2014年8月30日土曜日

Lazaretto : Jack White

http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00JZ8ZKSU/ref=as_li_qf_sp_asin_il_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B00JZ8ZKSU&linkCode=as2&tag=yokohamabeatj-22


60年代~70年代中期におけるブルースやロックンロールが呪術的であるように、この人の音楽を何度聴いても「悪魔に魅入られた」という形容詞が頭に思い浮かんでしまう。前作のレビューでも「ロックンロールに魂を売り渡した」なんて書いたけど、鬼気迫るようなグルーヴとソウルがここでも黒々と渦巻いていた。同時リリースしたウルトラLPと呼ばれるアナログ盤は多種多様なギミックが仕掛けられているようで、ヴァイナルにも同様のグルーヴが渦巻き状に彫られているということだ。

相変わらずアナログレコーディング手法やヴィンテージ楽器にこだわり、ブルースやカントリー、フォークといった米国ルーツ音楽を発展させて、最新型ロックンロールへと昇華させる技は他の追随を許さない。これまでは短期間レコーディングや一発録りによるスピード感を重視していたが、本作ではレコーディングに1年間を費やしたとのことで、練りに練られた完成度の高さが伺える。

デジタルレコーディングや配信マーケットが飽和状態になるにつれ、その反動がやってきたのかアナログ市場が活況になってきている。HMVが渋谷にアナログ専門店をオープンさせ、パイオニアがターンテーブルをリリースした。まさにアナログ市場の復権が叫ばれ、ロックンロールはリバイバルの兆しを見せている。その急先鋒となるのがブルーに彩られた本作に他ならない。繰り返し言うが、ここにはロックンロールの悪魔が潜んでいる。

2014年8月26日火曜日

麺屋なごみ


葛飾区・足立区エリアは実にラーメンクオリティの高いところですが、如何せん自宅から遠い。葛飾に実家があるんですが、そんなに足繁く帰る孝行者でもないし。この日はたまたま仕事で青砥に行く用事があり、上司のリクエストもあって人気ラーメン店を検索。駅から近い路地裏にあるこの店がヒット。開店前に到着したところ、我々の後に続々と客が集結してくるではありませんか。この店の人気っぷりを肌で実感しながら入店を果たす。


メニューは多岐に分かれており、「ラーメン」「つけ麺」「汁なし麺」の3つに大分類される。しかもそれぞれ「こってり」と「あっさり」に分かれており、更にはしょう油と塩に細分化されている。何を頼めばいいのか分からないので、店主の奥さんと思わしき方にお奨めを尋ねると「全部です」との返事。結局、食べログで多く言及されている「ラーメン」~「こってり」~「塩白湯麺(塩味)」を麺固めで注文。780円也。食後に代金を支払うシステムだ。


実に美味しそうな麺が着丼した。使われている具材は青菜にチャーシュー、海苔、味玉、穂先メンマ、刻みネギだ。中でも特筆すべきが肉厚かつジューシーで柔らかいチャーシューだ。丁寧な仕事っぷりを感じながら、柔らかくて細長い穂先メンマをこりこりと頂く。味付け玉子の半生加減や甘み加減も絶妙だ。スープはここ最近メインストリームとなっているポタージュ系鶏白湯スープとは一線を画しており、とろみがあるもののキリッと塩味で締まっている。とは言えエッヂが立っているというよりは、丸みがあってマイルドで優しいお味だ。いわゆるドロリとした鶏白湯というよりは、鶏がらだしをメインに据えた塩味の白湯スープ、と理解すればいい。


黄色みがかった緩いウェーブの中太ストレート麺をリフトアップ。どうやらここでも三河屋製麺を使用しているということで、都内ラーメン屋への絶大な影響力を感じてしまう。つるっとした表面を持つ麺は小麦の甘みがあり、スープの塩味との対比が美しく感じる。麺固めにしたおかげで最後までコシをキープさせることができ、豊かな喉越しを堪能した。全てにおいて丁寧な職人気質が行き渡り、客にスープを完飲させる魅力を持っている一杯。やはり葛飾はグルーヴのあるエリアことを再確認。

麺屋なごみラーメン / 青砥駅
夜総合点★★★☆☆ 3.6
昼総合点★★★☆☆ 3.6

2014年8月22日金曜日

Only Run : Clap Your Hands Say Yeah

http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00JH1E1OE/ref=as_li_qf_sp_asin_il_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B00JH1E1OE&linkCode=as2&tag=yokohamabeatj-22


US インディーロックの立役者である CYHSY が 4th アルバムをリリースしました。大手ディストリビューションの力を借りず完全に自主制作している真のインディーズバンドが、生き馬の目を抜く音楽業界で結成10周年を果たした事実にまず驚く。それ以上に、ポジティヴィティ溢れる作風とヘロヘロなボーカルが相変わらずなことに安心感を覚える。本作ではこれまで使用したことのないシンセサイザーを初めて導入し、浮遊力あるニューウェーヴ感覚を演出するのに成功している。マジカルなポップネスを持ち続け、切なくなるキュートなメロディと強靭なビートが炸裂していく様は素晴らしい。

スタジオで曲作りをするのではなく、スタジオ入り前に全ての曲作りを終えていたという本作。その時点でアルバム制作は終わっていたも同然で、スタジオでは参加ミュージシャンによるリアルな音に落とし込む作業に徹したに他ならない。フロントマン Alec Ounsworth のほぼソロユニット状態になっているにも関わらず、ここでは閉じた感覚や内省的な雰囲気はさほど感じられない。聴こえてくるのはヘロヘロ声に隠された、音楽への確固たる信念だ。こういったバンドこそリアルに支持されるべきだろう。

2014年8月18日月曜日

雅楽


横浜北部に住んでいる身として、港北NT~日吉・綱島エリアのラーメン店 充実度合にはそれなりに満足している。しかしながら田園都市線沿線(たまプラーザ~市ヶ尾エリア)はまだまだお寒い限りで、お奨めのラーメン屋を尋ねられても答えに窮してしまう。そんな中、ホームタウンのあざみ野に新進気鋭のニューホープが登場したと聞き、そそくさと足を運んだ。ロケーションはあざみ野駅からたまプラーザ方面に向かって徒歩5分強のところ。この辺りの風情にマッチしている洒落乙な外観だ。


事前調査によるとこのお店は味噌ラーメンが主体。しかも店主は、都内の京橋に本店を構える「ど・みそ」の町田店出身だとか。味噌ラーメンだと思って侮るなかれ。ここ最近の味噌ラーメンは味噌味を仄かに香らせる工夫を施し、味噌味がダシの旨味を封殺することがない。店主はブログで開店前から近況を報告していたというから、ソフィスケートされた店内と相まって店主の並々ならぬ気合が伝わってくる。生揚げ醤油ラーメンも気になるところだが、ここはやはり特みそらーめんの一本勝負でいく。


複数の味噌を調合し、ダシにも豚や鶏といった動物系、かつお節や昆布や煮干といった魚介系に、しいたけや野菜など様々な素材を駆使しているらしい。しかも製麺は三河屋製麺 にアウトソースしているようだ。都内の有名店「めん徳二代目つじ田」(過去の記事 )やかつて「つけめん TETSU」(過去の記事 )、この間訪問した銀座の名店「篝」(過去の記事 )とコネクションを持つ三河屋製麺がここにも暗躍していたとは…。胸のボルテージは高まり続ける。


やがて「特みそらーめん」が着丼。中央に添えられているコーンが味噌ラーメンとしてのアイデンティティを表現している。その下にはもやしが控えているが、こいつがさっと茹でられているのでシャキシャキ感が申し分ない。チャーシューはスチームコンベクションオーブンにより低温調理されているそうで、がしっとした食感ながら柔らかみも感じられて、完成度は極めて高い。味玉の甘みもバッチリで、妥協を許さない姿勢が感じられる。スープ表面には背脂が浮かんでおり、どろりと濃厚そうだ。


わしっとした太め麺は固茹でされており、もちもちしているので非常に食べ応えあり。こいつにとろんとした濃厚味噌スープが絡みつき、複数のダシと味噌と背脂の波状攻撃を仕掛けてくる。スープに溶け込むピリリとしたスパイスが隠し味となって、仄かな味噌の香りとスウィングしていく。時折感じられるもやしのシャキ感もアクセントとなっており、箸とレンゲが休む間もなく動いていく。やがて具材と麺を完食したところで、スープに浮かぶ背脂を回収して旨味を堪能。スープをどんどん減らして、底に沈んでいるコーンもすべて回収。気が付けば丼の底を拝んでいた。間違いない。あざみ野界隈でお奨めのラーメン屋は?と聞かれたら即座に回答できるようになった。

雅楽ラーメン / あざみ野駅たまプラーザ駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2014年8月14日木曜日

Fabric 73 : Ben Sims

http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00GCI94F6/ref=as_li_qf_sp_asin_il_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B00GCI94F6&linkCode=as2&tag=yokohamabeatj-22


齢45のアラフィフ世代になってくると、二郎系だけでなくハードミニマルを聴くだけで胃もたれがするようになってくる。そんな中、去年の暮れに fabric からリリースされた Ben Sims の最新ミックスを聴いた。ベンという名前自体、場末のスナックで琥珀を磨き続ける頑なな男をイメージしてしまうが、やはりここでもハードミニマル一筋で生き続けるストイシズム溢れる姿勢を見せていた。

元々ヒップホップに根っこを持ち、3台のターンテーブルを阿修羅のように操る神業を持つ男。ここでも3台の CDJ を駆使し、Ableton Live でシームレスな音の塊に仕上げ、ファンキーかつハードグルーヴィーなミニマルテクノを披露している。起伏といったものは殆ど見られず、序盤から終盤まで猪突猛進で無骨なトラックを連打。今の時代にややもするとオールドスクール的な響きと取られがちだが、ここまで我が道を突き進む姿は痛快としか言いようがない。時には滑稽で無様に見えるような姿勢は男気を感じさせ、エイジングごときで胃袋なんぞ弱くしていられないと思った。

Tracklist

01. Joton ­- GS 01
02. Kryptic Minds & Paul Mac -­ Icon
03. Kirk Degiorgio -­ Dread
04. Alden Tyrell -­ Wurk It
05. Ben Sims -­ The Little Jam (Edit)
06. Floorplan ­- Higher (Ben Sims Remix)
07. Gingy & Bordello ­- All Day (Robert Hood Remix)
08. Dimi Angélis & Jeroen Search -­ Monopole (Sims JFF Edit)
09. Tripeo -­ Kienokki (Edit)
10. Benjamin Damage -­ Recursion
11. Ben Sims ­- Raise Your Hands (Mr G Remix)
12. Mark Broom ­- 133
13. MDL vs JR ­- Belmont (Edit)
14. Marcel Dettmann ­- Corebox (James Ruskin Blueprint Mix)
15. Mark Ambrose -­ Shooting Stars (Fokus Group Remix Edit)
16. Robert Hood -­ Moveable Parts (Untitled 1 ­ Mark Broom Edit)
17. Ben Sims -­ Break Glass (Sims Remix Edit)
18. L-­Vis 1990 ­- SDS5000
19. Sandrien -­ I Left My Girlfriend In A Club (Edit)
20. J Tijn - ­U U U
21. Nphonix -­ Tactix (Sims JFF Edit)
22. Mike Dehnert -­ Eigenzeit
23. Ben Sims ­- Break Glass (L­Vis 1990 Dance System Remix Edit)
24. L-­Vis 1990 -­ Wires
25. Donnie Tempo ­- Tazmanian Virus (Sims JFF Edit)
26. Chicago Skyway ­- Fall Down (Sims JFF Edit)
27. Chicago Skyway -­ Ride 3 (Sims JFF Edit)
28. Truncate ­- Room Mode
29. Truncate -­ Model 1
30. Paul Mac ­- Grind Returns (Ritzi Lee Remix)
31. Ben Sims -­ Samurai (Edit)
32. Julien H Mulder -­ Symmetric Timeline (Sims JFF Edit)
33. Rod ­- 90's (Edit)
34. Ben Sims ­- Something (Sims Beats Mix Edit)
35. Terrence Dixon -­ Minimalism A1 (Ben Klock Remix)
36. Ø [Phase] ­- Distracted
37. Ben Sims ­- Dream State (Edit)
38. Ben Sims ­- Raw Hide
39. Pfirter ­- Ahora (Sims JFF Edit)
40. Ben Sims -­ Neurosis (Surgeon Remix Edit)
41. Clouds ­- Chained To A Dead Camel
42. Fokus Group -­ Nut Nut
43. Ben Sims ­- Joyrider (Trevino Remix Edit)
44. Special Request -­ Broken Dreams

2014年8月10日日曜日

銀座 篝


銀座のど真ん中といえる銀座4丁目。昼時になると裏手の細い路地に行列ができる。行列の先にあるのは高級日本蕎麦屋と見紛うような外観のラーメン店だ。1年ほど前にオープンしたばかりなのに、食べログランキングでは銀座エリアでぶっちぎりの第1位。この日は所用で銀座に行く機会があったので、開店早々に行列に加わった。すると僕の後ろに並んだ年配の女性二人がガールズトークを繰り広げ始めた。

女性A「ここはいつも行列ができているのよね~」
女性B「気になるから並んでみましょうよ」
女性A「いいわね~。それにしても暑いわね~」
女性B「こんなに暑いのに並ぶなんて、何のお店なのかしら」
女性A「私も分からないわ。(と僕に話しかけて)ねぇねぇ貴方、ここは何のお店なの?」
僕「ラーメン屋です」

何のお店かも分からないのに行列に並ぶ年配女性たち。それほどこのお店は強烈な磁場と魔力を発散しているということだ。待っている間にお店の人が注文を尋ねに来たので、お店の基本メニューである「鶏白湯SOBA 並」(850円)を注文した。店内は非常に狭く、コの字型カウンターに8名しか座れない。


やがて侘び寂びの感じられる小宇宙的な鶏白湯ラーメンが色鮮やかに着丼した。見るからにクリーミーでポタージュ感たっぷりな淡い黄色のスープ。具材には新鮮そうで緑鮮やかなアスパラガスとかいわれ大根、鶏チャーシューが3枚にヤングコーン。薬味として生姜とフライドオニオンが添えられる。鶏チャーシューは弾力性に富み柔らかく、品質の高さが実にうかがい知れる程ふっくらとしているがレア感もある。また、具材のそれぞれも持ち合わせた色を裏切らないフレッシュな味わいで、盛りつけ方にもセンスの良さが感じられる。


鶏白湯ラーメンの戦国時代に突入する乱世において、他店との差別化を図るには並々ならぬ腕と努力が必要のはず。だがしかしこのお店のスープは圧倒的クオリティを誇っており、他店の鶏白湯スープを周回遅れさせるほどの断トツ品質を持っていた。濃厚でクリーミーなのは当たり前だが、絹のように滑らかでマイルドで、鶏の香りと芳醇な旨味が口の中に広がる。どんなに言葉を総動員しても、このシンプルかつ奥深い味わいを表現するのは難しい。そしてスープを絡めとるかのような中太ストレート麺はぷりっぽんっと歯応えとコシがあり、小麦の香りが大地の広さを想起させる。スープと麺の絶妙なハーモニーバランスといい、適度なボリューム感といい、立地といい、上品な味わいといい、年配女性すらも行列に並ばせる魔力が潜んでいることを実感した。

銀座 篝ラーメン / 銀座駅銀座一丁目駅有楽町駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2014年8月6日水曜日

Enclosure : John Frusciante

http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00IINW86A/ref=as_li_qf_sp_asin_il_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B00IINW86A&linkCode=as2&tag=yokohamabeatj-22


Black Knights とのプロジェクト「Medieval Chamber」(過去レビュー)を通過したこともあり、その後の4月にリリースされた本作はアブストラクトで濃厚な空気が漂っている。これまで通り叙情的なソングライティングが施され、これまで以上にプログレッシヴで前衛的な音楽が作られており、すとんと腹に落ちて理解するのにそれなりの時間が必要だ。

クラシック・ロックが持っているグルーヴ感覚を、最新機材を活用しエレクトリックミュージックの方法論で表現しようとする前人未到の境地。16音符を細分化して4つの分割点へ、更に解析してその中にある156の分割点へと足を踏み入れ、高速ドラムンベースを自由自在に変貌させる。これによりクラシック・ロックが持つ、音符と音符の行間に存在するグルーヴを生み出しているという。直感的プレイを得意とするギタリストが、音楽を構造的に追求し続けたこの結果は実に示唆に富んでいる。哲学を極めるために数学が必要なように、John は自らの音楽哲学を追求するために0と1で作られている世界へ足を踏み入れたのだ。

2014年8月2日土曜日

麺屋 航


目黒駅周辺において、ラーメン店が充実しているのは権之助坂方面だけではない。駅の東口を出て、徒歩5分ほどにある「麺屋 航(わたる)」もこの界隈の一翼を担う存在だと聞いている。通常の中華そばやつけ麺に加えて、目黒ブラックなるメニューまで取り揃えているそうだ。富山ブラックではなく目黒ブラック…目黒ゆえにブラックというストレートな思いに惹かれ、夏の暑い日なのに汗を垂らしながら足を運んだ。


様々なメニューが用意されているので、どれにすべきか頭を悩ませてしまうところだ。基本に立ち返って中華そばにすべきか、現在の麺業界においてメインストリームとなりつつあるつけ麺にすべきか、ジャンクな味を追求するために特製まぜそばにすべきか。いや、ここはやはり店のアイデンティティを表しているとしか思えない「目黒ブラック煮干しそば」だろう。大盛880円の食券を購入した。


黒い。写真じゃ黒さが伝わらないが、スープが間違いなくどす黒い。その黒さゆえに目を白黒させてしまい、最終的には目が黒になってしまった。そう、ここは目黒なのだから、目が黒くなっても何ら問題ないのだろう。ちなみに2枚搭載されたチャーシューには豚バラ肉が使われており、脂身の柔らかさゆえに箸で掴むとほろっと崩れてしまいそうだ。他に使われている具材はかいわれ大根に、刻みタマネギ、メンマとなっており、スープのこってりさ加減を緩和させる演出なのだろう。


スープの表面には油膜が張られており、熱を封じ込める蓋の役割を果たしている。黒いスープの中にちらほら浮いているのは背脂なので、動物系~とくに豚骨~のだしも使われているのだろう。スープを啜れば、口腔内に魚介系かつ煮干しのニボイ香りが立ち込めるが、動物系だしのフックが効いており、甘みすら感じさせてぐいぐい飲みたくなる衝動に駆られる。それぞれのだしが実に複雑に補完し合っており、スープの色が持つ錯覚性で自分が何のスープを飲んでいるのか分からなくなってきた。そう、これこそ目黒ブラックが持つマジックなのだ。


いかにもモチモチしてそうな麺をリフトアップすると、中太麺が全身に黒いスープを纏って登場。小麦の香り立ち込めるモッチリ麺に、煮干しの香り立ち込めるスープが拮抗し、コシとコクの両方を堪能することが出来る。新次元の旨さなのに、どこか懐かしさを覚える旨さ。大盛を頼んだせいでそのボリュームに苦労しながら麺を完食。丼に残った黒スープの表面に浮いている背脂を回収し、夏の暑さで失われがちな脂分を補給する。甘味と旨味がありすぎて、丼の底がだんだんと見えてきてしまった。間違いなくコク旨な一杯だ。

つけ麺 / 目黒駅白金台駅五反田駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8