2013年7月26日金曜日

Random Access Memories : Daft Punk


Random Access Memories : Daft Punk

Daft Punkの新作がかなりの問題作となっており、議論が大きく分かれている。ほぼ生演奏で作られたこの作品は、おそらく語られても語り尽くされることはないだろう。

タイトルに冠されている単語は、コンピュータに多少明るい人なら分かる「任意にアクセスできるメモリ」から来ている。これが「メモリーズ」と複数形になっていることから、ダフトパンクが過去に体験した音楽の欠片たちをちりばめた作品であることは想像に難くない。更にこの作品にチリー・ゴンザレス、ジュリアン・カサブランカス(ザ・ストロークスのボーカリスト)、パンダ・ベア、ファレル・ウィリアムズといった名立たるミュージシャンが参加しており、その中でも突出しているのがナイル・ロジャースであり、ジョルジオ・モロダーだろう。

ナイル・ロジャースは「Le Freak」で有名なディスコ・ファンク・バンド「Chic」のギタリストであり、80年代にはマドンナの「Like a Virgin」、デヴィッド・ボウイの「Let’s Dance」といった大ヒット作やデュラン・デュランをプロデュースし、ディスコ全盛期を支えまくった男。僕ら世代のストライクゾーンを直撃する人物だ。

ジョルジオ・モロダーこそディスコ音楽の父と称されており、この人がいなければ今のクラブミュージックは存在しなかっただろう。プロデュース作品の中で最も有名なのがドナ・サマーの「I feel love」であり、このベースラインこそがディスコ基本形となる。後にアンダーワールドが「King of Snake」でも引用することになる(ジョルジオ・モロダーはクレジットもされている!)。

話がだいぶ逸れたが、ナイル・ロジャース参加の「Get Lucky」こそリードシングルに相応しいディスコチューン。マイケル・ジャクソンのソロ初期に通じる、メロウなファンクだ。伝家の宝刀といえるナイル・ロジャースによるカッティング・ギターのグルーヴたるや!また、アルバムの中でも最も壮大なのがその名も「Giorgio by Moroder」。ジョルジオ・モロダーの半生を振り返るモノローグから始まり、70年代後期を彷彿とさせる印象的なシンセサイザーリフ、徐々に挟まれていくフェンダー・ローズやブギーなベース、サイケデリックなドラム、厳かなストリングス、そして凶悪ノイズと唸りまくるギター。この曲で胸が熱くならない訳がない。

同じ音を二度と出すことが出来ない生楽器を大々的にフィーチャーした彼ら。電子音楽を手軽に制作できる時代になる一方、誰もが同じ音を出せることで画一化する風潮に対した強烈なアンチテーゼとも取れる。また、自分たちのヒーローたちを担ぐことで、彼らに多大な影響を与えた音楽へのオマージュとも取れる。旧来のディスコミュージックだけでなく、メロウなファンクやAORを引用して音楽への偏愛を表明しているこの作品、そう簡単に語り尽くせないだろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿