2015年8月29日土曜日

菜良


夏といえばサザン。サザンといえば茅ヶ崎。茅ヶ崎と言えば「チャコの海岸物語」の歌詞にも引用されたエボシ岩だ。


この日は終わりゆく夏をあきらめて、エボシ岩を眺めようと茅ヶ崎までやってきた。茅ヶ崎駅からラチエン通りを抜けてホテルパシフィック辺りまで行くか…と洒落こもうとしたが、どうにもこうにも腹が減って仕方がない。


都合のいいことに駅近くにラーメン屋さんがあったので腹ごしらえしようと入店。外側にあったメニューには「えぼし麺」(650円)なるものが掲げられていた。さすがは茅ヶ崎、ご当地メニューと言う訳かい、と勢い余って頼んだが……。




ご覧の通り、エボシ岩のような山盛りラーメンが出てきた、江の島が見えてきた!俺の家も近い!なんだこれ、二郎系じゃないかよ!茅ヶ崎に来ても二郎系の呪縛からは逃れられないのか……というのは嘘で、この店目当てで茅ヶ崎まで来たのだ。


無料トッピングはニンニクヤサイアブラ。適度に茹で上げられたヤサイはもやし中心で、全体ボリュームは標準的なものと比較してやや小さめだ。取りあえず薄めに切られたブタを喰らってみたら、バラ肉特有のアブラ感覚満載なジューシー肉汁がじんわりとお口の中に広がる。とは言え破壊力が非常に小さいので、おいおいこの先大丈夫かよ?と不安になってきた。


だが、その懸念も杞憂に終わることになる。




天地返しをすると、稲村ヶ崎の伝説の大波のようにうねりまくった自家製手打の極太麺が現れた。ワシワシっぷりが途方もなく、咀嚼する度に小麦の香りが海風のようにそよいでくる。スープをじっくり啜れば…何これ超絶的な美味さ!


旨味と甘みが凝縮されて、溶け込んだニンニクが爽やかに口内に広がる。ボリューム少なめなので麺をガシガシ喰らうが、まだまだ満腹中枢が満たされないので、それほど脂っぽくないスープを思わず全部飲み干し系。どんぶりの底を拝んだのは久しぶりだ…と、ここまで書いて思い出した。


豪徳寺の名店「りらくしん」(過去の記事)や新杉田の名店「赤ひげラーメン」(過去の記事)と同系統のライトスープだ。ブタと麺のボリュームが少なめなのが気になるが、それを差し引いて余りある美味さ。がっつり喰らいたければ大盛を注文するのがいいだろう。あえそばや台湾まぜそばも美味いらしいので、リピートしたくなってきたぞ。いつまでも茅ヶ崎に背を向けてはいられない。

住所:神奈川県茅ヶ崎市中海岸1-1-66

菜良ラーメン / 茅ケ崎駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2015年8月26日水曜日

Born in the Echoes : The Chemical Brothers



Chemsがデビューして早20年が経ったそうです。移ろいやすいダンスミュージックシーンに於いて、それだけのキャリアがあるということに素直に驚く。もっと凄いのが、本作でも作風が金太郎飴のように全くぶれておらず、世界遺産的なアイコニックビートに溢れていること。金太郎飴なんて書くと貶しているように思われるけど、一聴して Chems と分かる音色をそこかしこに配置して、なおかつリスナーの心臓をロックし続ける技は匠の域とも言える。今回もゲストボーカルをたっぷりと迎えて歌心も忘れずに。

「Galvanize」で客演した Q-Tip を再び起用したリードシングルを前半に据えて、いつものように聴き手のテンションをじわじわ上げていく。「Under Neon Lights」では今をときめく St. Vincent を召喚してサイケデリック感覚を際立たせ、、かつてのブレイクビーツを甦らせた「I'll See You There」ではアルバムのピークに。中盤以降でトーンを抑制し、Beck をフィーチャーした最終曲で感動的な大団円を迎える。この流れも今までの作品を踏襲したもので、ぶれてないどころか王道感がたっぷり。特に Beck の「Wide Open」はここ最近の彼らのトラックの中でも最高傑作といえるほど美しい。文字通り大きく開かれた情景が描かれ、最近の Beck の作風を色濃く反映している。ゲストボーカルとして Beck を単純にフィーチャーしているのではなく、Beck と Chems が完全に融合しているさまが素晴らしい。いつまでも中二みたいなロマンティシズムが満ちており、じんわりと胸が熱くなってくるアルバムです。

2015年8月23日日曜日

信者

前に訪問した二郎インスパイア系「ゆうじん」(過去の記事)が惜しくも閉店してしまい、居抜き物件を活用した新店がオープンしていました。



「ゆうじん」とほぼ同じ佇まいを持つ新店の名は「信者」。ゆうじんと変わらないビビッドな外観、「信者」と書かれたTシャツ…「ラーメン」と書かれた赤ちょうちんが無かったら誰もラーメン店とは誰も思わず、独特の煙を放つお店か、何らかの電波を発している施設に勘違いされるはず。特にここは大井町のディープサイドであり、表通りに面していない路地裏にあることから集客には苦労している模様。店主のブログからも相当苦戦している様子が伺えます。何はともあれ食してみないことには応援もできないので、この暑いさなかに訪問してきました。店主に尋ねたところ、前の「ゆうじん」とは関係がないとのこと。




メニューはラーメン、油そば、つけ麺の3種類で各700円。基本形のラーメンを注文して着丼を待っていたところ「ニンニクと玉ねぎはどうしますか?」と変化球的な質問をされた。事前情報によるとヤサイマシはないということなので、ニンニク玉ねぎの両方をお願いした。さすれば黒々としたスープの大海に浮かんでいるのは、太目に切られた豚3枚(と、ほぐし肉)、刻みニンニクに刻み玉ねぎ、しゃっきり茹で上げられたヤサイの山。表面に張られた油膜のせいでブラックスープはあっつあつになっていますが、見た目ほど濃厚ではなく甘味すら感じさせるすっきりライト醤油味。背脂がほんのり浮かんでいるものの、二郎系の豚骨醤油味とは一線を画しています。このスープの旨味は豚骨ダシというよりは野菜の甘みのようで、刻み玉ねぎがいい塩梅に調和しています。ブタはかなり丹念に煮込まれているので、やわやわでホロホロで、特にほぐし部分のほぐれ加減は最高です。ここのブタ、かなり美味しいぞ!




麺をひっぱりだしたところ、極太で黄色いぐりんぐりん縮れ麺が顔を出した。ここも浅草開化楼のものらしく、表面はツルリとしていながらガチガチに噛み応えがあります。噛みしめれば噛みしめるほど小麦の香りが感じられ、味わい深いスープとのハーモニーも絶好調。果たしてこれは二郎系なのか? ヤサイマシがない、スープが独特である等、二郎系とは趣を異にするものの、ニンニクを尋ねられたので当記事では二郎系とカテゴライズしておきます。二郎系とは一定の距離を置いており、独自の道を歩んでいるスープはごくごくイケてしまう。

暑かったので背脂を回収したところで止めておいたけど、寒い冬の夜に一杯やったら相当暖まるはず。一回行ったらもういいや、と思わせるのが二郎系だけど、「ゆうじん」と同様にリピートしたくなってしまう魔力を持っているのがこのお店。場所的には秘境と呼べるところなんだけど、ラーメン的にはパワースポットと言える場所なんでしょう。


住所:東京都品川区大井1-41-1

信者ラーメン / 大井町駅下神明駅西大井駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2015年8月20日木曜日

Déjà Vu : Giorgio Moroder



ディスコミュージックにシンセサイザーを導入することで、現在におけるダンスミュージックの礎を作った偉大なるディスコの父ジョルジオ・モロダー翁。齢75にして30年ぶりというアルバムをリリースしましたが、僕のハートを直撃する感涙なくして聴けはしない内容となっています。

Daft Punkが「Random Access Memories」(過去レビュー)で限りない敬愛を表明したことで再評価の機運が高まり、日本でのWIRE13(過去レビュー)を始めとしてツアー活動を始めた翁。まさかのまさかでオリジナルアルバムをリリースするとは、忘れかけていた音楽活動がよほど楽しかったに違いない。それにしてもDJという訳でもなく、WIRE13では弟子に機材を使わせて、自身は楽しく踊りながら何かの機械で時折「ピョロロロロ」という気の抜けた音だけを鳴らしていた翁。果たして最新の音を鳴らすことが出来るのか?という懸念は杞憂に終わりました。

どうやら「ワシは最新機材のことは詳しく分からん。だからワシの作ったデモトラックを最新型でアップデートせよ。」と弟子たちに指示したらしい。故に一聴するとEDM寄りのエレクトリックミュージックなんだけど、耳を澄ませると紛れも無くモロダー翁の息遣いが感じられる。

まず、リードシングルに選ばれた「Right Here, Right Now」で一回目の感涙。俺たちハイエナジー世代のハートを鷲づかみにする歌姫カイリー・ミノーグが起用されている。カイリーといえばディスコプロデューサー第二世代のストック・エイトキン・ウォーターマンが手がけたディーバであり、そんな彼女をディスコプロデューサー第一世代の翁が手掛けるという仕掛けに胸が熱くなる。

そしてスザンヌ・ヴェガの80年代の名曲「Tom's Diner」(の、しかも「The DNA Remix」)を00年代の歌姫ブリちゃんに歌わせるという心憎い演出(ここで第二回目の感涙)。この曲の前に収録されているインストディスコトラック「74 Is The New 24」は「Tom's Diner」のサビを繰り返しているとしか思えない。それは正に、揉めに揉めた Donna Summer の「I Feel Love」と Underworld の「King Of Snake」紛争を想起させるのは穿った見方なのか?

カイリーやブリちゃんというベテランを起用しながら、Charli XCX や Sia、Foxes といった旬のアーティスト達を配置する演出も実に心憎く、中でも往年のディスコトラックを蘇らせたような「Wildstar」で第三回目の感涙。80年代 MTV 世代の DNA に確実に刷り込まれている、「フラッシュダンス」や「ネバーエンディングストーリー」の胸キュン美メロがここでも健在。

繰り返しになるがこの作品は最新型機材が使われている故、EDM と錯覚してしまうことは否めない。ただし当ブログでこれまでに言及している通り、マシンビートに魂を込めることは絶対可能であり、だからこそこの作品は凡百の EDM とは紛れも無く異っている。確実に翁のエモーションが込められており、それは確かに僕ら世代が目撃したエモーションだ。故にタイトルは「Déjà Vu」(既視感)なのだ。

Tracklist

01 4 U With Love
02 Déjà Vu Featuring – Sia
03 Diamonds Featuring – Charli XCX
04 Don't Let Go Featuring – Mikky Ekko
05 Right Here, Right Now Featuring – Kylie Minogue
06 Tempted Featuring – Matthew Koma
07 74 Is The New 24
08 Tom's Diner Featuring – Britney Spears
09 Wildstar Featuring – Foxes
10 Back & Forth Featuring – Kelis
11 I Do This For You Featuring – Marlene
12 La Disco



2015年8月17日月曜日

ラーメン いつき


所用で蒲田を訪れた時のこと。ラーメンでもちょいと一杯喰らうか…と思ったが、ラーメン二郎 JR西口蒲田店(過去の記事)が不甲斐なさすぎて訪問する気にもならない。さてどうしたものかと、JR蒲田駅を背にして京急蒲田駅付近まで来てしまった。キネマ通りという寂れた商店街をとぼとぼ歩いていると、豚の鼻をモチーフにした看板に遭遇。おお!こいつはひょっとして二郎インスパイア系⁈と突然の僥倖に喜んだ…というのは嘘で、前々からこのお店に来たくて仕方なかったのだ。


平日昼は月曜と金曜しかやっておらず(以前チーンとやられてしまった経験あり)、夜の部開店の
18:30にピットイン。メニューは普通の醤油味に加えて、塩、味噌、辛味噌、辛ミートメン、カレーラーメン、まぜそばやつけ麺など実に多彩だが、ここは基本に忠実な醤油味を選択。


無料トッピングメニューもご覧の通り、味付けまでも細かく指定することができる。ヤサイニンニクアブラでお願いし、味付けはそのままにしておいた。


麓にはぶ厚く切られたブタ2枚に、鮮やかな黄色の刻みニンニクが。ブタの味付けはやや塩分濃いめだが、ふわふわな柔らかさは申し分なくジューシー極まりない。シャキ加減が絶妙なモヤシ比率高めなヤサイの山は、てっぺんにプルプル脂を頂いている。ここまでは標準的な味わいだ。


ブタとヤサイの山をやっつけてから天地返しをしたところ、標準的なインスパイア系とはやや異なる細めなストレート平打ち麺が登場した。事前情報によれば極太でグルーヴィーな黄色い縮れ麺ということだったが、おそらく改良を重ねてこのヤワメデロリ麺になったのだろう。ジロリアン受けを狙うより、万人受けしそうな食べやすい麺を狙ってのことだろうか。これはこれで悪くはないのだが…と思いながらスープを啜ったところ、脊髄に衝撃が走った。ちょ、何これ凄く旨い!乳化っぷりがハンパなく、豚骨ダシと脂の旨味が万遍なく溶け込み、ファンタスティックなライトスープになっているではないか!なるほど、先程のブタと一緒に楽しめば塩分濃度も丁度よく、ヤサイと麺とスープのバランスもすこぶる絶好調だ!この旨味とコクはJR西口蒲田店を完全に出し抜いており、下手な直系を凌駕している。インスパイア系にはこのような隠れた名店が数多く存在するので、看板に胡座をかいているような直系店はうかうかしていると足元すくわれるぞ!


住所:東京都大田区東蒲田2-24-3

ホームページ:http://www.i.otokogi.com/
ラーメン いつきラーメン / 京急蒲田駅梅屋敷駅糀谷駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2015年8月14日金曜日

DJ-Kicks : DJ Koze ‎



ベルリンのレーベル「Studio !k7」が95年からリリースしているミックスシリーズ「DJ-Kicks」が20周年を迎えた50作目となる節目の作品にドイツ出身の DJ Koze を抜擢。ヒップホップをルーツに持ち、レーベル「Kompakt」等を中心に新しいクラブミュージックの在り方を提示する活動でも有名です。

当ミックスでも新感覚っぷりを遺憾なく発揮し、テクノやハウスの枠に捉われない郷愁感たっぷりなスピンを披露しています。使われているトラックも牧歌的なヒップホップトラックから始まり、ビートミュージック、アシッドフォーク、インディーロック、エレクトロポップという流れを経て、終盤にようやくベルクハインスタイルのテクノが登場する始末。しかも全体の流れが実にドリーミーなので、四つ打ちが登場しても何の違和感もなし。

映画のサントラを聴いているようで、知る人も殆どいないようなレアトラックをよくもまあこれだけ発掘するものだと感心しきり。繋ぎもシームレスなものではなく、波打ち際で洗われる色とりどりの貝が顔を出しては消えていくかのよう。60年代後半のヒッピームーヴメント華やかなりし頃の西海岸を思わせるようで(生まれてないけど)、何故だか切なくなってくる。

Tracklist

01 DJ Koze I Haven’t Been Everywhere But It’s On My List (DJ-Kicks)

02 Dimlite Can’t Get Used To Those? (Kosi Edit) / Efdemin Ohara
03 cLOUDDEAD Dead Dogs Two (Boards Of Canada Remix)
04 Strong Arm Steady Best Of Times (Instrumental)
05 Homeboy Sandman Holiday (Kosi & Fink's Edit)
06 Freddie Gibbs & Madlib Shame (Instrumental)
07 Mndsgn* Camelblues (Kosi Edit)
08 Broadcast Tears In The Typing Pool
09 Daniel Lanois Carla
10 Hi-Tek / 2 Bears, The Come Get It (Tekstrumental) / Modern Family (Kosi Kos Mélange)
11 William Shatner It Hasn’t Happened Yet
12 Marker Starling In Stride
13 Session Victim Hyuwee (DJ Koze Remix)
14 Frank & Tony* Bring The Sun (Kosi Edit)
15 Marcel Fengler Jaz (Kosi Edit)
16 Portable Feat. Lcio* Surrender (Kosi Edit)
17 Gentle People, The Superstar

2015年8月11日火曜日

ラーメン二郎 栃木街道店


宇都宮での所用を終えた後、北関東の田園風景を楽しむために30分ほどドライブ。車も人も犬もいないのどかな田園風景が広がっていた。やがて疲れてきたので、気分転換するためにドライブインで一休み…と思ったらそこはなんと二郎だった。というのは嘘で、このために壬生町までやってきたのだ。店の周りには車が数台停まっており、行列こそないが店内には10人ほどが背後霊として待っていた。都内でなくてもやはりそこは二郎、この風景は日本全国のどこに行っても変わらないことを確認した。




ここの店主は元自衛官で、多摩系で修行を積んだというから相当な手際の良さが期待できる。しかも神レベルまで到達していると言われる郡司豚、生玉子には那須御養卵を使用しているというから、食べる前から神レベルであることは歴然としている。豚入りにニンニクヤサイアブラ、生玉子をお願いした。




まずは郡司豚を色鮮やかな玉子にまぜまぜして味わったところ、お口の中に得も言われぬ極上オーケストレーションが広がった。柔らかくて上品でジューシー極まるブタに絡みつく、濃厚で芳醇で甘みのある卵黄。この組み合わせを楽しむだけで、壬生町へやって来た甲斐があるというものだ。ブタに使われている部位は腕肉と肩バラで、お持ち帰り用にも販売されている。冷凍でも販売されているので、せっかくだから肩バラ(1500円、700g)を購入した。




厨房のずんどうを覗くと、ぐつぐつとした地獄の釜のようなスープが気泡を飛ばしている。途方もない乳化したスープであることが予想できたが……これまでに食べたことのないようなとろとろ乳化っぷりに思わず感動。ブタの骨髄がDNAレベルにまで溶け込み、エフゼットと爆発的化学反応を引き起こした旨味は、至高という単語すら陳腐に思えるほど最高だ。キャベツ比率が高めのクタ加減も絶妙なヤサイも王道レベルで、オーション麺の適度にデロリアンな加減もボリューム感も申し分なし。数多の直系の中でも上位にランキングされるほどの旨さだ。遠くまで来た甲斐があったというもので、また行きたいとすら思えるほどのレベルであった。

ラーメン二郎 栃木街道店ラーメン / 壬生駅
夜総合点★★★☆☆ 3.9
昼総合点★★★☆☆ 3.9

2015年8月8日土曜日

Trickfinger




John Frusciante の新しいプロジェクトがスタートしました。これまでの流れからするとエレクトロニクス志向は止まらないと思っていたんですが、止まらないどころか今回はなんとフルアシッドハウス。決して踊れる作品ではないんですが、その反面ヒプノティックとすら言えます。

これまでのソロキャリアは狂気のアシッドフォークから始まり、打ち込みを使用したロック、タガが外れた前衛的エレクトロニカ、ヒップホップと変遷してきましたが、とうとうアシッドハウスへと到達。今になってアシッドなのは何故なのか?しかも四つ打ちアシッドとは異なり、ビートがクレイジーに変化していく IDM 寄りエクスペリメンタルテクノ。肉体の呪縛から解放され、脳とマシンを直結させた真のブレインミュージックとも言えますが、抒情性が散りばめられていることにより John のアイデンティティが貫かれています。

RHCP へ復帰した99年から既にテクノやハウス等の電子音楽へ傾倒していたらしく、この作品が作られたのは8年前。丹念に電子音楽を聴きこみ、ルーツを探訪し、機材を徹底的に使い倒した果てでのアシッドハウス制作だった模様。突然エレクトロニクス化してファンを驚かせるのではなく、作品を徐々に電子化させてから本作をリリースするという戦略だったのか……と思いきや、どうやら本作をリリースする予定はなかったようで、アシッドハウスのレーベルを運営する友人からリリースを勧められたのだとか。確信できるのは、これは John Frusciante の到達点ではなく、一つの経過点に過ぎないということ。全ての呪縛から解放された自由な男の姿がここにあります。


2015年8月5日水曜日

元祖ニュータンタンメン本舗


川崎のソウルフードといわれる「ニュータンタンメン」へ久々に足を運びました。ローカル色の強いこのお店は川崎市・横浜市を中心に、都内や長野県上田市、仙台にまで進出している一大ラーメンチェーン店。「ラーメン二郎」や「蒙古タンメン中本」と同様に、根強いファンに支えられていることで有名です。辛味やニンニクが特色ゆえ、中毒性が高いのも理由の一つなんでしょう。日曜に急に食べたくなったんですが、残念ながら最寄りの鷺沼店は定休日。ちょっと足を延ばして新城店を訪問してきました。小雨が降っているにもかかわらず、店の前には数人待ちの行列が。僕の後ろにも数人の若い女の子が並ぶなど、老若男女問わず支持されていることを改めて実感。


タンタンメン(700円)を中辛で頼みます。敢えて説明すると、このタンタンメンはいわゆる胡麻味噌味の坦々麺ではなく、独自に考案されたオリジナルレシピ。スープは鶏がらがメインに使われたシンプルなもので、挽肉とニンニクと粗挽き唐辛子が溶き卵でとじられた旨辛ラーメン。舌にビリビリくる辛さとニンニクのコクが、シンプルスープと独自のハーモニーを織り成し、いつまでも味わいたくなる感覚に襲われる。


やや中太の縮れ麺は表面がつるっとしており、もちもちもっちりとした弾力性がある。麺にまとわりついた唐辛子のせいで、食べ進むにつれ辛さで頭がくらくらするようなトリップ感覚に陥るが、この一杯が持っている覚醒感は本当にすばらしい。シンプルな味なんだが、食べ終わった後にすぐ再訪したくなる気持ちにさせてくれる。たかがチェーン店と侮るなかれ。「ラーメン二郎」や「蒙古タンメン中本」に比べて地味さは否めないが、品川駅のフードテーマパーク「品達」にも出店するなど時代がようやく追いついてきた予感。


ホームページ:http://newtantan.com/
元祖ニュータンタンメン本舗 新城店ラーメン / 武蔵新城駅
夜総合点★★★☆☆ 3.6
昼総合点★★★☆☆ 3.6

2015年8月2日日曜日

Why Make Sense? : Hot Chip



エレクトリックミュージックの中でも独自のスタンスを貫き続けるバンド、Hot Chip の新作が良い。ナードな姿勢を保ち、80年代ニューウェーヴへの限りない偏愛を注ぎながらも2000年代の音へと確実にアップデートさせ続ける彼らの存在は唯一無二。しかも EDM などに目配せするのではなく、独自のファンクネスと R&B へのリスペクトをさり気なく注入(「Love is The Future」では De La Soul が参加)するのは、Daft Punk の 「Random Access Memories」(過去の記事)以降のベクトルと一致している。音数が多く強靭だった前作(過去の記事)に対し、「Strated Right」ではクラビネットを使いスティーヴィー・ワンダーを彷彿とさせるなど音を選び抜いている。それにより隙間の美学が活かされ、よりファンクに、よりソウル、よりディスコになっているのだ。