2015年10月7日水曜日

Music Complete : New Order

「Waiting for the Sirens' Call」(過去レビュー)以来、10年ぶりとなる New Order の新作が届きました。僕はと言えば、お馴染み Peter Saville のジャケットデザインがあしらわれたTシャツ付き限定盤を購入しました。目下ドヤ顔全開でTシャツ着用中(ドヤ)。



まずは、あれからもう10年も経ったのか…と深い感慨に耽り中。振り返ればライヴ活動も行っていたし、ライヴ盤(過去レビュー)や編集盤(過去レビュー)もリリースしていたし、Bad Lieutenant(過去レビュー)としての活動もあったし、彼らにしてはかなり活発に活動してました。そしてバンド最大の事件だったピーター・フック脱退劇…。フッキー不在の New Order は New Order じゃない、という意見もありましたが、ライヴ盤で確認した姿は紛れもなく New Order であり、今ここにあるオリジナル新作は100%ピュアな New Order でした。ジリアン・ギルバートが復帰しているのも嬉しい話。


振り返ってみれば過去2作はバンド顕在化を示すものであり、バンドとしての結束感がアピールされていたように思います。そして今回の作品はバンド史上もっともダンス寄り/エレクトロニクス化された作品。リードトラックは最近の例に倣い、泣きのメロディ/メランコリア炸裂なトラック。なんだよ、いつも通りだな…と思ったらトラック2以降から俄かに流れが変わってきた。


The Chemical Brothers のトム・ローランズがプロデュース参加した「Singularity」と「Unlearn This Hatred」が劇的にかっこいい。彼ら旗印のディスコシーケンスが The Chems 風味を添えて現在の音へと完全アップデート化されており、かつての「Here To Stay」を彷彿とさせる出来で感涙してしまう。やはり The Chems の New Order に対するリスペクト度合いは半端ないことがよく分かります。


The Killers のブランドン・フラワーズや La Roux のエリー・ジャクソンをゲストに迎えて現代シーンに目配せしているのも話題ですが、Iggy Pop にポエトリーリーディングさせているトピックも驚愕。魅惑の低い声を駆使して歌詞を呟くトラック名はその名も「Stray Dog」(笑)。50年近くも前に「I Wanna Be Your Dog」と歌ったパンクゴッドーファーザーは、今もまだ迷える犬だったのか!パンクとポストパンク~ニューウェーヴのミッシングリンクを繋ぐ問題作と言っても過言ではない。


他にも、イタロディスコ進化型「Plastic」、80年代後期のアシッドムーヴメントをファンキーに蘇らせた「People on the High Line」、胸を締め付けるような美しくも儚い哀愁バンドサウンドが聴ける「Academic」や「Nothing but a Fool」など聴きどころ満載、というか捨て曲一切なし!今ここで確信した。フッキーは「俺がいなかったら New Order じゃない」と言い捨てたが、彼らを彼らたらしめる存在はバーニーなんだと。いつまでもヘロヘロで上達することのないボーカルがあってこそ New Order なんだと。


その意味では、オートチューンで声をいじりまくった EDM に対して何の意見もしないながら、ヘロヘロにダンストラックを歌い上げる彼らこそアンチ EDM 最右翼なのだ。移ろいやすくて不安定で、天才的に微妙なズレをし続けるボーカルがあってこそ New Order なのだ。今年の最高傑作レベルにして、彼ら史上でも最高傑作!


 

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