2014年12月29日月曜日

25 : 電気グルーヴ

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結成25周年を迎えた2014年、数多くのフェスやメディアに出演を果たし、自らのツアーであり奇祭である糞塗祭を成功裏に終わらせた電気グルーヴ。そんな彼らがリリースしたミニアルバムが素敵すぎます。30分程度の収録時間ながら、糞のように密度が高すぎます。この作品を当ブログ今年最後の記事として上げさせてもらうのは実に光栄です。

「モノノケダンス」(過去レビュー)を焼き直したかのようなエレクトロ「Baby's on Fire」で幕を開け、「電気グルーヴ20周年のうた」を更にハッテンさせた「電気グルーヴ25周年の歌(駅前で先に待っとるばい)(25 Mix)」でもはや絶頂寸前のイク5秒前。「20周年」の歌詞やPVは個人的にドツボだったんですが、「25周年」では個人的に糞壺レベルの仕上がりになっていると感じます。意味を成さないながら、相変わらず語感を大事にする歌詞だなあ…とぼんやり考えていたんですが、この作風が如実になったのはいつ頃からだったろう?と思い返せば、史上最汚の発明品だった「VOXXX」の頃からだったね母さん…。

「A.C.I.D.I.S.C.O.」では文字通りアシッドベースラインに、クラシックディスコのサンプリングが上モノに使われていますが、このサンプリングの元ネタは何だろう?「Shangri-La」(もしくは「Spring Rain」)のように聴こえなくもない(識者の方教えてください)。続く「Super Star (Re-boot)」は「J-POP」(過去レビュー)に収録された「スーパースター」をagraphがrebootさせたもので、フロアオリエンテッドで徐々にビルドアップしていく様が最高。「Pan! Pan! Pan!」は限定アナログ盤のB面に収録されている、60年代ロックンロールを下地にしたトラック。最後は1分にも満たないマッシヴなビートで締める。通して聴くと、全体の流れを上手く作り上げているなあと実感します。

2014年12月25日木曜日

You're Dead! : Flying Lotus

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アフロ・フューチャリスティック DNA が刻印された生粋のサラブレッド Flying Lotus が、めくるめく曼荼羅サイケデリックワールドを引き連れて三途の川からこんにちは。しかも前作と同様、FlyLo と同レベルの血統を持つベーシストの Thundercat を筆頭に、大御所ジャズピアニストの Herbie Hancock、ラッパーの Kendrick Lamar や Snoop Dogg といった豪華布陣で固めまくり、くらくらと眩暈がするような新たなる潮流を創り出しています。既存フォーマットに捉われない、ヒップホップやエレクトロニカをベースとしたLAビートミュージックなのは変わらずですが、これまで以上にジャズの香りが濃厚に立ち込めています。しかも瀕死状態のジャズをなぞらえているのでは無く、ビートミュージックのエッセンスを注入することにより超絶プログレッシヴで前衛的な40分一大組曲として仕上げ、ジャズを死後の世界から蘇らせる手法。あまりにもスピリチャルであり、これはもう臨死体験の一部としてもいい。濃密に緻密に盛り込まれた情報量は、黄泉の世界を現世に作ろうとしているのか?

前の記事では Aphex Twin との関連性について書きましたが、奇しくも今年はAphex Twin が13年ぶりの新作をリリースした年。同じレーベル以外に両者のつながりはありませんが、Aphex Twin が真っ白けな有機運動的テクノであるのに対し、FlyLo はテクノロジーを感じさせない真っ黒けで生々しい作風。どちらにも狂気がまぶされていることに間違いはありません。

2014年12月21日日曜日

ラーメン二郎 めじろ台法政大学前店


或る晴れた日。高尾山に登って天狗に会おう、とひたすら車を走らせていた。ドライブし続けて90分もすると、赤・青・黄の鮮やかな3色が目に飛び込んできた。信号機と勘違いしてしまい、思わず車を停めてしまったが、それこそ二郎の黄色い看板と、赤と青の自動販売機であった。辺りに漂っている豚骨臭が鼻孔をくすぐり始めたので、高尾山を征服するのは中止にして、その代わりに二郎という聳え立つ山を征服することにした。時は14:00、閉店まであと30分。店内外には8人ほどの法政大学生らしき屈強な若人たちが並んでいたが、どうにか着席することが出来た。


ラーメン小をニンニクヤサイアブラで注文。さすればヤサイがうず高く盛られ、頂上にはプルプルした豚のアブラがまぶされた巨大な山が目の前に姿を現した。山頂に降り積もった雪のようなアブラの下には、草原のように鮮やかな黄緑色のキャベツが比率が高めで存在感をアピール。山の麓にはとぅるんとぅるんとしたアブラを湛えたブタが、茶色い岩石のようにごろんごろんと転がっている。その横には細かく刻まれたニンニクが、道端に咲くたんぽぽのように黄色く彩りを添えている。高尾山よりも険しそうな山が目の前に現れたが、こんなものを征服するのは実に簡単だ、と思わず高を括る。だがそれこそ己の未熟さであった。

巨大岩石の塊のようにぶちこまれたブタ2つは、コラーゲンたっぷりの脂部分がじんわりと柔らかい。肉本体にも煮汁がばっちり染みわたり、噛みしめればホロホロと柔らかく繊維質が崩壊していく。ニクニクした豚肉を先にやっつけ、スープにニンニクを溶かしながらじっくりと味わう。それほど乳化していないスープには豚骨の旨味とエフゼットの甘辛さが溶け込み、どんな山でも簡単に征服できる!ヒャッハー!と自分を全能の神と錯覚してしまうほどの覚醒感に満ちている。


山を覆い尽くす野菜をある程度刈り取ったところで、おもむろに天地返しを行えば、小麦色の平打ち麺がスパルタンな物量で登場した。表面はぬめぬめしているが、噛めばワシワシ、噛みしめる度にグニグニした食感。麺を食べ進めるにつれて、胃袋を容赦なく膨張させていく小麦パワーを感じ、これは全部食べきれないのでは…?と汗をかき始めた頃にようやく完食。旨い。美味すぎて、アブラが溶け込んだスープもじっくりと堪能。ライト寄りの味ながらも奥深い旨味のあるスープは、山頂で飲むコーヒーかと勘違いしてしまうほど芳醇だ。拡張しきった胃袋の膨満感を味わいながら、どうにか征服することが出来た自分を労ったが、簡単に征服しようとした自分こそ天狗なのであった。高尾山で天狗に会うのもいいだろうが、二郎で天狗になるのも悪くない。

ラーメン二郎 めじろ台法政大学前店ラーメン / めじろ台駅八王子みなみ野駅山田駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2014年12月17日水曜日

Syro : Aphex Twin



2014年 音楽シーン最大級の話題として挙げられるのが、Aphex Twin が「drukqs 」以来13年ぶりに新作をリリースしたこと。あれから13年も経ったことに驚いているんですが、その間に Aphex Twin こと Richard D.James が二児の父親になっていたことにも驚愕。変人奇人の変態テクノ野郎として名を馳せた彼も、普通に恋に落ちて結婚して父親になったんだなあ、と変な感慨にふけてしまった。

さて本作がリリースされるにあたっては、突如としてロンドン上空に AphexTwin ロゴのある飛行船が浮かび、世界中の街中や裏道そこかしこにステッカーやポスターが貼られるというゲリラ的ポロモーションが展開されました。こういった匿名的な戦略で煽りまくったのは Aphex Twin らしかったんですが、13年のブランクをどのような音で埋めるのか、個人的に不安であったのも事実。そして一聴して思ったのが「音がいい」こと。

初期のアシッドハードコアな時期、「Selected Ambient Works 85-92」(過去レビュー )に見られる純朴でドリーミーなデビュー時期、アイロニーに満ちた「I Care Because You Do」(過去レビュー )以降と、音質は常に良くなかったんですが、本作では霧が晴れて澄み渡った山頂のように音がクリアになっています。当然、最新機材を駆使して創られた作品に違いないんですが、作風にも適当さが全く見当たらない。逆を言えば、相当入念に作りこんだ意思と統一感が感じられます。

はからずも「I Care Because You Do」以降の悪意やシニカルさは薄れ、「Selected Ambient Works 85-92」時期の純朴性や良質なユーモアが復活している。時代を切り開いていった時期を期待する人は肩透かしを食らうだろうけど、僕にしてみりゃ猿的リピート必須な快楽物質の塊。アナログ感覚たっぷりでドリーミーなシンセ音と旋律、ドリルなひねりがまぶされ最新型音質にアップデートされた緻密ビート、アシッドな気持ちがぎっちぎちに詰め込まれたベースライン。どこを切っても Aphex Twin の音、しかも最新型。世界の各地で交わされる本作の議論を、にんまりとほくそ笑みながら横目で見ている Richard D.Jamesの顔が浮かんでくる作品です。

2014年12月13日土曜日

甲子家


この間、東京こそが世界屈指のラーメンシティであると書きました が、もっと言えば世界屈指の家系ラーメンシティこそ横浜、というのは揺るぎない事実。家系こそ「吉村家」(過去の記事 )を総本山に頂き、主流・亜流に細分化されている壮大なるサーガであることは間違いありませんが、「吉村家」と決別した「本牧家」の流れを汲む「寿々喜家」(過去の記事 )も一大勢力となっています。その「寿々喜家」で修業を積んだ店主がいるのが、今回訪問した「甲子家」です。最寄りの駅から徒歩圏外ですが、車で訪問する地元客でいつも賑わっています。家系カラーの赤とは真逆の青を看板に使っているのもなかなか斬新です。


入店すると同時に、愛想のいい店主が「いらっしゃい!」と声を掛けてくれて好感度大。メニューに目をやれば、家系ラーメンの心の拠り所といえる「酒井製麺」の文字が。ラーメン中盛を麺硬めでお願いしますが、「細麺」という文字も気になるところ。家系と言えば中太以上の太めストレートが主流ですが、このような細麺を提供しているところは初めて見た。これは是非次回にチャレンジしてみたいと思います。ちなみに支払は前金という変わったシステムになっています。


通常の家系よりも色が濃いスープを湛えた一杯が着丼。上澄みに張られた油膜が厚く、見るからにスープに込められた熱を封じ込めているのが分かる。ちょいと熱々スープを啜ってみれば、ラードと鶏油の動物的な味わいが感じられ、更にスープを啜れば豚骨醤油よりも醤油寄りのすっきり~あっさりした味わい。角が取れて丸みがある優しい口当たりは、濃厚さを是とする家系原理主義者からは異論が出てくるでしょうが、豚骨醤油と醤油の中間に位置する「醤油豚骨醤油」と考えれば新発明と言える領域です。具材は基本に忠実な豚ロースチャーシュー、ほうれん草に海苔。チャーシューはしっかりした食べ応えながらも、ほろりと柔らかくて優しい気分になれる。


緩やかウェーブな中太ストレート麺は短く切られており、家系としてのDNAも十分感じられる。もっちりした食べ応えの中に、上品な小麦の香りが吹き抜けていく。さらりとしながら奥深さのあるスープと互いに補完し合って、麺を食べ終わった後もスープを啜り続け、いつの間にか汁完してしまった。個人的には銘店の域に達していると思いました。スーパーローカルながら、近所に住んでいる人は勿論のこと、多くの人に食べてもらいたい味です。

甲子家ラーメン / すずかけ台駅つくし野駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2014年12月9日火曜日

Songs Of Innocence : U2

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作品の出来とは別次元で、U2は「No Line on the Horizon」(過去レビュー)以来5年ぶりのアルバムのプロモーション戦略で失態を犯した。iPhone 6 の製品発表とタイアップして、突如として新作を無償配信したのだ。iTunesアカウントを持っている全てのユーザは、個人の好みに関わらず勝手に音源配信されてしまうという強引なやり方で。「好きでもないバンドのために、貴重な容量を食われたくない」という苦情が続出し、これを受けてAppleは削除ツールを用意、ボノもネットで謝罪を表明した。アップルとU2のこの強引なプロモーションは明らかにクールとは言えず、金の匂いがプンプンするイベントとタイアップするU2の姿勢には僕も疑問を感じた。社会貢献活動に熱心なのに自家用ジェット機で移動するセレブリティな行動に違和感を覚えるのと同様に(9年近い前の記事で偽善を指摘したけど)、今回の騒動でもものすごく残念な違和感があった。

そもそもアルバムの無償配信という手法は、数年前から複数アーティストが実施してきた手法で新しいものではなく、それを何故今どきになって行うのか理解に苦しむ。更にはオジー・オズボーンからは「自分勝手」と非難される始末。「お前はU2支持派なんだからいいじゃないか」だって?冗談じゃない。CDのデラックス盤を購入しリッピングしたんだけど、DL版がダブってトラックリストに上がってくるんだよ。つまり1曲が2回再生されてしまうのだ。DL版を削除しても、いつの間にかゾンビのようにトラックリストに上がってくる。こういった思慮を欠いた戦略は本当に勘弁して欲しいと思う。

この騒動のせいでアルバムの本質そのものが失われてしまった気がする。初期3部作の雰囲気をうまく活かしたジャケットと合わせて、タイトルから汲み取れる通り、イノセンスで内省的な作風は極めて優れている。自分たちのヒーロー Joey Ramone や Joe Strummer への敬愛を表明した姿勢からは熱いものを感じ、控え目ながら家族や恋人、友人や隣人への愛を伝えようとする姿勢には共感を覚える。それだけ深みがある内容なのに、今回の無様な戦略を考えるとアルバム全体の価値は極めて低いものとなってしまった。

2014年12月5日金曜日

無頼庵

ロック史を振り返ると、いつの時代にもブライアンという名のつく男たちがいた。60年代ではビーチボーイズのブライアン・ウィルソンやストーンズのブライアン・ジョーンズ、70年代以降ではロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーやブライアン・イーノ、クイーンのブライアン・メイ、80年代以降ではブライアン・セッツァーやブライアン・アダムスといったところだ。そして時は流れて21世紀になると、世田谷区の経堂にロック魂溢れる二郎系ラーメン店が出現する。その名は「無頼庵」。


世田谷区と言えば「ラーメン二郎 上野毛店 」「 」「蓮爾 さんこま店 」「らーめん 辰屋 」「りらくしん 」といった本流およびインスパイア系が軒を連ねる二郎系の激戦区。いや、激戦区というよりも日本で一番、二郎密度が高いエリアと言える。何故このようなセレブリティタウンに、これほどの二郎系が集結するのか?理由は明快、前にも言及したが セレブリティは二郎系がお好きだからだ、そうとしか考えられない。だが、世田谷にロックは似合わないのでは?ためしに「世田谷区 ロック」で検索してみると「オートロック」という結果がわんさか出てきた。なるほど…セキュリティ意識の高いセレブリティタウンならではの発想だ。Lock と Rock で整えるとは…。とりま、入店してきた。


ラーメン並盛をヤサイアブラで注文。隣に座った男性が苦悶の表情を浮かべながら食べているので、だんだん心配になってきたところへ美しい山もりが目の前に降臨した。事前情報によればキャベツ比率が低いとのことだったが、ご覧の通り色鮮やかなキャベツがちらほら見えて一安心。もやしは軽く茹で上げられているのでシャキシャキ感がばっちり残っている。ブタは大ぶりの岩みたいなやつが一塊ぶっこまれている。まさしくロック!適度に煮込まれているので肉の食感を楽しむには最適だが、もっとホロホロに煮崩れするぐらい柔らかくてもよかっただろう。いや、ロックはヤワではいけないという意思表示なのかもしれない。


ヤサイにスープをふりかけて大地の恵みを感じつつ、全体ボリュームを徐々に減らしていく。卓上にあるカラメボトルを振り掛けて食い進むのもありだろう。スープは事前情報の通りの味わいで、相手を激しく強打するほどの打撃系ではなく、優しい味わいの豚骨醤油スープと言ったところだ。言うなれば狼の皮を被った羊のようなもので、見た目で相手を圧倒しながら、実のところは優しくなくてはいけない、というロックの本質を見る思いがした。そして全体のかさが減ってきたところでおもむろに天地返し。つるりとした表面のもっちりもちもち極太縮れ麺は圧倒的ボリュームで、胃袋と脳みその満腹中枢をじわじわと刺激していく。隣を見ると先程の男性は今にもぶっ倒れそうな勢いで麺を残していた。取りあえず全ての麺を回収したところでゆっくりとスープを味わう。やはり優しい味わいでビート感覚はないが、壮大なロックバラードのような一杯であった。

無頼庵ラーメン / 経堂駅宮の坂駅千歳船橋駅
夜総合点★★★☆☆ 3.5
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2014年12月1日月曜日

Do It Again : Royksopp & Robyn

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ノルウェーのエレクトロデュオ Royksopp が「ラストアルバム」をリリースしましたが、本作はその前哨戦として2014年3月にリリースされたEP。そもそも「ラストアルバム」と言えども、アルバムフォーマットとしてのリリースは最後という意味合いで、音楽制作をやめるという意味合いではないので一安心。

本EPで連名となっている Robyn とはスウェーデンの女性ポップシンガーであり、過去の作品「Junior」(過去レビュー)でも共演している盟友。彼ら二人が構築する温もりある北欧エレクトロに華を添えていますが、もはや共演というよりはユニットと言っていいかも。この作品で聴けるのはこれまで以上に哀愁漂う刹那的でブリーピーでアシッドな音。特にタイトル曲「Do It Again」はダフトパンクの「One More Time」へオマージュを捧げているんじゃないの?「One More Time」が持っている祝祭感は全くないんだけど、思いっきり「One More Time」って歌っているからね。しかも、曲が持っている輝きエモーションはかなり共通している。ややもすると昨今の EDM シーンを意識して(または否定して)いるかのようです。

2014年11月27日木曜日

紫 くろ喜


言うまでもなく日本で一番、いや世界屈指のラーメンシティである東京。チェーン店を含めるとおそらく一万店を超える店舗数になるであろうメガラーメンシティにおいて、食べログ評点が4.0を超えるお店がわずかながら存在します。その内の一つが浅草橋にある「紫 くろ喜」です。普段は「饗 くろ喜」として営業していますが、金曜日のみ「紫 くろ喜」とその名を変えて営業し、限定メニュー「鴨そば」を提供するというマニア心をくぐる営業形態になっています。


入店して「鴨そば」の細麺を注文。ご覧の通り、細麺にはパン用小麦粉が主に使用されており、もう一つの手もみ麺にはうどん粉が主に使用されているとのこと。通常の「鴨そば」以外に「鴨つけそば」や「白湯つけそば」も用意されている。こちらも気になるところです。また、スープに使われているカエシやダシにも相当こだわりがあるようで、卓上の説明文を読むと否が応でも期待が高まります。


また、それぞれの具材の品質にもこだわり抜いており、上品な蕎麦屋のような佇まいと相まって、ラーメン店のクオリティも遂にここまで来たのかと軽く感動します。


上質な器に盛られて「鴨そば」が着丼。濃い目の醤油スープに浮かんでいるのは、拍子切りにされた甘みのある長葱、綿実油とにんにくでコンフィ(フランス料理の調理法が使われたラーメンは初めて見た)にされたという玉葱(個人的には最高の品質である淡路産だ)、むっちりと柔らかくも適度な食感が素晴らしい鴨ロース、旨味がじんわりとしみ込んだ柔らか極太メンマに新鮮な春菊です。やはりラーメンの枠を超えているとしか思えない。


スープは様々な生醤油・本生醤油・再仕込み醤油をブレンドさせたことにより、始めはシンプルな味わい、やがて複雑に広がっていく深みと奥深さを感じさせる。ダシも鴨の様々な部位を使っているそうで、まさしく骨の髄まで鴨を使い切った至高な醤油スープに仕上がっています。極細ストレート麺はお店の触れ込みにある通り、絶妙に配合された小麦の風味が香ばしく、歯応えとコシがあってスープとの相性も素晴らしいです。じっくりと五感を開放して、全ての感覚を研ぎ澄ませることによって味わえる奥深さ。実に完成度の高い一杯でした。

紫 くろ喜ラーメン / 浅草橋駅岩本町駅秋葉原駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2014年11月23日日曜日

Unplugged 1991-2001 : R.E.M.



真のオルタネイティヴバンドとして、解散してもなお絶大なる支持を得ている R.E.M.。そんな彼らが今年4月のレコードストアデイに「MTV Unplugged」の音源をアナログリリース、6月には待望のCD/デジタル音源をリリースしました。そもそも今となってはすっかり廃れてしまったMTVの人気番組「Unplugged」ですが、特に90年代はロックシーンに対して絶大なる影響度を誇っていました。ロック界の超大物たちが轟音を控え、アコースティック楽器のみ使用することによって、楽曲の本質が浮き彫りにされるさまが人気を博したのでしょう。特にR.E.M.に至っては1991年と2001年に2回も出演しており、唯一の2回出演アーティスト/バンドだとか。それは取りも直さず米国で途方も無い人気があると同時に、Unplugged と相性が良いバンドだからなんでしょう。

1991年に収録された音源は、彼らが大ブレイクした直後ということもあり、「Out of Time」(過去レビュー)と「GREEN」(過去レビュー)からの楽曲が多い。また2001年音源には当時の最新作「Reveal」(過去レビュー)を中心に、ドラム担当のビル・ベリー不在のバンドの風景を伝えています。ただし1991年と2001年の間にある10年の時間差は全く感じられず、彼らの楽曲が持つ美しい歌心と、それを情感豊かに表現するマイケル・スタイプの姿は常に一貫している。その普遍性に素直に感動させられるライヴ音源でした。

2014年11月19日水曜日

綱島商店


綱島駅の近くをウロウロしていた時、何の前知識もなくふらりと足を運んだお店。これまでに何度か言及している通り、日吉~綱島エリアは横浜北部の中でもラーメン激戦区として知られ、ひと通りの味を試すことが出来るエリア。そんな綱島駅から超至近距離(というより駅の一部)にあるこのお店はどうやら横浜家系ラーメンを食わせてくれるらしい。店内に入り「ラーメン(並)」の食券を購入し、麺固めをお願いする。11:00~18:00はミニライス無料(しかもおかわり自由)とのことなので、こちらも迷わず注文。それにしても店員さんのコール&レスポンスが大声で気分が少々萎えてくる。この雰囲気と店名に既視感を覚え、ネットで検索したところ店主は「町田商店」(過去の記事 )出身とのこと。やはりそうか…。店員の掛け声の大きさに辟易したことを思い出し、警戒度は最大限になる。


使われている具材はザ・家系とも言えるチャーシュー、ほうれん草、海苔に、町田商店の源流である「壱六家」のアイデンティティとも言えるウズラの卵。チャーシューは豚ロースではなく、豚バラロールを使っておりホロホロと柔らかくて好感が持てます。ほうれん草もそれなりに新鮮で量もあり、こちらも好感度大。スープを啜ると丸みがあって、クリーミーマイルドな豚骨醤油。本流の「吉村家」(過去の記事 )が持っている濃度高めのコクうまスープというよりは、今やトップクラスの家系へと成長した子安の「すずき家」(過去の記事 )のようにまろ味のある優しさ満点スープ。これは意外な出来具合でした。ちなみに卓上にきゅうりの漬物が置いてあるので、これをミニライスにたくさん載せてばくばく喰らう。ラーメン本体と非常に相性がよろしい。


緩くウェーブがかかった中太麺はは通常よりもやや太めで短い。モチモチもっちりしており、ズバズバと食が進む。適度に量が減ったところで、卓上無料トッピングの刻みタマネギやにんにくを投入して味変を楽しむ。玉ねぎですっきり感、にんにくでコクを出し、目を閉じながら様々な食材のハーモニーを堪能する。気がつけば汁完してしまい、何だかんだ言って心ゆくまで芳醇な家系ラーメンを堪能した。当初maxまで引き揚げられた警戒感は完全解除され、また来たいという思いさえ感じてしまう。店員さんの大音量コール&レスポンスさえなければ完璧なんだけどな。

綱島商店ラーメン / 綱島駅
夜総合点★★★☆☆ 3.6
昼総合点★★★☆☆ 3.6

2014年11月15日土曜日

Beck Song Reader

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楽譜のみで2012年にリリースされていた Beck の超問題作がようやくCDとしてリリースされました。楽譜発表当時はプロアマを問わない無数のアーティストがカバーし、ネット上に数多く公開されてきました。今回のCDリリースにあたっては Beck 本人の演奏1曲を含め、様々なアーティスたちがカバーした20曲が収録されています。楽譜リリース当時は「おれ楽譜読むの得意じゃないし、読めたとしても演奏できないしなぁ」と地団駄踏んでいたので、今こうやって正式音源化されたのは非常に嬉しい。

とは言ってもカバーしているアーティスト達は馴染みのない人ばかり。有名どころといえば米国を代表する歌姫 Norah Jones に、ロックンロール復権に一役も二役も買っている問答無用の Jack White、パルプの Jarvis Cocker に、Jack White に対する冗談としか思えない俳優の Jack Black といったところ。どの曲も Beck 本人が持っているフォーキーでカントリーな脱力加減やシンプルさを思い思いに表現しています。ただ残念なのは、当然ながらアルバムとしての統一感が全くないこと。また、Beck ならではの完璧なサウンドプロダクションやアレンジメントまでは表現しきれていないこと。

この楽譜がリリースされた当時、既存の音楽パフォーマンスやレコーディングに対する問題提起だと騒がれていた。でも Beck 本人の体調が悪かったこともあって、楽譜のみという体裁を取ったのかなあ。あくまでも推測なんだけど。

Tracklist:

01. Moses Sumney – Title of This Song
02. Fun. – Please Leave A Light On When You Go
03. Tweedy – The Wolf Is On The Hill
04. Norah Jones – Just Noise
05. Lord Huron – Last Night You Were A Dream
06. Bob Forrest – Saint Dude
07. Jack White – I’m Down
08. Beck – Heaven’s Ladder
09. Juanes – Don’t Act Like Your Heart Isn’t Hard
10. Laura Marling – Sorry
11. Jarvis Cocker – Eyes That Say ’I Love You’
12. David Johansen – Rough On Rats
13. Jason Isbell – Now That Your Dollar Bills Have Sprouted Wings
14. The Last Polka – Marc Ribot
15. Eleanor Friedberger – Old Shanghai
16. Sparks – Why Did You Make Me Care?
17. Swamp Dogg – America, Here’s My Boy
18. Jack Black – We All Wear Cloaks
19. Loudon Wainwright III – Do We? We Do
20. Gabriel Kahane with Ymusic – Mutilation Rag

2014年11月11日火曜日

RA-MEN ICHI


閑静な住宅地である武蔵小山は、何を隠そう小ぶりなラーメン激戦区。これまでに「ボニート・ボニート」(過去の記事 )や「九州ラーメン 銀嶺」(過去の記事 )を訪問したことがありますが、何を隠そう二郎インスパイア系「RA-MENICHI」を目指す度に「ちーん」とやられてしまったから。どうやら店主が体調を崩していたようなのですが、今年の夏ごろから弟子らしき男性二人で営業再開したようです。看板には二郎を越えた数字の「1」と、ヤサイマシマシのシルエットが黄色く描かれています。前の看板は白地に黒で書かれていたのですが、マイナーバージョンアップしたことにより本家へのオマージュ度合が増したようです。ちなみにこのお店の常連をイチリアンと言うとか言わないとか。


「小ラーメン」(700円)の食券を手渡して、調理している様子をカウンター越しに眺めていると、麺を2度茹でしていることに気付く。初めは温度高めのぐつぐつ沸騰したお湯、2回目は低めのお湯。この茹で方が何を意味するのか、麺を実食して気付くことになる(詳細は後程)。やがて無料トッピングを尋ねられるので、脊髄が勝手に反射して「ヤサイアブラ」の言葉が口から出てきます。やがて着丼した山を上方から眺めるの図。キャベツ比率がやや高めのヤサイに、アブラがばっちりまぶされているが分かるでしょう。コラーゲンたっぷりで健康にも良さそうだ。スープの油膜もやや厚め。


山を横から眺めるの図。もはや食べ物という次元を超えた球体、いや真球と言ってもいい。写真には陽炎のように立ち上っている湯気が見えるが、あっつあつに茹でられたヤサイはシャキシャキ感が若干残っているものの、全体的にはクタ気味な茹で加減。それにしてもこの盛り方は、今まで食った二郎系の中でも芸術の域に達しているほど美しい。この美しい山にブタが潜んでいるんだが、やや小ぶりの塊が2、3入っているだけでした。柔らかさはそれほど感じられず、やや硬めに煮込まれたブタはそれほど特筆すべきものではありませんでした。


ヤサイのかさを減らしたところで天地返しすれば、エッジのある四角い断面の極太剛毛麺が登場しました。表面は滑らかで柔らかく、噛みしめれば芯のもっちり部分も感じられるアルデンテ。前述した2度茹でにより、2段階の食感がうまいこと演出されています。麺の表面にはライト寄りのジャンクな味わいのスープが馴染んでおり、時間経過とともにくたくたになったヤサイと玉石混淆の小宇宙を形成しています。とは言えどもスープは本流ほどのヤバさは感じられず、豚骨から滲み出てくるコクも、カネシ醤油系のカエシが放射する甘みも塩分も控えめ。基本に忠実ながら無難にまとめたという印象です。麺の茹で方は上等、ヤサイの盛り方は芸術的、全体ボリュームは凶暴、総体的には優しい二郎系、といったところです。

RA-MEN ICHIラーメン / 武蔵小山駅西小山駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2014年11月7日金曜日

Whorl : Simian Mobile Disco

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(ほぼ)生演奏の作品により EDM 全盛シーン一石を投じたのが Daft Punk の「Random Access Memories」(過去レビュー)だったんですが、Simian MobileDisco は電子音楽の枠内ながら、別のアプローチ法で EDM に異を唱えています。PC およびプラグインソフトウェアを一切使わず、特注のモジュラー・シンセサイザーとシーケンサー、ミキサーのみを使用し、しかも一発録りライヴ録音を実施。これにより画一的なダンスミュージック要素を排除し、実験的アプローチ溢れる電子音楽に進化を遂げています。

作品全体から漂ってくるのはかつてのジャーマンプログレッシヴロックの香りや、Warp 寄りのひんやりとしたエレクトロニカな雰囲気で、デビュー当時のニューエレクトロ風情は感じられない。ミニマルかつアナログな機材を駆使することで肉体性も生まれてきており、明らかに既存の電子音楽とは差別化を図っている。ここまで EDM が台頭してくると、何がポップミュージックで何がダンスミュージックなのか境目がなくなってくるが、その危機感を一番覚えているのは前述の Daft Punk であり、SMD なんでしょう。

2014年11月3日月曜日

らぁめん夢


横浜のみならず神奈川県屈指のラーメン激戦区である東神奈川~白楽エリア。そんな猛者どもが集いしエリアで、今年オープンしたばかりの新規店があっという間に食べログの上位ランキングに食い込んできました。その名は「らぁめん夢」。ミュージックパブ「たかこ」を居抜きで使っているので、「たかこ」の看板が掲げられたままです。パッと見はラーメン店に見えないんだけど、行列が出来ているので迷うことはありません。店主が一人で切り盛りしているんだけど、回転率はそれほど悪くないので長く待たされることはない。


950円の「特製らーめん」を注文します。表面に鶏油がシルキーに張られており、「飯田商店」(過去の記事 )のラーメンと共通点を感じるエクステリア。店内には飯田商店にもあった「あきらめねぇよ!!」のタオルがタオルが飾られていたが、店主は飯田商店の出身ではなく、町田の白河中華そば店「一番いちばん」出身とのこと。お店のTwitterを見る限り、無化調を是とする様々なラーメン店とコネクションを持っているようだ。何はさておき、透明度の高いスープを啜ってみると鶏の旨味とコクがある醤油スープにやられる。シンプルなんだけど深い味わいとキレがあります。具材に使われているのは甘くて柔らかい豚バラ、スモーキーでしっかりした食べ応えのある豚ロース、上品で優しい鶏胸肉の3種類。味付け玉子は黄身が甘くてとろとろ。雲呑は表面がとぅるんとぅるんで、肉もがしっと詰め込まれている。メンマやほうれん草も新鮮だ!


そしてこの店の一番の特徴である、注射器で提供される「煮干油」。こいつを途中で投入することにより、鶏がらメインの醤油スープが煮干しの香り立ちこめる魚介系スープへと変身するのだ。ただし、注射器を押す加減が難しく、勢いよくどぴゅっと出てしまった。それでもこの演出は画期的なシステムだ。


ストレート細麺はつややかにコシがあり、適度な固さがキープされており噛み応えあり。表面はつるりとしているが、噛むとぷりっぽんっという弾力性が感じられ、小麦の甘みと香ばしさも感じる。それなりに量もあるので、大盛りにしなくとも十分お腹いっぱいになれる。麺とスープのシンフォニックな組み合わせを最後の最後まで楽しむことが出来ます。なるほど、この味であれば上位ランキングに食い込むのも頷ける。ルーキーにして高い完成度を誇る名店がまた新たに誕生にしました。

らぁめん夢ラーメン / 東神奈川駅仲木戸駅反町駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2014年10月30日木曜日

Plectrumelectrum : Prince & 3rdeyegirl



稀代のファンカーというだけでなく、過小評価されすぎな当代随一のギタリストである我等が殿下ことプリンス。そんなプリンスがギタリストとしての手腕を遺憾なく発揮しているのが「Art Official Age」(過去レビュー )と同時リリースされた本作。当ブログでもこれまで数回取り上げてきましたが、連名となっているのが殿下プロデュースの3ピースのガールズバンド 3rdeyegirl。プロデューサーとしての一流の手腕も発揮しまくりです。「Art Official Age」がファンクな側面を持っているのに対し、本作はロッキンな側面を披露。相変わらず素晴らしいのが、(これも何度も言ってるが)股間で弾いているとしか思えないエロティックでぐりんぐりんなギター。

ジミ・ヘンドリックスがギターを燃やし、ピート・タウンゼントがギターを叩き壊すのに対し、プリンスは相変わらずギターを男根に見たてて、黒々と脈打っているプレイを屹立させています。しかもバンドアンサンブルも極めて素晴らしく、重心を低く保って超絶グルーヴを如何なく発揮。前情報がなかったらガールズバンドとは思えないほどの重たいプレイを披露しています。さらに注目すべき点として、「Art Official Age」と本作の両方に「Funknroll」が収録されており、前者にはどファンクバージョンが、後者にはより自由度の高いインプロヴィゼーション的なバージョンが収録されていること。「Art Official Age」でファンク、「Plectrumelectrum」でロックンロールという「Funknroll」こそ今の殿下のモードなのね。

2014年10月26日日曜日

竹の助


大井町の「麺壱 吉兆」(過去の記事 )を訪問して以来、僕の中でビッグウェーブになっているのが白河ラーメン。言うまでもなく、喜多方ラーメンと双璧を成す福島県のご当地ラーメンで、佐野ラーメンと同様に青竹打ちされたぴろんぴろんな麺が大きな特徴です。うちの近所にも「白河中華そば」(過去の記事 )という名店があるのですが、横浜と川崎と町田の端っこに位置する鶴川というところにも白河ラーメンを食わせてくれるお店があります。それが「竹の助」。


車でないと行けないような不便な場所にあるんですが、週末の昼間ともなると地元の人たちでとても繁盛しています。お店を切り盛りするのは前述の「白河中華そば」で修業を積んだという若い店主と、おそらく奥さんであろう女性。今回は味玉中華そば(750円)を注文しました。製麺してから数日間寝かせているからなんでしょう、揉みほぐされてさっと茹で上げられ、ものの数分で着丼しました。


やはり白河そばはオーソドックスでクラシカルな見た目が美しい。具材に使われているのは絶妙な半熟加減の味玉、豚ロースが使われたスモーキーでしっかりした歯ごたえのチャーシュー、新鮮な小松菜、こりこりとした食感のメンマ、ナルトに海苔といったところ。透き通ったスープは純和鶏のがらをメインに使っているそうで、純度の高いすっきり加減と醤油のコクを楽しむことが出来る。口に含めば奥行きと優しさがあって、白河そばの真骨頂と言える味わいを楽しむことが出来ます。


さて、青竹で打たれた不揃いな中太 多加水 縮れ麺をリフトアップ。そう!このぴろんぴろんで不均衡な食感の麺を食べに来たんだよ!もっちりと柔らかいのにコシがあって、噛みしめる度に麺の表情が変わっていって、弾力性に富んだ「ぷりぷり」「ぐにぐに」した食感はまさしく王道の白河そばならでは。ゆっくりと味わう余裕もないぐらい「旨い旨い」とスピードアップして食べてしまい、気が付いたら丼の底を拝んで汁完。素晴らしい一杯でした。

竹の助ラーメン / 柿生駅鶴川駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2014年10月22日水曜日

Art Official Age : Prince

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ジェームス・ブラウンをして「奴はファンクを知っている」と言わしめる稀代のファンカーである我等が殿下ことプリンス。「20Ten」(過去レビュー)以来、4年ぶりとなる新作をようやくリリースしました。元々リリースのインターバルが非常に短いプリンスとしては、4年間のブランクは驚異的な長さ。もちろんその間に何もしていなかった訳ではなく、精力的にツアーをこなし、デジタル配信でトラックを乱発していたのは周知の事実。しかも3ピースのガールズバンド 3rdeyegirl のデビューアルバムである「PLECTRUMELECTRUM」と同時リリースという快挙。その上、20年にも渡って確執関係にあった因縁のワーナーからリリースという超弩級の衝撃。ジャケットは相変わらずのセンスを感じさせる凄まじさ(笑)。

既発曲である「Breakdown」、「Breakfast Can Wait」 、「Funknroll」 が散りばめられていることから散漫な印象になりはしないか?という懸念は杞憂に終わりました。突如としてEDMで始まったのは驚いたんだけど、それ以降の怒涛の流れは紛うことなきミネアポリスの香り。初期に見られたクールファンク有り、粘着質全開のど-ファンク有り、メロウでスイートな王道バラード有り、と多様な側面を魅せながらアルバムとしての統一感がみっちりと貫かれています。しかもかつての密室感覚と引き換えに、全てから解き放たれたような感覚に溢れている。若かりし頃の気負いは全くなく、開き直りとも言える姿勢が真の夜明けをもたらしています。とうとう無我の境地に達したのか!

2014年10月18日土曜日

鬼そば 藤谷


渋谷駅から直線距離にしてわずか368mという好立地にある「鬼そば 藤谷」に行ってきました。センター街にあるビルの5Fにお店があるので少々分かりづらいんですが、店内に入ると吹き抜けから柔らかい光が差し込んでいます。佐野実のものまねをネタにしている芸人のHEY!たくちゃんが店主を務めており、僕が行った時は厨房に立たれていました。そもそもHEY!たくちゃんと、ラーメンの鬼である故 佐野実 氏との間には美しい師弟関係のようなものがあったようです。詳しくはこちら のページをご覧頂きたいのですが、佐野氏から大いなるインスピレーションを受けているのは確かでしょう。


メインとなるメニュー「鬼塩ラーメン」を注文します。他にもつけそばバージョンの「鬼塩つけそば」や「濃厚鬼塩つけそば」、辛味の「赤鬼ラーメン」や「赤鬼つけそば」など各種用意されていましたが、ここはやはり基本に忠実なメニューを選択。店内の明るい陽射しが優しくラーメンを彩ります。


麺はやや細めのストレートで適度な茹で加減と歯応え。ほのかに小麦の甘みと香りが感じられて、塩スープの味に良く馴染んでいる。肝心のスープだしには鶏がらを中心として、帆立貝や海老といった魚介系も使われているらしい。塩スープといっても単純にあっさりしたものではなく、これらのだしが十分に奥行とコクを与えている。


メインの具材には山水地鶏を使ったチャーシューと穂先メンマ。刻みネギや柚子や焦がしネギらしきものも散りばめられている。鶏肉にはハーブが使われているせいか香ばしく、とっても柔らかいので丁寧な仕事っぷりを感じる。穂先メンマのふにゃんとしてコリッとした食べ応えも上品です。やはり「支那そばや」(過去の記事 )や神奈川淡麗系のDNAを大いに育んでいるのが見て取れるが、濃い味やジャンクな味に慣れ切った都内ユーザへの説得材料が必要なのも確か。芸人が片手間で開いたものではない、相当の本気度が伺えるお店の活躍に期待しています。

鬼そば 藤谷ラーメン / 渋谷駅神泉駅
夜総合点★★★☆☆ 3.6
昼総合点★★★☆☆ 3.6

2014年10月14日火曜日

Out : System 7

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サイケデリック・トランスの夫婦善哉にして、テクノ界におけるおしどりユニットとして知られる System 7。そんな彼らがこれまでアナログ及びデジタル配信のみでリリースされていたリミックス集が6月にリリースされましたが、こいつが2枚組というボリュームということもあって中々聴き応えがあります。

James Holden、Dubfire、Carl Craig、Laurent Garnier、Richie Hawtin、A Guy Called Gerald、The Orb の Alex Paterson といった錚々たる重鎮アーティスト達が様々な形で関与・リミックスし、更にはアルバム未収録曲やRovoの楽曲を彼らがリミックスしたトラックなども含まれているので、多面的に彼らの活動を把握できる内容となっています。

個人的なフェイバリットは、Laurent Garnier の共作を Carl Craig がリミックスしたデトロイト・テクノの極北とも言える「Sirenes (System 7.1 Remix)」、彼ら自身がライヴ演奏するというオリジナルを凌駕した長尺最凶アシッドワークス「AlphaWave (Plastikman Acid House Remix)」、A. Mochi が手掛けるベルグハインスタイルの「PositiveNoise (A. Mochi Remix)」、どこまでも飛翔し続けるポジティヴィティとエモーションに満たされた「Eclipse (System 7 Club Remix)」、幽玄に無限の上昇をし続ける「Sunburst (Atahualpa Mix)」といったところ。ダンスミュージックの歴史を俯瞰する上で重宝する作品となっています。

Tracklist

1-1 Planet 7 (James Holden Remix)
1-2 Space Bird (Dubfire Deep Space Remix)
1-3 Passion (Original Mix)
1-4 Sirenes (System 7.1 Remix)
1-5 AlphaWave (Plastikman Acid House Remix)
1-6 PositiveNoise (Carl Craig Remix)
1-7 PositiveNoise (A. Mochi Remix)

2-1 Interstate (Doc Scott Remix)
2-2 Space Bird (Liquid Soul Remix)
2-3 Planet 7 (Son Kite Remix)
2-4 High Plains Drifter (Voyager Remix)
2-5 AlphaWave (Bananadance Remix)
2-6 AlphaWave (System 7 2000 Remix)
2-7 Eclipse (System 7 Club Remix)
2-8 Chihiro 61298 (Evan Marc Remix)
2-9 Sunburst (Atahualpa Mix)

2014年10月10日金曜日

中華そば すずらん


渋谷のつめけん代表格である「すずらん」が恵比寿に引っ越しするというので、移転前に取りあえず行っとこう、ということで渋谷警察署の路地裏へ久々に足を運びました。よって本投稿は少し前(2014年8月末)の情報になります。ここを訪れたのはかれこれ7年ぶりぐらい。かつてこの界隈へ毎日のように仕事で訪れていた時以来なんですが、その混雑っぷりは相変わらず。僕は開店少し前に到着したので並ばずに済みましたが。


メニューは大きく分けて「つけそば」と「中華そば」の2種類ですが、それぞれに醤油味と味噌味が用意されている。しかも麺の種類も普通以外に「平打」、「紐皮」、「乱切」と用意されており、使われている具材によってメニューも細分化。正直言ってどれを頼めばいいのか分からなくなるが、お店の特徴を十分堪能できるであろう「角煮麺」のつけそばを味噌味で、麺は平打、量は並盛で玉子をつけます。ちなみに大盛りは無料。角煮麺が1,350円、平打・紐皮・乱切は100円増し、玉子100円なので合計1,550円。かなりリッチな組み合わせです。


お店のおじさんが無骨で無愛想なのは相変わらず。やがて、麺というジャンルを軽く超越した平打ち麺が着丼。ワンタンの皮を長くして、厚くして、弾力性豊かにさせた麺と言えば分かり易いでしょう。とぅるんとぅるんな表面と、麺が持っているちゅるっとした喉越しはこの店ならではのもの。中央に据えられた豚の角煮は味付け濃く煮込まれており、肉の繊維質を奥深く堪能できる柔らかさ。ボリューム的にもかなりなものなので、価格相応のメニューであることに取りあえずは納得がいく。


味噌ベースのちょい辛めつけ汁にはさっと軽く炒められた野菜が載せられており、底部にはチャーシューが沈められている。今のつけ麺界における主流となっているどろりとしたスープではなく、さらりとクリアな舌触りなんだけど塩加減は高め。これを麺に絡めることでちょうどいい味加減になっていく。


つけ汁にお店のアイデンティティ的存在の平打ち麺をたぷたぷ浸けて、十分に絡みきったところでずりゅっと頂く。味噌味といっても味噌風味を前面に押し出して主張しているわけではなく、仄かな味噌の香りが後から追いついてくる。ただ惜しむらくはスープに深遠なコクというか旨味が感じられず、塩分も高いので食後に喉が渇く。麺を食べきってスープ割にするが、それでもやはり塩気が残る。モチモチしてツルッツルな麺はここでしか味わえないものですが、価格設定や接客態度を考えると賛否両論あるお店でしょう。渋谷はしょっちゅう行くにも関わらず、7年も足が遠のいていた理由を何だか思い出しました。

中華そば すずらんラーメン / 渋谷駅神泉駅
夜総合点★★★☆☆ 3.0
昼総合点★★★☆☆ 3.0