2013年9月19日木曜日

Made in Basing Street : Producers


Made in Basing Street : Producers

古い旅行写真を見返したとき、感傷的な気分になることはないか?その時に感じた料理の味や風のそよぎ、空気の匂いなどを瞬時に思い出すことはないか?僕はこのアルバムを聴いたとき、まさしくこのような感覚を覚えた。懐かしいんだけど今ここにいるような感覚。過去の自分が今ここに蘇ってくるような錯覚。そういった魔法がこのアルバムには詰め込まれている。

Producersは2006年にデビューを果たしたバンド。2012年には本デビューアルバムをリリースしているが、それまでシングルリリースや小規模なライブ活動と並行してアルバム制作を続けていた。と書くと、まるでこのバンドは売れてない新米バンドと思われがちだが実は違う。トレヴァー・ホーン、ロル・クレーム、ステファン・リプソン、アッシュ・ソーンを中心として結成された、文字通りプロデューサー達によるスーパーバンドなのだ。

トレヴァー・ホーンは「ラジオ・スターの悲劇」で有名なバグルスからキャリアを始め、イエスへ参加した後はZTTレコードを立ち上げてプロデュース業に専念することになる。ロル・クレームは「I'm Not In Love」で有名な10ccに参加した後、バンド活動だけでなく映像制作でも有名なゴドレイ&クレームのメンバーとなる男。ステファン・リプソンはZTTレコードに於けるトレヴァー・ホーンの右腕として活躍し、FGTHやペット・ショップ・ボーイズ等の作品制作に関与している。ドラムを担当するアッシュ・ソーンはこの中でも若手で、長い歴史を持つ英バンドSqueezeにドラマーとして参加した経歴を持ち、その他多くのアーティスト作品にスタジオミュージシャンとしている。

そんな熟練職人集団のようなバンドだけに、この作品の完成度はずば抜けて高い。英国一流のポップセンスを高らかに主張し、非の打ちどころがない演奏技術に舌を巻く。録音技術もおそろしいほど素晴らしく、その音質の良さや音響の組み立てっぷりに改めて感動する。全体的にZTT色はそれほど濃くなくて、思いっきりバンド風情なんだけど、ニューウェーブ的にカラフルなポップスやAOR、ブルース、カントリーといった様々な要素がたっぷりと詰め込まれている。80年代における色鮮やかでマジカルなポップ色が全開になっているので、あの時代を知っている人たちは(もちろん知らない人たちも)是非聴いてほしいアルバムです。

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