2013年7月29日月曜日

Bloodsports : Suede


Bloodsports : Suede

11年ぶりに新作をリリースして復活の狼煙を上げたSuede。それほど期待せずに聴いたところ、Suede以外の何物でもない堂々っぷりに激しく感動しました。

90年代中期にブリットポップなるハイプな動きがUKで起こりました。代表格となるバンドがOasisでありBlurですが、Suedeも同列に語られていたもののバンド結成は89年。当時は死に体だったUKロックを復権させ、続くブリットポップへの道を切り拓いたバンドと言っても過言ではありません。

ボーカルを務めたブレット・アンダーソンと、ギタリストのバーナード・バトラーによる、耽美的でグラマラスなロックこそバンドの持ち味。爬虫類的なボーカルによるデカダンスな雰囲気と、歌うように奏でられる妖艶なギターによって、閉塞していたシーンに風穴を開けたのでした。ただし2ndアルバム制作中にブレットとの確執によりバーナードはバンドを脱退、3rdアルバムからはオーディションで採用された若手リチャード・オークスがギタリストとして迎えられました。新体制になったバンドはポップネス爆発の3rdアルバムで懸念された危機感を見事に払拭したのです。

その後はエレクトロ要素を注入したり、アコースティック風味の作品をリリースしたりとバンドは迷走、2003年に活動を停止します。しかしながらブレットとバーナードの和解により2004年に新バンド The Tears が結成され、2010年にはバーナードではなくリチャードがギタリストとして(つまり3rdアルバム以降のメンバーとして)バンドが再結成されました。その流れとして、ようやく2013年になって新作がリリースされたという訳です。

バンドの歴史を長く書いてしまいましたが、新作について改めて言及するとUKロックの極北とも言える出来栄え。Suedeが過去の自分たちをなぞらえたものではない、時代に迎合したものでもない、今の自分たちが鳴らせるロックがピュアに響いているのです。彼らが元々持ち合わせていた耽美性がキープされ、しかも煌びやかにアップリフトされるメロディが永遠に続くよう。これまでのSuedeを総括した最高傑作と言い切れるでしょう。

2013年7月26日金曜日

Random Access Memories : Daft Punk


Random Access Memories : Daft Punk

Daft Punkの新作がかなりの問題作となっており、議論が大きく分かれている。ほぼ生演奏で作られたこの作品は、おそらく語られても語り尽くされることはないだろう。

タイトルに冠されている単語は、コンピュータに多少明るい人なら分かる「任意にアクセスできるメモリ」から来ている。これが「メモリーズ」と複数形になっていることから、ダフトパンクが過去に体験した音楽の欠片たちをちりばめた作品であることは想像に難くない。更にこの作品にチリー・ゴンザレス、ジュリアン・カサブランカス(ザ・ストロークスのボーカリスト)、パンダ・ベア、ファレル・ウィリアムズといった名立たるミュージシャンが参加しており、その中でも突出しているのがナイル・ロジャースであり、ジョルジオ・モロダーだろう。

ナイル・ロジャースは「Le Freak」で有名なディスコ・ファンク・バンド「Chic」のギタリストであり、80年代にはマドンナの「Like a Virgin」、デヴィッド・ボウイの「Let’s Dance」といった大ヒット作やデュラン・デュランをプロデュースし、ディスコ全盛期を支えまくった男。僕ら世代のストライクゾーンを直撃する人物だ。

ジョルジオ・モロダーこそディスコ音楽の父と称されており、この人がいなければ今のクラブミュージックは存在しなかっただろう。プロデュース作品の中で最も有名なのがドナ・サマーの「I feel love」であり、このベースラインこそがディスコ基本形となる。後にアンダーワールドが「King of Snake」でも引用することになる(ジョルジオ・モロダーはクレジットもされている!)。

話がだいぶ逸れたが、ナイル・ロジャース参加の「Get Lucky」こそリードシングルに相応しいディスコチューン。マイケル・ジャクソンのソロ初期に通じる、メロウなファンクだ。伝家の宝刀といえるナイル・ロジャースによるカッティング・ギターのグルーヴたるや!また、アルバムの中でも最も壮大なのがその名も「Giorgio by Moroder」。ジョルジオ・モロダーの半生を振り返るモノローグから始まり、70年代後期を彷彿とさせる印象的なシンセサイザーリフ、徐々に挟まれていくフェンダー・ローズやブギーなベース、サイケデリックなドラム、厳かなストリングス、そして凶悪ノイズと唸りまくるギター。この曲で胸が熱くならない訳がない。

同じ音を二度と出すことが出来ない生楽器を大々的にフィーチャーした彼ら。電子音楽を手軽に制作できる時代になる一方、誰もが同じ音を出せることで画一化する風潮に対した強烈なアンチテーゼとも取れる。また、自分たちのヒーローたちを担ぐことで、彼らに多大な影響を与えた音楽へのオマージュとも取れる。旧来のディスコミュージックだけでなく、メロウなファンクやAORを引用して音楽への偏愛を表明しているこの作品、そう簡単に語り尽くせないだろう。

2013年7月23日火曜日

アタゴロウ

先日、人間ドックに行きました。何度やっても馴染めないのが胃のX線検査、つまりバリウム飲まされてぐるぐる回されるあれです。終えた後にもらった下剤を飲んで腸内からさっさと出すべきなんですが、このところ下剤が効かない。故に腸内でカチカチになり、腹部膨満感に苦しめられることになる。よって、今回はバリウム後のお口直しとして二郎系を喰らって、市販の下剤で一気呵成に腹を下す作戦に出ました。





西新橋の健保センターでドックを終えて、身も蓋もない店名「アタゴロウ」に行きました。愛宕の近くにある二郎インスパイア系だから「アタゴロウ」なのか?どうやら京鰹節つけ麺愛宕というお店が近くにあり、セカンドブランドとして二郎系を展開したとのこと。胸が高鳴るではありませんか。



豚入りラーメンにヤサイアブラを追加します。ニンニクは頼んでいないのに、細かくおろされたものが真ん中にどっかり盛られている。どうやらデフォルトで搭載されるらしい。野菜はキャベツが多めなのが好感度大、ブタはどっしりとした見た目のものが4枚入っている。この状態で天地返しをするのはきついので、先にブタを頬張ってみたところ、でろでろ感はないが脂多めでなかなか食べ応えあり。スープに浸してみれば旨味が倍増し、エナジーがチャージされていくのが分かる。



適度に少なくしたところで恒例の天地返し。中太でやや黄色がかった麺が姿を現す。ワシワシ感が相当あり、かなり顎の力を必要とする。それ故に満腹中枢が徐々に刺激されていくのが分かる。スープは二郎系というよりも濃い目の豚骨醤油という感じで、二郎の味に慣れている人にはライトに思えることだろう。あろうことかゴクゴクとスープを飲み干してしまいたい、という衝動に駆られるがそこは我慢。全体として量がこじんまりとしており、プロのラーメン屋が二郎系に挑戦してみました、的な上品な味。もし貴方が自分を苦しめたいなら、小ブタにヤサイアブラでなく中ラーメン豚ダブルのヤサイマシマシをお薦めしたい。

住所:東京都港区新橋4-11-5
アタゴロウラーメン / 新橋駅汐留駅内幸町駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.4 
昼総合点★★★☆☆ 3.4

2013年7月20日土曜日

連続テレビ小説「あまちゃん」オリジナル・サウンドトラック


連続テレビ小説「あまちゃん」オリジナル・サウンドトラック

ドラマとしては異例の大ヒット、もはや社会現象にまでなりつつある連続テレビ小説「あまちゃん」がぶっちぎり状態になっています。何故ここまでヒットするのか?宮藤官九郎の脚本が面白いから、というだけではないようです。能年玲奈が演じるあまちゃんがピュアで天然な魅力を発揮しているから。小泉今日子が演じる母親 春子のやさぐれっぷりが半端無いから。薬師丸ひろ子が演じる、往年の清純派アイドルにして国民的大女優である鈴鹿ひろ美のワガママっぷりに腹抱えるから。随所に80年代ネタをちりばめて、突っ込みどころが満載だから。…魅力を上げればきりがないんだけど、王道の朝ドラでありながら全方位をカバーしているからだと思います。つまり従来の朝ドラファンも満足できる王道っぷり、僕らアラフォー世代を飽きさせない80年代文化やアイドル事情が盛り沢山。更にはAKB世代までも取り込みつつ、通常の見方ができながらもオタク的に突っ込んだ見方もできるという画期的ドラマなのです。

更にドラマで重要な役割を果たしているのが大友良英による音楽。こちらもドラマのサントラにしては異例の大ヒット。視聴者を元気にするオープニングテーマは誰の耳にも馴染みやすく、泣く子に聞かせればあっという間に笑顔になってしまう曲。スカとチャンチキをベースにしながら、どのジャンルにも属していないという不思議にアヴァンギャルドな曲です。そもそも大友良英はギタリスト、ターンテーブリストにしてアンダーグラウンド音楽の大家。フリージャズを基礎としながらノイズミュージックや現代音楽を追求するミュージシャンです。そんな人が作る音楽だからこそ、耳に馴染み易いながらもどこかひねくれて通をも唸らせる。まさしくドラマのあまちゃんそのものじゃないか。

東日本大震災の後、DOMMUNE FUKUSHIMA!というプロジェクトが立ち上がりました。これにも福島育ちの大友良英が参画していますが、立ち上げ時にライブストリーミングされた大友良英のギターが非常に印象的でした。無言でかき鳴らすフィードバックギターの洪水やノイズの嵐。明らかに大友良英は激怒していました、ギターから火が吹いているかのようでした。故郷が汚されたことに対して、ギターを通じて怒りを表明していました。でも普段は訥々とした喋りで優しさが伝わってくるかのよう。そんな故郷を愛する大友良英の素敵でアヴァンギャルドな音楽こそ、ドラマあまちゃんの重要な構成要素なのです。

2013年7月17日水曜日

ザ・ラーメンスモールアックス


品川や大崎から一駅にもかかわらず、下町の風情を残す味わい深い街。それが大井町だ。この界隈には実に多くのラーメン店が密集しており、ラーメンハンターの僕としては新規開拓しがいのある街となっている。さて、駅からすぐのところに「東小路」という飲食店が密集した薄暗い路地がある。ここには名店「永楽」(過去レビュー )があるが、今回はスルーして更に奥へと突き進む。




お店のロゴはまるで円谷プロが手掛けたようだ。それにしても誰もが首を傾げることだろう、「スモールアックスとは何なのだ?」と。アックスは斧を意味するが、小さい斧とは何を指すのだろうか?答えが見つからないまま、わずか7名ほどしか着席できないL字型カウンターに着席し、小ラーメンを注文する。これまで書き忘れていたが、言うまでもなくこの店は二郎インスパイア系である。故にトッピングをヤサイアブラで注文する。そう言えば、大井町といえば凛・のスた 大井町本店(過去の記事 、今は「凛」に店名が変わっている)が有名だよね。



もやし中心の野菜がずっしりと搭載されており、その上にはプルッとした脂が鎮座している。スープの色はほどよく乳化している。ブタはどこに潜んでいるんだろう?と天地返しをしてみれば…



わっしゃー!!!とした麺を共に現れたブタが3枚。競合他店の柔らかい豚に比べれば、ややハードさを感じさせるものの、噛みごたえがあるので脳内満腹中枢を刺激することが出来る。食べ進むにつれてじわじわとにじみ出てくる肉汁が旨みを演出。そしてやや黄色めの中太縮れ麺を喰らってみれば、他店よりもヤワメに茹でられていた。この茹で加減によってスープをじんわりと染みこませることに成功しており、小麦の香りがハーモナイズする。うむうむ、うめーっす!!!と心の中で叫びながら、やがて麺の下に隠れさせた野菜に到達し、しゃっきりした食感を堪能する。スープはカネシ醤油の攻撃力が低かったので、ジャンクな味とは思えないほど上品でライトな味わいだ。他の客がカラメで注文していたのも頷ける。脂が程よく溶け込んで入るものの、キリッとした感覚さえ覚える。なかなかいい塩梅にまとまった二郎インスパイア系であった。

住所:東京都品川区東大井5-3-5
ザ・ラーメンスモールアックスラーメン / 大井町駅鮫洲駅青物横丁駅
夜総合点★★★☆☆ 3.4
昼総合点★★★☆☆ 3.3

2013年7月14日日曜日

FREEDOMMUNE 0<ZERO> ONE THOUSAND 2013

昨年(過去の記事)に引き続き参加してきました、FREEDOMMUNE 0<ZERO> ONE THOUSAND 2013。東日本大震災被災地支援イベントとしての地位を確立した感がありますが、そもそもDOMMUNEとは何か?を敢えて触れておきますと……70年代ヒッピー文化におけるCOMMUNE(=共同体)という概念を土台とし、Cの次にDがくるように、新世代の共同体でありファイナルメディアこそがDOMMUNEなのです。肉体性と連動するSNS共時性による拡張現実こそがDOMMUNEであり、FREEDOMMUNEとはFreedomとDommuneを掛け合わせた造語。と書かれても何のことか分からなくなってくるから簡単に言うと、FREEDOMMUNEこそ復興支援のフリーイベントなのです。ただし最低でも1,000円の募金が必要、だからONE THOUSAND。取りあえずにせんねんもんだいは見ようと20:00入場を目指すが間に合わず(とほほ)。

【BOREDOMS presents 7x13 BOA DRUM】





BOREDOMSを更に拡張し、91ものドラムセットによるパフォーマンスを実現…なんですが、入場時には既に終わりかけていました。とは言え、これだけのドラムセットが並ぶさまは壮観。もはやアートインスタレーションの域へと達しています。

【Z-MACHINES】





隣の会場へ足を運ぶと、正体不明のロボットが超絶技巧スラッシュメタルを演奏していました。この謎のバンドこそソーシャル・パーティー・ロボットバンドZ-MACHINES。クラフトワークがロボットのふりしてテクノミュージックを演奏するのとは真逆に、本物のロボットが超高速の生演奏をするとは正に近未来!しかもかのSquarepusherが曲を提供しているそうで思わず納得。

【瀬戸内寂聴】



御年91歳になられる瀬戸内寂聴先生の説法で会場は超満員。中に入りきれないので説法いただくのは諦めましたが、女の性や業を語らせたら宇宙一の先生だけに、愛とエロスの香る面白い話が聞けたようです(友人談)。

【GOTH-TRAD】





瀬戸内寂聴先生の隣の会場ではGOTH-TRADがマッドな重低音を響かせており、このフェスの正体がいよいよ分からなくなってきた。ドープネスたっぷりなダブステップで、オーディエンスを阿鼻叫喚の境地へといざなっていました。

【大友良英&あまちゃんスペシャルビッグバンド】







宮藤官九郎脚本のNHK連続ドラマ小説「あまちゃん」。あまりの面白さにより中毒者多発の大ヒットドラマですが、その中で大きな役割を果たしているのが、大友良英率いるあまちゃんスペシャルビッグバンドの音楽。分かりやすくて聴いてて暖かくなるスコア連発ですが、元々はアヴァンギャルドなギタリストなので、随所に狂気じみたこだわりが感じられます。ドラマ視聴者であればどの曲も耳にしたことがあり、大友さんが各曲で軽妙で洒脱な解説をしてくれました。当然ながらオープニングでは大盛り上がり、終演後は誰もが笑顔になっていた素晴らしいライヴでした。

【DJ NOBU】



FUTURE TERROR主宰のDJ NOBU。ベルグハイン直系である一流のアンダーグラウンドテクノを鳴らします。気合と男気に溢れたスピンはもはやこの国トップレベルに達しています。深夜のオーディエンスは体に鞭を打ち、ストイックに踊り続けるしかありません。このプレイが終わった後、会場で落ち合った友人たちとダラダラと2~3時間ほど飲み続けます。振り返ってみれば、どうでもいいようなくだらない話しかしていなかった(笑)。

【冨田勲 featuring Steve Hillage】





日本の、いや世界のシンセサイザー音楽のレジェンドである冨田勲大先生。嵐で中止となった伝説の第1回に出演予定だったんですが、ようやくその雪辱を晴らしてもらう舞台が整いました。サポートするは、これまたレジェンドで説明不要のギタリストSteve Hillage。この時4:30過ぎとなっており、会場には夜明けの光が差し込みます。まさしくドーンコーラスが地球に降り注ぐ瞬間です。ドーンコーラスとは電磁波によって引き起こされる自然現象であり、冨田先生のサポートが長い棒のようなマイクを使って採取し、音源化~サンプリングして荘厳なシンセサイザーに被せます。バッハからスタートし、ホルスト「惑星」へと続く夜明けのイニシエーション。まさに宇川直宏さんが目指そうとしている、意識をネット、更には宇宙にまで拡張させる世界を具現化させた瞬間でした。

2013年7月12日金曜日

AFURI (阿夫利)



恵比寿を代表する、いや今や東京を代表するラーメン店となったAFURI。ここ恵比寿だけでなく、原宿や中目黒にも店舗展開していますが、この店の源流は神奈川県海老名市の有名店である「中村屋」。店主である中村栄利 氏こそ湯切りの技である天空落としの発案者でありラーメン界の天才とも言われていますが、その実兄がオープンさせたのが厚木の「ZUND-BAR」(過去の記事 )であり都内の「AFURI」なのは有名な話。



ご覧の通り、様々なメニューが提供されていますが、「らーめん」と「つけ麺」の二つに大別できる。今回は基本中の基本である「塩らーめん」を注文します。



らーめんのスープはZUND-BARと同様「淡麗」と「まろ味」の2種類が提供される。こだわり抜いたスープをそのまま楽しみたいなら「淡麗」、それよりも更にコクを追求したいというなら鶏油を多くした「まろ味」を選ぶことになる。今回は「まろ味」をお願いした。



もはや芸術の域に達している美しさ。食べる前から美味体験を約束しているエクステリアだ。柔らかく香ばしい炙り豚バラチャーシュー、細目に刻まれコリコリしたメンマ、濃厚で甘みのある半熟卵、新鮮な水菜と海苔。具材のどれをとっても申し分なし。黄金に輝いた透明スープは鶏がらベースではあるが、魚介と野菜を複雑に組み合わせており崇高な味わい。小麦の香ばしさをキープした極細麺はつるつるしており、スープとの相性が抜群だ。ものすごくシンプルなんだけど、何度食べても飽きのこない美味しさとはこのことだ。全てが黄金比率の上に立脚しており、東京ラーメンの完成形と言っても過言ではない。

住所:東京都渋谷区恵比寿1-1-7
AFURIラーメン / 恵比寿駅代官山駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.6 
昼総合点★★★☆☆ 3.6

2013年7月9日火曜日

Identity Politics : Shin Nishimura


Identity Politics : Shin Nishimura

2008年3月にリリースされたシン・ニシムラのライヴ・アルバム。とは言っても収録されている曲は全てオリジナル新曲なので、ライヴレコーディングされた実質的3rdアルバムという位置付け。収録場所は主宰するPLUS TOKYOのホームグラウンドだった代官山AIR。この頃から自身の音が確立されてきたというか、揺らぎなく確信のあるトラックが連発されています。音数少ないミニマルとエレクトロを行き来するオプティミスティックな雰囲気は相変わらず。ベルリン志向にありがちなダークネスを醸し出す部分など微塵もなく、時折挿し込まれるアシッド音が実にからっとしている。後半以降はアシッド濃度が徐々に高くなっていくが、感じられるのは狂気ではなく享楽的な気持ちだけ。終盤ではUnderworldの「Cowgirl」ボーカル部分をサンプリングしていると思われる「Voodoo Camp」がイカレ気味。やはりこの人は現場の雰囲気があればこその人なんだと実感。

2013年7月6日土曜日

頑者 新横浜ラーメン博物館店



つけ麺が隆盛を誇っている中、主流となるのが濃厚つけ汁、魚粉に極太麺というスタイル。これで一番人気となっているのが「六厘舎」ですが、このスタイルを確立したのが我こそ、と主張しているのが川越の名店「頑者」です。遡れば2000年代初期から開業しているので、なるほどこの分野では「六厘舎」よりも先駆けなんだろう。横浜在住の僕にしてみれば川越に行くのはつらいので、新横浜ラーメン博物館に出店している支店に足を運びました。



特製つけめんの食券を買います。1,100円也。お客さんがラー博に入るには入場料が必要だ。僕はフリーパスをもっているので問題ないが(軽くドヤ顔)、それに加えてこの値付けはちょっと高い。しかも平均的なつけ麺店は並盛、中盛、大盛が全て同じ値段だが、ここのはおそらく並盛だ。ラー博出店にはコスト面で事情があるんだろうが、それでも高すぎる。



麺の上に炙りチャーシューが鎮座している。極太と謳ってはいるが、中太レベルで表面つるつる中身もっちりの、やや柔らか麺でコシは少ない。普段からワシワシした麺で顎の筋肉を鍛えている僕にしてみれば柔らかいのだ。炙りチャーシューは脂が多めだが、ほろっと柔らかく崩れていくのが心地よい。さて、つけ汁に浸したところ、濃厚という割にはドロドロ感が少ない。動物系の獰猛さは感じられず、どちらかと言えば魚介系の主張が強い。甘みはあるがコクはそれほど感じられず、麺との相性も抜群というほどではない。しかもあつもりにしなかったので、スープもあっという間に冷めてしまった。具材にはナルト、メンマ、短冊チャーシュー、海苔、半熟味付玉子が使われているが、どれも及第点といったところ。最後にスープ割で残ったスープを飲み干すが、塩味がやや強く感じた。どれをとっても平均点といったところ。群雄割拠のつけ麺業界で突き抜けるには、相当な企業努力が必要なようだ。

住所:神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21 新横浜ラーメン博物館 B2F 
ホームページ:http://www.ganja.co.jp/
頑者 新横浜ラーメン博物館店つけ麺 / 新横浜駅 ) 
夜総合点★★★☆☆ 3.0 
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2013年7月3日水曜日

Star Light : Shin Nishimura


Star Light : Shin Nishimura

Shin Nishimuraの新譜(というか1年前にリリースされた作品)を聴いてから、久々にデビューアルバムを聴き返した。2005年にリリースされたから既に8年も経過している訳です。さて、今振り返ってみると、やはり新作と比べて完成度は低いと言わざるを得ない。いや、決して悪い出来ではないんだけど、何がやりたいのか伝わってこない気がする。元々Shin Nishimuraが持っているバックグラウンドは、ハードミニマルを土台としたアシッドリバイバル発展形だったと勝手に理解している。それがぶれてしまっているようだ。

キラキラした流麗なディスコティークで一気に期待は高まるが、前半はシカゴハウスを貴重としたエレクトロや地味でファニーなエレクトロが続く。後半のオールド・スクールなスタイルを用いたテックハウスを境にして、徐々にハードなミニマルが導入されていく。突如としてディスコスタイルのトラックになったかと思えば、最後はアシッドリバイバルトラックで締まる。音の雰囲気というか使い方は統一感があるんだが、いかんせんトラック全体に統一感がない。取りあえずやりたいことを全部やりました、的なムードというか。何しろデビュー作なので仕方ないとも言える。続く「Vlow」(過去レビュー)も微妙な出来具合だったが、ようやくここ最近になって自分のスタイルが確立できたようだ。