにして一番最初に聴いた場所が車の中、しかも高速道路を爆走通過中の時。爆音の中に聴こえてきたのは、粘着力のある規則的なパーカッション、それに絡み不規則に進んでいくドラム。ねばっとしたパーカッションが耳を捉え、どろりと低く唸る重低音が足元にまとわりつき、突発的に浮かんでは消える妖艶な効果音が全身を包み込みます。効果音が縦横無尽に行き交う中、いつしかビートは不可変で規則的なものへと変化。とにかくベースがとてつもない程重たくて、これはもはや聴く作業と言うよりも身体で受け止める作業と言った方がいい。

随所に挿入されるフレーズや意味不明のヴォイスサンプルが聴こえてくる度、受け手は覚醒させられつつも続いていく低音に身体を揺さぶられる。とにかく爆音で聴くと音の分離が明確に理解できるので、パーカッション~効果音~ビート・重低音といった複数レイヤーの意図を受け止めることができる。これはもう一種のエクスペリエンスなのだ。前述の通り、爆音環境でこそ聴かれるべき音楽なのだ。極めて機能的なダンスミュージック~ヘッドミュージックなのだ。

2012年12月10日月曜日

Celebration Day : Led Zeppelin


Celebration Day : Led Zeppelin

Zep再結成に断固として反対しる !!」と書いて早くも5年が経ちました。つまり彼らがロンドンのO2アリーナで一夜限りの再結成をしてから5年、沢尻エリカと高城剛がこのプレミアムライヴを鑑賞してから5年という訳です。結局、僕が再結成に反対したところで何の効力も持たないわけで、あの夜のライヴは伝説となりました。今回リリースされたライヴ盤で、全世界の人達があの日の興奮を分かち合えるのは何だかんだ言って喜ばしい限り。

さて、これまでZepの魅力は言い尽くされているので、ここで敢えて書くのは野暮というもの。ただし、彼らを語る上で外すことのできないキーワード「化学反応」を忘れるわけにはいきません。ライヴでこそ本領を発揮し、その日の調子で化学反応が起きるかどうか分からないのも彼らの魅力。更にはZepをZepたらしめるボンゾの不在により、果たして化学反応は起こりえるのか?というのが僕にとっては不安だったのです。

このライヴ映像を観て、僕のちっぽけな不安は単なる杞憂に終わりました。ボンゾのDNAを確実に受け継いでいるジェイソン・ボーナムは、父親のドラムスタイルをも確実に受け継いでいたのです。しかも父親の役割を継承しただけでなく、自分のドラムを叩くということも忘れていなかったのです。これにより、バンドは新しい化学反応を引き起こしているのは明白でした。しかも単なる懐古主義的なプレイになっておらず、攻撃性も増していました。つまり時代に即して彼らは最新型だったとも言えます。完璧な演奏だったとは思いませんが、この日のライヴは伝説となり得るものだったことを確信しました。ジェイソン、あんた本当にいい仕事しているよ!

ちなみに僕が買ったのは「2CD + BD + ボーナスDVD」のデラックス・エディション。ボーナスDVDにはリハーサル映像がまるまる収録されていますが、定点カメラでの収録なので映像は極めて退屈。海賊版に手を出すハードコアなマニア向けの内容だと思います。

2012年12月8日土曜日

つけそば 中華そば 浜屋 五反田店



隠れたグルメタウンとして知られる五反田界隈。しかも数多くお店がひしめくラーメン激戦区でもあります。そんな五反田の外れ、駅から徒歩10分のところに新しいお店ができていました。しかも評判がかなり高いので、これは行かずにいられないというものじゃないですか。



テーブルにはご覧のような能書きが置かれています。なになに「茨城県北相馬郡利根町に本店があります」とな、随分と遠いところから東京進出を果たしているではないか。麺には「保存料、着色料は一切使用せず」、スープは「化学調味料に頼らず」と書いてあるのが心強い。とりあえずお店一押しの「エビ辛しつけそば」を頼むことにしました。



まずは小皿に盛られた「エビ辛し」が出てきて、ほどなく麺とスープが着丼。つるっとした見た目の極太麺をスープに浸してずるずるずると…美味しいではないか。スープに使われているダシは鶏がら、豚骨、日高昆布、しいたけ、4種の節、瀬戸内産と北九州の煮干とのこと。なるほど魚介豚骨のダブルスープゆえにどろっと濃厚でありながら甘みがあって深い味わい。他店よりもやや酸味が利いているのが印象的。大振りのチャーシューもとろっと柔らかい。麺はもっちりとのどごし豊かで食べ応えあり。スープとの相性も十分だ。食べ進むにつれ「エビ辛し」を投入すると、なるほど辛みと風味が出てきて食欲も倍増する。ただしエビの風味はそれほどなし。最後にスープ割を頼んできりっと締める。次は普通の中華そばにチャレンジしたくなったよ。

住所:東京都品川区東五反田4-10-5
つけそば 中華そば 浜屋 五反田店つけ麺 / 五反田駅高輪台駅大崎広小路駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.5 
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2012年12月6日木曜日

An Omen EP : How to Destroy Angels


An Omen EP : How to Destroy Angels

Trent Reznorのユニット「How to Destroy Angels」がデジタル配信とヴァイナルオンリーで新しいEPをリリースしています。日本でデジタル音源を入手できるのはiTunesのみのようですが、6曲入り1,200円とややお高め。しかしながら公式サイトでは5ドルぽっきりで入手できるのが嬉しい。

これまでリリースされているのが、セルフタイトルのデビューEP(過去レビュー)と映画「ドラゴン・タトゥーの女」サウンドトラック(過去レビュー)に収録されたトラック「Is Your Love Strong Enough?」のみ。それだけにユニットの全容や世界観を把握するのが難しかったんですが、本EPでようやく符号が一致。本作のタイトルやジャケットではホラーな雰囲気をたっぷり孕んでいますが、Trent様の奥方Mariqueenをボーカルにフィーチャーしているだけあって、氷のように静謐で儚い世界を構築しています。

NINの世界がノイズにまみれた暗黒と狂気の世界だとするならば、How to Destroy Angelsの世界は共通感覚を持ちながらも癒しと赦しを兼ね備えているのではないでしょうか。ポスト・ダブステップの影響を受けた重心が低いダークエレクトロニカが中心ですが、全体を貫いているのは実に女性的な優しさ。すっかり中年体型になってしまったせいか、かつてTrentが持っていた強烈な自己破壊衝動がほとんど見られないというのは隔世の感というべきか。来年には彼らのフル・アルバム、更にはついにNINの新作もリリースされるようなので今後の動向に注目です。

2012年12月4日火曜日

Until the Quiet Comes : Flying Lotus


Until the Quiet Comes : Flying Lotus

前作「Cosmogramma」(過去レビュー)で世界の度肝を抜いたFlying Lotus。2年ぶりにリリースされた新作は、前人未到の境地へと更なる一歩を踏み出した作品となっていました。

前作フィーチャーされたThom YorkeやThundercat
に加え、ネオソウルの女王であるErykah Baduも参加。ただし、ゲストミュージシャンはFlying Lotusが作り出す広大なる宇宙を構成するほんの一部に過ぎない。アフリカ系アメリカ人ミュージシャンが元々持ち合わせている宇宙志向~コズミック感覚を土台に持ちながら、エレクトロニカ~ジャズ~ファンク~ヒップホップといったありとあらゆるジャンルを再定義。しかもシームレスな全編に渡って繰り広げられる音楽絵巻は、どこにも所属しない高次元へと到達しています。

複雑に組み合わされたビートはプログレッシヴ以外の何物でもなく、腐敗寸前の果実のような音はサイケデリアの光が眩い。その上、ミニマルな感覚が貫いているかと思えば、電子的に繰り広げられるフリージャズ的要素も満載。これはもう、Flying Lotusやその祖先たちが持ち合わせているDNAの新たなる結晶というしかない。本人が「神秘的事象、夢、眠り、子守唄のコラージュ」と表現している世界へ静かに身を委ねるのもよし、複雑に構築された世界に耳を研ぎ澄まされるのもよし、未知なる深遠な脳内世界へと旅立つのもよし。そこでリスナーが感じるのは、Flying Lotusが(静寂が訪れるまで)放射するエナジーだ。

2012年12月1日土曜日

油そば専門店 ぶらぶら 横浜店



横浜西口にできた油そば専門店。考えてみれば横浜に油そばのお店ってあまりないよなぁ、と呟きながら吸い込まれるように店内へ入っていきました。どうやら赤坂にあるお店が横浜にも出店してきたらしい。ラーメン激戦区の横浜西口に進出するなんて、相当気合が入っているに違いない。何はともあれ、油そばは好きなジャンルの一つでして、二郎系ラーメンよりも胃にもたれずズルズルといけてしまうのが嬉しい。スタンダードな油そば 並/大 が同額の690円なので、迷わず大盛を頼みます。



卓上には「~油そばの食べ方~」が置かれており、まずは「そのまま」よくまぜてお召し上がり下さい!とのこと。



一般的にはお酢とラー油を3周かけるもんなんだけど(持論)、取りあえず底に沈殿しているたれと中太縮れ麺をよーく混ぜる。もっちりした麺がなかなか食べ応えあるんだけど、たれはちょっとインパクトに欠ける味だったかな。ここはやはり「ニンニク入れて旨さ倍増!(入れすぎ注意)」、「お酢とタマネギでサッパリと!(入れすぎ注意)」、「特製一味唐辛子とコショウで!(ピリリとシメル)」と書かれている通りにする。刻みニンニクとタマネギみじん切りを少々、お酢をぐるりと3周、一味を使っている自家製ラー油をスプーン一杯でカスタマイズ。ここでどうやら僕の満足いく味 - 程よくさっぱりしており、程よくジャンク感のある麺 - に仕上がった。自分好みの味に仕立てるにはカスタマイズ作業が必要、というのが難点といえば難点だけど、逆に言えば柔軟性があるということか。あっという間に麺をたいらげた後は、なんとスープ割りまで楽しむことができる。ただしどんぶりにたれは殆ど残っていないので、少なめにスープを足すのがいいと思います。

ホームページ:http://bura-2.com/
住所:神奈川県横浜市西区南幸2-12-13
ぶらぶら 横浜店ラーメン / 平沼橋駅横浜駅高島町駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.0 
昼総合点★★★☆☆ 3.0