2013年12月29日日曜日

Big Dream : David Lynch

早くも今年最後の投稿になりました。カルトの帝王であるデヴィッド・リンチ監督のセカンドアルバムについて触れますが、気が付いたら2年前の暮れにも監督のデビューアルバムを書いていたのね。あの時はまさか2ndをリリースするなんて期待していなかったので、嬉しい誤算といえます。


Big Dream : David Lynch


作風は前作を踏襲したもので、50年代ブルースにエレクトロニカを散りばめて、現代に昇華させたモダンブルース。怪しい映画を見ている錯覚に陥るような、耽美で妖艶な世界観が作られています。ダウンテンポで進んでいく不穏な世界でいながら、どこか安穏としているのは全編に渡って愛が満ち溢れているから。


相変わらず素晴らしいのが監督の歌声で、歪な生き物が蠢いているかのようなクレイジーさを叩き出しています。中でも白眉なのがスウェーデン女性歌手の Lykke Li をフィーチャーした「I'm Waiting Here」。DLコードでダウンロードできるボーナストラックなんですが、暗闇で輝く堕天使のごとく美しい。どこを切っても監督の映像作品を彷彿とさせる、まるで悪夢のように素敵な作品です。


2013年12月26日木曜日

ラーメン豚魂


森羅万象あらゆるものに魂が宿っているように、二郎インスパイア系のブタにも魂が宿っている。その店の名は豚魂(ぶたたま)。我が荒ぶる魂を鎮めるため、南武線の平間という所まで足を運びました。



ヤサイマシを頼んでいる客を見たら、とてつもない量の野菜が別のドンブリで出されていた。バイオレンスな予感を覚えてトッピングはヤサイチョイマシ。にも関わらず丼からこぼれ落ちそうな野菜が盛られてきた。豚のボリュームは少なめながら、豚の魂が宿っているが如く、柔らかくてジューシーだ。



天地返しをしたいところだが、とてつもない量をひっくり返すととんでもないことになる。仕方なく、キャベツ多めの新鮮なモヤシにスープをチョボチョボとかけて量を減らす。



適度に減ったところで「えいや」と天地返しすると、四角い断面の極太ストレート麺が顔を出す。まるで讃岐うどんのように表面はツルッとしており柔らかい。だけども   芯は固めでコシがある。スープは乳化しておりカネシ醤油の甘辛さが控え目。背脂豚骨スープのようにクリーミーでシルキーな喉越しとマイルドな舌触り。スープがあまりに美味しくて、思わず全部飲み干しそうになるところを自制。大満足して店を出たが「ああ、もっとスープを飲めばよかった」と後悔するほど中毒性が高い。わざわざ足を運んでまでも食す価値がある逸品だ。


住所:神奈川県川崎市中原区上平間1700-143

ラーメン豚魂ラーメン / 平間駅鹿島田駅新川崎駅 ) 
 夜総合点★★★☆☆ 3.8 
 昼総合点★★★☆☆ 3.8

2013年12月23日月曜日

From Top To Toe : From Time To Time



以前、中古屋でサルベージした「From Time To Time」の95年リリースアルバム。ジャケット裏にはメンバー名は書かれておらず、「Produced by Jun Tanaka, Yoshisuna」 と書かれている。Jun Tanakaとは田中純、つまりまりんこと砂原良徳が電気グルーヴ加入前に組んでいたユニット「O-TISM」のメンバーであり、Yoshisunaとは言うまでもなく砂原良徳のこと。つまり、まりんが「Crossover」(過去レビュー )でソロデビューを果たしていると同時に、アンダーグラウンドで過去の盟友と覆面ユニットの作品をリースしていたのです(ちなみに Thanks To には田中フミヤの名前も)。


モンドな「Crossover」とは対照的に、ここではフロアユースを意識した音作りになっています。骨格はBPM速めの、95年頃のミニマル。しかしながらアシッドフレイヴァーがそこかしこに散りばめられて、エレクトロニクスの使い方に楽天的な雰囲気が漂っています。入念に、丹念に、緻密になされた仕事のせいか、幾ら聴いても聴き飽きることがない。どこにも属していないオリジナリティが満載で、まりんはこの頃から凄かったんだなあと感心します。

2013年12月20日金曜日

デッド寿司


デッド寿司

日本が誇る鬼才、井口昇監督の「デッド寿司」をDVD鑑賞。これまで「片腕マシンガール」や「ロボゲイシャ」、「戦闘少女 血の鉄仮面伝説」を始めとする数多くのB級傑作を手掛けた監督だけあって、見逃すわけにはいきません。ちなみに「電人ザボーガー」は個人的に期待外れ、「ゾンビアス 」はハードルが高そうなので見る気がなかなか起きません。 伝説のすし職人である父親の厳しい修行に耐え切れず、家出をして温泉旅館で仲居として働くケイコ。怪しい男が旅館を訪れ、評判の寿司に謎の薬品を注入すると寿司が殺人兵器となり人々に襲い掛かる……というあらすじですが実にくだらない。相変わらず筋はあってないようなものなのに、最後まで観客をがっつり惹きつけるパワーは健在。 中でも見どころなのがケイコを演じる武田梨奈のアクションで、ただ者じゃない切れ味のあるアクションを披露。それもそのはず、空手黒帯有段者であり、数々の大会で実績を残しているガチな空手ガールなのです。ここまでアクションを演じきれる若手女優は今の日本映画界には皆無であり、この先に海外進出する可能性もありかもしれません。ちなみに年明け公開となる中川翔子主演、井口昇監督の「ヌイグルマーZ」にも出演しています。 すし、女体盛り、ゾンビ、スプラッタ、そしてまさかの伊丹十三作品の「タンポポ」オマージュと、B級感覚が大好きな人は必見の作品です。

 

2013年12月17日火曜日

ラーメン髭



二郎インスパイア系の中でもトップクラスと言われる「ラーメン髭」に行ってきました。事前調査によると「ニンニク入れますか?」コールの時に「ヤサイマシマシ」をお願いすると怒られるらしい。どうやら作る順序が標準二郎と異なり、注文されてから茹でるようだ。ヤサイマシをお願いしたい時は食券を渡す際に。「ニンニク入れますか?」と聞かれる時は素直にニンニクの量を伝えよう。




チャーシューメンを頼んだら、ブロック状の巨大な豚角煮が4つ搭載されてきた。こいつらが実にジューシーで食べ応え抜群だ。見た目は固そうだが、程よく味が染みておりホロリと噛み切れる。野菜はマシをお願いしたわけでもないのに、シャキシャキしたもやしがギッチギチに盛られている。極めて高密度に集積された、全人類への覚醒を促す小宇宙的一杯だ。



標準よりもやや細めの中太麺は平打ちで、ヤワメに茹でられていてチュルリンとした喉越しでモチモチしている。スープは非乳化なライトボディで、微かに背脂が浮いている程度。甘辛くてキレがあり、二郎王道よりも豚骨ダシ控えめの醤油スープ寄りだ。注文ルールや豚、ヤサイ、麺、スープのどれをとっても二郎マナーを踏襲しながら、独自の道を突き進んでいるインスパイア系。髭の店主が作っている姿を見て、インスパイア系を超越したアイデンティティを感じた。

住所:東京都大田区大森本町2-28-5
ラーメン髭ラーメン / 平和島駅大森町駅 ) 
 夜総合点★★★☆☆ 3.8 
 昼総合点★★★☆☆ 3.8

2013年12月14日土曜日

Electoronic Planet Vol.1 - Torema Classics


Electoronic Planet Vol.1 - Torema Classics

とれまレコードが設立20周年の編集盤をリリースするということで、94年にリリースされた本編集盤を改めて聴きなおしました。94年頃がテクノ的にどういった時代か振り返りますと、92年に英国でWarp編集盤の「Artificial Intelligence」がリリースされ、93年には英国でUnderworldの「Rez」、日本で電気グルーヴ「VITAMIN」、94年には「電気グルーヴのテクノ専門学校第1号」がリリースされています。この事から分かる通り、セカンド・サマー・オブ・ラブの終焉後、それまでアンダーグラウンドで蠢いていたテクノが徐々にメジャー化してきた時期でもあります。

メジャー化とは言ってもまだ細分化はされておらず、所謂ベッドルームテクノであるエレクトロニカやブリープテクノ、ガバ、ゴア、アシッド、レイヴ、ハードミニマルは全て「テクノ」と一括りにされていました。そんな中でも「テクノ」という単語と同義語だったのが「ハードミニマル」であり、とりわけ日本におけるハードミニマル代表格だったのがとれまレコードでした。

と、思っていたんですが、久々に聴きなおして驚いた。今の耳で聴くと当然ながら全くハードじゃない。いや、あの当時ゴリゴリに硬い音を鳴らしていたのは他ならぬ田中フミヤ本人で、レーベル代表格のLast Frontでさえプログレッシヴハウスっぽい。日本テクノ史を振り返る上で一資料としての価値はあるけども、もちろん全体像を把握出来るわけではありません。ただし、これだけは言えます。CD帯に書かれているコピー「大阪いちの不良レーベル」というのは伊達ではなく、とれまレコードこそが日本のテクノを切り開く原動力になっていたのです。

2013年12月11日水曜日

ホープ軒




先日、千駄ヶ谷~国立競技場方面に用事があったので、久々に東京背脂チャッチャ系ラーメンの老舗中の老舗「ホープ軒」に行ってきました。この店がなかったら野方ホープもらーめん弁慶も千石自慢ラーメンも、果てには二郎も無かったであろう歴史的名店と言えます。その昔、今のようにラーメン屋が乱立する前は選択肢が非常に限られていました。その中の一つとしてこのお店は燦然と輝いており、脂ぎったラーメンの代名詞的存在でした。店内にはくさい豚骨臭が漂い、床は脂で滑りやすい。いるだけで胸焼けしてしまう、そんなお店だったのです。



で、久々に訪問したところ、やはりね…時代の趨勢には勝てないというか、軒先貸して母屋を取られる、みたいにオールドスクールな味になっていました。チャーシューメンを頼みましたが、これで950円は高いと思う。豚バラロールはかろうじて及第点だったものの、背脂の量が非常に少ない。麺はぶっといものの明らかに茹で過ぎてヤワヤワだし、モヤシだってくたくたになったのがほんのちょびっとだ。



量的にも満足できるものでなく、全てが残念な味になっていた。昔はもっともっとギトギトしており、触るもの皆傷つけるようなエッジのある存在だったと思う。麺固め、脂多め、味濃い目でお願いすればよかったのか?だが、決して忘れちゃいけない事実が一つだけある。僕たちが普段食べているG系ラーメンの原点がここにあるということだ。

住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷2-33-9
ホームページ:http://www.hopeken.co.jp/
ホープ軒ラーメン / 国立競技場駅千駄ケ谷駅北参道駅
夜総合点★★☆☆☆ 2.9
昼総合点★★☆☆☆ 2.9

2013年12月9日月曜日

Groovy Potential : Prince


Groovy Potential : Prince

今年8月に 3rdEyeGirl からリリースされた新曲。印象的なピアノリフから始まり、新緑が薫るようなキャッチーなメロディ、メロウに吹き鳴らされるホーンセクションによって、殿下の中でも久々に爽やかなソウルチューンに仕上がっています。各パートが徐々にビルドアップされ、終盤に向かってグルーヴ感が増していき、最終局面ではいきなりの転調。なかなかの佳曲でした。

2013年12月7日土曜日

The Breakfast Experience : Prince


The Breakfast Experience : Prince

既にリリースされているシングル「Breakfast Can Wait」のリミックスEPが発売されています。3rd Eye Girl だけでなく、Amazon でもiTunes でも売られているんですが、曲によっていろんな販売チャネルを使う統一感の無さが殿下らしい(発言の一貫性も含めて)。

そもそもジャケットの人って誰?!って感じですが、Chappelle's Show という番組のホストを務める Dave Chappelle というコメディアンで、プリンスの物真似が得意なんだとか。気難しそうな殿下なのに、面白がってジャケットに使っているのが意外です。ちなみに「Breakfast Experience」とはペイズリーパークスタジオで行われたパジャマパーティのこと。正確には「The Breakfast Experience Pajama Dance Party」というライヴだったそうで。

さて、タイトル曲は 3rd Eye Girl が立ち上がったばかりの時にリリースされた楽曲(過去レビュー )。その後サイトがリニューアルされたのに伴い配信停止になっていましたが、夏頃になって何故か復活。ジャケットにも気合が入っていることから(笑)、かなり殿下のお気に入りトラックなんでしょう。

続いて、リミックス曲の中でも「Breakfast Can Wait (Espresso) 」だけはフロア志向のディスコチューンになっていますが、それ以外のリミックス曲はオリジナルと同じ路線。大改修リミックスというよりはマイナーチェンジを施された程度で、かつての「The Beautiful Experience」(過去レビュー )と似た雰囲気を感じます。

2013年12月5日木曜日

Something In The Water : 3rd Eye Girl



Something In The Water : 3rd Eye Girl

プリンスの傀儡バンド 3rd Eye Girl が新曲をリリースしています。ペイズリー・パーク・スタジオで行ったリハーサル音源で、オリジナルは名盤「1999」(過去レビュー)に収められています。82年当時でこのような曲を作ったこと自体、まず驚愕を禁じ得ません。リンドラムで構築されたシンプルなビートの上に、主だったメロディのない呟きのようなボーカルが展開されていく。ベースが排除されて、機械的なシンセ音がわずかながらの装飾になっている。プリンス風ミニマル=マシン=ファンクの極北とも言える作品です。

さて、バンドによるカバーはオリジナル作風とは全く異なり、ブルージーでジャジーでソウルフルな激渋チューンに変貌を遂げています。Sly & The Family Stoneのように途方もないファンキーベース、後半から繰り広げられる殿下のエロティックギターソロ。歌詞こそ同じなれど、メロディや演奏はまるで別の曲。オリジナルが非常に地味な存在ながら、こういった隠れた名曲に再スポットを当て蘇らせる。さすがの手腕としかいいようがありません。

2013年12月3日火曜日

すずき家


「ここ最近、二郎系ばかりではバランスが悪いな」と思い、久々に横浜家系を訪問。今回はわざわざ京急子安まで行ってきました。横浜のラーメンと言えば家系ですが、ここ最近は都内にも勢力を広げつつあり、更には太平洋を越えて米国ベイエリアにも家系の店が出来たようです。さて、家系の中でも人気があるのが上星川の「寿々喜家」(過去の記事)ですが、このお店は関係がないようです。


醤油チャーシュー麺(並)を麺固めで頼みます。炙られたチャーシューが5枚も乗っており、口に入れればほろっと溶ける柔らかさ。家系ラーメンに使われているチャーシューと言えば固めの豚ロースなんですが、ここのは珍しく豚バラロール。香ばしくてジューシーで、数ある家系の中でも突出している出来具合だと思います。また、家系には珍しくウズラの卵が使われています。


マイルドでクリーミーな豚骨醤油スープは非常にまろやか。口当たりが良くてトゲトゲしさや雑味がない。すっきりしていながらコクがあって、丹念に仕込まれているのが良く分かります。モチモチしててコシのある中太短めの縮れ麺は、香ばしくてスープとの相性も良い。接客サービスも非常に良くて、気持ちよくラーメンを楽しむことができる。気が付いたら久々にスープを全部飲み干してしまっていた。全てにおいてバランスが良く、数ある家系の中で人気店なのも頷けるお店でした。

住所:神奈川県横浜市神奈川区子安通1-5-4 
ホームページ:http://www.ramen-suzukiya.com/ 
すずき家ラーメン / 子安駅神奈川新町駅新子安駅) 
夜総合点★★★☆☆ 3.9 
昼総合点★★★☆☆ 3.9

2013年12月1日日曜日

Blue : Moritz Von Oswald Trio


Blue : Moritz Von Oswald Trio

レジェンドの Juan Atkins と共演を果たしただけでなく、Max Loderbauer や Vladislav Delay と共に「Moritz Von Oswald Trio」としても継続的に活動している Moritz Von Oswald。昨年はトリオ名義でアルバム「Fetch」(過去レビュー)をリリースしましたが、今年は新作シングルをリリースしています。2000年前後の寡作っぷりが嘘のようなペースです。

タイトル曲のミックスに Juan Atkins も加わっているようですが、音が極限までそぎ落とされたミニマルな鳴りっぷりは他者の追随を許さないもの。緩く、そして重く刻まれるリズムとベースが一切の感情を排して続いていく。その上を揺蕩うわずかな電子音とシンセリフのみがリスナーを繋ぎとめる。これこそがミニマルダブの極北と言えるものであり、Moritz Von Oswald の真骨頂と言えるものだ。また、タイトル曲のダブバージョンでは、只でさえダブ的な音響を更に深化させている。音の響きはますます重たくなり、煙たいアトモスフィックな質感が感覚を揺さぶり続けます。

2013年11月29日金曜日

豚そば秀吉



とうとう横浜駅の徒歩圏内にも二郎インスパイア系が登場しました。お店の看板だけではインスパイア系かどうか判断に迷うところですが、「ヤサイ」「ニンニク」「カラメ」と書かれたA型看板を出しているあたりは確信犯。かつての東急ハンズを左に曲がった路地にあります。



お店の看板メニュー「豚そば」を注文します。食券を渡す時に「お好みはありますか?」と聞かれたので、「ニンニクヤサイチョイマシ」をお願いしました。「豚そば」には巻豚が3枚入っています。ヤサイは二郎標準よりもやや少ないボリュームで、クタ目のモヤシ中心です。乳白色になった豚骨醤油スープはかなりマイルドで、醤油のキレが控えめなライト味。ただし、たっぷり盛られたニンニクがスープ全体に行き渡ってしまったので、辛みがかなり効いた味になってしまった。


豚ロールは箸でつかめばホロリと崩れてしまうほど柔らかく煮込まれていた。味もよく染み渡っており、看板メニューに相応しい出来具合だと思う。ただし、やや薄目に切られていたので、客をハードにノックアウトするほどのボリュームが欲しかった。極太剛毛の麺はかなり固めに茹でられており、ワシワシというよりもゴワンゴワンというぐらいに固い。顎が痛くなるほどガシガシと噛みしめていくが、その行為が満腹感を満たしていく。かなり食べ応えがあるんだが、固くてスープが染みていない故に若干の違和感を覚えた。そう、麺とスープがハーモニーを奏でていないのだ。麺をもう少しだけ茹でた方がいいだろうし、ニンニクの刻み方も粗かったので辛みがあった。ヤサイもちょいと茹で気味だ。開店したばかりということもあるので、これからの味の発展に期待したいところだ。

住所:神奈川県横浜市西区南幸2-9-1
豚そば秀吉ラーメン / 平沼橋駅横浜駅高島町駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.0 
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2013年11月27日水曜日

Borderland : Juan Atkins and Moritz von Oswald


Borderland : Juan Atkins and Moritz von Oswald

デトロイトテクノのオリジネーターである Juan Atkins、90年代におけるミニマルダブの先駆者である Moritz Von Oswald ……デトロイトとベルリンというテクノの2大聖地を繋ぐ二人が20年ぶりの共演を果たしてます。しかも名門レーベル Tresor からのリリースということもあって、テクノ史上最強タッグに華を添えています。ちなみに 20年前の1993年には Moritz Von Oswald と Thomas Fehlmann(現 The Orb)のユニット 3MB と、Juan Atkins がコラボレーションした「Jazz is the Teacher」がリリースされています。

果たしてその内容はデトロイトとベルリンの融合に他ならなく、この二人だからこそ紡ぎだされる音の粒子と響き、戯れが五感を刺激します。シンプルな四つ打ちのキックと透明感のあるコズミックなシンセ音は紛れもなくデトロイト的であり、地を這うように重く響くベースラインやジャジーな香りが漂うダブ的音響処理は Moritz Von Oswald 配下にあるものです。

ほぼ同じBPMで打ち込まれていくキックがミニマルに続いていき、劇的な変容を感じ取れることは殆どない。だからこそスモーキーな雰囲気が徐々に鼓膜へとまとわりつき、いつしかリスナーは森の奥にある沼に足を取られるように耽溺していく。後半の「Treehouse」以降から二人の個性が際立ち始めるが、だからといって劇的な変化が訪れるわけではない。ディープに、ミニマルに、ジャジーにことは進んでいく。絶対的な快楽がここにあるわけではない。しかしながら、静かに流れる音の清流に身を委ねることで、静謐な快楽を発見することができるだろう。

2013年11月25日月曜日

トントントン



今年の2月、川崎市高津区に新しい二郎インスパイア系がオープンしました。ここの店主は二郎 上野毛店(過去の記事 )で修業を積んだ経歴を持つので、「我こそはジロリアン」と言う方は訪問する価値があるでしょう。場所は東急田園都市線の高津駅から徒歩10分ほどのところにある。R246沿いにあるので、車の方がアクセスしやすい。

注文・調理・会計を店主一人で切り盛りしているとの事前情報を得ていたが、僕が訪問した時は店主の奥さんらしき人も手伝っていた。券売機はなく、コールは注文時に行うシステムだ。650円の並ラーメンにヤサイアブラでお願いした。ニンニクやスープたれは卓上に置いてあるのでコールする必要はない。



入店してボケッと席を待ち、着席したと同時にラーメンも着丼。キャベツ比率高めの山盛りヤサイの上に、デロンデロンになった脂がふりかかっている。取りあえず啜ったスープはバッチリ乳化しており、刺々しさがなくマイルドで甘みあり。カネシ醤油の攻撃性に慣れたジロリアンには物足りなく思えるかも知れないが、僕にはちょうどいいライトな味。


天地返しすればごろっとした豚の塊が複数個登場。チャーシューの原型がないような形だが、いい塩梅に煮込まれて柔らかくジューシーだ。麺は二郎標準よりも太目だが、アルデンテな茹で加減で小麦の香りもバッチリだ。麺とスープのマリアージュを楽しんだ後で、メインディッシュ後のチーズのように野菜を頬張る。スープに浸かっていたので味が染み渡り、クタ具合も丁度良くなっていた。それぞれの素材がお互いを引き立てあい、どれをとっても文句ないバランスが取れている逸品だと思う。

住所:神奈川県川崎市高津区溝口5-16-18
トントントンラーメン / 高津駅二子新地駅溝の口駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.6 
昼総合点★★★☆☆ 3.6

2013年11月23日土曜日

Peel Session : Boards Of Canada


Peel Session : Boards Of Canada

Boards Of Canadaが98年に「Music Has the Right to Children」(過去レビュー)をリリースした後、英国BBCの名物ラジオ番組「John Peel session」で披露したライヴ音源。今回のリイシュー対象にはなってないようですが、iTunes Storeでも入手可能です。ちなみに番組ホストだったDJのJohn Peelは2004年に他界しています。

リリース当初は4曲収録されていたようですが、最終曲「XYZ」はサンプリング権利関係でリリース後に削除されたとのこと。現在収録されているトラックのオリジナルは、全て「Music Has the Right to Children」に収められています。勿論ライヴなので、アルバム収録バージョンとは異なっており、かすかな緊張感が伝わってくるのが興味深い。ヒップホップマナーに根差したエレクトロニカで、ピュアネスな音像がやたらと心地良い。アブストラクトヒップホップとエレクトロニカの垣根を行ったり来たり。特に2トラック目の「Happy Cycling」が素晴らしく、幾つものレイヤーが折り重なっていく様子が恍惚感を覚えさせてくれます。

2013年11月21日木曜日

ラーメン二郎 目黒店



全ての直系店を制覇しようと、もはや意地になっている二郎巡礼の旅。今回は都内屈指の人気を誇る老舗、目黒店を訪問しました。高い人気を誇っているにも関わらず、ここを訪問するのは初めて。最寄駅の目黒から結構歩くので(徒歩12分)二の足を踏んでいたのです。しかしながら勤務先からバスで行けばアクセスしやすいことが判明、今回の訪問に至りました。それにもしても何故こんなに人気があるのか?味だけでなく、小ラーメン500円という価格設定も理由の一つでしょう。



小ラーメンを注文。事前調査によると、目黒店は野菜が少ないと聞いていた。しかも味や量にかなりブレがあるらしい。無料トッピングを「ヤサイマシ」か「ヤサイマシマシ」のどちらにするか逡巡した結果、ヤサイマシをコール。ちょうどいい量のヤサイが盛られてきました。天地返しをするにはやや難があるので、取りあえずもやし中心のクタ気味なヤサイをやっつけます。やはりマシの割には量が少なく、マシマシにしても問題のないボリューム。スープは乳化しておらず、豚骨ダシのパンチが少ない。その代わり、カネシ醤油の甘辛いキレがあり、二郎王道の味を楽しめる。



適度に減ったところで天地返し。ブタの出来にもブレがあると聞いていたが、僕が食べたものは味も量も申し分なし。バターにナイフを入れるが如く、ブタを噛みしめると繊維質がすんなりと解けていく。味も十分に染みわたり、標準以上の仕上がりと感じた。麺は二郎標準よりやや細い中太で、表面がつるっとしておりヤワ目に茹でられているのが特徴だ。香ばしい味を堪能しながら、溢れ出てくる食欲を徐々に満たしていく。全体的にコンパクトにまとまっており、ライトスープの切れの良さから危なく飲み干しそうになってしまった。これでまた一片のピースが埋まった。

住所:東京都目黒区目黒3-7-2
ラーメン二郎 目黒店ラーメン / 目黒駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.7 
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2013年11月18日月曜日

In a Beautiful Place Out In the Country : Boards of Canada


In a Beautiful Place Out In the Country : Boards of Canada

Tomorrow's Harvest」リリースに伴い、彼らの過去作品がリイシューされてます(と言っても半年も前のこと)。この作品は2000年にリリースされたEPで、98年リリースの「Music Has The Right To Children」、2002年リリースの「Geogaddi」のどちらにも収録されていない、いわゆるアルバム未収録曲。とは言ってもアルバムクオリティに劣るどころか、アルバムをも凌駕する内容の傑作です。

音像のぼやけたサイケデリックな世界に広がる、幻想的で牧歌的なメロディ。生暖かい乳白色のような電子の煙が、リスナーの心の深部に眠っているノスタルジアを喚起する。精神安定効果や催眠効果も抜群。この作品を聴いて、優しくも残酷な過去へのインナートリップに飛び立とう。

2013年11月15日金曜日

らぁめん 葉月 不動前店



勤務先から徒歩圏内にある五反田~大崎~品川エリアのラーメン屋はほぼ食べ尽くしてしまった。昼休みに電車で行ける範囲の大井町もまた然り。行動範囲がどんどん広がりつつある中で、今回は不動前まで足を運びました(片道徒歩20分 !!!)。



このお店の特徴は濃厚な魚介・動物系Wスープらしい。せっかく長い道のりを歩いてきたんだから、贅沢なフラッグシップメニューである「特らぁめん」を注文する。ラーメンに大枚1,000円をはたく豪気な自分を褒めてあげたい。



見た目にもごついラーメンが登場した。まず目が行くのが、たっぷりと乗せられた豚ばら肉チャーシューのボリュームだ。箸でつまむことも難しいほど、ほろほろと崩れていくさまで期待値は最大だ。お口に運べば、じっくりと煮込まれて旨味が染みわたったお肉がトロトロと蕩けていく。これは素晴らしい。味玉も味が染みわたっており、黄身の甘みも上等だ。他の具材であるメンマ、水菜、海苔の品質も高い。刻みタマネギは食べ進むにつれてラーメン全体をきりっとさせるアクセントになっている。



スープは煮干しが効いている魚介動物系だけど、豚骨にある獰猛さはそれほど感じなかった。どちらかと言えば鶏白湯寄りといったところだろう。濃厚とはいってもドロリッチな感じではなく、口当たりが良くてまろ味のあるところに好感が持てる。そして麺は300gという大ボリュームの極太ゆるウェーブ麺だ。ちょうどいい硬さの茹で具合で、弾力性・コシ・喉越し・食べ応えとも申し分なし。スープと麺の相性は絶妙であり、お店の丁寧な仕事っぷりが全体的に行き渡っているのが分かる。かくも芳醇なラーメンは人生に潤いを与えてくれるというものだ。

住所:東京都品川区小山台1-33-11
らぁめん 葉月 不動前店ラーメン / 不動前駅武蔵小山駅戸越銀座駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.3 
昼総合点★★★☆☆ 3.3

2013年11月12日火曜日

Kveikur : Sigur Ros


Kveikur : Sigur Ros

前作「Valtari」(過去レビュー)から僅か1年という短いインターバルでリリースされた新作。とは言ってもやっつけ仕事ではなく、彼らにとって非常に重要な意味を持つ作品になっている。キーボード担当のキャータン・スヴェインソン脱退後の、3人体制となった新しいスタート後の作品なのだ。

また、リリースの2年前から制作していたというから「Valtari」と双生児的な作品かと思いきや作風が全く違う。前作が賛美歌のように厳かで美しく繊細であったのに対して、今回はインダストリアルの要素やマシンビートが取り込まれている。スピーカーの音を大きくしてたこともあって、一番最初に聴こえた音がノイズのような荒々しい重低音で本当に驚いた。

全編通してヘヴィな作りになっており、これまでにないほど攻撃力がある。アンビエント感覚が控えめになっていることもあり、ポストロック的な浮遊感がやや減退。その代わりに音の輪郭がクリアになっており、音圧も強くなっている。

メンバー脱退後のヘヴィな作品、と言っても悲壮感が漂っている訳じゃない。ヨンシーの神々しい歌声、彼らが元々持ち合わせている美しいメロディも健在だ。それどころか新たなる決意を表明しているようにも、希望を携えて前を向いているようにも、新しいスタートに興奮しているようにも思える。まさしく新章の幕開けを感じさせる、彼らがロックバンドであることを再認識させてくれる傑作だ。

2013年11月9日土曜日

ラーメン二郎 仙川店


月~土の夜のみ営業している二郎。場所的にいっても、営業時間的にいっても僕にはハードルの高い二郎ですが、平日休暇を取得した時に訪問してきました。開店直後に到着したこともあって、並ぶこともなく難なく入店。券売機の横に「鍋二郎できます」なんて書いてある。地元民にしてみれば嬉しいメニューだろう。しかもお持ち帰り用の麺が1玉100円で売られている。焼きそばにするとおいしいなんて書かれているので、こちらも気になる存在だ。


ラーメン小にヤサイアブラのトッピングをお願いします。ここはデフォルトの野菜が少なめ、スープの脂も少ないと聞いていたからだ。それにしても通常の背脂ではなく、怪しい固形物のような脂がまぶされているのには驚いた。見た目があまりよろしくないので、即座に天地返しをした。


標準的な二郎スープに比べて乳化度合が低く、黒い醤油スープの様相を呈している。その色の通り、通常の醤油スープといっていいクリアな味。とんこつの味があまりせず、カネシ醤油の打撃力も低い。表面に油膜があるので、スープの温度もそれなりに高めだ。

適度にスープが染みた麺を食すと、実にハイクオリティな味がする。適度に太目で適度に固め。ワシャワシャと噛む度に、お口の中に小麦の香りが広がる。お持ち帰り麺もあるだけあって、二郎直営の中でもトップクラスの味と言える麺の出来だ。焼きそばにしたらさぞかし旨いことだろう。モヤシ中心の野菜はやはり少なめで、しかもシャッキリ感が少なくてクタクタしていた。これは少し残念なところだ。次に隠れていたブタを引きずり出すと、巨大な塊が2つも「こんにちは」と顔を出す。パサつき感があって、咀嚼するのに一苦労なブタ野郎だった。

全体的に言ってヤサイは「少なめクタクタ」、スープは「非乳化でカネシ低い醤油味」、ブタは「でかいがパサついて噛みごたえあり」、麺は「非常にハイクオリティでボリュームあり」という、良いのか悪いのか分からない評価を下さざるをえない。しかしボリューム的にはやはり二郎、他者の追随を許さない破壊的なものであるのは言うまでもない。

住所:東京都調布市仙川町1-10-17 
ラーメン二郎 仙川店ラーメン / 仙川駅つつじケ丘駅) 
夜総合点★★★☆☆ 3.3

2013年11月6日水曜日

Outsides : John Frusciante


Outsides : John Frusciante

John Fruscianteが去年の「PBX Funicular Intaglio Zone」(過去レビュー)以来、相変わらずのハイピッチリリースをしています。今回の新作EP日本盤にはボーナストラック含めて4曲収録されているんですが、その内の1曲「Same」が10分にも渡る長尺曲。憂いを帯びたシンセを支えるブレイクビーツ、やがてJohnが様々な奏法を駆使しながら哀愁のあるギターを延々と弾き続けるトラックです。ギターがひたすら唸り続けている点では、前作で初披露されたプログレッシヴ・シンセポップとは趣を異にしている。更に言えば今年4月にホームページ上で公開された「Wayne」の延長線上にあると言っていい。

他に収録されている曲は相変わらずクレイジーなものばかりだ。フリージャズをエレクトロニカで表現したような、極めてアヴァンギャルドな曲で商業性が極めて低い。前衛的というか、狂人寸前の天才が内面性をさらけ出したようなトラックだ。Aphex TwinやSquarepusherが本当にイカれたらこんな曲を作るに違いない、というようなカオスな仕上がりになっている。

1日の大半を曲作りに費やすだけあって、内面と向き合いながら音楽制作をする事こそ冒険、と言い切るJohn。つまり内的旅行こそが外に向き合うことだそうで、その世界がジャケットに表現されているらしい。この先Johnがどのようになっていくのか心配になってきた。

2013年11月3日日曜日

ハングリーピッグ



横浜の関内~伊勢佐木町といえば、ハマのジロリアン達が色めき立つ「ラーメン二郎 横浜関内店 」があるところ。伊勢佐木長者町の駅から関内二郎の行列を横目で見つつ、歩いて5分ほど行ったところに二郎インスパイア系である「ハングリーピッグ」がある。しかもサブタイトルよろしく「~ニンニク入れましょう!~」と看板に書いてあるのが挑戦的、いや本家へのリスペクト精神が溢れているのが分かる。1年ほど前にオープンしたニューカマーとのことだが、何はともあれ試さずにはいられないじゃないか。



ラーメン並(200g)にトッピングでヤサイアブラマシ、ニンニク少な目でお願いした。ニンニクはデフォルトで入っているとのこと。この他にラーメン中(300g)が同額の650円でも提供されていたらしいんだが、気付いたときは後の祭り。ちなみにカラメのトッピングはないようで、食卓にあるスープたれで味を調節するシステムになっている。程良い按配に乳化したスープを啜ってみると、カネシ醤油系の破壊力が極めて希薄な、背脂の甘味がするライトな味がした。豚骨醤油寄りのインスパイア系と言ったところだろう。



天地返しを行う。現れたのは通常の二郎系よりも細めの平打ち麺。適度な硬さに茹でられており、ゴワゴワな食感で中々食べ応えがあるではないか。ヤサイはモヤシ中心だが、新鮮さを感じさせるしゃっきり茹で加減がいい感じ。麺と野菜を一緒くたにして喰らい続けるが、スープがライトボディな故に卓上スープだれをふりかけた。ブタはロールされたヤワヤワホロホロなのが一塊。汁が十分に沁み渡っており旨いんだが、一塊ではさすがに物足りなさを感じた。麺もさすがに200gではやや少なかったようで、食べ終わってからも胃袋が破けそうな充足感が得られなかった。自己破壊衝動のある真性ジロリアンにとっては物足りなく感じられるだろう。ただし全体的にいってコンパクトにまとめられており、しかもライト感覚で味わえる点では二郎初心者向けの存在といえる。

住所:神奈川県横浜市中区若葉町2-15
ハングリーピッグラーメン / 日ノ出町駅伊勢佐木長者町駅黄金町駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.0 
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2013年10月31日木曜日

Tomorrow's Harvest : Boards Of Canada


Tomorrow's Harvest : Boards Of Canada

Boards Of Canadaが実に8年ぶりの新作をリリースした。その長い歳月はリスナーの期待値を高めるのに充分な時間だったはずだ。にも関わらず、彼らは謎に満ちたプロモーション戦略を次々に打ち出し、リスナーの飢餓感を更に煽り続けた。

まず今年4/20に行われた世界的イベントRecord Store Dayで、BOCの新作12インチシングルが世界各地のレコード店でひっそりと売られた。ロンドン、ニューヨーク、東京のレコード棚に陳列されたそれらには「------/------/------/XXXXXX/------/------」といった形で、XXXXXXのところに6ケタの数字が記載されていた。更にはYouTube、ラジオ、ファンサイト、ケーブルテレビといった各メディアでも、ランダムな6ケタ数字が次々と発見された(XXXXXXの場所は全て異なっている)。全部で36ケタの数字を或るサイトにパスワードとして入力すると、新作の発売日とタイトルが現われる仕掛けだ。

更には彼らのtwitterアカウントから「May 22nd 24:00 @ 1-23-10 JinnanShibuya-ku Tokyo」という情報がアナウンスされ、渋谷のスクランブル交差点で何がしかの手がかりを見つけようと、多くの人が深夜にもかかわらず集まった(僕は行かなかったけど)。そこで披露されたのが新作のPVだったというわけだ。かくも手の込んだバイラルマーケティングを通じて、僕を含めたリスナー達は晴れて新作を手にし、長いこと抱いていた期待を裏切られることなく陶酔し堕ちていく。

この作品は彼らが築き上げたフォーマットを逸脱することなく、しかも更に深遠なところまで到達しているようだ。前作「The Campfire Headphase」(過去レビュー)のような湖に漂う霧のような浮遊感、前々作「Geogaddi」(過去レビュー)にみられた目くるめく万華鏡の如きサイケデリック感は控えめだ。それと引き換えに提示されているのは「陰鬱になりきれない不安感」であり、「光に満ちていない煙った希望」だ。非常に奇妙なことなんだけど、不安を感じながら快楽性に満ちている、仄暗いのに仄明るい、という心象風景が浮かんでは消えていく。彼らの新作はリスナーの想像力を激しく喚起する、映像的な野心作といえるものだった。ただし喚起された映像は決して共時性を持たないだろう。この作品の謎解きはリスナーの中で延々と繰り返されるだろうけど、正しい解が得られることはないだろう。

2013年10月28日月曜日

ラーメン二郎 八王子野猿街道店 2

二郎というのは本当に不思議な食べ物だ。インスパイア系と呼ばれる数多の亜流を産み出しているだけでなく、ユーザ間でも大いなるインスピレーションを与え合う存在だからだ。つまり二郎系の記事を読んだだけで、遠くまで足を運んでみたい気持ちになってしまうのだ。ここしばらくは本家二郎から遠のいていたが、化調に脳を侵された哀れなジロリアンによるブログ を読んで、眠っていた化調・大盛りへの欲求を抑えることができなくなってしまった。



そんな訳で今回は京王堀之内にある八王子野猿街道店 2を訪問。「2」とナンバリングされているのは移転したかららしい。ここは自宅から車で1時間もかかる遠隔地。文字通り、山を越えて谷を越えて辿り着く。周囲は大学が多いことから、他店と比べて客層が若いのが特徴的。更には最大級の黄色い看板が立てられているので、遠目からでも一発で在処が分かる。12台分もの駐車場がお店裏手にあるのも好印象だ。



ここは二郎の中でも最大級のボリュームを誇ると聞いていたが、それを裏付ける注意書きがあった。通常メニューと言える「小ラーメン」の下に「プチ二郎」というメニューがあるのだ。しかも「プチ」は一般的なラーメン量である150gを凌駕する180gだ。これにブタやヤサイを加えたら、他店の「小ラーメン」と同程度ではないか。タダだから無謀なトッピングをする輩が多いのだろう、身の丈に合った注文をするように促している点に目がいく。だがしかし、ここで怯んではいけない。一度目覚めた大盛りへの欲求は「小ラーメン」でしか抑えることはできないのだから。



だが流石に今回は腰が引けてしまい、「小ラーメン」をトッピング無しにした。それが正解だったのだろう、マシにしたら丼から崩れ落ちてしまうようなヤサイが搭載されてきた。ここで天地返しをしてしまうと、全てが崩落してしまう恐れがある。止むを得ず食卓にあったスープたれをヤサイにふりかけ、顔を丼にうずめながらモシャモシャと驢馬のように食い進む。キャベツ比率が平均点以上で、シャキシャキしているもやしも新鮮だ。



ヤサイがやや減ったところで、天地返しをすれば地鳴りのような音とともに(というのは嘘で)麺を引きずり出す。二郎アベレージな太さ(それでも一般的に極太)の平打ち縮れ麺がスープ色に染まって登場だ。十分に乳化されているスープにはカネシ醤油のジャンクな味わいがじんわりと行き渡っている。そのカネシ醤油の甘みと塩分、小麦の香ばしさが我が脳内の欲求を満たしていくのが分かる。この時の脳内を色に例えば小麦色。ただし、やや塩分濃度が高めかな。興奮で高まった血圧が更に上昇していく。



脇に添えられていたブタを引きずり出すと、まさしく肉塊といえるものが2枚も登場した。いや2枚というのは適切ではない、2塊だ。デロデロに溶ける寸前の脂身にじんわりとスープの味が染みている。繊維部分はホロホロになっており、神豚と呼ばれる所以も分かるというものだ。「うまいうまい」と脳内の満腹中枢が悲鳴を上げているのが分かる。全ての領域において王道に忠実、しかもボリューム的に最高レベルの八王子野猿街道店 2。次に二郎を訪問するのはだいぶ先になるだろう。

住所:東京都八王子市堀之内2-13-16
ラーメン二郎 八王子野猿街道店 2ラーメン / 京王堀之内駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.6 
昼総合点★★★☆☆ 3.6