2013年1月13日日曜日

ブルーベルベット

僕がデヴィッド・リンチ監督の映画と出会ったのは小学生の時。「エレファント・マン」がヒットしており、友だちと物見遊山でホラー映画を楽しむ予定だった。グロテスクで不気味なそのヒューマン映画は、ホラー映画以上に僕の心にトラウマを残した。やがて高校生になって「デューン/砂の惑星」を観に行った。壮大なスペースオペラに期待をしており、スティングが出演することも楽しみの一つだった。…SF映画というにはあまりにもグロテスクで悪趣味な映像美で覆い尽くさえれており、この時点でデヴィッド・リンチ監督が何者かを知るようになった。


ブルーベルベット

そして「ブルーベルベット」を高校3年ぐらいの時に観に行った記憶がある。目的はもちろんデヴィッド・リンチ監督作品を楽しむためだ。…見終わって目眩がした。何が言いたいのか分からなかったし、エロスと暴力の表現が当時の僕にはきつかったからだ。筋書きは簡単、父親を見舞いに行った帰り、青年が野原で人間の耳を拾う。それがきっかけで倒錯の世界に足を踏み入れることになる…というもの。ここに出てくる人達は一筋縄ではいかない。「自室のクローゼットに隠れていた見知らぬ男に、女歌手はなぜ抱くことを要求するのか?」や「オカマの部屋にはなぜ太った女しかいないのか?」や「瀕死の重傷を負っているのに、何故立ち続けているのか?」と理不尽な箇所がふんだんに盛り込まれているが、そんなことをいちいち気にしてはいけない。その理不尽さこそが快楽であり、登場人物の狂気を楽しむのがリンチ映画なのだ。

その中でも突出した狂気を魅せつけるのがデニス・ホッパー。何度となく「ファック」と言い放ち、青のベルベットを口に入れて、亜硝酸アミルのガスを吸いながら挿入せずに射精する。ここまで暴力的でイカれた役を演じられるのはデニス・ホッパー以外にいない。この映画は上映当時にこき下ろされたらしいが、やがて時間をかけてカルト映画の頂点に上り詰める。デヴィッド・リンチの作風はここである程度の完成形となり、やがては世界を席巻する「ツイン・ピークス」で一般的に認知されることとなり、「ワイルド・アット・ハート」ではカンヌ映画祭パルムドールを受賞することになるのだ。

いまこうやって20年ぶりにBDで見返すと、やはり色彩が素晴らしい。冒頭に映されるアメリカ片田舎の風景、青い空、赤い薔薇、白い柵、芝生の下で蠢く虫…BDでみることを強くお勧めします。

歌手役のイザベラ・ロッセリーニってイングリッド・バーグマンの娘なのね。しかもマーティン・スコセッシとも結婚してた時期があり、ゲイリー・オールドマンと婚約していた時期もあるというセレブリティ。映画では場末感たっぷりで、生々しい肢体も披露しています。

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