2013年2月28日木曜日

Politics of Envy : Mark Stewart

1年前にリリースされたアルバムを例によって完全放置プレイ。70's~80'sにおけるポストパンクバンド The Pop Group の中心人物である Mark Stewart 。ここまで凶々しく攻撃的なアルバムを作れるのは、彼をおいて他にありません。あまりにも殺伐した内容に驚愕しているこの頃です。


Politics of Envy : Mark Stewart

70年代に出稼ぎ目的で UK に渡った西インド諸島の移民たち。彼らが遠い祖国を懐かしみつつ楽しんだのがレゲエ~ダブ。英国の港町ブリストルはそのゲートウェイ的役割を果たしました。同時期、労働者階級の若者たちがレベル・ミュージックとして取り入れたのが、言わずと知れたパンクミュージック。両者は音楽的に異なるものの思想的に一致する故に、パンクバンドはダブ的要素を取り入れることとなります。その最右翼的ミュージシャンが Mark Stewart 。ここでは相変わらずガッチガチに硬くて重いダブサウンドを披露。しかも共同プロデューサーとして迎えられているのが Killing Joke の Youth 、ゲスト陣が以下トラックリストに記載されているミュージシャン陣とくれば、この作品が悪いわけがありません。

プライマルズをフィーチャーした「Autonomia」では、攻撃性が恐ろしいことになっているロックンロールを発砲。続く「Gang War」では生けるレジェンド Lee"Scratch"Perry や Tessa Pollitt (The Slits) を担ぎ上げ、ハイパーなトースティングで聴く者の脳髄を直撃。「Apocalypse Hotel」では Massive Attack の Daddy G をフィーチャーし、ブリストルサウンドのミッシングリンクを見事に繋ぎ上げる。「Letter to Hermione」では Keith Levene (P.I.L) と共に絶望の深淵を見せつける。とにかく全編に渡ってドープなダブエレクトロニクス~パンキッシュサウンドの嵐。調子の外れた Mark Stewart のボーカルが緊張感を最後までキープし続けます。

Tracklist

1. Vanity Kills (feat. Richard Hell & Kenneth Anger's Exploding Skull)
2. Autonomia (feat. Primal Scream)
3. Gang War (feat. Lee Perry & Tessa Pollitt)
4. Codex
5. Want (feat. Factory Floor)
6. Gustav Says
7. Baby Bourgeois
8. Method to the Madness
9. Apocalypse Hotel (feat. Daddy G)
10. Letter to Hermione (feat. Keith Levene)
11. Stereotype (feat. Factory Floor & Keith Levene & Gina Birch)

Bonus Disc: Experiments EP

1. Autonomia (Electro Edit)
2. Robo Want Part 1
3. Robo Want Part 2
4. Letter Dub (The Dispossessed)


2013年2月26日火曜日

ラーメン二郎 鶴見店

ラーメン二郎の中でも比較的高得点な鶴見店。何の下調べもせずに訪問してきました。電車だと京浜急行 生麦駅からひと山越えて行かなくてはならないらしいです。車だと国道一号線沿いにあるのでアクセスがしやすい。



なぜ僕はここまでして二郎の各支店に行かなくてはいけないのか?そこまでして食べるほど価値のある旨さなのか?いや決してそうではあるまい。店によってばらつきのある味や看板の色、幾つもの亜流やインスパイア系を生み出した影響力、初心者を恐れさせるほど不可解な呪文、食後に胃腸や脳をたぶらかすジャンキーな化学調味料…枚挙に暇がないほどの魅力がそこにあるからだ。そう、僕らは単純に味に魅せられているのではない。二郎が繰り広げる壮大なるサーガに魅せられているだけなのだ。



週末のお昼時に行ったんですが、ほとんど行列がない。おお、これはラッキーと思って着席。店内に流れる、緊張感のないオフビートな空気に違和感を覚える。この時点で何の疑念も抱かなかった自分が呪わしい。ラーメン(小)をヤサイアブラで頼んだところ、少なめのくったくたな野菜が搭載されているではないか。どうやら通常の二郎のようにロットで野菜を茹でているのではなく、鍋に野菜を次から次へと追加していく調理法のようだ。これじゃあシャキシャキ野菜は望めないはずだ。

スープは乳化していない。トッピングでアブラを追加したので、透明度の高い脂がぶ厚い層を作っている。カネシ醤油のレベルは低く、二郎の持つ甘しょっぱさが殆どない。ブタは程々に柔らかいのがぺろっと一枚。麺はゴワゴワ感が全くなく、やわやわ柔らかくてボリュームも少なめ。多くのお客さんがトッピングに唐辛子をお願いしている理由がなんとなく分かった。食べ終わって、行列がない理由を完全に理解できた。そう、行列は人を虜にする味のバロメータなのだ。だが鶴見二郎にはその魔力が潜んでいなかった。食べ終わって物足りなさを感じた二郎は生涯初だ。なぜ食べログで高得点なのか全く理解できない。

住所:神奈川県横浜市鶴見区岸谷2-13-7
ラーメン二郎 鶴見店ラーメン / 生麦駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.0 
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2013年2月24日日曜日

NHK「デザインあ」 : Cornelius

皆さん、NHK受信料は払ってますか?


NHK「デザインあ」 : Cornelius

ここ数年におけるNHKの番組クオリティは相当高く、逆に言えば質の低い民放なんか殆ど見ない。気がつくとNHKやEテレにチャンネルを変えている。まあこれまでの度重なる不祥事への反省や、時代に敏感とはいえなかった制作姿勢を改めているということでしょう。その中でもかなりラジカルな番組といえるのが「デザインあ」。身の回りのあらゆるモノをデザインという観点でとらえ直し、子供向けとして成立させている画期的プログラムです。更には単なる子供向け番組というだけでなく、大人が見ても面白い。

僕世代の子供向け番組だと、古くは「ロンパールーム」や「カリキュラマシーン」、「ひらけ!ポンキッキ(後のポンキッキーズ)」なんですが、僕らは歌いながら踊りながら笑いながら見たもの。だけどこの「デザインあ」はちびっこ達に大人気であるものの、みんな口をぽかんと開けて見入っているらしい。その気持ちは非常によく分かる。映像は極めてシンプルであるものの、クオリティが実に高いから。その品質に一役、いやそれ以上買っているのが音楽担当のCornelius。

おそらくこのサウンドトラックを抜きにしたら、この番組は成立しないでしょう。ボーカルとして参加しているのが妻君である嶺川貴子、やくしまるえつこ、大野由美子、salyu x salyuなどCorneliusとゆかりのある人たち。「あ」をモチーフにしたボイスサンプルを多用し、実験的ながら耳に心地いい作品に仕上げています。基本的にこれまでのミニマル路線を踏襲した形になっているので、耳に馴染んでいる反面、何も新しいところを感じさせないのはチト残念。

2013年2月22日金曜日

つけ麺屋 やすべえ 新宿店

いまから5年以上も前、仕事で渋谷新南口に行くことが多かった。そうなると明治通り沿いでランチを食べる機会も多くなり、ラーメン激戦区のあの界隈で昼飯ネタで困ることは殆どなかった。当時はそれほどメジャーでもなかったつけ麺を知ったのも、あの界隈にある「やすべえ」だったと思う。



今回、新宿に行った際、「やすべえ 新宿店に行きたい」と後輩にせがまれて止むを得ず行ってきました。なぜ「止むを得ず」なのか?渋谷のやすべえへは何度か足を運びましたが、僕の中で印象が薄い。記憶に留まっていない、ということは味のインパクトが少ないことに他ならない。



つけ麺(中盛り)をあつもりで頼みました。並盛、中盛、大盛とも同じ値段なのが嬉しい。



どんな味だったかなぁ、と極太麺をさらっとしたつけ汁に浸します。うん、なるほど僕が味に惹かれない理由を思い出した。前にも書きましたが、つけ麺には大きく分けて2種類の味があると思っている。ここの味は酸味強めで甘辛いのだ。六厘舎などが切り開いた、濃厚な魚介豚骨Wスープとは違うのだ。野菜・動物系・魚介系が三位一体になったスープとのことだが、どうしても平べったさを感じてしまう。やすべえが僕の中で元祖つけ麺のようなものなので、だからこそつけ麺に対していい印象がなかったんだ。

ホームページ:http://www.yasubee.com/
住所:東京都渋谷区代々木2-11-19
つけ麺屋 やすべえ 新宿店つけ麺 / 新宿駅南新宿駅都庁前駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.0 
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2013年2月20日水曜日

3rd Eye Girl : Prince


これまで数多くのサイトを立ち上げては閉鎖していったP殿下。最近になって新たに「3rd Eye Girl 」という配信サイトを立ち上げました。「インターネットは終わった」って言ってたじゃんかー!と野暮なことは言いっこなし。この気まぐれさこそ我らがP殿下なんですから。

で、ここ最近の殿下のガールフレンドとして知られているAndy Alloという女性がいます。殿下の31歳年下というから、相変わらず殿下もお盛んなお方。去年リリースされた「Rock & Roll Love Affair」(過去レビュー )がAndy Alloのお披露目的なシングルと言われてますが、今回の新サイトも愛する新しい彼女を意識したものなのかしら。取りあえず、現在配信されているのが以下トラック(2013/2/20現在)。

That Girl Thang
Boyfriend Demo
Screwdriver
Screwdriver Remix
Breakfast Can Wait
RNR Remix 7

「That Girl Thang」はアコギ弾き語りによるハートウォーミングな佳作。「Boyfriend Demo」はおそらくタイトル通りデモ音源なんだろうけど、やたらと完成度の高いファンクナンバー。最小限の楽器に抑え、ホーンがやたらとファンキーな秀作です。「Screwdriver」は「Rock & Roll Love Affair」路線を継承したロックンロールですが、相変わらずドラムに致命的欠陥を抱えているトラック。グルーヴの「グ」の字も感じられないヘタレっぷりが見事としか言いようが無い。叩いているのはHannah Fordという方らしいです。そしてこのリミックスも大したことがなく、大幅な変更はなし。ヘタレドラムを補完するかのようにクラップ音が被されているぐらいです。

「Breakfast Can Wait」は殿下の本領発揮とも言えるスロウテンポなファンクナンバー。実にクールでイカした作品に仕上がっています。「RNR Remix 7」は「Rock & Roll Love Affair」の新リミックスで、駄曲っぷりが見事だったオリジナルをマシなものにアップデート。ベースラインが70年代ディスコ風になっており、ファンキーでクールな曲に変貌を遂げています。いずれにしても音源をちまちま配信するのではなく、さっさとアルバムをリリースしてほしいもんです。

2013年2月18日月曜日

Loveless (Remastered) : My Bloody Valentine

先日MBVの記事を書いてハタと思い出した。新作の音質があまりよろしくなかったので、去年リリースされたリマスター盤の音質と比べてみよう!と思い立った訳です。

ここでちょっとしたトピックスを一つ。バレンタインデーの1週間前である2/7、会社の後輩と新宿にいました。ひと仕事終えてから昼飯を食べたところ、近くで献血を呼びかけていた。後輩が「献血って身体にいいらしいですよ~。古い血を抜いて、新しい血が作られるっていうので。」と言うから、素直に「そんなに健康にいいのか!じゃあ行こう!」ということになった(後で全くのデマであることを知る)。夜、家で爆音キメてこのリマスター盤を聴いたところ、とんでもない目眩に襲われた。献血したせいでもあるが、このリマスター盤が持っている破壊力に圧倒されてしまったのだ。翌日は自分の誕生日ということもあるし早く寝よう…マイバースデイ前に血を抜いて、バレンタインデーまであと1週間……My Bloody Valentine。


Loveless - Expanded Remastered Edition : My Bloody Valentine

取りあえずこのリマスター盤のクオリティが凄まじい。作品の内容については前にも書いたことがあるので割愛。2枚組になっており、Disc-1はオリジナルテープをリマスターした音源、Disc-2はオリジナル1/2インチテープをリマスターした音源となっているが違いは正直いって分からない。とにかく音が立っており、オリジナルがもっさりしていた音だったことが分かる。しかも音の定位が揺らいでいるので、立体感が増している。なるべく高品質の環境に身を置いて聴いてほしい。「Only Shallow」でギアアァァ!!!とかき鳴らされる轟音ギター、「loomer」でドドドドドド!!!と鼓膜を襲う決壊した洪水のような音、「touched」で宇宙を泳いでいる鯨の鳴き声のような音…スペクタクルな音を実感することができ、まともな神経の持ち主だったら目眩や吐き気を覚えるはずだ。もっと繊細な人だったら気絶さえするかもしれない。それだけ聴き手に陶酔感や酩酊感を覚えさせるリマスター具合だということ。

振り返ってみれば、この作品は時間が経つにつれて神格化されてきた。リリース当時はそこそこに売れたものの、爆発的なヒットとなったわけじゃなかった。日本のロック雑誌や一部のアーリーアダプターから絶賛され、やがて時代が彼らに追いついてきた、と理解する方が正しいと思う。ここからシューゲイザーが生まれ、累々たる流れでポストロックを経て、現代も生き続けている鼓動と解釈すべき作品じゃないかな。

2013年2月16日土曜日

麺処グロース - 麺処GROWTH



仕事で池袋西口方面に行きまして。この界隈はラーメン激戦区だってつくづく思いながら、どのお店に行くか悩みました。なぜならどの店も高評価だから。悩んだ挙句、現役プロボクサーが経営するお店に行きました。住宅街の中にひっそりと地味に佇むお店には、立教大学の学生さんたちが列を作っていました。



迷わず「つけ麺(中)」を頼みます。つけ麺が苦手だなんて言ってたんですが、時代の荒波に流されながらつけ麺をリピートしてたら身体が馴染んできたようです。そこで気づいたのは、つけ麺にも大きく分けて二つの流れがあるということ。一つは酸味を利かせたさらっとしたつけ汁のもの、もう一つは濃厚でどろっとした魚介豚骨Wスープのもの。やはり僕としては後者の方が好みです。



そしてこのお店も魚介豚骨Wスープ系。とろっとしたスープがもっちりとした極太麺に絡まって、ズバズバッと豪快に味を楽しむことができる。つけ汁には大ぶりで柔らかい角切りチャーシューとメンマ、そしてわずかながらのみじん切り玉ねぎが入っている。これにより、濃厚スープへ若干のさわやかさを付け加えるのに成功している。最後のスープ割には、ちょこっと投入された白ごまが好印象。常に研究を重ねているらしく、味へのこだわりと店主の優しさが伝わってくるような麺です。試合前後はお店を休むらしいので、訪問の際は事前チェックが必要です。

ブログ:http://ameblo.jp/xxxgrowthxxx/
住所:東京都豊島区西池袋3-4-2
麺処グロースラーメン / 池袋駅要町駅目白駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.5 
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2013年2月14日木曜日

m b v : My Bloody Valentine

バレンタインデーだからと言ってMy Bloody Valentineで洒落こんでいる訳じゃありません。本当にたまたまなんです。


m b v : My Bloody Valentine

去年11月にKevin Shieldsが「2012年末までに新作をリリースする」なんて言ってたんですが、多くの人が本気にしていなかったと思う。だって「Loveless」(過去レビュー)から約22年間も新作リリースしていなかったし、G'n'Rみたいに「ずっと作ってます」とか言いながらひたすら延期という訳でもなかったし。そんな中でKevin Shieldsが「ここ2~3日で出します」なんて言って、日本時間の2/3に突如のリリース。これには多くの好き者が面食らっていました。やはり日本公演直前だったとということもあり、マスマーケットを意識した絶妙なタイミングを狙っていたんでしょうね。

販売はオフィシャルサイトからで 1)ヴァイナル/CD/ダウンロード、2)CD/ダウンロード、3)ダウンロードのみの3種類から選ぶことができる。しかもダウンロード音源のフォーマットは16bit 44.1 K WAV file、320kbps MP3、24bit 96 K WAV fileの3種類から。迷うことなく24/96のWAV音源を選びました。ただし、iPodとかで聴くならAACやMP3にエンコードしなくちゃいけないし、オリジナルの音質があまりよろしくない。この高品質音源を入手する必要は全くありません。

一聴した感想ですが、Lovelessが金字塔となってしまい彼らが神格化されたせいか、「何だか普通だな」と思ってしまったのは事実。甘美なメロディと囁くボーカル、気怠いノイズは相変わらずなんですが、色めき立つほどインパクトが有るわけではない。豊富な時間や金、贅沢な環境で作られたLovelessに比べ、それほどリッチとはいえないインディーズ環境で制作されたこともあるので、質が低下してしまったのかな。

そんな中でも最後の2トラックである「nothing is」と「wonder 2」はかなりのインパクト。前者はロケンローなリズムにミニマルでノイジーなリフが延々と続き、聴き手のテンションをひたすらとアゲまくる。この曲が10分ほど続いたらかなりのインパクトを持っていたはず。最終曲はジェット機が踊っているとしか思えない、トチ狂ったバイオリンが増幅されているかのような新感覚サイケデリックミュージック。この2曲で何とか救われた。

2013年2月12日火曜日

支那そばや 新横浜ラーメン博物館店



「ラーメンの鬼」として余りにも有名すぎる佐野実 氏。その佐野氏が創業したのが余りにも有名すぎる「支那そばや」です。本店は横浜市戸塚にありますが、他には鶴ヶ峰、青葉台や相模原市内にも勢力を伸ばしており、いわゆる神奈川淡麗系の礎とも言える名店です。僕が行ったのは、家から一番近い新横浜ラーメン博物館店。



まずは基本中の基本ともいえる醤油らぁ麺を頼みます。他にもいろいろとメニューが有るのが気になるが。



素材に拘り抜いているだけあって、まずそれぞれの具が光っています。具材の取り合わせはメンマ、海苔、ネギ、チャーシューという非常にシンプル。メンマは「完全発酵穂先メンマ」と呼ばれるもので、細長くシャクシャクしており柔らかい。海苔は有明産で黒々としておりとろっと溶けるよう。チャーシューは脂身多めのばら肉で、これまたとろける柔らかさ。ネギですらスープとの相性抜群で旨さを覚えてしまう。内モンゴル産かんすいを使っていると言われている自家製麺はストレート細麺で素麺のようにしなやかで柔らかい。ただし、日頃から固めの麺を食べている僕にはやや柔らかすぎるように感じた。醤油スープは鶏がらと魚介系のだしが中心となるのであろう、非常にすっきりとしているがキリっと締まる旨味が感じられる。拘りがありながらも非常にシンプル、それなのに奥深いという完成度の高いラーメン。鬼のような形相の佐野氏とは裏腹に、優しさ溢れる味になっていました。さすがです。

ホームページ:http://www.raumen.co.jp/home/shop/shinasobaya.html
住所:神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21 新横浜ラーメン博物館
支那そばや 新横浜ラーメン博物館店ラーメン / 新横浜駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.0 
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2013年2月10日日曜日

Ruled By Passion, Destroyed By Lust


Ruled By Passion, Destroyed By Lust : The Asphodells

信頼を寄せるに足る男 - Andrew Weatherallが新しいパートナーTimothy J. Fairplayと結成した新プロジェクト - The Asphodells。Weatherallの美学を感じさせるタイトル(情熱に支配され、欲望に滅びる)を冠してのリリースです。70年代ゲイ・ポルノ映画のキャッチコピーから引用したわりには、余りにも的確で示唆に富んだタイトルじゃありませんか。いや、人生というものはこういった道端に転がっている石ころから啓示を受けることもあるってことでしょう。プロジェクト名The Asphodellsの意味「死者の国に咲く水仙」にも刹那を感じます。

「A Love From Outer Space」というイベントを開催しているWeatherallが、ここで決め事としいるのが120 BPM以下というダウンテンポなエレクトリックビート。元々持ち合わせている雑食性と相まって、蛇の生殺し状態ともいえる突き抜けなさがグルーヴを生む「Masterpiece」(過去レビュー)が記憶に新しい。今回リリースされたアルバムには「A Love From Outer Space」に最適化された楽曲群が収録されているんですが、どれを聴いてもとにかく素晴らしい。

青臭くかき鳴らされるサイケデリックなギターに絡む、80年代を彷彿とさせる緩めのビート。テクノ、ハウス、ディスコ、ダブ、ポストパンクといったあらゆるジャンルの垣根を跨いだバレアリックな音。既視感のある音作りにより、80年代シーンへの限りないオマージュが捧げられているかのようです。最終トラックはイベント名であり、「Masterpiece」のリードトラックでもある「A Love From Outer Space」。この曲はまるで、大海原へ無謀な航海をしようとしている滑稽な男どもを表現しているかのよう。そう、先駆者たちの梅毒 - 「A Pox On The Pioneers」(過去レビュー)に通じる世界観を持っているのです。ダークサイケデリア百花繚乱なこのアルバム、相変わらずの男気に満ちています。

2013年2月8日金曜日

R&B



横浜関内に「R&B」という洒落た店がある。リズム&ブルーズでも聴かせてくれる粋なバーなのかい?と思いきや昼はラーメン、夜はビストロ/バーを提供している。つまりR&B = ラーメン&バーなのだ。でもこのお店って二毛作でしょう?片手間で作っているラーメンって美味しいのかしら?と訝しがってしまう。でも「ラーメン大会入賞歴アリ! 極旨ラーメンが食べられる、お洒落なダイニングバー」と謳っているから、取りあえずランチに入ってみた。



初心者におすすめしている「あっさり醤油味」を注文する。このメニューがスタンダードだということだ。いわゆる神奈川淡麗ラーメンだろう…この分野で俺をギャフンと言わせるのは中々難しいんだぜ…と心の中でぶつぶつ言いながらスープを啜ってみた…「ギャフン」と心の中で叫んだ。鶏ガラベースのコクと旨みが一気に口の中に押し寄せる。この旨みは何なんだ!この醤油スープって相当うまいよ!と若干慌てながら麺を食べると…極細ストレートの麺がやや固めに茹でられており、ズルズルっとあっという間に平らげてしまう美味しさ。

具に使われている味付け玉子の甘さは申し分なし、チャーシューも相当こだわりぬいているのが感じられる柔らかさと旨さ。ほうれん草も多めに盛られており、決して茹で過ぎではない丁度いい塩梅。メンマの食べ応えも中々で、あっという間に丼の底が見えるほどスープを飲み尽くしてしまった。……正直言ってあまり覚えていない。食べるのに夢中になっていたから、あーだこーだ等とうんちくを語る暇さえないほど美味しかった。スープも麺も具材も全てクオリティ高いよ、これは片手間仕事じゃできないよ。本気だよ。しかもメニューがたくさんあるよ。また来るよ。

ホームページ:http://www.randb-yokohama.com/
住所:神奈川県横浜市中区真砂町3-29 2F
R&B ラーメン / 関内駅伊勢佐木長者町駅馬車道駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.5 
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2013年2月6日水曜日

Bastards : Bjork


Bastards : Bjork

各種フォーマットによるリリースだけでなく、アプリやそのワークショップ分野にまで裾野を広げたBiophilia(過去レビュー)プロジェクト。iPhoneでアプリをいじった時は「なかなか良く出来てるな」程度の感想だったんですが、iPadでいじってみると更なる奥深さを持っているおり驚愕した次第。iPadを持っている人は勿論のこと、持っていない人も何とかしてそのアプリに触れてほしい。Biophiliaプロジェクトの世界観をもっと理解できると思うから。

で、アルバムをリリースする度に夥しいリミックスワークスを産み落とすBjorkですが、例に漏れずBiophilia収録曲にもとんでもない数が存在する。これを全てコレクトするのは無謀というものなので、こうやってリミックス選集がリリースされるのは嬉しい。しかも全てのクオリティが高いのなんの。トラックリストを見てもらえば分かる通り、リミキサー陣も相当豪華。まさに目利きの本領発揮とも言える。

これらリミックスの中でも衝撃的な破壊力を持っているのが、Omar Souleymanによる「Crystalline」と「Thunderbolt」。このOmar Souleymanという方はシリアのカルトミュージシャンらしいんですが、高次元なBjorkトラックが物の見事にアラビアンテクノへと昇華されている。これを聴けば貴方の気分は中近東になってしまうこと請け合いな、ハイパー異次元なシロモノだ。爆音で聴けば、周囲の人からさぞ煙たがれるか、奇異な目で見られることでしょう。

なお、Death Gripsによる「Thunderbolt」もハードコアな破壊力が満載だ。他方位からの攻撃に晒されているようなインダストリアルビートにより、オリジナルはもはや原型をとどめていない。また、ハードD'n'BアーティストであるCurrent Valueによる「Solstice」も興味深い。ダブステップの標本として相応しいほど、深淵でダークな仕上がりになっている。個人的にはこのリミックスがベスト。

Tracklist

1. Crystalline (Omar Souleyman Remix)
2. Virus (Hudson Mohawke "Peaches and Guacamol" Rework)
3. Sacrifice (Death Grips Remix)
4. Sacrifice (Matthew Herbert's Pins and Needles Mix) (edit)
5. Mutual Core (These New Puritans Remix) [ft. Soloman Is. Song]
6. Hollow (16‐bit Remix)
7. Mutual Core (Matthew Herbert's "Teutonic Plates" Mix)
8. Thunderbolt (Death Grips Remix)
9. Dark Matter (Alva Noto Remodel)
10. Thunderbolt (Omar Souleyman Remix)
11. Solstice (Current Value Remix)
12. Moon (The Slips Remix)
13. Crystalline (Matthew Herbert Remix)




2013年2月4日月曜日

龍上海 新横浜ラーメン博物館店


昭和33年から55年間営業している山形の老舗。先代から数えて三代目が店を切り盛りしているというから、なかなかの歴史を感じさせる。しかも札幌の味噌ラーメンと同時期に生まれた味噌ラーメンを出すというから、いうなれば本州初の味噌ラーメンだ。そんなラーメンをここ横浜で食べられるなんて幸せじゃないか?




味噌以外にもしょうゆ味とかあったが、お店一番オススメの赤湯からみそラーメンを頼むことにします。




特徴的なのが中央に鎮座まします赤い辛味噌。けっこう辛いらしいので、少しずつ溶かしながら変化を加えていくそうな。まずは熱そうなラードで覆われたスープを啜ってみると、ニンニクの香り漂う奥深い味噌の味。単純に味噌スープとはいえないぐらいに、複雑で独特でピリッとした味を持っている。出汁に鶏がら、魚介、肉を使っているとのことだが、味噌ゆえにダシを推察するのは難しかった。麺は自家製の極太手もみ麺と呼ばれるもので、縮れ具合がスープによく絡み、もちもちシコシコ食べ応え有り。具材に使われているのは柔らかい薄切りチャーシュー2枚に、メンマとナルト。辛味噌を少しずつ溶かしていくと、確かにじんわりピリリと辛くなっていく。僕は辛いのが得意じゃないので、全部溶かすまではしなかったが、あれを全部溶かしたら相当辛いものになっていたと思うよ。実に個性的な味噌ラーメンで、東京界隈でお目にかかれることは殆ど無いだろう。山形ご当地ラーメンは身体の中から暖かくなるラーメンでした。


ホームページ:http://www.ryushanhai.com/

住所:神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21 新横浜ラーメン博物館
龍上海 新横浜ラーメン博物館店ラーメン / 新横浜駅
夜総合点★★★☆☆ 3.0
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2013年2月2日土曜日

Praise : Inner City


Praise : Inner City

このアルバムがリリースされた90年代初頭になると、それまで単に「ハウス」と呼ばれた音楽は物凄い勢いで細分化していった。当初「ハウス」と呼ばれていたジャンルは「シカゴハウス」または「ガレージハウス」と呼ばれるようになり、シンセやTB-303を多用したハウスは「アシッドハウス」、グルーヴを活かした黒めのハウスを「ディープハウス」などと呼ばれるようになる。

UKで隆盛を極めていたセカンド・サマー・オブ・ラブは失速し始めていたが、808 StateやThe Prodigy、Orbital等の登場により「ハードコア/レイヴ」というジャンルが認識され始めてきた。それらのジャンルを「テクノ」と決定づけたのはデトロイトから流れてきた音楽に他ならない。この頃になるとクラブミュージックはかつてないほどのスピードで進化を遂げ、ドラムンベースの基礎であるジャングルや、ロッテルダムにおいて「ハードコア/レイヴ」を高速にしたガバが登場し始めた。

ロックの分野ではUSオルタネイティヴが凄まじい嵐を呼び起こしており、同時多発的にヒップホップの勢力も強まっていった。そんな中でメジャーシーンではヒップホップベースのハウスユニット「C+C Music Factory」が大成功を収めていた。

日本では電気グルーヴがメジャーデビューを果たし、前述のC+C Music Factory初来日公演の前座を務めるなどした。ただし、初期の彼らはやはりヒップホップ色が強く、「テクノ」というタームが一般化されていなかったこともあり、テクノユニットとしては認識されていなかったように思う。バブル経済が崩壊し始め、それまでのゴージャスなディスコ「マハラジャ」や「キング&クイーン」、「エリア」等は衰退し、それらに取って代わり巨大ディスコ「ジュリアナ東京」が成功を収めていた。

このジュリアナ東京を後押ししていたのがレイヴ/ハードコアの亜流とも言えるような、ベルギーのT99のように分かりやすいレイヴミュージックだったのだ。どれだけ分かりやすいのか、エピソードを一つ披露すると……

当時大学生だった僕は塾でアルバイトをしていた。生徒(JK)が「先生は最近の音楽で何が好き?」と尋ねてきたので「電気グルーヴっていうのが最近デビューしたので気に入ってるよ」と答えた。そうすると彼女は「え~!あんな変なの大嫌い!私はTMネットワークとかT99みたいなカッコいいテクノとかレイヴが好き!」と言ったのだ。つまり、レイヴはJKにも分かりやすい音楽だったのだ(あれ…この話、前にも書いたことあった)。だからこそジュリアナ東京はスタートダッシュが良かったのだ。もちろん、ジュリアナ後期になると、音楽性よりもその風俗性に注目が集まることになる。

Inner Cityの「Praise」とは全く関係のない話になってしまったけど、このアルバムの内容は当時の音楽シーンの影響を相当に受けている。いや、もしくはシーンに相当の影響を与えている。収録されているトラック「Praise」(賛美)や「Hallelujah」(主をほめたたえよ)、「One Nation」(これを指しているに決まってる)といった曲名にはアフロアメリカンのソウルや黒人霊歌への意識が見て取れる。もちろんParis Greyのボーカルはゴスペル的要素に満ちている。ここでは彼らが開拓したディープハウスを基礎としているが、当時のレイヴ/ハードコアからもかなりの影響を受けている。この双方向性こそ、当時の音楽シーンを物語っているのだ。