2013年1月29日火曜日

Paradise : Inner City

前の記事にひき続いてKevin Saundersonについて書いてみましょう。


Paradise : Inner City

Kevin Saundersonは88年にシカゴでParis Greyという女性ボーカリストと出会うことになる。かくて二人からなるユニットInner Cityが結成され、「Big Fun」や「Good Life」といったシングルがUKチャート上位に食い込むという快挙を成し遂げる。Derrick MayやJuan Atkinsが黒いエレクトリックミュージック志向だったのに対して、Kevin Saundersonは宇宙志向を控えめにして全曲にわたって女性ボーカルをフィーチャーさせることにより、自分の音楽を当時のシーンへ呼応させることに見事成功した。

このアルバムが89年にリリースされた当時、UKシーンはセカンド・サマー・オブ・ラブ真っ只中であり、日本はバブル経済の狂騒に酔いしれていた。六本木のディスコで流れていたクラブミュージックはユーロビートであり、89年頃からBobby BrownやMC Hammer、Jody WatleyやJanet JacksonといったR&B~ヒップホップ系ミュージシャンがスーパースターとなっていった。横浜の老舗R&Bディスコ「サーカス」が六本木に進出したことにより、R&Bブームは頂点を極めた。そのムーブメントと並行してシカゴハウスやイタロハウスが徐々に流入するようになった。そして90年にはマドンナの「Vogue」による成功により、ハウスがクラブミュージックの中心を占めるに至ったのだ。

UKではSoul II SoulやWild bunch(Massive Attackの前身にあたる)といったユニットやサウンドシステムが人気を博しており、その中でInner Cityが受け入れられたのも当然の結果だろう。このアルバムから聴こえてくるのはディスコミュージックを基本としながらブラックミュージックの要素を注入し、更には当時最先端だったアシッドハウスの要素をも取り込んでいる、非常に解釈しやすい音楽だったのだ。前述のマドンナが「Vogue」で、このアルバムに収録されている「Ain't Nobody Better」を思いっ切りパクっていることから、彼らが時代の先端を走っていたことがわかるだろう。

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