2013年5月7日火曜日

Edgeland : Karl Hyde


Edgeland : Karl Hyde

アンダーワールドが現在のようにクラブミュージックへコミットメントする前、彼らがしょぼくれたニューウェーヴバンドだったのは余りにも有名すぎる話。本人達にとっても恥ずかしい過去のようで、公式ディスコグラフィからは初期二作が抹消されていますが、根っこはUKロック直系の叙情性とラジカリズムを持ち合わせたユニットです。そんな業界経験の長い中心人物カール・ハイドが、キャリア史上初となるソロアルバムをリリース。どんな作品になるのか誰も予測できなかったようで、聴くべきかスルーかという判断がリリース前から分かれていました。結論を言うと、絶対にスルーしてはいけない作品。それどころか2013年上位にランキングされる素晴らしさ。

アンダーワールドが持っているダンスミュージック機能が排除されている代わり、彼らのセンチメンタリズムや詩的な美しさに焦点を当てた音楽になっています。これはエレクトロニカ?ポストロック?そのどちらにも属さない壮大なバンドサウンドへと昇華されており、全く新しい形態のロックを提示しています。そもそもアンダーワールドでのカール・ハイドの声は、あくまでもダンスミュージックの一部として機能していたもの。今回はその世界が更に引き伸ばされ、聴き手のインスピレーションを限りなく刺激してくれます。メロディは当然ながらアンダーワールド直系の美しさを保持しており、時にはスコットランド民謡のように牧歌的側面も見せてくれる。ここまで分かりやすく、世界の美しさと寂寥感を訴えかけたロック作品は近年珍しいのでは?

タイトルに冠されている「エッジランド」とは都会の外れ~田舎の始まりとなる地点を指すようで、荒廃と美が同居している風景を描いているとのこと。神奈川県で言えば本厚木の駅から車で10分ほど行ったところみたいなものか?確かにその辺は丹沢山地の美しさがありながらも、荒廃の象徴みたいなヤンキーも多いしなぁ、なんて変に納得したり。ともあれ、ここでは僕ら日本人が見ている風景とは若干違った、グレーターロンドン周辺地域を指しているらしい。デラックス・エディションに付属しているDVDを観ればよく分かる。約1時間もの映像作品が収録されていますが、そこには荒んで打ち捨てられた近郊の景色、そこに暮らす人達が映し出されており、希望はなくとも美しさと寂寥感が表現されている。まさしくサウンドスケープという言葉がしっくりくる、音の情景が心の襞まで染み渡ってくる作品です。

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