2015年10月1日木曜日

Leaps : Flare


ケンイシイの別名義プロジェクト Flare が「Dots」(過去レビュー)以来2年ぶりに新作をリリースしました。今回はセルフレーベルである 70 Drums のみから、しかも CD だけを専用サイトで通信販売、もしくは自身が出演するイベント会場のみで販売。限定感がぷんぷんするこの売り方、個人的には実に食指が動いてしまいます。しかも制作だけでなく、販売方法からアートディレクションまで全てケンイシイが手掛けるという100%ピュアなインディーズリリースです。

昨今のクラブミュージックシーンの大きな流れになっている EDM に異を唱えるテクノアーティストは多いものの、大手ベンダーによる音源配信や定額配信にまで問題提起するテクノアーティストは多くない。「やりたかったから」や「作りたいものを作って出す」という自身の発言があったけど、逆を言えば EDM というメジャーに対してのカウンターカルチャーとは?昔ながらのインディペンデントな販売方法は生きるのか?というチャレンジな姿勢はあったと思う。

自分が作り上げたい作品は DJ 活動ではなく制作活動で表現する、元々はアーティスト気質な人。それ故にこの作品から聴こえてくるのは DJ プレイが醸し出すアタック感ではなく、「Garden on the Palm」(過去レビュー)の流れを汲むエクスペリメンタルテクノ。ケンイシイが紡ぎだす清涼感のある高音シンセと音の粒子たちが、電子音楽を聴くことの快楽を伝えてくれます。メジャーデビューした直後、彼の音楽と映像がアパレル店で氾濫していたのを思い出す…。それは視覚のみならず、全ての五感を呼び覚ますような生命的な音でした。それからの流れは明らかに同質で、ここでもケンイシイの変わらない息遣いが感じ取れます。

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