2013年8月26日月曜日

Welcome Oblivion : How to Destroy Angels



Welcome Oblivion : How to Destroy Angels


遂にフルアルバムをリリースしたHow To Destroy Angels(以下 HTDA)。NINが今年のフジロックで復活を果たし、間もなく久しぶりのアルバムもリリースしようとしていることから、トレント・ レズナーがここ数年の働きっぷりでピークを迎えようとしているのは間違いない。かつでのミスター自己破壊が恐ろしいほどの躁状態になっているのは逆に何だか気味が悪い。ただし、HTDAのフルアルバムから聴こえてくるのは相変わらずの鬱々とした音なので、三つ子の魂百までというべきか。


さて、アルバム収録曲のうち複数は先行シングルである「An Omen EP」(過去レビュー)にも収録されているので、アルバム全体としての目新しさは感じない。逆に「An Omen EP」で輪郭が見えだした世界観が、このアルバムで全容を現したたと言っていい。初期NINにおける破壊的ノイズギターが聴こえることはほとんどないが、ここ数年のNINにおけるダークエレクトロニカを更に研ぎ澄ませたかのよう。ブレーキの効かない暴走車のようなかつての疾走感はないが、それと引き換えに奥方マリクィーン・マンディグの持つウィスパリング・ボーカルが冷徹な美しさを表現している。車に乗りながら爆音でこのアルバムを聴いたんだが、低音の鳴りは明らかにこれまでと違っている。誤解を恐れずに言えばまさしくポスト・ダブステップだ。パートナーの声を最大限に活用して、新しい世界を描こうとしているのは明らかだ。NINと同列に語るのではなく、この新しいポップな陰鬱世界に身を委ねれば自ずと見えてくる。


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