2013年5月31日金曜日

Vagabundos 2012 : Luciano


Vagabundos 2012 : Luciano

チリアン・ミニマルの雄として知られるルチアーノ。前にリリースしたミックスCD「Fabric 41」(過去レビュー )から既に4年も経っているそうです。Vagabundosとはルチアーノ主宰のレーベルCadenzaがイビサ島で開催しているパーティのこと。つまりはそのパーティを再現しているミックスという訳です。ここでもやはり南米独特の土着的な雰囲気を表現したようなパーカッション/ベースラインや、高地で眩いばかりに降り注ぐ太陽光のようなサンプリング音がきらめいています。ミニマルとディープハウスのa間を行き来する間に醸し出される異国情緒、これこそがルチアーノの真骨頂とも言えるでしょう。トラックを解体/再構築されるデジタルミックス手法が取られているので、通して聴くとダイナミズムや起伏の激しさを感じることはないと思う。ただしイカれたジャケットのように享楽的な気分にはなれる。

Tracklist

01 Le K – 25th February Anatomy
02 Substance & Vainqueur – Reverberation
03 Technasia – Michigan Ride
04 Nick Harris – Surfing With Kilgore
05 Alex Gori – Zinghei
06 BBQ – BBQ Bounce
07 Pompeya – 90 (Gorje Hewek Remix)
08 DJ Wild – Catania Blues
09 Wata Igarashi – D - 28 - 2
10 DJ Wild – Catania Blues
11 NTFO & Optick – Tremble (Rhadow Remix)
12 Dave Aju – Away Away
13 Sarp Yilmaz – Shoot
14 Plaid – Dett
15 Sushi Club, The – Flunauticus (Johnny D Remix)
16 Zakes Bantwini feat. Xola – Clap Your Hands
17 Dani Casarano, Felipe Valenzuela, Demian Muller – Dreamer
18 El Pocho – Don Quixote
19 Guy J – Lamur (AM Mix)
20 Romanthony – Bring U Up (Deetron Edit)
22 Marc Romboy vs KiNK – Don't Shake My Tree
22 DanieLL – Don't Stop To Run
23 Lucien–N–Luciano – Somewhere We Got

2013年5月29日水曜日

ラーメン二郎 上野毛店


雨にも負けず列をなし、ヤサイアブラと呪文を唱え、メタボを恐れず二郎を喰らう、それが漢の生きる道。さてこの日は東急大井町線の「上野毛」という駅近徒歩数分という、二郎にしてはめずらしく好立地条件を持ったお店に行きました。ちなみに世の中の多くが陰と陽といった対になっているように、上野毛あれば下野毛ありというかなりアレな地名も存在します。


強面ながら接客が優しいお兄さんが二人。小ブタ入りにヤサイアブラをトッピング。ここでは麺をそれなりに茹でるらしく、「カタ(硬め)」または「カタカタ(バリカタ)」を指定することが出来る。僕はバリカタを注文したらご覧のように、厚切りブタが4枚におまけの角切りチャーシューが加えられ、その下に大量モヤシが隠れている二郎が登場しました。


さらにその下に隠れている麺を引きずり出したところ、とんでもない麺の量が。取りあえず麺を先に喰らいます。通常の二郎麺よりも気持ち細い麺は、バリカタを指定してやっと普通の硬さになっているが、食べるにつれポキポキ感というかボソボソ感を味わうことができていい感じ。麺を半分ほどやっつけたところで、ブタが再び顔を出す。他店によく見られる豚バラチャーシューではなく豚ロースを使っているようで若干のぱさついた感がある。それでもやはり柔らかく、4枚あってもぐいぐいイケる旨さ。その後、ほぼモヤシの野菜を食いつつ麺を完食。スープは乳化しておらず、さらりとライトな具合。だけどもカネシ醤油の味が十分に効いており、何度も何度もレンゲで口に運んでしまう。非乳化の雄として二郎界に知られているようで、量は阿修羅のように荒々しく、スープの味は天女のように優しい上野毛二郎であった。

住所:東京都世田谷区上野毛1-26-16 ラーメン二郎 上野毛店ラーメン / 上野毛駅等々力駅) 夜総合点★★★☆☆ 3.6 昼総合点★★★☆☆ 3.6

2013年5月27日月曜日

Fixurlifeup : 3rd Eye Girl featuring Prince


4月にカナダのラジオで公開された新曲「Fixurlifeup」が、ようやくiTunesでもリリースされました。何故に自己サイトからリリースしない?何故にwavやらMP3やらAACやら、様々なフォーマットでリリースする?自己サイトからwavファイルで販売してくれるのが一番ありがたいんですが、そこは気まぐれ殿下の面目躍如というところ。この新曲も殿下の最新モードを反映したロックンロール。相変わらず股間で弾いているとしか思えない程、ギターソロがエロく悶えまくっています。「ぼくは老人と付き合っている暇はないんだよ。ぼくは若い人たちと仕事がしたいんだ」と発言しているそうで、つまりは後継者育成に励んでいる殿下らしいです。近いうちに「Plectrum Electrum」という新アルバムもリリースされるようで、チェックを怠らずに楽しみにしたいところ。

2013年5月25日土曜日

Live Out Loud : 3rd Eye Girl



ここ最近のプリンスを取り巻く状況がめまぐるしく変わっています。しかも、前にポストした3rd Eye Girl(過去の記事 )からちょっと気を許していたら、ガールズバンドが結成されているやら、新曲がリリースされているやら、北米ツアーが始まっているやらで、最新状況をキャッチアップするのに大変です。

さて、そもそも「3rd Eye Girl」はプリンスの新サイト名であると同時に、Hannah Ford/Donna Grantis/Ida Nielsenの女性らによる3ピースバンド。もちろんプロデュースはプリンスで裏方には回っているものの、プリンスの実質的な新バンドと捉えていいかも。その新曲(と言っても2月にリリース)が「Live Out Loud」となっており、北米ツアー名にも冠されています。外国人がネットで使用する言い回しに"lol"というのが見かけらますが、これは「laugh out loud」つまり日本的に言えば「ワロス」とか(笑)とかいった意味。僕はてっきりムンクの叫びをアスキーアート風にしたものだと思っていましたが(苦)。話が逸れましたが「Live Out Loud」はこの"lol"にかけている訳です。

で、曲そのものはここ最近の「3rd Eye Girl」でリリースされているものと同じ路線を行くロックンロールナンバー。パワーポップ風のキッチュなメロディに、殿下風のひねくれスパイスがぴりりと効いた好ナンバーとなっています。

2013年5月23日木曜日

野方ホープ 原宿店



原宿界隈に用事があったので、「野方ホープ 原宿店」に行ってきました。原宿店とは言っても、明治神宮前駅と北参道駅の中間、明治通り沿いにあるので、アクセスがそれほど良いわけではない。にも関わらず、週末昼時ということもあって家族連れのお客さんで賑わっていました。このお店はかつて新横浜ラーメン博物館に出店しており、実にそれ以来の訪問です。



普通の醤油ラーメンを頼みます。クーポン提示すると半熟玉子がサービスになります。東京とんこつラーメンと謳っていますが、今のような博多ラーメンを東京風にすっきりさせたラーメンとはかなり違う。90年代前半は千駄ヶ谷にあるホープ軒が幅を利かせており、千石自慢ラーメンがオープンした時代。そう、僕の大好きな背脂ちゃっちゃ系なのです。脂の量は「こてこて」~「こってり」~「ふつう」~「あっさり」~「あぶらぬき」から選ぶことができ、僕は「こってり」を注文しました。

スープ表面にはびっしりと背脂が浮いていますが、くどさや塩気を全く感じさせない豚骨醤油スープ。この背脂が甘みとまろみを演出し、実にクリーミーでマイルドな味わい。これに肩ロースを使ったチャーシュー、もやし、メンマが実に合う。黄色がかった中太縮れ麺は、甘みがかってもっちりしており、スープとの相性も抜群だ。半熟玉子の気味もちょうどいい甘さ。千駄ヶ谷ホープ軒ほど脂っぽくなく、食べやすくて何度も通いたくなる旨さ。最後は、表面に浮いている背脂を全部掬い取ってご馳走様。やはり東京ならではの背脂ちゃっちゃ系って最高!

ホームページ:http://www.nogata-hope.com/
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷2-1-8
野方ホープ 原宿店ラーメン / 北参道駅原宿駅千駄ケ谷駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.7 
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2013年5月21日火曜日

Pearl's Girl : Underworld


Pearl's Girl : Underworld

「弐番目のタフガキ」(過去レビュー)に収録された96年リリースシングル。僕が持っているのは米国TVTからリリースされたバージョンで、アルバム未収録曲がてんこ盛り。まず「Pearl's Girl」のオリジナルは当時全盛だったトライバルビートを惜しげもなく引用し、Darren Emersonの趣味全開とも言えるべきトラック。やはり元々DJということもあって、ロマンティシズムよりもダンスなんでしょう。

リミックスバージョンの「Pearl's Girl (Tin There)」は原曲と趣が違う、アシッドでトランスなベースラインがとっても印象的な高速トラック。また「Pearl's Girl (14996 version)」はやや地味ながらも、Karl Hydeの「Crazy,Crazy,Crazy....」がサンプリングされている辺りがやはりクレイジー。「Puppies」、「Oich Oich」、「Mosaic」、「Deep Arch」は浮遊感溢れる実験的トラックやら、BPM緩めの地味なトラックやらで、Darren Emersonの影響はさほど感じられない。それでもやはりカップリング曲であることを考えれば、クオリティは高いといえるでしょう。ちなみに「Cherry Pie」は「タフガキ」に収録された「rowla」の別バージョン。

Tracklist

01. Pearl's Girl (Tin There) – 8:07
02. Pearl's Girl (14996 version) – 8:50
03. Puppies – 3:51
04. Oich Oich – 8:30
05. Cherry Pie – 8:18
06. Pearl's Girl (edit) – 4:22
06. Pearl's Girl (album version) – 9:35
07. Mosaic – 4:58
07. Deep Arch – 8:22



2013年5月19日日曜日

Dirty Epic/Cowgirl : Underworld

「Dirty Epic」も複数バージョンでリリースされてますが、僕が持っているのはTVTからリリースされたこのCD。「Dirty Epic」と「Cowgirl」のカップリングに加えて、「Cowgirl」の原型となっている問答無用の「Rez」、アルバム収録曲の「River of Bass」という大容量。収録時間はこれまた74分にも及び、ここでも「アルバムかよ!」と突っ込みたくなる。


Dirty Epic/Cowgirl : Underworld

アンダーワールドに於けるカール・ハイドのボーカルは記号性に満ちているんだけど、稀に「Dirty Epic」のような曲も存在する。つまりここでのボーカルは加工されておらず、しかも歌心が溢れまくっておりテクノとは言い難い。当たり前なんだけど、先日のソロアルバム(過去レビュー)と同じ根っこだなぁとつくづく感じます。甘ったる過ぎるほどのメロディと起伏のある曲の流れは、まさしくニューウェーヴ出身ミュージシャンが持っている共通項。特に「Dirty Guitar Mix」におけるギターのカッティングなんてロックが持っているグルーヴそのもの。オリジナルよりもこのミックスの方がダイナミズム溢れる良作とさえ思えます。ちなみに同時収録されている「Cowgirl」別バージョンは、原曲が持っているトランス感が損なわれているのでチト残念。

Tracklist

01. Dirty Epic (Dirty Guitar Mix) - 10:00
02. Dirty Epic (Dirty Mix) - 11:14
03. Dirty Epic (Album Version) - 9:56
04. Cowgirl (Irish Pub In Kyoto Mix) - 11:45
05. Cowgirl (Winjer Mix) - 6:25
06. Cowgirl (Album Version) - 8:29
07. Rez - 9:55
08. River of Bass - 6:26

2013年5月17日金曜日

初代 けいすけ 品川店


品川駅の高架下にあるラーメンテーマパーク「麺達七人衆 品達ラーメン 」。今回は黒味噌ラーメンが有名な「初代けいすけ」に行ってきました。都内各地に様々な店舗を展開するも、各店舗で提供する味も様々。例えば「海老そば」、例えば「つけ麺」、例えば「肉そば」…。よくもこんなに多様な味を考えつくもんだと思いきや、店主 竹田敬介は過去にフレンチや和食で経験を積んでいるとのこと。ラーメン業界の革命児、イノベーターと呼ばれる所以もこんなところにありそうです。さてさて、「初代けいすけ」ではどのような味を楽しませてくれるのか。



このお店で一番の人気メニューは「とんとろ炙りチャーシュー黒極み」とのこと。他には「海老味噌極み」や「スタミナ黒味噌とろ~り温玉のっけ」と言った耳慣れないメニューが並びます。どれも創作ラーメンのようですが、今回は取りあえず人気No.1の「とんとろ炙りチャーシュー黒極み」を注文します。



黒味噌という聞き慣れない単語だけに、見たことのない黒々としたスープの色。7種類の味噌をブレンドし、竹炭を混ぜ込んでいるとのこと。これにより、塩分のエッジな部分が除去されて、全体的にまろみを帯びてくるのだそう。更には唐辛子や山椒といった様々なスパイスを使用しているらしい。スープを啜ってみれば、たしかに普通の味噌スープとはかけ離れた複雑な味とコクが口の中に広がる。ただし、やはり味噌スープだけにどんなダシを使っているのか見当はつかない。豚骨、鶏がら、香味野菜を使用しているらしいが、かろうじて分かるのは豚骨ぐらいだった。やはり味噌ラーメンはダシを殺すなぁ…と呟きながら食べ進む。スパイスが使われている割には辛さを感じさせないのが以外だった。

メインの具材に使われている味付け玉子は味が十分染みており、炙りとんとろは柔らかくも香ばしい。麺をリフトアップすれば低加水の黄色い中細縮れ麺が顔をのぞかせる。ほのかに甘みさえ感じさせる味は、複雑系な味噌スープとの相性が非常にいい。どんどん食べ進むにつれ、じわっと汗がにじみ出てきた。やはり身体は正直で、ここにきてスパイスがじわじわ効いてきたようだ。塩分濃度も比較的高いようだが、塩辛さは感じなかった。

ずりゅずりゅっと麺を食べ終えたが、量的に少々物足りなさを覚えた。ふと壁を見やると、残ったスープにライスを投入することをオススメする張り紙が。更には温泉卵を加えて雑炊風にするのが美味しいらしい。こんな食べ方したらとんでもないカロリーを摂取してしまうジャマイカ!と思いながら、ライスと温泉卵を追加注文。ドボンと投入して猫マンマ風にすれば、確かに最後の最後までスープを味わえる。塩分はそれほど感じないと言いながらも、使われている塩分はそれなりのものなんだろう。食べ終えてしばらくしたら口内がカラカラになった。悪くない味、だけどもしょっちゅう食べるには主張の強い味。手をかけているのが十分に分かる複雑な味なんだけど、何と表現していいのか分からない味。それなりに評価が分かれるところだと思います。

ホームページ:http://www.grandcuisine.jp/keisuke/index.html
住所:東京都港区高輪3-26-20
初代 けいすけ 品川店ラーメン / 品川駅北品川駅高輪台駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.4 
昼総合点★★★☆☆ 3.4

2013年5月15日水曜日

Dark & Long : Underworld

このところ、僕の中でアンダーワールド祭りが続いてます。


Dark & Long : Underworld

彼らの初期名作「Dubnobasswithmyheadman」(過去レビュー)オープニングを飾る「Dark & Long」。イギリス本国ではJunior Boy's Ownから様々なバージョンのシングルがリリースされていました。僕が持っているCDシングルはデンマークのApril Recordsというレーベルからディストリビューションされたもので、ここにはフロア完全対応の様々なリミックスバージョンが収録されています。もちろん「Dark Train」も収録されている。

注目すべきは「Thing in a Book」で、20分にも及ぶ長尺トラック。「Dark & Long」の基本的骨格を継承しながらも、原型から大きくかけ離れた作りになっています。しかもBPMが速いので、今の耳で聴けば時代を感じさせる。シングル全体では70分以上にも及び、アルバムかよ!と突っ込みたくなる長さ。それでもやはり、どこを切ってもアンダーワールド汁が滴り落ちるのは、彼ら特有のセンチメンタリズムとロマンティシズムが貫かれているから。ダレン・エマーソン加入に伴いクラブミュージックのエレメントが注入されるも、三つ子の魂百までと言うべきか。このふわふわした感覚はコアメンバー二人が独自に持ち合わせたものらしい。ここら辺がロックリスナーに受けた理由なんだろうね。

Tracklist

01. Dark & Long 7" – 4:07
02. Thing in a Book – 20:12
03. Spoon Deep – 17:53
04. Dark Hard – 11:30
05. Dark Train – 10:28
06. Burts – 8:47


2013年5月13日月曜日

Trainspotting #2

大ヒットした「トレインスポッティング」OST(過去レビュー)を受けてリリースされた続編への考察。


Trainspotting #2

劇中で使われたにもかかわらず、正編サントラに収録しきれなかったトラック、カットされたシーンで使われたトラック、映画製作者にインスピレーションを与えたトラックを集めた、世にも珍しいサントラの続編。こいつがなかなか作品の世界観を表現しており興味深い。正編よりもクラブミュージック志向がやや強まっている。

まず原作者のアーヴィン・ウェルシュについて振り返ってみると、プライマル・スクリームのシングル「primal scream , irvine welsh and on-u sound present...the big man and the scream team meet the barmy army uptown」に朗読者として参加していることが地味に(しかも非常に地味に)知られている。このことから、ウェルシュはUK作家の中でもロック志向の強い、フーリガン志向の強い作家だということが分かる。

この続編サントラに収録されているトラックの中で、ゴールディの「Inner City Life」は劇中に使われていない。アーヴィン・ウェルシュが「登場人物たちが聴いていることだろう」と続編への収録を提案したとのこと。また、プライマル・スクリームの名曲「Come Together」は制作側が何とかして劇中で使おうとしたが、適切なシーンが見つからなかった。ジョイ・ディヴィジョンの「Atmosphere」はダニー・ボイル監督がマンチェスター生まれということで、常にジョイ・ディヴィジョンを映画で使いたがっていた。にも関わらず、これらはここに収録されても何ら違和感がない。つまり、原作、映画、音楽が三位一体だったからこそヒットしたんだろう。

一番注目したいのが、アンダーワールドの初期曲である「Dark & Long (Dark Train)」が劇中で使われていること。今でこそ彼らの定番曲として知られているが、仄暗いプログレッシヴハウスがメジャー映画で使われることなんて斬新な試みだった。これまで地下で蠢いていた音楽に光が当たった瞬間で、続く「Born Slippy(Nuxx)」でアンダーワールドは全く新しい高みへと到達したのだった。

Tracklist

01. Choose Life : PF Project featuring Ewan McGregor
02. The Passenger : Iggy Pop
03. Dark & Long (Dark Train) : Underworld
04. Carmen Suite No.2 : Georges Bizet
05. Statuesque : Sleeper
06. Golden Years : David Bowie
07. Think about the Way : Ice MC
08. A Final Hit : Leftfield
09. Temptation : Heaven 17
10. Nightclubbing (Baby Doc Remix) : Iggy Pop
11. Our Lips Are Sealed : Fun Boy Three
12. Come Together : Primal Scream
13. Atmosphere : Joy Division
14. Inner City Life : Goldie
15. Born Slippy(Nuxx) (Darren Price Mix) : Underworld

2013年5月11日土曜日

くり山


地味ながら風情ある商店街として知られる横浜六角橋。家系ラーメンとしてかつて名を馳せた「六角家」があることで有名ですが、いまやその六角家も凋落の一途をたどるばかり。ただし、その狭いエリアには実力派ラーメン店がひしめき合っていることで知られています。例えば「豚星。」(過去の記事 )、例えば「豚親分」(過去の記事 )、例えば「らーめん中々」(過去の記事 )。そしてその中でも「神奈川県最高峰のつけ麺屋」と言われているのが「くり山」です。かなりの行列ができるということで、開店時11:30に訪問したのですが既に満席で行列が出来ている。結局30分も待つことになりました。



ここの店主はつけめん界両巨頭である大勝軒と六厘舎で修行を積んだということだ。ならば中華そばよりつけめんを頼むべきだろう。あつもりにしてもらい、100円増しで大盛にしてもらいます。並盛で300g、大盛で400gほどだから相当な分量になる。



通常のつけめんより茶褐色な極太麺。この色は胚芽の色なのかな?まずは麺を味わうために、つけ汁にちょっとだけ浸して口内に放り込む。その瞬間、小麦の香ばしさと甘みが口の中に広がった。もっちりもちもちしたぶっとい麺は大勝軒の山岸さん相伝といわれる製麺機で作られたものらしい。間違いない、麺だけでも十分美味しいのだ。次に麺をズッポリとつけ汁に絡めてズバッと喰らう。魚介豚骨Wスープとはいえ、それほど濃厚さは感じられない。昼は中濃、夜は濃厚と味を変化させているそうで、僕が食べた昼の味は甘味と酸味が感じられる。さらっとしているが旨みが十分に感じられ、豚骨よりも魚介系の主張がやや強い。濃厚ドロドロスープと言うよりは、キレとコクを追求した旨みスープであるように感じた。

食べ進むにつれつけ汁濃度が低くなってきたので、卓上に或る魚粉をふりかけて味を濃厚にする。つけ汁には豚バラチャーシューを角切りにしたものがゴロンゴロンと入っており、旨みが凝縮された柔らかいそれは全く物足りなさを感じさせない。麺を食べ終えてスープ割りを頼むと「柚子を入れて大丈夫ですか?」と聞かれる。柚子が苦手な人もいるので、この辺りの配慮が心憎い。濃度が薄められながらも柚子の香りが立ちのぼるスープは実にキリッと締まっている。大勝軒のように酸味が強いわけでなく、六厘舎のようにドロドロ濃厚という訳でもない。両者の間隙を縫うかのような完成度の高い味となっていました。

住所:神奈川県横浜市神奈川区六角橋1-17-29
くり山つけ麺 / 白楽駅東白楽駅岸根公園駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.5 
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2013年5月9日木曜日

Trainspotting

前回ポストしたカール・ハイドの作品(過去レビュー)へ追記。キャリア初のソロアルバムを作ったきっかけは、どうやらブライアン・イーノだったよう。イーノ主導のプロジェクト「Pure Scenius」に参加したことがソロアルバム制作への大きなモチベーションとなり、シンガーとして前に出るように背中を押してくれたらしい。ブライアン・イーノに、ロンドン五輪の音楽監督を務めたアンダーワールド、芸術監督を務めたダニー・ボイル。そこには大きなコネクションがある。


Trainspotting

何を今更と言われてしまいそうだけど、96年に大ヒットを記録した映画「トレインスポッティング」のサントラについて。言うまでもなく、アンダーワールドがブレイクするきっかけを作った映画で、「Born Slippy(Nuxx)」(過去レビュー)がラストシーンにて実に効果的に使われている。更にはブライアン・イーノの名作「Apollo」(過去レビュー)に収録されている「Deep Blue day」も便所潜水シーンにて引用。そして監督を務めたのが、当時新進気鋭だったダニー・ボイルという訳だ。

96年といえば、ブリットポップが終焉していくタイミング。そもそも当時のブリットポップなんてメディアハイプとしか思えなかったんだけど、ここに収録されている曲はそんなことに関係なく、新旧織り交ぜ実に豪華。プライマル・スクリームがタイトル曲「Trainspotting」を書き下ろし、ダビーな当時の新作「Vanishing Point」(過去レビュー)にも収録。ブリットポップ立役者だったブラーが曲を提供するかと思えば、マッドチェスター・レイヴ・オンな(実際にはハッピー・マンデーズです)ニュー・オーダーの超絶名曲「Temptation」までも収録。UKだけでなく、デトロイトからパンクゴッドファーザーのイギー・ポップ御大がオープニング曲「Lust For Life」を提供すれば、NYアンダーグラウンドのルー・リード翁の「Perfect Day」まで。ドラッギー要素満載なこの映画に欠かせない収録曲群で構成されています。

ただし、「当時の大ヒット映画」だなんて神格化されているけど、今振り返るとミニシアター系映画として大ヒットしたという話。不景気なイギリスを舞台にした、ドラッグに溺れる失業中の若者たちを描いているだけに、万人受けする内容ではない。驚くべくことは、この映画によりアンダーワールドが一躍注目されるようになり、若手俳優のユワン・マクレガーが後にまさかのオビ=ワン・ケノービを演じることになり、更にはダニー・ボイル監督が「スラムドッグ$ミリオネア」でアカデミー賞を受賞したという事実。その意味では実に重要な映画。

2013年5月7日火曜日

Edgeland : Karl Hyde


Edgeland : Karl Hyde

アンダーワールドが現在のようにクラブミュージックへコミットメントする前、彼らがしょぼくれたニューウェーヴバンドだったのは余りにも有名すぎる話。本人達にとっても恥ずかしい過去のようで、公式ディスコグラフィからは初期二作が抹消されていますが、根っこはUKロック直系の叙情性とラジカリズムを持ち合わせたユニットです。そんな業界経験の長い中心人物カール・ハイドが、キャリア史上初となるソロアルバムをリリース。どんな作品になるのか誰も予測できなかったようで、聴くべきかスルーかという判断がリリース前から分かれていました。結論を言うと、絶対にスルーしてはいけない作品。それどころか2013年上位にランキングされる素晴らしさ。

アンダーワールドが持っているダンスミュージック機能が排除されている代わり、彼らのセンチメンタリズムや詩的な美しさに焦点を当てた音楽になっています。これはエレクトロニカ?ポストロック?そのどちらにも属さない壮大なバンドサウンドへと昇華されており、全く新しい形態のロックを提示しています。そもそもアンダーワールドでのカール・ハイドの声は、あくまでもダンスミュージックの一部として機能していたもの。今回はその世界が更に引き伸ばされ、聴き手のインスピレーションを限りなく刺激してくれます。メロディは当然ながらアンダーワールド直系の美しさを保持しており、時にはスコットランド民謡のように牧歌的側面も見せてくれる。ここまで分かりやすく、世界の美しさと寂寥感を訴えかけたロック作品は近年珍しいのでは?

タイトルに冠されている「エッジランド」とは都会の外れ~田舎の始まりとなる地点を指すようで、荒廃と美が同居している風景を描いているとのこと。神奈川県で言えば本厚木の駅から車で10分ほど行ったところみたいなものか?確かにその辺は丹沢山地の美しさがありながらも、荒廃の象徴みたいなヤンキーも多いしなぁ、なんて変に納得したり。ともあれ、ここでは僕ら日本人が見ている風景とは若干違った、グレーターロンドン周辺地域を指しているらしい。デラックス・エディションに付属しているDVDを観ればよく分かる。約1時間もの映像作品が収録されていますが、そこには荒んで打ち捨てられた近郊の景色、そこに暮らす人達が映し出されており、希望はなくとも美しさと寂寥感が表現されている。まさしくサウンドスケープという言葉がしっくりくる、音の情景が心の襞まで染み渡ってくる作品です。

2013年5月5日日曜日

ラーメン二郎 湘南藤沢店



とうとう北海道にも進出し、全国の覇権を目指すラーメン二郎。そんな猛スピードの店舗展開に遅れを取るまいと、日々スタンプラリーのごとく未訪問店をドアノック中。目下、我がお膝元の神奈川県内にある二郎を制覇しようとしていますが、京急川崎店(過去の記事 )や横浜関内店(過去の記事 )、中山駅前店(過去の記事 )、鶴見店(過去の記事 )は既に訪問済み。残る相模大野店に湘南藤沢店のうち、一部の慶應SFC(Shonan Fujisawa Campus)の学生からSFJ(Shonan Fujisawa Jiro)と言われている湘南藤沢店に行ってきました。



ここの店主は横浜関内店で修行を積んだらしい。関内店といえば二郎の中でもクオリティ高いブタを食わせてくれることでも有名なお店。期待に胸を膨らませつつ、小ラーメンにヤサイアブラとニンニク少なめの呪文を唱えました。お店の方の接客態度も良好で、二郎入店時にありがちな緊張感も少ない。

はやる心を抑えつつ、ヤサイの下に隠れているであろうブタを天地返ししながら探し当てる。引きずられたのは厚さ1cmもあろうかというロールされた豚バラチャーシュー *2枚。ヤワヤワに煮込まれたヤツを口に運べば、じゅわっとジューシーな豚の味が口の中に広がり多幸感溢れます。なるほどこいつぁ、関内の味を継承している旨いブタ!

刻みニンニクをスープ全体にまぶしながら、豚骨醤油スープの味を確認する。適度に乳化されており、カネシ醤油の甘さが行き渡っているが、二郎にしては比較的スッキリとした味わい。思ったよりも濃くはなかった。次にモヤシ比率が極めて高いヤサイ、平均に比べてやわ目に茹でられた中太麺、それぞれを混ぜあわせながらズバッと喰らう。麺にバキバキ感はないものの、にゅるっとした舌触りにしゃきっとした野菜がよく合っている。スープの絡まり具合も絶妙で、全体的にやや多めな量ですらあっという間に平らげてしまった。質と量ともに平均点を凌駕しており、食べ終えれば脳内麻薬が分泌されているのが分かるほど。満足して店を出ると、そこには湘南の風が吹いていた。

住所:神奈川県藤沢市本町1-10-14
ラーメン二郎 湘南藤沢店ラーメン / 藤沢駅藤沢本町駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.7 
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2013年5月3日金曜日

Les Revenants : Mogwai


Les Revenants : Mogwai

オリジナルアルバム「Hardcore Will Never Die But You Will」(過去レビュー )から2年ぶりとなるMogwaiの作品。一聴して静謐な作品であることが分かり、「まるでサントラのようだな」と思っていたら本当にサントラだった。その意味で言えば、制作の目論見はみごとに成功しているでしょう。フランスのテレビドラマ向けサウンドトラックとのことですが、グラスゴーの重鎮バンドにこのような作品を作らせてしまうとはさすがフランス。どんな粗筋かと思いきや、田舎町に起きるゾンビと人間の戦いを描いているんだそうな。さすがフランス。狂気と哀しみが満ちている旋律は相変わらずのMogwai節です。

ただし、いつものような轟音はすっぱりと封印。緩く進むリズムの上に、静かなるキーボードや鉄琴による悲しい調べが踊り、押し付けがましくなくスコアが進んでいく。中でもボーカルがフィーチャーされている「What Are They Doing In Heaven Today?」は素晴らしい。カントリー&ウエスタンのようなメロディなのに、泥臭さやグルーヴを完全に排除した演奏は欧州系バンドならでは。開かれた感覚に満ちた、Mogwai新境地とも言える楽曲です。いや、この曲だけじゃない。アルバム全体が、サウンドトラックとオリジナルアルバムの両側面を兼ね備えた新境地となっています。