2014年12月9日火曜日

Songs Of Innocence : U2

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作品の出来とは別次元で、U2は「No Line on the Horizon」(過去レビュー)以来5年ぶりのアルバムのプロモーション戦略で失態を犯した。iPhone 6 の製品発表とタイアップして、突如として新作を無償配信したのだ。iTunesアカウントを持っている全てのユーザは、個人の好みに関わらず勝手に音源配信されてしまうという強引なやり方で。「好きでもないバンドのために、貴重な容量を食われたくない」という苦情が続出し、これを受けてAppleは削除ツールを用意、ボノもネットで謝罪を表明した。アップルとU2のこの強引なプロモーションは明らかにクールとは言えず、金の匂いがプンプンするイベントとタイアップするU2の姿勢には僕も疑問を感じた。社会貢献活動に熱心なのに自家用ジェット機で移動するセレブリティな行動に違和感を覚えるのと同様に(9年近い前の記事で偽善を指摘したけど)、今回の騒動でもものすごく残念な違和感があった。

そもそもアルバムの無償配信という手法は、数年前から複数アーティストが実施してきた手法で新しいものではなく、それを何故今どきになって行うのか理解に苦しむ。更にはオジー・オズボーンからは「自分勝手」と非難される始末。「お前はU2支持派なんだからいいじゃないか」だって?冗談じゃない。CDのデラックス盤を購入しリッピングしたんだけど、DL版がダブってトラックリストに上がってくるんだよ。つまり1曲が2回再生されてしまうのだ。DL版を削除しても、いつの間にかゾンビのようにトラックリストに上がってくる。こういった思慮を欠いた戦略は本当に勘弁して欲しいと思う。

この騒動のせいでアルバムの本質そのものが失われてしまった気がする。初期3部作の雰囲気をうまく活かしたジャケットと合わせて、タイトルから汲み取れる通り、イノセンスで内省的な作風は極めて優れている。自分たちのヒーロー Joey Ramone や Joe Strummer への敬愛を表明した姿勢からは熱いものを感じ、控え目ながら家族や恋人、友人や隣人への愛を伝えようとする姿勢には共感を覚える。それだけ深みがある内容なのに、今回の無様な戦略を考えるとアルバム全体の価値は極めて低いものとなってしまった。

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