2015年8月20日木曜日

Déjà Vu : Giorgio Moroder



ディスコミュージックにシンセサイザーを導入することで、現在におけるダンスミュージックの礎を作った偉大なるディスコの父ジョルジオ・モロダー翁。齢75にして30年ぶりというアルバムをリリースしましたが、僕のハートを直撃する感涙なくして聴けはしない内容となっています。

Daft Punkが「Random Access Memories」(過去レビュー)で限りない敬愛を表明したことで再評価の機運が高まり、日本でのWIRE13(過去レビュー)を始めとしてツアー活動を始めた翁。まさかのまさかでオリジナルアルバムをリリースするとは、忘れかけていた音楽活動がよほど楽しかったに違いない。それにしてもDJという訳でもなく、WIRE13では弟子に機材を使わせて、自身は楽しく踊りながら何かの機械で時折「ピョロロロロ」という気の抜けた音だけを鳴らしていた翁。果たして最新の音を鳴らすことが出来るのか?という懸念は杞憂に終わりました。

どうやら「ワシは最新機材のことは詳しく分からん。だからワシの作ったデモトラックを最新型でアップデートせよ。」と弟子たちに指示したらしい。故に一聴するとEDM寄りのエレクトリックミュージックなんだけど、耳を澄ませると紛れも無くモロダー翁の息遣いが感じられる。

まず、リードシングルに選ばれた「Right Here, Right Now」で一回目の感涙。俺たちハイエナジー世代のハートを鷲づかみにする歌姫カイリー・ミノーグが起用されている。カイリーといえばディスコプロデューサー第二世代のストック・エイトキン・ウォーターマンが手がけたディーバであり、そんな彼女をディスコプロデューサー第一世代の翁が手掛けるという仕掛けに胸が熱くなる。

そしてスザンヌ・ヴェガの80年代の名曲「Tom's Diner」(の、しかも「The DNA Remix」)を00年代の歌姫ブリちゃんに歌わせるという心憎い演出(ここで第二回目の感涙)。この曲の前に収録されているインストディスコトラック「74 Is The New 24」は「Tom's Diner」のサビを繰り返しているとしか思えない。それは正に、揉めに揉めた Donna Summer の「I Feel Love」と Underworld の「King Of Snake」紛争を想起させるのは穿った見方なのか?

カイリーやブリちゃんというベテランを起用しながら、Charli XCX や Sia、Foxes といった旬のアーティスト達を配置する演出も実に心憎く、中でも往年のディスコトラックを蘇らせたような「Wildstar」で第三回目の感涙。80年代 MTV 世代の DNA に確実に刷り込まれている、「フラッシュダンス」や「ネバーエンディングストーリー」の胸キュン美メロがここでも健在。

繰り返しになるがこの作品は最新型機材が使われている故、EDM と錯覚してしまうことは否めない。ただし当ブログでこれまでに言及している通り、マシンビートに魂を込めることは絶対可能であり、だからこそこの作品は凡百の EDM とは紛れも無く異っている。確実に翁のエモーションが込められており、それは確かに僕ら世代が目撃したエモーションだ。故にタイトルは「Déjà Vu」(既視感)なのだ。

Tracklist

01 4 U With Love
02 Déjà Vu Featuring – Sia
03 Diamonds Featuring – Charli XCX
04 Don't Let Go Featuring – Mikky Ekko
05 Right Here, Right Now Featuring – Kylie Minogue
06 Tempted Featuring – Matthew Koma
07 74 Is The New 24
08 Tom's Diner Featuring – Britney Spears
09 Wildstar Featuring – Foxes
10 Back & Forth Featuring – Kelis
11 I Do This For You Featuring – Marlene
12 La Disco



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