2014年12月29日月曜日

25 : 電気グルーヴ

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結成25周年を迎えた2014年、数多くのフェスやメディアに出演を果たし、自らのツアーであり奇祭である糞塗祭を成功裏に終わらせた電気グルーヴ。そんな彼らがリリースしたミニアルバムが素敵すぎます。30分程度の収録時間ながら、糞のように密度が高すぎます。この作品を当ブログ今年最後の記事として上げさせてもらうのは実に光栄です。

「モノノケダンス」(過去レビュー)を焼き直したかのようなエレクトロ「Baby's on Fire」で幕を開け、「電気グルーヴ20周年のうた」を更にハッテンさせた「電気グルーヴ25周年の歌(駅前で先に待っとるばい)(25 Mix)」でもはや絶頂寸前のイク5秒前。「20周年」の歌詞やPVは個人的にドツボだったんですが、「25周年」では個人的に糞壺レベルの仕上がりになっていると感じます。意味を成さないながら、相変わらず語感を大事にする歌詞だなあ…とぼんやり考えていたんですが、この作風が如実になったのはいつ頃からだったろう?と思い返せば、史上最汚の発明品だった「VOXXX」の頃からだったね母さん…。

「A.C.I.D.I.S.C.O.」では文字通りアシッドベースラインに、クラシックディスコのサンプリングが上モノに使われていますが、このサンプリングの元ネタは何だろう?「Shangri-La」(もしくは「Spring Rain」)のように聴こえなくもない(識者の方教えてください)。続く「Super Star (Re-boot)」は「J-POP」(過去レビュー)に収録された「スーパースター」をagraphがrebootさせたもので、フロアオリエンテッドで徐々にビルドアップしていく様が最高。「Pan! Pan! Pan!」は限定アナログ盤のB面に収録されている、60年代ロックンロールを下地にしたトラック。最後は1分にも満たないマッシヴなビートで締める。通して聴くと、全体の流れを上手く作り上げているなあと実感します。

2014年12月25日木曜日

You're Dead! : Flying Lotus

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アフロ・フューチャリスティック DNA が刻印された生粋のサラブレッド Flying Lotus が、めくるめく曼荼羅サイケデリックワールドを引き連れて三途の川からこんにちは。しかも前作と同様、FlyLo と同レベルの血統を持つベーシストの Thundercat を筆頭に、大御所ジャズピアニストの Herbie Hancock、ラッパーの Kendrick Lamar や Snoop Dogg といった豪華布陣で固めまくり、くらくらと眩暈がするような新たなる潮流を創り出しています。既存フォーマットに捉われない、ヒップホップやエレクトロニカをベースとしたLAビートミュージックなのは変わらずですが、これまで以上にジャズの香りが濃厚に立ち込めています。しかも瀕死状態のジャズをなぞらえているのでは無く、ビートミュージックのエッセンスを注入することにより超絶プログレッシヴで前衛的な40分一大組曲として仕上げ、ジャズを死後の世界から蘇らせる手法。あまりにもスピリチャルであり、これはもう臨死体験の一部としてもいい。濃密に緻密に盛り込まれた情報量は、黄泉の世界を現世に作ろうとしているのか?

前の記事では Aphex Twin との関連性について書きましたが、奇しくも今年はAphex Twin が13年ぶりの新作をリリースした年。同じレーベル以外に両者のつながりはありませんが、Aphex Twin が真っ白けな有機運動的テクノであるのに対し、FlyLo はテクノロジーを感じさせない真っ黒けで生々しい作風。どちらにも狂気がまぶされていることに間違いはありません。

2014年12月21日日曜日

ラーメン二郎 めじろ台法政大学前店


或る晴れた日。高尾山に登って天狗に会おう、とひたすら車を走らせていた。ドライブし続けて90分もすると、赤・青・黄の鮮やかな3色が目に飛び込んできた。信号機と勘違いしてしまい、思わず車を停めてしまったが、それこそ二郎の黄色い看板と、赤と青の自動販売機であった。辺りに漂っている豚骨臭が鼻孔をくすぐり始めたので、高尾山を征服するのは中止にして、その代わりに二郎という聳え立つ山を征服することにした。時は14:00、閉店まであと30分。店内外には8人ほどの法政大学生らしき屈強な若人たちが並んでいたが、どうにか着席することが出来た。


ラーメン小をニンニクヤサイアブラで注文。さすればヤサイがうず高く盛られ、頂上にはプルプルした豚のアブラがまぶされた巨大な山が目の前に姿を現した。山頂に降り積もった雪のようなアブラの下には、草原のように鮮やかな黄緑色のキャベツが比率が高めで存在感をアピール。山の麓にはとぅるんとぅるんとしたアブラを湛えたブタが、茶色い岩石のようにごろんごろんと転がっている。その横には細かく刻まれたニンニクが、道端に咲くたんぽぽのように黄色く彩りを添えている。高尾山よりも険しそうな山が目の前に現れたが、こんなものを征服するのは実に簡単だ、と思わず高を括る。だがそれこそ己の未熟さであった。

巨大岩石の塊のようにぶちこまれたブタ2つは、コラーゲンたっぷりの脂部分がじんわりと柔らかい。肉本体にも煮汁がばっちり染みわたり、噛みしめればホロホロと柔らかく繊維質が崩壊していく。ニクニクした豚肉を先にやっつけ、スープにニンニクを溶かしながらじっくりと味わう。それほど乳化していないスープには豚骨の旨味とエフゼットの甘辛さが溶け込み、どんな山でも簡単に征服できる!ヒャッハー!と自分を全能の神と錯覚してしまうほどの覚醒感に満ちている。


山を覆い尽くす野菜をある程度刈り取ったところで、おもむろに天地返しを行えば、小麦色の平打ち麺がスパルタンな物量で登場した。表面はぬめぬめしているが、噛めばワシワシ、噛みしめる度にグニグニした食感。麺を食べ進めるにつれて、胃袋を容赦なく膨張させていく小麦パワーを感じ、これは全部食べきれないのでは…?と汗をかき始めた頃にようやく完食。旨い。美味すぎて、アブラが溶け込んだスープもじっくりと堪能。ライト寄りの味ながらも奥深い旨味のあるスープは、山頂で飲むコーヒーかと勘違いしてしまうほど芳醇だ。拡張しきった胃袋の膨満感を味わいながら、どうにか征服することが出来た自分を労ったが、簡単に征服しようとした自分こそ天狗なのであった。高尾山で天狗に会うのもいいだろうが、二郎で天狗になるのも悪くない。

ラーメン二郎 めじろ台法政大学前店ラーメン / めじろ台駅八王子みなみ野駅山田駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2014年12月17日水曜日

Syro : Aphex Twin



2014年 音楽シーン最大級の話題として挙げられるのが、Aphex Twin が「drukqs 」以来13年ぶりに新作をリリースしたこと。あれから13年も経ったことに驚いているんですが、その間に Aphex Twin こと Richard D.James が二児の父親になっていたことにも驚愕。変人奇人の変態テクノ野郎として名を馳せた彼も、普通に恋に落ちて結婚して父親になったんだなあ、と変な感慨にふけてしまった。

さて本作がリリースされるにあたっては、突如としてロンドン上空に AphexTwin ロゴのある飛行船が浮かび、世界中の街中や裏道そこかしこにステッカーやポスターが貼られるというゲリラ的ポロモーションが展開されました。こういった匿名的な戦略で煽りまくったのは Aphex Twin らしかったんですが、13年のブランクをどのような音で埋めるのか、個人的に不安であったのも事実。そして一聴して思ったのが「音がいい」こと。

初期のアシッドハードコアな時期、「Selected Ambient Works 85-92」(過去レビュー )に見られる純朴でドリーミーなデビュー時期、アイロニーに満ちた「I Care Because You Do」(過去レビュー )以降と、音質は常に良くなかったんですが、本作では霧が晴れて澄み渡った山頂のように音がクリアになっています。当然、最新機材を駆使して創られた作品に違いないんですが、作風にも適当さが全く見当たらない。逆を言えば、相当入念に作りこんだ意思と統一感が感じられます。

はからずも「I Care Because You Do」以降の悪意やシニカルさは薄れ、「Selected Ambient Works 85-92」時期の純朴性や良質なユーモアが復活している。時代を切り開いていった時期を期待する人は肩透かしを食らうだろうけど、僕にしてみりゃ猿的リピート必須な快楽物質の塊。アナログ感覚たっぷりでドリーミーなシンセ音と旋律、ドリルなひねりがまぶされ最新型音質にアップデートされた緻密ビート、アシッドな気持ちがぎっちぎちに詰め込まれたベースライン。どこを切っても Aphex Twin の音、しかも最新型。世界の各地で交わされる本作の議論を、にんまりとほくそ笑みながら横目で見ている Richard D.Jamesの顔が浮かんでくる作品です。

2014年12月13日土曜日

甲子家


この間、東京こそが世界屈指のラーメンシティであると書きました が、もっと言えば世界屈指の家系ラーメンシティこそ横浜、というのは揺るぎない事実。家系こそ「吉村家」(過去の記事 )を総本山に頂き、主流・亜流に細分化されている壮大なるサーガであることは間違いありませんが、「吉村家」と決別した「本牧家」の流れを汲む「寿々喜家」(過去の記事 )も一大勢力となっています。その「寿々喜家」で修業を積んだ店主がいるのが、今回訪問した「甲子家」です。最寄りの駅から徒歩圏外ですが、車で訪問する地元客でいつも賑わっています。家系カラーの赤とは真逆の青を看板に使っているのもなかなか斬新です。


入店すると同時に、愛想のいい店主が「いらっしゃい!」と声を掛けてくれて好感度大。メニューに目をやれば、家系ラーメンの心の拠り所といえる「酒井製麺」の文字が。ラーメン中盛を麺硬めでお願いしますが、「細麺」という文字も気になるところ。家系と言えば中太以上の太めストレートが主流ですが、このような細麺を提供しているところは初めて見た。これは是非次回にチャレンジしてみたいと思います。ちなみに支払は前金という変わったシステムになっています。


通常の家系よりも色が濃いスープを湛えた一杯が着丼。上澄みに張られた油膜が厚く、見るからにスープに込められた熱を封じ込めているのが分かる。ちょいと熱々スープを啜ってみれば、ラードと鶏油の動物的な味わいが感じられ、更にスープを啜れば豚骨醤油よりも醤油寄りのすっきり~あっさりした味わい。角が取れて丸みがある優しい口当たりは、濃厚さを是とする家系原理主義者からは異論が出てくるでしょうが、豚骨醤油と醤油の中間に位置する「醤油豚骨醤油」と考えれば新発明と言える領域です。具材は基本に忠実な豚ロースチャーシュー、ほうれん草に海苔。チャーシューはしっかりした食べ応えながらも、ほろりと柔らかくて優しい気分になれる。


緩やかウェーブな中太ストレート麺は短く切られており、家系としてのDNAも十分感じられる。もっちりした食べ応えの中に、上品な小麦の香りが吹き抜けていく。さらりとしながら奥深さのあるスープと互いに補完し合って、麺を食べ終わった後もスープを啜り続け、いつの間にか汁完してしまった。個人的には銘店の域に達していると思いました。スーパーローカルながら、近所に住んでいる人は勿論のこと、多くの人に食べてもらいたい味です。

甲子家ラーメン / すずかけ台駅つくし野駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2014年12月9日火曜日

Songs Of Innocence : U2

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作品の出来とは別次元で、U2は「No Line on the Horizon」(過去レビュー)以来5年ぶりのアルバムのプロモーション戦略で失態を犯した。iPhone 6 の製品発表とタイアップして、突如として新作を無償配信したのだ。iTunesアカウントを持っている全てのユーザは、個人の好みに関わらず勝手に音源配信されてしまうという強引なやり方で。「好きでもないバンドのために、貴重な容量を食われたくない」という苦情が続出し、これを受けてAppleは削除ツールを用意、ボノもネットで謝罪を表明した。アップルとU2のこの強引なプロモーションは明らかにクールとは言えず、金の匂いがプンプンするイベントとタイアップするU2の姿勢には僕も疑問を感じた。社会貢献活動に熱心なのに自家用ジェット機で移動するセレブリティな行動に違和感を覚えるのと同様に(9年近い前の記事で偽善を指摘したけど)、今回の騒動でもものすごく残念な違和感があった。

そもそもアルバムの無償配信という手法は、数年前から複数アーティストが実施してきた手法で新しいものではなく、それを何故今どきになって行うのか理解に苦しむ。更にはオジー・オズボーンからは「自分勝手」と非難される始末。「お前はU2支持派なんだからいいじゃないか」だって?冗談じゃない。CDのデラックス盤を購入しリッピングしたんだけど、DL版がダブってトラックリストに上がってくるんだよ。つまり1曲が2回再生されてしまうのだ。DL版を削除しても、いつの間にかゾンビのようにトラックリストに上がってくる。こういった思慮を欠いた戦略は本当に勘弁して欲しいと思う。

この騒動のせいでアルバムの本質そのものが失われてしまった気がする。初期3部作の雰囲気をうまく活かしたジャケットと合わせて、タイトルから汲み取れる通り、イノセンスで内省的な作風は極めて優れている。自分たちのヒーロー Joey Ramone や Joe Strummer への敬愛を表明した姿勢からは熱いものを感じ、控え目ながら家族や恋人、友人や隣人への愛を伝えようとする姿勢には共感を覚える。それだけ深みがある内容なのに、今回の無様な戦略を考えるとアルバム全体の価値は極めて低いものとなってしまった。

2014年12月5日金曜日

無頼庵

ロック史を振り返ると、いつの時代にもブライアンという名のつく男たちがいた。60年代ではビーチボーイズのブライアン・ウィルソンやストーンズのブライアン・ジョーンズ、70年代以降ではロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーやブライアン・イーノ、クイーンのブライアン・メイ、80年代以降ではブライアン・セッツァーやブライアン・アダムスといったところだ。そして時は流れて21世紀になると、世田谷区の経堂にロック魂溢れる二郎系ラーメン店が出現する。その名は「無頼庵」。


世田谷区と言えば「ラーメン二郎 上野毛店 」「 」「蓮爾 さんこま店 」「らーめん 辰屋 」「りらくしん 」といった本流およびインスパイア系が軒を連ねる二郎系の激戦区。いや、激戦区というよりも日本で一番、二郎密度が高いエリアと言える。何故このようなセレブリティタウンに、これほどの二郎系が集結するのか?理由は明快、前にも言及したが セレブリティは二郎系がお好きだからだ、そうとしか考えられない。だが、世田谷にロックは似合わないのでは?ためしに「世田谷区 ロック」で検索してみると「オートロック」という結果がわんさか出てきた。なるほど…セキュリティ意識の高いセレブリティタウンならではの発想だ。Lock と Rock で整えるとは…。とりま、入店してきた。


ラーメン並盛をヤサイアブラで注文。隣に座った男性が苦悶の表情を浮かべながら食べているので、だんだん心配になってきたところへ美しい山もりが目の前に降臨した。事前情報によればキャベツ比率が低いとのことだったが、ご覧の通り色鮮やかなキャベツがちらほら見えて一安心。もやしは軽く茹で上げられているのでシャキシャキ感がばっちり残っている。ブタは大ぶりの岩みたいなやつが一塊ぶっこまれている。まさしくロック!適度に煮込まれているので肉の食感を楽しむには最適だが、もっとホロホロに煮崩れするぐらい柔らかくてもよかっただろう。いや、ロックはヤワではいけないという意思表示なのかもしれない。


ヤサイにスープをふりかけて大地の恵みを感じつつ、全体ボリュームを徐々に減らしていく。卓上にあるカラメボトルを振り掛けて食い進むのもありだろう。スープは事前情報の通りの味わいで、相手を激しく強打するほどの打撃系ではなく、優しい味わいの豚骨醤油スープと言ったところだ。言うなれば狼の皮を被った羊のようなもので、見た目で相手を圧倒しながら、実のところは優しくなくてはいけない、というロックの本質を見る思いがした。そして全体のかさが減ってきたところでおもむろに天地返し。つるりとした表面のもっちりもちもち極太縮れ麺は圧倒的ボリュームで、胃袋と脳みその満腹中枢をじわじわと刺激していく。隣を見ると先程の男性は今にもぶっ倒れそうな勢いで麺を残していた。取りあえず全ての麺を回収したところでゆっくりとスープを味わう。やはり優しい味わいでビート感覚はないが、壮大なロックバラードのような一杯であった。

無頼庵ラーメン / 経堂駅宮の坂駅千歳船橋駅
夜総合点★★★☆☆ 3.5
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2014年12月1日月曜日

Do It Again : Royksopp & Robyn

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ノルウェーのエレクトロデュオ Royksopp が「ラストアルバム」をリリースしましたが、本作はその前哨戦として2014年3月にリリースされたEP。そもそも「ラストアルバム」と言えども、アルバムフォーマットとしてのリリースは最後という意味合いで、音楽制作をやめるという意味合いではないので一安心。

本EPで連名となっている Robyn とはスウェーデンの女性ポップシンガーであり、過去の作品「Junior」(過去レビュー)でも共演している盟友。彼ら二人が構築する温もりある北欧エレクトロに華を添えていますが、もはや共演というよりはユニットと言っていいかも。この作品で聴けるのはこれまで以上に哀愁漂う刹那的でブリーピーでアシッドな音。特にタイトル曲「Do It Again」はダフトパンクの「One More Time」へオマージュを捧げているんじゃないの?「One More Time」が持っている祝祭感は全くないんだけど、思いっきり「One More Time」って歌っているからね。しかも、曲が持っている輝きエモーションはかなり共通している。ややもすると昨今の EDM シーンを意識して(または否定して)いるかのようです。