2015年4月28日火曜日

With a Little Help From My Fwends : The Flaming Lips

ポール・マッカートニーが来日したのを記念して。


With a Little Help From My Fwends : The Flaming Lips


The Flaming Lipsの「Sgt Pepper's Lonely Hearts Club Band」カバー作品がとてもカラフルです。ゲストも非常に多彩で、My Morning Jacket、Moby、J Mascis、MGMT から Miley Cyrus まで!リップスって人脈広いな〜。


前に名作「The Dark Side of the Moon」(過去レビュー)をまるっとカバーしましたが、今回はそれ以上にチャレンジャー。誰も超えられない不朽の名作(なんて陳腐な言い方)を、友人の助けを借りてどのようにカバーするのか?結論から言えば、リップスのぶっ飛んだカラーを出しながら上手くまとめています。オリジナルが持つ摩訶不思議な手作り感覚は出せないものの、オリジナルに忠実でありながらガレージな印象を出すことに成功しています。


混沌としたサイケデリックワールドから伝わってくるのは、オリジナルに対する限りない尊敬と愛情。更には楽しんで作品を作っている雰囲気まで伝わってくる。その意味では、オリジナルを単純になぞらえた凡百なカバーなんか目じゃない。振り切れ加減の凄まじさから言って、さすがリップスだと思いましたわ。


2015年4月25日土曜日

Vulnicura : Bjork



4年前にリリースされた「Biophilia」(過去レビュー)によって遥か孤高の存在へと上り詰めてしまった Bjork の新作は、これまでになく私的な香りが漂っています。カラフルな音色はすっかりと息を潜め、「Vespertine」や「Medulla」のような儚いトーンに彩られている。私的パートナーであるマシュー・バーニーと破局を迎えたとのことで、その別離の過程を本作品でなぞっているらしい。赤裸々に失恋の痛みと心情を歌い上げているんだけど、自ら経験した痛みをエモーショナルな作品として吐露するあたりは、さすが一筋縄ではいかないアーティストです。それにしても裂けてしまった胸を女性器のように表現しているジャケットって物凄いな。


さて、前述した「Vespertine」や「Medulla」のように派手な音使いは控えており、芳醇なストリングスと変則ヒップホップ~インダストリアルビートによって音世界が構築されています。ここでサウンドプロダクションに大きな貢献を果たしているのがベネズエラ出身の ARCA ことアレハンドロ・ゲルシ。若干24歳にして、Aphex Twin 以来の衝撃と騒がれているトラックメーカーです。変則的でマッシヴな異型ビートは生き物のように蠢いており、機械と人間が融合しているかのような薄気味悪さがたっぷり。カニエ・ウエストにまで惚れ込まれているという、次世代を担うアーティストの一人です。


エモーショナル極まりないビョークの歌声や艶めかしいストリングスに耳を奪われがちな作品だけど、耳を澄ませて ARCA が紡ぎだす変態的ビートを感じ取るのがよろしいかも。それにしてもキャリアの浅い若手アーティストを起用する触手や審美眼はさすが。 


2015年4月22日水曜日

麺屋 婆娑羅


東工大生の胃袋を満たすべく、大岡山 二郎インスパイア系の覇権争いを繰り広げてきた「麺屋 婆娑羅」と「麺でる 大岡山店」(過去の記事)。結果として「麺でる」をねじ伏せた覇者、大岡山のラオウこと「麺屋 婆娑羅」に行ってきました。新たな挑戦者として、この店を凌駕していると言われるその名も「凌駕」という店が近くにあるらしいんですが、それはまた次回の課題として残しておく。




券売機の前にて。小ラーメン(300g 2人前 700円)でも食べるか…と思いきや「初めての方は野菜増・全増はご注文できません!!」という上から目線な注意書きに気づく。さすが無慈悲な力で大岡山を制した暴君だけある。食券を店主の奥様らしき女性に差し出し、無料トッピングを「野菜マシ」でお願いする。当然ながら「初めてですか?」と尋ねられるが、「(二郎およびインスパイア系は)初めてじゃありません」と答えた。もちろんこの店は初めてなんだが「服従のみの人生に何の意味もない」という名言を残したラオウなら分かってくれるはず。ちなみに卓上には無料で供されるゆでたまごが置いてあったが、同じ少年ジャンプで人気を博した「キン肉マン」作者へのオマージュなのだろうか?(いや、そうではあるまい)。腹が減っていたのでたまごに手を付けたいところだが、先にたまごを食らってヤサイを残したのでは何の意味もない。完食してもなお胃袋に余裕があれば手を付けることにした。


ヌオオォォ!You は Shock !!! 銀色のおぼんが、愛馬である黒王号の如くどんぶりを支えており、既に流血しているかのように汁が溢れだしている。粉々に刻まれてしまった玉ねぎと筋肉隆々とした豚が2枚猛々しく添えられている。ニンニクは卓上にあるのでセルフでコントロールだ。中央にうず高くそびえ立っているヤサイは、天に向かって大きく拳を突き出しているかのよう。これを見た瞬間、目の前に星が現れたような気がした。この星を見たものは死ぬと言われる死兆星なのか?そもそもこんなものを食べて健康にいいのだろうか?「ただちに健康に影響が出るものではない。だが、三日後 全身から血を噴き流して死ぬことになる!」とかつての世紀末覇者拳王は言ったが、早くも食後の恐怖に襲われた。恐怖こそ世界を制圧する力なのか?


クタ気味に茹で上げられたヤサイは、おそらく初めての者には辛い量だろう。だがしかし、こちとら数々の死闘を生き延びてきた身。スープを振りかけて順調に全体量を減らしていく。スープはラーメン界のドーピングと言われるグルエースを使っているのだろう、ケミカルでジャンキーで甘辛い味わいがこの上ない。しかし二郎本流と比較すれば脂が少なくすっきりしており、ヤサイとのハーモニーが中々いい。筋肉質で肉々しいブタは見た目よりも柔らかい。適度にヤサイを減らしてから天地返しをすると、まさに天地がひっくり返るほど驚かされる量の麺が登場。うどんのように極ぶっとくてエッジが立っており、表面つるりで食感もっちりだ。うーぬー。胃袋が徐々に膨張し始め、内側から破裂していくかのような感覚に襲われる。秘孔を突かれて爆発するというのはこういうことなのか?だが心配ご無用。全ての邪念を振り払い、闘気を「ユルユルユル」と受け流して無想転生。そう、無想転生とは二郎系を食い続ける深い哀しみ知った者のみが体得できる究極奥義。ゆでたまごを食すことはできなかったが、完食することができた。さっき見えた星は勝利の星に違いない。「おい おまえ!おれの名をいってみろ!!」

麺屋 婆娑羅ラーメン / 大岡山駅北千束駅緑が丘駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2015年4月19日日曜日

Pisces Iscariot - Deluxe Edition Box Set : The Smashing Pumpkins



2012年にリリースされたリイシュー盤。例によって購入後に放置(しかも3年近くも!)していたんですが、旅のお供に聴いていたらスルメ盤であったことに今更ながら気づく。オリジナルは「Siamese Dream」(過去レビュー)のB面&レアトラック集なんですが、オリジナルアルバムに勝るとも劣らない優れた作品。大ブレイク直後のバンドということもあってクオリティが実に高いのです。同時期に制作された楽曲なので、バンドの勢いや制作意欲がひしひしと伝わってくる。

「Siamese Dream」がキャッチーな出来なのに対して、こちらは James Iha が持っている優男な側面、つまりフォーキーで穏やかな佳曲が目立つ。総じて肩の力が抜けた癒やし的渋めトラックが多いんだけど、B面集でここまで仕上げてしまうバンドは実に珍しい。当時のオルタネイティヴ勢がどれだけの凄まじさを持っていたのかを垣間見ることができます。

もっと凄いのが、このB面集に更なるレアトラック/未発表トラック/デモトラックを追加してもクオリティが揺るがないという事実。ボーナスDVDに収録されたライヴ映像を見ても、デビュー前からスマパンは別格のバンドであったことを思い知る。YouTubeにアップロードされたファン映像のような荒い映像を見ても、バンドの完成度の高さがどれほどなのかも分かる。この作品から「Mellon Collie and the Infinite Sadness」(過去レビュー)へと続いたのは、奇跡でも何でもなく必然だったのだ。

2015年4月16日木曜日

めん 和正


三軒茶屋でもっぱら評判が高い「和正」(わしょうと読みます)を訪問してきました。駅から国道246号線を上って徒歩5分ほどの場所。看板が掲げられておらず、しかも隣は油そば店なので素通りしてしまう可能性が高い。だけどもご心配無用、ご覧の通り行列が出来ているのであっさりと発見。ここの店主は永福町大勝軒の出身ということなので、いわゆる永福町系に分類される。先日、店主が亡くなった東池袋の大勝軒とは全く系統が異なります。


上品な店内はカウンターとテーブル一つのみ。店主ご夫婦が静かに、かつ丁寧に愛想よくお店を切り盛りしています。僕が頼んだのは中華麺を中盛、味玉つきで。そもそも永福町系なるものを食べたことがないので事前情報が全くない。どうやら和正とは和風かつ正油に因んでいるようで、海産物系の出汁を使用しているとのこと。


静かに待っていると大ぶりの一杯が着ドーン。そう言えば永福町系は大きい器に盛られている聞いたことがあるが、なるほどこれを見て思わず納得。スープを啜ってみると…仄かに煮干しを始めとした魚介系の香りが立つが、いわゆる煮干し系とは違う雑味なしのすっきりした味わい。二口目を啜ると、鶏がらや豚骨がらといった動物系の出汁が骨格をしっかりと作り上げ、魚介系の風味をより際立てる。甘みさえ感じられる繊細な味わいが実に印象的。ロールされた豚バラチャーシューは、箸で掴み上げるのが難しいほど柔らかく煮こまれている。ほろほろ肉に封じ込められたジューシーな味わいは、チャーシューを追加しなかったことを悔やませる。適度に半熟な味玉も全体との相性が良くて、追加で注文して良かったと思わせる出来。こりこりした食感のメンマも実に完成度が高い。


麺をリフトアップすると、見事な縮れっぷりの中太麺が顔を出す。表面はつるりとしており、適度な噛みごたえのあるクニクニした食感とツルツルいける喉越しを体験できる。やや粘度のあるスープが麺に絡みきり、麺とスープがまさに一体となっているではないか。まろやかな味わいのスープはもはや魚介系か動物系かを意識させない素晴らしい旨味で、麺の持つ甘みを極限まで引き出すことに成功している。これは旨い、間違いなく旨い。三軒茶屋で最強のラーメン屋と言われているが、田園都市線沿線の中でも屈指のハイクオリティだ。何度でも足を運びたくなるお店とはこういうお店を指すんだろう。

めん 和正ラーメン / 三軒茶屋駅西太子堂駅池尻大橋駅
夜総合点★★★★ 4.0
昼総合点★★★★ 4.0

2015年4月13日月曜日

Nobody Knows : Joris Voorn



若くして第一線のテクノDJ/アーティストとなった Joris Voorn もデビューしてから13年ものキャリアを誇るので、移り変わりの早いこの分野においてはベテランと呼んでもいい。そんな彼が「From A Deep Place」(過去レビュー)以来7年ぶりのアルバムをリリースしたんですが、彼が持っている作家性が如実に表れた作品になっていました。まずはアートワークが非常に素晴らしく、攻撃性のあるフロア向けトラックとは異なり、彼は根っからのロマンティストなんだろうなぁと思ってしまう。


前作から7年もブランクがあったので忘れてしまっていたけど、彼が本作で表現したいことは明らかにフロアチューンと違っている。なので、僕が当初持っていた期待とかなり違い、軽い肩透かしを食らってしまったのも事実。ダンスフロアで機能するトラックはここには殆どなく、リスニング/アンビエント志向の強い電子の音が溢れていた。しかもゲストボーカルもフィーチャーされて、泣きの入ったメランコリックな音が大全開。これはもう確信犯というか、「アルバムでやりたいのはこういうことなんだよ!」と言っているとしか思えん。

彼が紡ぎだす音は至る所から情感があふれ出ており、甘くて切ないノスタルジアに満たされている。電子音は無機質なところが全くなく、生きているかのように艶やかで、彼ならではのエモーショナルな音使いが成されている。彼がやりたかったこのような壮大でチルな作品は、多くの人に理解されにくいと分かっていたんじゃないか?だからこそ「誰も分からん」というタイトルをつけたとしか思えん。

2015年4月10日金曜日

カッパ64


米軍基地のある街 福生。ここへは仕事で足繁く通ったと前に書きましたが、基地の一番最寄となるのが青梅線の牛浜駅。まあ~駅の周りにはものの見事に何もなく、基地への用事がなければ降りる機会などないスーパーローカルな地。だが、駅から10分ほど歩くと変わった名前のラーメン店が存在する。それがカッパ64。しかも旧店名がカッパヌードルという小粋なお店だ。単に店名が変わっているだけでなく、食べログの東京ベストラーメン2014で83位という高評価を得ているのだ。



お店の看板メニューは「とまとチリ」。この他に「レモンらーめん」や「シーフード」というメニューがあり、「レモンらーめん」の場所には以前「醤油」というメニューがあったそう。これ以外に「カレー」とかあったら面白いね。まずはこれを頼まないと始まらない「とまとチリ」と「チーズごはん」の食券を買う。



目にも美味しい「とまとチリ」が着丼。トマト味のラーメンは「太陽のトマト麺」(過去の記事)で食べたことがあるぐらいだが、果たしてここの味はどんなものか?ドロリッチな風情のスープが食欲をそそりまくります。少し啜ってみると…旨い!単純にトマト味というだけでない!美味しいトマトピューレが持っている甘みと酸味と、だしに使われているという豚骨と鶏がらのコクと旨味が引き立てあい、ラーメンスープともパスタソースとも言えない濃厚な味を演出している。トマト味によってダシの味はそれほど感じられないものの、分厚いボディはやはり動物系のダシがあってこそなんだろう。具材には茹でたモヤシとキャベツ、刻み玉ねぎが使われており、豚バラーチャーシューが2枚添えられている。




全体を撹拌し、麺をリフトアップするとストレートな細麺が顔を出した。やや固めに茹でられた細麺は自家製の麺だそうで、長浜ラーメンを思わせるポキポキ感をキープ。この麺と濃厚なトマトスープの幸せなマリアージュを楽しむにつれ、パスタなのかラーメンなのかはそんなのどうでもいい気分になってくる。上品すぎない適度なジャンク感により、味わうというよりもズバズバと旨味を堪能しながらあっという間に麺を平らげる。なお、「チリ」と謳っている割には辛さはさほど感じられなかったので、卓上タバスコを振り掛けて旨さ倍増させる。



タイミングを見計らったようにチーズごはんが登場。熱せられたお茶碗(やけどに注意)の中には、溶けかかって焦げ目がつけられた炙りチーズ on the ごはん。これを単体で食べるのは野暮というもの、残ったトマトスープにぶっこんでリゾット風にして食べるのが粋。チーズとトマトとお米の至福なハーモニーが脳内を駆け巡る。マジでうめえ!ここでしか食べられないB級グルメ的リゾットだ!これは全メニューを制覇したくなる名店だ!


ホームページ:http://kappajapan.com/
カッパ64ラーメン / 牛浜駅熊川駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2015年4月7日火曜日

Computer Controlled Acoustic Instruments Pt 2 EP : Aphex Twin



13年ぶりにリリースされた「Syro」(過去レビュー)は相当の驚きを持って受け入れられたんですが、内容的に衝撃的であったかと言えばそれ程でもない。その「Syro」からわずか4ヶ月のインターバルでリリースされた本作こそ、凄まじい衝撃度を持った問題作といえる。謎めいたタイトルは何を意味するのか、世間は固唾を呑んで見守っていたのだが…なんとタイトル通りの内容だったので多くの人が度肝を抜かれたと思う。つまり「コンピュータ制御されたアコースティック楽器」で演奏されていたのだ(Pt 2の意味は不明)。

音がわずかに電子処理されているものの、使われているのはピアノと打楽器といったアコースティック楽器のみなので電子音は皆無。しかも人間の手から紡がれるグルーヴは全く存在せず、無機質な響きしかない。つまりこれはコンピュータ制御されたロボットが演奏しているのだ。しかも Pepper のようなロボットではなく、アコースティック楽器演奏に特化した特注ロボットなのだ。これにはベルギーの現代音楽家 Godfried-Willem Raes という方が主催する Logos Foundation が一枚噛んでいるとのこと。このページを見れば分かる通り、クレイジーとしか言いようのない前衛ロボットたちがずらり。

このような超前衛的な手法を導入してもなお、Aphex Twin は彼の持ち味を決して忘れていない。ユーザフレンドリーで聴き易い音楽でありながら、聴き手の不安とユーモア心をくすぐり続けている音楽こそ彼の音楽なのだ。

2015年4月4日土曜日

ラーメン二郎 京成大久保店



完全アウェーな土地である船橋・習志野エリア。その中でも京成大久保は一つの目的を果たす以外に、訪問する目的は何もない(その目的とは?などと野暮なことは聞かないでくれ)。東邦大学や日大生産工学部を抱える学生の街で、15年以上も前にこの地に仕事で足繁く通ったことがあるんだが、今となっては一つの目的を果たすのみ(その目(ry)。当時は二郎なんぞ開店していなかったのは言うまでもない。

さて、新習志野での打ち合わせという僥倖に恵まれたため、打合せ時間を14:00に無理くりセットし、内陸部の京成大久保へ上陸。悲願の京成大久保店訪問を果たす。正午直前の入店だったのであっさり着席。会社を出る前にカレーパンを食べてしまったので、全く腹は空いてない。従って無料トッピング抜きのラーメン小にするが、むしろニンニク臭を漂わせず打ち合わせに臨むのが紳士の心得というもの。


この店は夫婦で切り盛りしているようで、夫婦茶碗的なサービングをしてくれるのが嬉しい。やがてデコレーションケーキのような一杯が着丼。世間はイエス生誕を祝うためにケーキを食べる人が多いが(この日は12/25だった)、これほどデコラティブな二郎があれば迷える民の魂も救済されるに違いない(アーメン)。店主が丼にぶっこんだ魔法の白い粉グルエースのおかげで、スープは極めてエッジの立った味だ。世間ではこれを塩辛いと言うのだろうが、紳士たるもの地の塩は大切にしなければならない。くた加減が心地よいヤサイ、ほろほろに煮込まれたブタ、やわめに茹でられた麺を嗜む。


麺は平打ででろりとぶっとくて、二郎DNAマナーを忠実に守ってる。ブタは脂分が少ないソリッドなもので繊維にそって歯を立てれば、すっと肉が切れるほど柔らかい。乳化していないスープはやはり塩辛く、他店と比べても塩分が充分立っているのが分かる。しょっぱいなー。脂と塩分と麺のせめぎあいにより、こんなことをしててこの後の打合せは大丈夫なのか?と一抹の不安が脳裏をよぎるが、二郎が繰り出してくる波状攻撃はそんなことをどうでもよくさせる。どうにか完食して退店すると、背後霊として待っていたお客さんが、置き忘れたマフラーを笑顔で渡してくれた。実に紳士的なお客さんだ。神の祝福があらんことを(ラーメン)。


住所:千葉県船橋市三山2-1-11
ラーメン二郎 京成大久保店ラーメン / 京成大久保駅
夜総合点★★★☆☆ 3.6
昼総合点★★★☆☆ 3.6

2015年4月1日水曜日

Berlin (Day 4 pt.2 - Day 5) - Berghain / Tresor -

前の記事で「頭の中にはアレしかない」だとか「アレを実現するべく」だなんて勿体ぶって書いたけど、そんなもん決まっているじゃないか。ドイツと言えば、ベルリンと言えば、テクノに決まっているじゃないか、クラブに決まっているじゃないか。夜中の営業中に行けなくてもいい、せめて安全な昼間に外観を拝むだけでもいい。っつーことで、ベルリン大聖堂の最寄駅「ハッケッシャー・マルクト(Hackescher Markt)」から電車(Sバーン)に乗りました。



まず巡礼すべきは、世界最高峰クラブにしてテクノの聖地である「Berghain(ベルクハイン)」。10分もしないで最寄駅「オストバーンホフ(Ostbahnhof)」に到着して撮り鉄になる。ちなみに駅には改札がないが、抜き打ちで検札があるのでキセルはダメ。切符を打刻機でパンチしてからそのまま乗るだけだから楽ちんです。




駅はきれいに整備されており、これまたドイツ的機能美を感じさせるんだけど、素っ気なさがあるのもやはりドイツ的。周辺には商業施設らしきものは全くない。ここから徒歩10分もしない場所に Berghain がある。この辺りを真夜中にうろうろしていたら、確かに怖いかもしれない。




地図を片手にとぼとぼ歩くが、殺風景な高層マンションが立ち並ぶのみ。人通りも少ない。それでも Google Maps のお陰で道に迷わずに済むのでテクノロジー万歳!(ジークハイル テヒノロジー!)と叫ぶ(心の中で)。駅を出てから北方向に向かい、2番目の角を右に曲がって300mほど進んだところに聖地があるはず。それにしてものどかだな~。




じゃーん。ついに聖地巡礼。古い発電所が改装されて巨大クラブへと変貌を遂げたベルクハイン様〜。事前情報ではかなり朽ちた外観だったんだが、ご覧の通りやぐらが組まれていて外装工事中だった。この日は金曜日ということもあるので、夜中になればばっちり営業しているはず。来たいな~来たいな〜と思いつつ、高いハードルをクリアしなければいけない。それはとてつもなく厳しいと言われている入場チェックだ。サメのような眼をした顔面刺青だらけ金歯だらけのおっかない用心棒ががっつり入場チェックするらしいのだ。そこで「お前はダメ、お前は入っていい」と基準が全く分からない判定が下されるそう。しかも館内は全面撮影禁止なので、入場時に携帯電話が取り上げられるとのこと。今ではどうやらスマホに特殊な赤いステッカーを貼られて、デヴァイスをかざしている奴らは放り出されて出入り禁止になるとのこと。夜中に並んだのに入場できなかったら、携帯電話が取り上げられて紛失でもされたら…これはかなりリスキーだ。




エントランスに近づく。何にも知らない人がこれを見たら、廃墟に落書きがされただけと思うだろう。だが週末の丑三つ時になると最先端ファッションに身を包んだ 24 hour party people やゲイの人たちが阿鼻叫喚の宴を繰り広げるのだ。仕方ないので、時間がない旅行者として第二の選択を取ることを考えた。




一駅戻って「ヤノヴィッツブリュケ(Jannowitzbrucke)」駅に着いた。川沿いにあるこの駅もアンダーグラウンドの香りがぷんぷん漂い、駅構内は昼なのにご覧のような薄気味悪さ。




この駅を出て、第二の選択となるクラブへ向かうことにした。それは余りにも有名な、全世界のクラバーが涙と涎を垂れ流して喜ぶ「Tresor」だ。かつては市の中心のポツダム広場にあったそうだが、大規模な再開発によって立ち退きを余儀なくされ、2007年に彼の地で再オープンを果たしたのだ。これまた駅周辺は無味乾燥なマンションが立ち並び、道路はどこでも工事中。東ベルリンの象徴的存在でもあったテレビ塔も見えます。Google Maps を見ながら川を渡って「Tresor」はどこかな~と探してみると…




こいつが Tresor だ!でかいよ、でかすぎるよ!取れ蔵さん!さすが超有名なクラブになると、こんなにもでかいのか!それにしてもでかすぎだろう!どうみても工場か発電所にしか見えないよ!でっかい煙突がにょきにょき立ってるし!




本当にこれが Tresor なのか?近づいてみたが、どうみても巨大クラフトヴェルクかデータセンターだ。だが Google Maps は明らかに Tresor を指し示している。建物の看板を見ると Vattenfall と書かれている。説明しよう、Vattenfall とはスウェーデンの電力会社であり、ヨーロッパ有数の多国籍エネルギー企業なのだ。事前情報では Tresor は火力発電所の跡地に移転したということだったが、ばりばり現役の発電所敷地内に店舗を構えているのだった。




それにしてもこんな近代的な建物のどこに名門老舗クラブがあるのか。ぐるっと建物の反対側に行ってみるが、そんな雰囲気は全くない。…と思っていたところ、視界の端っこが何かをとらえた。




柵にどーんと Tresor のスケジュールが吊るされている!ここは間違いなく Tresor だ!この日は3/20(Freitag 20.03)だったんだが、残念ながら僕の知っているDJはリストになかった。次の金曜になれば田中フミヤが出演することになっていたのだが。




そして敷地内に入ってみると、と、と、トレゾーの文字が!ここで再び説明しよう、僕はトレゾーと発音しているけど、正確な発音はトレゾアだ。現地の人に「トレゾー」と聞いても全く通じず、「ああ、トレゾアね!」と言っていたので間違いない。




エントランスの近くまで来た。Tresor は Berghain ほど入場チェックが厳しい訳ではなく、撮影禁止と言いながらもほぼ撮影OKらしい。故に第二の選択、つまりここに潜入するのは確実になった。夜中までまだまだ時間はあるので、ここから駅に戻って動物園駅方面の観光をしつつ、夕方には宿に戻った。
19:00にはベッドに入って夜中の突撃に備える。19:00と言っても日本時間で午前3:00なので、体をアジャストするのは簡単だ。



現地時間の午前2:00(日本時間の午前10:00)にガバ!と目覚め、タクシーに乗り込み5分ほどで現地到着。エントランスには行列が出来ていたが、なんのチェックもなく簡単に入場できた。入場料は13ユーロなり。




入り口から左に行くとクロークがある。事前情報ではエントランスからかなり遠く見つけるのも難しそうで、超無機質なエリアということだったが全くそんなことはなかった。おそらく前と場所が変わったんだろう。1.5ユーロを払ってコートを預ける。お店の人はとてもきさくだ。




クロークと逆方向に行くとバーがある。ビールは3.5ユーロで、同時に渡されるトークンと空き瓶を返すと0.5ユーロを返してくれる。客層は20~30代が多く、女性数人できているグループも多い。最先端ファッションな人たちを想像していたが、そこら辺を歩いているような人たちばかりで緊張感は全くない。座りながらビールを飲んで、隣の人達と乾杯したり。




フロアは地下1階にある「Tresor」と2階にある「Battery」、その上にある「Bar+4」の3つに分かれていて「Bar+4」は冬季閉鎖中とのこと。まずは地下の「Tresor」へと向かうが、この時点で腹に響くような重低音が身体を揺さぶってくる。




暗い地下通路はホラーな感覚が満点で、テンションは否が応でも高まってくる。




午前3:00頃、フロアは徐々に高まりを見せていた。腹に響くような爆重音で鳴らされ続けるハードミニマルへ集中できるように、照明は最小限にとどめられ、視覚を混乱させるようなストロボが焚かれ続ける。




檻がフロアとDJブースを隔てているのは凄いなあ。下手なプレイでもすれば、厳しいオーディエンスが物を投げつけるのかな。スピンするのはシカゴテクノのベテラン Hyperactive だ。重心の低いハードバンギンなキックがある、ねっとりとファンクネスあふれるハードミニマルで、テクノヘッズの心臓と脳みそをがっちりとロックしている。




Djブース側から眺めるの図。インダストリアル極まりない音と、コンクリートむき出しの壁がやたらとマッチしている。発電所だから途方もない頑丈な作りになっているんだろうね。ここで鳴らされる音はまさしくベルリン地下シーンの中枢なんだ、と考えると本当に身が震えてきた。




壁に落書きされた「Stony Techno」の文字。的確だ。




そしてお馴染みの Tresor トレードマークまで。




階段も朽ちた風情で、地下感覚をたっぷりと演出。いや、この雰囲気まじでやばいって。




写真を撮っていたら現地客が話しかけてきた。「俺を撮ってくれ」と言っているのか?と思いカメラをかざすと「違う違う一緒に写ろうよ」といって二人で自撮りしたり。客はおしなべてフレンドリーで愛に満ちていた。




2階にある「Battery」は地下ほど低音が響いておらず、スピンされている曲(というかライブをやっていた)も明るめ。このフロアにはラウンジも併設されており、腰かけてゆったりと飲む客が多い。中でも印象的だったのが、おそらく還暦前後と思われる夫婦。二人仲良く腰掛けて、音楽に合わせて身体を揺らしていた。あまりにも素敵だったので「日本から来たんですが、写真撮っていいですか?」と話しかけちゃった。断られたけど。高齢の方までクラブを楽しむのがベルリンの素晴らしいところ、とは聞いていたけど、目の当たりにするとやはり感動する。それにしても日本人は全くいなかったな。ベルリンに来る日本人はそれほど多くないし、季節的に言って観光シーズンでもないし、まして Tresor にくる人になると限られてくるんだろう。




朝7:00頃に退出。近くの駅まで歩いていき、屋台でドネルケバブを買ったら Tresor 帰りの酔っぱらいお兄さんが抱きついてきた。もじゃもじゃの髭をすりすりされて、変な気持になってしまったり。




宿に戻ってからチェックアウトし、12:00の飛行機に乗り、ヘルシンキ経由で帰国する。Auf Wiedersehen,Berlin !!!また来るよ!