2014年7月29日火曜日

High Life : ENO • HYDE

http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00KLQ25S8/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B00KLQ25S8&linkCode=as2&tag=yokohamabeatj-22


Someday World(過去レビュー)から僅か2ヶ月後にリリースされた ENO・HYDE の2ndアルバム。1stのアウトテイク的なアルバムなんだろう、と高を括っていたら、いやいやお二人を軽く見くびっていました。すいません。前作とは違う作風かつプロジェクトの骨子が明らかになっており、二人の叡智が高次元で拮抗しておりました。今回はボーカル控え目、生演奏重視の即興音楽となっており、カール・ハイドは素晴らしいカッティングギターを弾きまくっています。

そもそもこのプロジェクトはスティーヴ・ライヒとフェラ・クティを掛け合わせた「ライクティ」という造語を標榜しており、ミニマリズムとアフロファンクを融合させた実験音楽を追求しているとのこと。そのゴールが本作では如実に姿を表しており、ミニマルな反復音楽と疾走感のあるアフリカンビートが脳髄に快楽を与えます。プリミティヴな野性とクールな知性がせめぎ合い、新次元のグルーヴが産み落とされていく様相は圧巻。

2014年7月25日金曜日

煮干しらーめん 玉五郎 東京新宿店


地下鉄副都心線の開通により、都内屈指のショッピングタウンへと深化した新宿三丁目。百貨店やブランド店が軒を連ね、外国人観光客も非常に多い。そんな街へ週末ショッピングに出かけ、腹が減ったので丸井の裏路地をうろうろしていると、ニボい香りが仄かに漂っていることに気付いた。「おや?これは大阪の天満に本店を構える煮干しらーめん 玉五郎ではないか?」…そう、関西方面でアグレッシヴに店舗展開していると耳にした玉五郎が東京に進出していたのだ。ここ最近めっきり煮干しづいている僕はダッシュで入店した。


特製煮干しらーめん(880円)を注文する。色鮮やかな味付け玉子の黄身はとろっとろで甘み抜群だ。大ぶりのチャーシューは3枚入っていた。程よい柔らかさに煮込まれている豚ロースの食感は申し分なく、かなり高い品質を誇っている。他の具材として使われている海苔、メンマ、なるとは平均的な味だ。スープに使われている煮干しはさほど濃厚ではなく、豚骨魚介のWスープといった塩梅で甘みすら感じさせる。ややとろみがかっており、まろやかで割とすっきりしておりコクもある。


小麦の甘みある中太縮れ麺はぷりぷりっとしており、コシの強い食感も申し分ない。上述したスープとの相性も絶妙で、喉越しのインパクトといいかなりの高得点を狙える出来具合だ。とにかくスープの雑味がなく、煮干し味で成立していながら魚介寄り動物系Wスープとして完成されているのが素晴らしい。麺とスープと具材の三位一体が楽しめるマイルドなハイクオリティ麺だ。想像していたニボニボ感満載の煮干しスープとは違っていたが、青葉(過去の記事 )寄りのスープはいい意味で期待を裏切ってくれた。

煮干しらーめん 玉五郎 東京新宿店ラーメン / 新宿三丁目駅新宿駅新宿西口駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2014年7月21日月曜日

Someday World : ENO • HYDE

http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00IN3KY84/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B00IN3KY84&linkCode=as2&tag=yokohamabeatj-22


ロックミュージックのみならず、現代音楽やクラブミュージックといった多岐に渡る分野へ影響を及ぼし続ける巨匠 Brian Eno。80年代から連綿と続くキャリアを持ち、クラブミュージックやロックフィールドの第一線で活躍し続ける Underworld の Karl Hyde。マエストロにして賢者といえるこの二人がコラボレーションしたらどうなるのか?その答えは本作品で語られ、誰もが納得する答えになっていた。

20年も前から旧交を温め、お互いの作品でも交流関係にあった間柄。そんな二人が Eno のスタジオで音楽的実験を繰り返し、その結果として産み落とされたのが本作だ。Eno が山積みにしていた未完成トラックを Karl Hyde が受け止め、「これこそ自らのルーツ」とギタープレイを注入することで化学反応を起こさせる。いや、ここで聴けるトラックは化学反応というよりも、当然の帰結とも言える内容なのだ。内なる情熱を静かに漂わせ、距離感を保ちながら音を紡ぎだす姿が見えるかのよう。

Eno が70年代にロキシー・ミュージックで実践したストレンジでグラムの香りが漂うロック、80年代にトーキング・ヘッズ等で実践したクールなポリリズム~アフロファンク、全キャリアにおいて貫かれている極めて高品位なサウンドプロダクション、Karl Hyde が元来持ち合わせている80年代の抒情性やニューウェーヴのよれ具合。それらが電子音や人力を超越した高次元で融合し、多幸感が溢れたボーカルアルバムになっている。全てのリスナーが納得し、当然の帰結と断言できるアルバム。だけどもこの二人でしか導くことのできない答え。時にはジャーマン・プログレッシヴ・ロックの香りさえ漂う本作は極めて美しい。

2014年7月17日木曜日

らーめん まるはち


環八通りを羽田方面に向かって、蒲田の手前にあるラーメン店「らーめん まるはち」。ここも黄色い看板を掲げている二郎インスパイア系で、店名よりも大きく「ラーメン ガツ旨!」と書かれている。元々は紺色の看板だったそうだが、黄色の看板に黒文字・赤文字を書く方が客入りが良くなるということなんだろう。そういう僕だってこの黄色い看板に惹かれて来店した一人だ。黄色い看板は食欲増進効果があるとしか思えない。


食券機でお店の定番メニュー「ガツ旨らーめん」(700円)を普通盛り(麺250g)で注文。着席と同時に無料トッピングを尋ねられたので「ヤサイアブラ」をお願いした。極太麺ということで茹でるのに時間がかかるらしく、その間にテーブル周辺を観察したところ「千里眼」(過去の記事 )ライクな辛揚げや「魔法使いジャン」と名付けられた辛味噌のようなものが置かれていた。やがて「ガツ旨らーめん」が着丼したので、まずはロール豚に箸をつけ、おもむろに口へ運ぶ。ホロッと崩れる柔らかさでハイクオリティなんだが、一つしか入ってなかったのが悔やまれる。「ガツ旨チャーシューらーめん」を頼んでいいかもしれない。


プルプルした背脂が振り掛けられたヤサイはクタ気味だが、適度にキャベツが加えられてボリューム加減もなかなかいい。スープをまぶして旨味を演出したヤサイ全体のかさを減らしたところで天地返し。極太な平打ち縮れ麺が顔を出す。麺を喰らう前に半分乳化したスープを啜って、とろみと豚骨のコクがあるがライトな味を確認した。深みはあるんだけど味がやや薄く感じたので、卓上チャーシューたれと辛揚げを投入したところ丁度いい塩梅に。表面がつるりとしており弾力性に富んでいる麺は、ぷりっとしたモチモチした味わいで食感がいい。全体的にバランス感覚があるのでアッという間に平らげ、しかもスープを全部飲みたくなる衝動に駆られた。クリーミーなライトスープは味濃い目で頼めば丁度いい味になるんだろう。この界隈ではレベルの高いインスパイア系であった。

ホームページ:http://gatuuma.jp/
らーめん まるはちラーメン / 矢口渡駅蓮沼駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2014年7月13日日曜日

Medieval Chamber : Black Knights

http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00GN4RTTW/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B00GN4RTTW&linkCode=as2&tag=yokohamabeatj-22


ウータン・クラン一派の総帥である RZA が John Frusciante と交流を持っているのは有名な話。かたやヒップホップ勢、かたや世界最強ロックバンドの元ギタリストという異種格闘技のようなフォーメーションだが、両者に共通して言えるのが常に革新的でアヴァンギャルドなアティテュードを持っているということ。その RZA が架け橋となって、ウータン一派のユニット「Black Knights」がジョンの自宅へ何度か遊びに行き、その結果として産み落とされたのが本作だ。

John Frusciante プロデュースである Black Knights の本作はオールドスクール・ヒップホップの体裁を取っているものの、Black Knights をフィーチャーした John Frusciante 作品と言ってもいい。ここ最近の作品で見られるエレクトロ~エレクトロニカ志向を追求し、ジョンのボーカルまでフィーチャーされているからだ。かと言ってジョンがヒップホップ作品を手掛けたことに何の違和感もない。既存フォーマットからの呪縛から逃れられる方法論がヒップホップであるならば、それはジョンの方向性と見事に一致しているからだ。

ソロ転向してから自由そのものと言える作品を連発し、その裾野をヒップホップにまで広げてしまったジョン。ここでは柔らかい音色のプロダクションを重視し、抽象的であり前衛的な異型の音楽を創り上げてしまった。それ故に本来のヒップホップが持ち合わせている黒々としたグルーヴは見られないが、裏を返せば従来型ヒップホップから大きく突き抜けた、真の自由な音楽ということなのだろう。

2014年7月9日水曜日

麺屋しみる


目黒駅周辺のラーメン店集積度合たるや尋常ではないレベルであり、しかもそのそれぞれが極めて高いクオリティを誇っている。高品質な店がここまで軒を連ねているのは都内でも上位に入るほどで、言い換えれば世界レベルにまで達している。来たるべき東京オリンピックに向けて、更にお互いを切磋琢磨して頂きたいものである。さて、今回尋ねたのは権之助坂の地下1階にある「麺屋しみる」というお店。外観が上品な飲み屋さん風情なのがイカしている。


このお店の特徴は魚介系スープ。中でも九十九里産の煮干しを使った「煮干しらーめん」が中核メニューとなっているようだ。カエシには厳選生醤油を使っており、化学調味料不使用ということで期待が高まる。更にはブレンド煮干し粉で追い煮干しした「極煮干しらーめん」、この「極煮干しらーめん」を更に追い煮干しした究極のニボニボなメニュー「鬼煮干しらーめん」まである。当方は初心者ということもあり、「煮干しらーめん」を中盛り(225g)のスペシャル(味玉子入り、海苔入り、焼豚増量)で注文。これでお値段950円なので、それなりにいい価格である。


やがて上品な和風テイストのラーメンが着丼。まずは増量されたチャーシューを味わうと、がしっとした食感の豚ロースを楽しむことが出来る。他に使われている具材の味玉やメンマ、ナルトは特筆すべきところはなく、標準的なものであった。そして一番の特徴であるスープを啜ると、なるほどすっきりした醤油味の中に煮干しの香りがほんのりと立ち込めている。強烈なニボニボ感を想像していたのだが、それを期待するには「鬼煮干しらーめん」が必要なのだろう。煮干しだけでは出し切れない丸みもあるので、鶏がらを使っていると思われる。更にはピリッとしたスパイス感もあるので、予め胡椒等の香辛料がふんだんに使われているようだ。


自家製の麺をリフトアップして、緩くカーブした縮れ具合を確認する。平打ちの中細麺は表面がつるりんとしているが、全粒粉を使っているせいで蕎麦のような食感だ。和風テイストの麺なので、スープとの相性は極めて高い。ただし、前述したように相当なニボニボ感を期待していたので軽く肩透かしを食らった。標準的な「煮干しらーめん」もクオリティが高いので悪くはないのだが、やはり強烈なインパクトを期待するなら「鬼」なのだろう。次回につなげたいところだ。

麺屋しみるラーメン / 目黒駅不動前駅
夜総合点★★★☆☆ 3.5
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2014年7月5日土曜日

COCHIN MOON (コチンの月) : 細野晴臣&横尾忠則

http://www.amazon.co.jp/gp/product/B0007N35J8/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B0007N35J8&linkCode=as2&tag=yokohamabeatj-22


日本のポピュラー音楽におけるパラダイムをシフトさせたのがYMOだと仮定する。その中でも、YMO中心人物である細野晴臣の作品におけるパラダイムが変わってしまったのが「コチンの月」であったと本人も述懐している。そうなると、日本のポピュラー音楽の転換点となったのが本作ということになる。決して有名な作品ではないが、このサイケデリック・トリップ・ミュージックに身を委ねると、そういう気がしてくる。

重要なのが、本作は美術家である横尾忠則との共同名義である点だ。そもそもは70年代にインドおよびその精神世界へ深く傾倒していた横尾氏が、レコード会社からサウンドコラージュをモチーフとした作品制作の依頼を受けていたらしい。そこで横尾氏は細野氏をインドに連れて行き、「この作品は細野くんが作るべきだ」と無茶ぶりをしたそうな。細野さんは「ああ、そうなのかな」といつの間にか下請けとして巻き込まれてしまった逸話が笑える。

横尾氏と細野氏を中心とする御一行は南インドへ向かい、当地の総領事からのおもてなしなど破格の待遇を受けた。しかしながら細野氏は死を自覚するほどの強烈な下痢に苦しみ、UFOを目撃するなどの超常現象にも遭遇。そこで、マドラス総領事夫人から「治してあげます」と言われてわずか30分で急激に回復。現実と超現実の間を行き来するような出来事が起きる。でもそれがインドなのだから仕方がない。

横尾氏から「出るものは出した方がいい」と言われ、強烈な下痢による浄化体験をした細野氏は、帰国後に松武秀樹氏やシンセサイザーと邂逅する。そこで作り上げたのが「コズミック・サーフィン」(過去レビュー)であり「コチンの月」なのだ。それまでのトロピカル3部作の香りを漂わせながら、電子音楽へとパラダイムを180度シフトさせ、後のYMOへと続く源流を完全に確保。YMOファーストアルバムのA面と共時性を持たせ、さらには名作「テクノデリック」の伏線まで張られている。

曼荼羅のようにめくるめくトリップミュージックであると同時に、サイケデリックテクノであり、アンビエントであり、プログレッシヴだ。特に「肝炎」や「マドラス総領事夫人」といったトラックは、タイトルとの関連性が見いだせないほど覚醒感がある。こういった作品の中で横尾氏が果たした音楽的役割とは何か?ふらりとレコーディングに現れては「これは強面だね」と意味不明なセリフを残しては去っていく。これこそが偶然性を持っている横尾氏なのだ。

外界からの入り口を果たす口腔から、内在宇宙を経て、やがては外界への出口となる肛門から出ていく大いなる流れ。それはまるでクラインの壺のようだ。下痢で生死の境をさまよった体験から導かれた本作こそ、東洋と西洋を結合させたエポックメイキングな作品であり、日本のポピュラー音楽におけるパラダイムをシフトさせた作品であると確信を持って言える。

2014年7月1日火曜日

豚神様


インドでは牛が神聖な動物として崇められているのは有名な話だが、横浜の鶴見では豚が神様とされているという話を耳にした。横浜の金沢区では神豚(過去の記事 )という神のような豚が降臨するのが有名だが、鶴見ではその名も「豚神様」という聖地があるということだ。居ても立ってもいられず、鶴見駅西口から徒歩僅かの場所にある店へと巡礼した。看板は黄色ではなくてオレンジ色、しかも「豚系ラーメン」と書かれているのに違和感を覚えた。


主力メニューとなる「豚様ラーメン」(750円)を麺固めで注文することにした。これには普通の(とは言っても大きめの)チャーシュー1枚に、大きい豚スペアリブ 1個が添えられている。なおかつ、野菜は茹でたものではなく炒められたものが盛られているようだ。この他にも野菜がたっぷり盛られたスタミナ豚様ラーメン(700円)や、ハイエンドメニューとなるその名も豚神様ラーメン(なんと1,200円)まで用意されている。


中国系の店主がてきぱきと丁寧に仕事を進め、やがて豚様ラーメンが神々しく御降臨。二郎系の豚とは異なっており、大判チャーシューは薄くて表面は固め。ぼそっとしているのだが、旨味が染みこんでおりなかなかイケる。巨大な骨付きスペアリブは簡単に骨から剥がれ落ち、粉々にほぐせるほど柔らかく煮込まれている。豚の神様に感謝の念を捧げつつ平らげて、次は炒め野菜に取り掛かる。黒胡椒がぴりりと効いたシャッキリもやし・ニラ炒めは旨味が行き渡っており、ボリューム感もなかなかいい。


スープも二郎系のそれとは異なっており、背脂が十分に溶け込んだとろみある豚骨醤油寄りだ。見た目ほど塩分濃厚ではなく、割とライトな味わいなので喉越しが良い。麺は中太で弾力性とコシがあり、固めに茹でてもらう方が丁度いい。表面がつるりとしているがスープの馴染み加減が絶妙だ。総じてバランス感覚に富んでおり、しかも神的な豚のホロホロ加減にぐっとくる。これは二郎系なのか?横浜家系なのか?いや、看板に偽りなく「豚系」なのだ。黄色い看板ではないのはそういうことなのだ。店主の丁寧な仕事っぷりや礼儀正しさを考えれば、この味に心から納得できるというものだ。

豚神様ラーメン / 鶴見駅京急鶴見駅国道駅
夜総合点★★★☆☆ 3.6
昼総合点★★★☆☆ 3.6