2013年1月31日木曜日

ダッパーダンヌードル(Dapper Dan Noodle)

東急池上線 五反田駅直下にアーケード飲食街があります。その中に「満洲屋が一番」(過去の記事 )という久留米ラーメン店があったのですが、あっというまに閉店してしまいました。なんとなく納得していましたが、驚いたことに大崎の二郎インスパイア系として有名な「The Outsiders」(過去の記事 )も去年の暮れに閉店してしまったと言うじゃないですか。飲食業界の厳しさと栄枯盛衰を物語っていますが、「満洲屋が一番」の跡地に「The Outsiders」の姉妹店ができたというので行ってきました。


前もラーメン屋だったので、エクステリアや厨房機器に金を掛ける必要はそれほどないのでしょう。それにしても実にシンプルな店構えです。



一見さんには非常に分かりづらい奥まったところにあります。このチラシが貼られている店が目印になります。そもそもダッパーダンってどういう意味だよ?と調べたところ「伊達男」という意味らしい。実に男気を感じさせる店名じゃありませんか。この時点で不吉な前兆を感じ取らずにはいられませんが。



普通のラーメンだけでなく、カレー味だとかトマト味だとかを取り揃えているのは「The Outsiders」と同じところ。店の中に流れているインディーズ系ロックも同じ感じ。お店の人がバンドでもやっているのでしょう。系統で言えばSonic Youth的なロックが流れています。



醤油(M)を注文します。枕詞のごとく「ニンニク入れますか?」と聞かれるので、勤務中につき丁重にお断り。キャベツ比率高めのてんこ盛り野菜と極太でゴワゴワした麺を天地返しでスープをまぶします。それにしてもやたらとストレートでゴワゴワした麺だよな…と頬張ってみたところ、オーション率が非常に高くて剛毛なワシワシ麺になっていました。何だよこれ!二郎インスパイア系で最恐ともいえる麺の硬度じゃないか?ブタを口にしてみたところ、ホロホロ崩れていく柔らかさにもかかわらず塩味がきつい。これだけヤサイと麺を天地返しにしても全体的に塩味が強烈!スープはカネシ醤油の味が控えめになっており、脂控えめで乳化していない。涙目になりつつヤサイと麺を平らげたが、スープを啜ってみたところ「マジしょっぺー!」と飲む気にならなかった。量といい、塩味が持つ攻撃性といい、二郎インスパイア系の中で破壊力抜群なお店でした。

住所:東京都品川区西五反田1-12-1 五反田桜小路
ダッパーダンヌードルラーメン / 五反田駅大崎広小路駅大崎駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.0 
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2013年1月29日火曜日

Paradise : Inner City

前の記事にひき続いてKevin Saundersonについて書いてみましょう。


Paradise : Inner City

Kevin Saundersonは88年にシカゴでParis Greyという女性ボーカリストと出会うことになる。かくて二人からなるユニットInner Cityが結成され、「Big Fun」や「Good Life」といったシングルがUKチャート上位に食い込むという快挙を成し遂げる。Derrick MayやJuan Atkinsが黒いエレクトリックミュージック志向だったのに対して、Kevin Saundersonは宇宙志向を控えめにして全曲にわたって女性ボーカルをフィーチャーさせることにより、自分の音楽を当時のシーンへ呼応させることに見事成功した。

このアルバムが89年にリリースされた当時、UKシーンはセカンド・サマー・オブ・ラブ真っ只中であり、日本はバブル経済の狂騒に酔いしれていた。六本木のディスコで流れていたクラブミュージックはユーロビートであり、89年頃からBobby BrownやMC Hammer、Jody WatleyやJanet JacksonといったR&B~ヒップホップ系ミュージシャンがスーパースターとなっていった。横浜の老舗R&Bディスコ「サーカス」が六本木に進出したことにより、R&Bブームは頂点を極めた。そのムーブメントと並行してシカゴハウスやイタロハウスが徐々に流入するようになった。そして90年にはマドンナの「Vogue」による成功により、ハウスがクラブミュージックの中心を占めるに至ったのだ。

UKではSoul II SoulやWild bunch(Massive Attackの前身にあたる)といったユニットやサウンドシステムが人気を博しており、その中でInner Cityが受け入れられたのも当然の結果だろう。このアルバムから聴こえてくるのはディスコミュージックを基本としながらブラックミュージックの要素を注入し、更には当時最先端だったアシッドハウスの要素をも取り込んでいる、非常に解釈しやすい音楽だったのだ。前述のマドンナが「Vogue」で、このアルバムに収録されている「Ain't Nobody Better」を思いっ切りパクっていることから、彼らが時代の先端を走っていたことがわかるだろう。

2013年1月27日日曜日

中華そば 高はし



飯田橋駅前に古臭い雑居ビルがあり、その中に行列を作っている店がある。名店「中華そば 高はし」だ。ここの主人はかつて四ツ谷にある「支那そば屋 こうや」で修行をしていたそうで、味的にはその流れを汲むのだそう。つまりオススメは雲呑麺。



客の回転が非常にいいので、着席して間もなく雲呑麺が出てきた。油膜に覆われているらしく、あっつあつに熱が封じ込められている。注意しながら独特のワンタンを口にはふはふ運ぶ…お肉がぎっちり詰まっており相当食べ応え有り。しかもこれが5個も入っている。大きめの豚バラロールチャーシューもとても柔らかい。中細縮れ麺はやや柔らか目だったのが残念だったが、スープとの相性・絡みともに申し分なし。

そもそもこのスープは何なんだ…醤油のようでもあり塩のようでもある、その中間点に位置するような味。ダシは野菜やとんこつを使っているらしいんだけど、豚骨臭は感じさせずスッキリとした味わい、ただしアブラは多い、という実に不思議なお味。結論をいうと間違いなく美味しい。でもこれまでに食べたことのない不思議な複雑さを持っている味だ。

住所:東京都千代田区飯田橋3-11-30
中華そば 高はしラーメン / 飯田橋駅後楽園駅水道橋駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.0 
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2013年1月25日金曜日

Kevin Saunderson In the House


Kevin Saunderson In the House

デトロイト近郊にある街ベルヴィル(Belleville )。その小さな街のベルヴィル高校にいたKevin Saundersonはアメフト部でDerrick Mayと出会う。高校の先輩にはJuan Atkinsがいた。高校を卒業してから彼らはチープな機材を駆使してエレクトリックミュージックを作るのに夢中になった。当時のデトロイトでは自動車産業が衰退し、若者たちは新たな将来を模索するのに懸命だったのだ。のちにBelleville Threeと呼ばれることになる若者たちは機械(マシン)に魂(ソウル)を注入することに成功し、同時期に海の向こうで狂宴を繰り広げていたセカンド・サマー・オブ・ラブというムーヴメントに呼応することになった。かくしてアフロフューチャリズムをDNAに持つ若者たちはデトロイト・テクノと呼ばれるクラブミュージックの始祖となったのだ。

その中でもKevin Saundersonはハウスの分野で一躍有名となり、デトロイト・テクノ勢の中では商業的に一番成功することになる。今でこそハウスとテクノと境界線はほぼ無くなっているが、90年前後は明確な境界線があった(というよりテクノというタームがほとんど使われていなかった)。

そんなKevin Saundersonの持つフューチャリズムやブラックマシーンミュージックを理解するのにこのミックスはうってつけの教本だ。Disc-1の前半ではトライバル・ハウスが繰り広げられ、Inner Cityの代表曲である「Good Life」をサンプリングしているHeartik の「Meltdown」あたりから空気が一変する。Inner Cityの「Future」をKenny Larkinがリミックスしたトラックへと雪崩れ込み、遂には「Good Life 2011」へと繋がっていく流れが非常にドラマチック。

更にはDisc-2後半ではディープハウスをハードに焼き直したトラックの連打により、漆黒のグルーヴを堪能することができる。攻撃的すぎず、叙情的にも偏らず、適度なグルーヴを保ちつつ進んでいくこのミックスこそ魂を震わせるソウル・ミュージックなのだ。

Tracklist

1-01 The Soulshapes – Comin'
1-02 Jay Haze Feat. Laila Tov – I Wait For You (King Britt Remix)
1-03 Reese & Santonio – The Sound (2011 Remix)
1-04 Brick City – Rumba Magic (DJ Chus & David Herrero Mix)
1-05 Osunlade – Envision (Yoruba Soul Mix)
1-06 Josh Wink – Jus Right (Jimpster Remix)
1-07 Michel Cleis – Litoral (Original Mix)
1-08 Peter Horrevorts – Crackhouse (Original Mix)
1-09 Lauhaus – Moonshine
1-10 Alex Kenji – Those Good Vibes
1-11 Adam Port – The American Dream
1-12 Heartik – Meltdown (Original)
1-13 Kevin Saunderson & Inner City – Future (Kenny Larkin Tension Mix)
1-14 Inner City – Good Life 2011 (Instrumental)
1-15 Shlomi Aber – Groove Mechanism (Chris Liebing Remix)
1-16 Gavin Herlihy – Watch Ya Feet (Berlin Mix)
1-17 Manjane – Do The Dishes (Original Mix)

2-01a Kevin Master Reese* – Intro
2-01b Alex Picone* – En Pensant (Phil Weeks Remix)
2-02 Phil Agosta – Tribute To Detroit (Agent X Motor City Mix)
2-03 Internullo* – Taifas (Alex Celler Dub)
2-04 Pablo Fierro – Check The Boogie (Soul Minority Remix)
2-05 Humano – Life
2-06 Kevin Saunderson – Pump The Move (Samuel L Session Remix)
2-07 Gabriel Rocha – Ride On Time (Original Club Mix)
2-08 Kweku Saunderson – Innuendo
2-09 Brandon Decarlo – Forever & A Day
2-10 Kevin Saunderson – Rock To The Beat (Ben Sims Remix)
2-11 Tommy FourSeven* – Track 5 (Robert Hood Mix)
2-12 Carl Craig – At Les (Christian Smith Hypnotica Remix)
2-13 Inner City – Till We Meet Again (Carl Craig Remix)
2-14 Kevin Saunderson – Bassline (Joris Voorn Remix)

2013年1月23日水曜日

赤坂麺処 友



仕事で赤坂にいった際、どのラーメン屋に行こうか逡巡する。正直言って赤坂はラーメン不毛の地、敢えて足を運ぶほどのお店が少ない。その中でも群を抜いて評価が高かったこのお店にやってきた。じゃんがら(過去の記事 )の向かい側にあります。



メニューには「芳醇あごだし醤油」、「濃厚鶏塩らーめん」、「つけ麺」とあります。あごだし、つまりトビウオをメインにした煮干しや昆布といった魚介系、さらに豚骨を加えたダブルスープらしいので、取りあえず特製芳醇あごだし醤油を頼みます。



…見た目だけで、どストライクな風情が食欲をそそります。この見た目は確実に動物・魚介のWスープ!早速啜ってみると、ラード(それとも鶏油?)がうっすらとかかっているので熱い熱い。濃厚かつキリッとした味わいが実に芳醇そのものだ。化学調味料無使用を謳っているので、飲んだ後もすっきりしている。具材には柔らかい豚バラチャーシュー、しこしこした太めのメンマ、甘みのある味付け玉子が使われているんだけど、そのどれもが実にクオリティ高い!ここの味付け玉子なんて、最近食べた中でも一番の出来具合じゃないかな?黄色い中太縮れ麺はあまくてスープとの相性も絶妙だ。あまりにも美味しくて、スープを全部飲み干してしまった。不毛の地である赤坂のレベルを一気に押し上げるこのお店、また是非行きたい!

facebook : https://www.facebook.com/akasakamendokoro
住所:東京都港区赤坂2-13-13
ラーメン / 赤坂駅溜池山王駅国会議事堂前駅 ) 
夜総合点★★★★ 4.0 
昼総合点★★★★ 4.0

2013年1月21日月曜日

Missing Beatz : 電気グルーヴ


Missing Beatz : 電気グルーヴ

電気グルーヴが3年半ぶりにアルバム「人間と動物」をリリースするそうで、「20」からそんなに経ったのか!と驚いているところ。で、アルバムにはこれまでリリースされた「Upside Down」や「SHAMEFUL」が収録されるようです。で、今日書くのはこの間リリースされた先行シングル。

アラフォー世代に馴染みあるような、ニューウェーヴ感丸出しジャケットで既に盛り上がる。予想通り、耳に慣れ親しんだチープな電子音を多用しながら、現代へとアップデートさせたエレクトロを披露しています。とは言えシングルにするにはやや地味な印象がある。ただし個人的にはカップリングされている「富士山 (MAJIでFUNKAの5秒前Mix)」と「KNGN」に大満足。

「富士山 (MAJIでFUNKAの5秒前Mix)」はタイトルからしてツボなリミックスですが、ガバ的要素のあるキラートラックを更にハードコア/レイヴに仕上げたもの。大震災以降、富士山が噴火するんじゃないかとまことしやかに言われていますが、本当に噴火したらこの曲は放送禁止になるんだろうな、等と考えた。

「KNGN」はまさかのアンビエントなダブで、「N.O. (KEN ISHII REPRODUCTION) 」を思い出してしまったほど美しい。前情報なしにこのトラックを聴いたら、彼らの楽曲だって分からないんじゃないか?

それにしてもこのシングルや「Upside Down」、「SHAMEFUL」が同居するアルバムって統一感あるのかな…。

2013年1月19日土曜日

かもめ食堂



かもめ食堂といっても、小林聡美が出演する映画「かもめ食堂 」ではない。ラー博にあるラーメン店だ。気仙沼には古くから愛されていたかもめ食堂があり、その中でもラーメンは人気メニューであったという。しかし閉店してほどなく、東日本大震災の津波により店舗が流されてしまったという。それを葛西の「ちばき屋」店主でもあり、日本ラーメン協会理事長であり、気仙沼出身でもある千葉憲二氏がラー博にて復活させることとなった。熱いじゃないか!



気仙沼ラーメン潮味(塩)を頼みます。実にオーソドックスなナルト、メンマ、チャーシュー、ネギ、海苔が載っているのを見るだけで何故か心がほっこりしてくる。味付け玉子は実に甘くて美味しい。スープには気仙沼特産の秋刀魚の香油、鶏がらや鯛干し、昆布などを使っていることからいわゆるWスープなんだけど、動物系の主張が弱くて、すごくさっぱりした塩スープになっていた。塩だれには丸2日感塩漬けした魚介類を使用しているということだが、全体的にまろみがあって奥深い味付け。麺は細め縮れ麺で、いわゆる昔ながらの麺なのも嬉しい。奇をてらうわけでもなく、王道で勝負する優しく淡麗な味。ここで成功して、将来的には気仙沼で人々の心を温めてほしい。

住所:神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21 新横浜ラーメン博物館 B1F
かもめ食堂ラーメン / 新横浜駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.5 
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2013年1月17日木曜日

Lux : Brian Eno


Lux : Brian Eno

現代音楽の巨匠 Brian Eno がWarpから新作リリースするようになって2年が経っています。そのWarpから初のアンビエント作品であり、21世紀初のアンビエント作品でもあるアルバム、と商業的に宣伝されていますが、このアルバムを聴くには全ての雑念を排除して、そこにある音に耳を澄ませば良い。

そもそもはトリノで開催されたサウンド・インスタレーション展「The Great Gallery of the Palace of Venaria」向けに制作された音源であり、その後ロンドン、シドニー、ニューヨーク、そして羽田空港でプロモーションを行なってきたというから、Enoのこの作品に対する意欲が伝わってくる。

元々は「play of light(光の戯れ)」というタイトルであり、作品の主題にも据えられているが、最終的には光の単位でもありラテン語で光を意味する「Lux」というタイトルが冠されている。兎にも角にも、この作品から響いてくる音の群れは場所や時間を選ばず、聴き方も一切提示されていない。逆に言えば、場所や時間、聴き方によっていかようにも変わっていく光の群れのような作品だ。

一日中、部屋の中にいれば、窓から差し込む光の移ろいや温もりの変化に気がつく。そこにいる人は、自分の気分によって光の捉え方も変わってくる。光と時間の関係性に思いを馳せながら聴くのもいい。この作品から感じ取れる抽象的概念に思考を巡らせるのもいい。ただひとつだけ言えるのは、この作品からは淡々とした愛情が感じられるということだ。

2013年1月15日火曜日

ガハハ食堂



渋谷円山町の一角に「ゴールデンバーニング」というタイ・ベトナム料理を中心としたエスニックレストランがあります。雰囲気が良くて料理もなかなか美味しいお店なんですが、昼になるとラーメン屋として営業をし始めています。名前は「ガハハ食堂」。



お店は奥まった路地にあるので見つけにくいかも知れませんが、外観はこんな感じです。



ご覧の通り、様々なメニューが用意されていますが、どれがオススメなのか聞いてみたところ「海老出汁醤油つけめん」だとのこと。小・並・大はどれも同じ値段だというので、迷わず大を注文する。



柔らかい陽光が差し込む店内では、つけめんもイタリア料理のように見えてくる。麺はパスタのようにウェーブが掛かっており、もっちりとした平打ち麺となっている。スープには甘エビと伊勢海老が使われているらしく、芳ばしい香りが鼻孔をつく。メンマ、チャーシューが具材に使われているスープへ早速投入ずるずるずる。スープが味わい深いんだけど、さらっとしているせいで麺への絡みがおとなしい。それでも無我夢中でたべさせてしまう美味しさがここにはある。あっという間にコシのある麺を平らげ、スープを割って飲もうとするがその必要がないことに気付いた。割らなくてもそのまま飲めるのだ。つまり粘度が低くてさっぱり味なので、スープとの絡みが足りないのだ。ラーメンとしては美味しいんだろうけど、つけ麺にするにはやはりスープをドロドロ濃厚にしてほしかったな。

ホームページ:http://www.golden-dining.com/gahaha.html
住所:東京都渋谷区道玄坂2-26-16
ガハハ食堂つけ麺 / 神泉駅渋谷駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.0 
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2013年1月13日日曜日

ブルーベルベット

僕がデヴィッド・リンチ監督の映画と出会ったのは小学生の時。「エレファント・マン」がヒットしており、友だちと物見遊山でホラー映画を楽しむ予定だった。グロテスクで不気味なそのヒューマン映画は、ホラー映画以上に僕の心にトラウマを残した。やがて高校生になって「デューン/砂の惑星」を観に行った。壮大なスペースオペラに期待をしており、スティングが出演することも楽しみの一つだった。…SF映画というにはあまりにもグロテスクで悪趣味な映像美で覆い尽くさえれており、この時点でデヴィッド・リンチ監督が何者かを知るようになった。


ブルーベルベット

そして「ブルーベルベット」を高校3年ぐらいの時に観に行った記憶がある。目的はもちろんデヴィッド・リンチ監督作品を楽しむためだ。…見終わって目眩がした。何が言いたいのか分からなかったし、エロスと暴力の表現が当時の僕にはきつかったからだ。筋書きは簡単、父親を見舞いに行った帰り、青年が野原で人間の耳を拾う。それがきっかけで倒錯の世界に足を踏み入れることになる…というもの。ここに出てくる人達は一筋縄ではいかない。「自室のクローゼットに隠れていた見知らぬ男に、女歌手はなぜ抱くことを要求するのか?」や「オカマの部屋にはなぜ太った女しかいないのか?」や「瀕死の重傷を負っているのに、何故立ち続けているのか?」と理不尽な箇所がふんだんに盛り込まれているが、そんなことをいちいち気にしてはいけない。その理不尽さこそが快楽であり、登場人物の狂気を楽しむのがリンチ映画なのだ。

その中でも突出した狂気を魅せつけるのがデニス・ホッパー。何度となく「ファック」と言い放ち、青のベルベットを口に入れて、亜硝酸アミルのガスを吸いながら挿入せずに射精する。ここまで暴力的でイカれた役を演じられるのはデニス・ホッパー以外にいない。この映画は上映当時にこき下ろされたらしいが、やがて時間をかけてカルト映画の頂点に上り詰める。デヴィッド・リンチの作風はここである程度の完成形となり、やがては世界を席巻する「ツイン・ピークス」で一般的に認知されることとなり、「ワイルド・アット・ハート」ではカンヌ映画祭パルムドールを受賞することになるのだ。

いまこうやって20年ぶりにBDで見返すと、やはり色彩が素晴らしい。冒頭に映されるアメリカ片田舎の風景、青い空、赤い薔薇、白い柵、芝生の下で蠢く虫…BDでみることを強くお勧めします。

歌手役のイザベラ・ロッセリーニってイングリッド・バーグマンの娘なのね。しかもマーティン・スコセッシとも結婚してた時期があり、ゲイリー・オールドマンと婚約していた時期もあるというセレブリティ。映画では場末感たっぷりで、生々しい肢体も披露しています。

2013年1月11日金曜日

大砲ラーメン 新横浜ラーメン博物館店


1月14日にラー博を卒業してしまうという大砲ラーメンに足を運びました。とんこつラーメン発祥地の久留米からやってきたそうですが、久留米ラーメンと博多長浜ラーメンの区別がそれほど分からない。どちらかと言えば、長浜ラーメンの方があっさりしている感じなのかな。とりま、店内に入るととんでもない動物臭が鼻を突く。紛れもない豚骨臭でくさいのなんの!なんでも「呼び戻しスープ」生みの親とのことで、呼び戻しスープとは古いスープに新しいスープを継ぎ足して切らさない方法、らしい。



バリカタで昔ラーメン(こってり)を注文。具材に使われているのは海苔、青ネギ、メンマに薄い豚バラ肉チャーシューに味付け玉子。何とこの玉子は輪切りになっているではないか!そんなことしないで、まるっと入れてくれよ…と言いながらスープを啜ると獰猛な豚骨スープが襲い掛かる。ややとろみがかっており、濃厚で豚骨臭がぷんぷんする!麺は王道の極細ストレート麺で、当然のごとく替え玉も注文。東京とんこつに慣れた我々にとっては男気あふれる九州男児直球とんこつ。野性味と男臭さが充満したとんこつの極北ともいえる味でした。

ホームページ:http://www.taiho.net/
住所:神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21 新横浜ラーメン博物館 B1F
大砲ラーメン 新横浜ラーメン博物館店ラーメン / 新横浜駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.0 
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2013年1月9日水曜日

CM4 : Cornelius

当ブログを開設してから丸七年が経ちました。今後ともよろしくお願い申し上げます。



CM4 : Cornelius

from Nakameguro to Everywhere ということで中目黒から音楽を発信し続けたCorneliusが都内某所にスタジオを移転させたそうです。今回リリースされた恒例のリミックスワークスは中目黒から発信された最後の音源という位置付けになります。

アーティストを見るとMGMTから三波春夫まで、布袋寅泰からオノヨーコまで、と非常に幅広く、リミックスだけでなくプロデュース作品やコラボレーション作品も含まれているとのこと。それ故に、素材を冷却してアーティストへ返すと言われているリミックスとは違い、作品全体の熱量が若干上がっているように思える。相対性理論や野宮真貴とは相性が良いせいか、何の違和感もなくスッと聴ける反面、オノヨーコやビースティーズは個性を全面に押し出しているように思えます。

中でも特筆すべきが三波春夫の「赤とんぼ」。圧倒的存在感を放っているその声を、Cornelius独自の清涼な音世界がサポートし、魂を揺さぶるような童謡に仕上げている。三波春夫先生って本当に凄い人だったんだなぁ、と気づかせてくれたCorneliusは実にいい仕事をしたと思います。

Tracklist

1. 布袋寅泰 / Battle Without Honor Or Humanity
2. Yoko Ono Plastic Ono Band / The Sun Is Down!
3. MGMT / Brian Eno
4. 相対性理論 / QKMAC
5. Lali Puna / Hostile To Me
6. Beastie Boys / Make Some Noise
7. Maia Hirasawa / It Doesn't Stop
8. Arto Lindsey / The Rare
9. IF BY YES / Still Breathing
10. 野宮真貴 / マジック・カーペット・ライド 
11. 三波春夫 / 赤とんぼ

2013年1月7日月曜日

すみれ 新横浜ラーメン博物館店

家の近くにありながらも殆ど行ったことのない新横浜ラーメン博物館 。言うまでもない日本初のラーメンテーマパークです。オープン当初に行った時、斬新なコンセプトと館内に驚いたもんですが、それ以上に辟易してしまったのが待ち時間。ラーメンを食べるのに1時間待たされ、しかも入場料も取られてしまうシステムのお陰で足が遠のいていました。

だがしかし、ここ最近はもっぱらヘビーユーザーと化しています。何故か?仕事で新横浜に行く機会が増えて平日訪問が可能になったのと、3ヶ月フリーパスをグレードアップさせて1年間の無料入場権を手に入れたから。当然ながら全店制覇を目論んでいる毎日です。



さて、ラー博で一番人気を誇る「すみれ」に足を運びます。昭和30年代に札幌で開業した「純連(すみれ)」をルーツに持つお店で、やがて場所を変えて「純連(じゅんれん)」として再開。その後創業者の息子が「すみれ」という店を出すに至る。「すみれ」は新横浜のラー博にも出店し、その後2004年に閉店。ところが創業者がラー博に「らーめんの駅」という「すみれ」のルーツとも言うべき店を出す。その後「らーめんの駅」はラー博を卒業するが、後続店として「すみれ」を指名して今に至る。何だかドラマのような歴史を持っているお店じゃないか。



味噌、醤油、塩が提供されていますが、迷うことなく味噌ラーメンを注文。表面にうっすらとかかっているラードが蓋の役割を果たして熱を封じ込める。これによりスープと麺はあっつあつ。スープをふうふう言いながら啜ってみると、超濃厚ながら香ばしくて芳醇としか言いようのない味噌スープが口内に広がる。具材に使われているのは刻みネギにしゃっきりしたメンマ、くたっとしたもやし、ひき肉と実にシンプルだが、このニンニクの香り高いスープを味わえば具材なんてそんなにいらない。味わい深いのにそれほど塩辛くもなく、このスープがあれば御飯三杯でもイケる旨さ。麺はもっちりした黄色い太め縮れ麺で、固めに茹で上げられているので実に食べ応えがあって、スープとの相性も抜群だ。味噌ラーメンなんてどれも同じ、なんてうそぶいていた自分が恥ずかしくなるほど最高の味噌ラーメンだ。

ホームページ:http://www.sumireya.com/
住所:神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21 新横浜ラーメン博物館 B1F
すみれ 新横浜店ラーメン / 新横浜駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.5 
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2013年1月5日土曜日

Allelujah! Don’t Bend! Ascend! : Godspeed You! Black Emperor


Allelujah! Don’t Bend! Ascend! : Godspeed You! Black Emperor

カナダの大所帯ポストロックバンド「Godspeed You! Black Emperor」が10年ぶりとなるアルバムをリリースしました。2010年にはライヴ活動を再開していたので、遂に本格始動となる訳です。とにかく不穏な轟音に満ちたオーケストラルサウンドは相変わらずGY!BEだと唸らせるもので、独立志向の強いケベック州出身というのも何らかの作用を及ぼしているのではなかろうか。

まず本作は4曲のみが収録されているんだけど、約20分に及ぶ大作が2曲と約6分半のドローン(持続音)で構成される2曲のみ、というのも相変わらずな構成。もはや作品全体を通して組曲とも言えるもので、序盤の静謐かつ不穏な音から狂気が静かに伝わってくる。やがては重く歪んだギターが轟音へと変貌し、シンフォニックに響き渡ってくるが、時にして中近東的フレーズが挟み込まれることによって破壊的な不安な増幅されていく。

程なく不気味なドローンを挟み込んで、2つ目の大作へと雪崩れ込むが、幾層にも塗り重ねられた音の壁が、更にリスナーの耳を圧迫していく。光の渦へと突入していくかのようなポジティヴィティが圧巻であり、疾走感を携えながら作品は最終局面へと向かっていく。狂気と混沌、再生と祝福を描いた作品は現実世界を象徴しているかのよう。

言葉のない、メロディアスに歪んでいる重量級轟音ギターの世界はまるでドゥームメタルのようでもあり、展開の多さはプログレッシヴロックのようでもある。いや、そのどちらにも属さない彼らの世界こそ孤高であり、狂気と破滅の宴を発信し続ける舞台装置なのだ。

2013年1月3日木曜日

らーめん中々

横浜東部の中でも特異な存在感を放つ六角橋。風情ある商店街があることで有名ですが、かつて家系ラーメンの頂点を極めていた六角家があることでも有名。残念ながら、今ではその名声を耳にすることはあまりなくなってしまいましたが。



さて、この日は六角橋商店街の仲見世通りにある「らーめん中々」へ突撃。正直言うと、本当は人気G系ラーメン店「豚星。」に行くつもりだったんですが、日曜定休ということで急遽こちらへ変更。



お店のオススメは塩らーめんとのこと。その中でも「鶏らーめん」なるメニューに惹かれて迷わず注文。塩味をオススメするとは、ダシに余程の自信があるに違いない。どうやら神奈川淡麗系の一角を成すお店で有名らしいです。



鶏もも肉をたっぷり使ったチャーシューが印象的。あっさり柔らかい味わいと青梗菜のハーモニーが絶妙です。他に使われている具材といえば細めのコリコリしたメンマに香ばしい焦がしネギぐらい。実に淡白な風情なんですが、いろいろとトッピングされているよりは遥かにいい。透明感溢れる塩スープは上品で優しく、コクとキレが共存しており実に味わい深い。ダシには牛すじと野菜、鶏がらなどが使われているそうですが、作り手のこだわりと優しさが伝わってくるかのようです。確かにこの味は自信を持ってお客さんに提供できる味で、例えて言えばテールスープのような味。麺はかんすい率高めの極細縮れ麺ですが、茹で加減がちょうどよくて食べ応え有り。あっという間にスープを飲み干してしまうほど食べやすく、しかも食後はキリッ( ー`дー´)と締まる感じが素晴らしい。人気店なのも頷ける味でした。

住所:神奈川県横浜市神奈川区六角橋1-9-1
らーめん中々ラーメン / 白楽駅東白楽駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.5 
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2013年1月1日火曜日

Dragonfly : Paul Weller

皆様 明けましておめでとうございます。徐々にラーメンブログへと変貌を遂げつつある当ブログを、今年もよろしくお願い申し上げます。


Dragonfly : Paul Weller

Paul Weller御大がSonik Kicks(過去レビュー)から「Dragonfly」をシングルカットしています。フォーマットは限定盤アナログと配信のみで、CDでのリリースはなし。よく考えると、このフォーマットでのリリースはアーティストにとって実に好都合。高価な限定アナログはコアなファンによって買われること必死で売り切れ確実、配信はやっかいな物流コストがかからないので売りやすい。CDこそがリリースまでの手間や金がかかるシロモノという訳で、これじゃあCDは売れなくなるわな、と配信データを購入しました。さて、収録トラックは以下の通り。

01. Dragonfly
02. Lay Down Your Weary Burden
03. Portal To The Past
04. Devotion
05. We Got A Lot
06. The Piper

M2「Lay Down Your Weary Burden」やM5「We Got A Lot」は「When Your Garden’s Overgrown」に収めされているトラック。M3「Portal To The Past」は「That Dangerous Age」(過去レビュー)に収められているトラック。M5「We Got A Lot」はSonik Kicks日本盤のボーナストラック。つまりファンにとってはM6「The Piper」ぐらいしか価値がない代物。全編通してアシッドフォークやサイケデリックロックの香りがするので、御大の新機軸を味わうには良いのかも知れません。