2015年11月30日月曜日

まひる



新幹線が高架上を走り、更にその上を上野東京ラインが走る神田駅。想像もつかない重量負荷がかかっている一帯だが、その高架の一角でひっそりと、陰日向に咲くタンポポのように構造物を支えるのが「らーめん まひる」だ。惜しくも11/20に閉店してしまったが、客を寄せ付けない陰気なオーラ(もしくは伝説ともいえる店主の無愛想さ)が原因なのだろうか。今一度振り返ってみたい。




ランチ激戦区の昼時にもかかわらず、列に並ぶことなくすんなり着席。当然いらっしゃいませの言葉も無い中、らーめん(700円)を食券で購入しました。無料トッピングを聞かれるはずもなく、食券を渡す時点で自己申告。二郎系には珍しくチーズ無料なので、ニンニクアブラヤサイチーズをお願いした。さすればご覧のような一杯が無言で着丼。キャベツ比率が極めて低い(というか入っていない)ヤサイに降り積もった背脂と粉チーズの雪。生玉子を追加で頼んでカルボナーラ風にすべきだったな。ニンニクは生ではなくフライドガーリックなのが残念。1センチ程の厚さに切られたブタは柔らかくも、それほど印象に残るものではなかった。




クタもやしをアブラとチーズで堪能した後、天地返しをすればご覧のようなぐりんぐりん麺が登場した。浅草開化楼製の麺はガチムチとしており、ハズレのない麺クオリティをうほっと堪能。剛麺とはこのことで、途方もない弾力性と剛性、太さを誇っており「なるほど、神田駅の重量級高架を支えていたのはこの麺か…」と思わず納得。ボリュームは控え目でノックアウト感は低い。塩気控え目で甘いスープはジャンクさが溢れており、G系の極北を見る思いがする。食べ終わってカウンター上に丼を置いても「ありがとうございました」の一言も無い。ある意味、潔くて男気のあるラーメン屋だったな。

住所:東京都千代田区鍛冶町2-12-13

まひるラーメン / 神田駅岩本町駅淡路町駅
夜総合点★★★☆☆ 3.5
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2015年11月27日金曜日

Solo : Songs and Collaborations 1982 - 2015 : Tracey Thorn



Tracey Thorn がキャリア初のベストアルバムをリリースしました。単純に彼女のソロ作品をコンパイルしたものではなく、彼女のボーカルをフィーチャーした他者作品(スタイル・カウンシルの「The Paris Match」やマッシヴ・アタックの「Protection」といった名曲!)から、アルバム未収録曲であるリミックストラックやカバー曲まで。終盤を飾るAdam Fの近未来ボサノヴァは沁み入りすぎる。

凛としたネオアコ中心の前半から、クラブカルチャーを色濃く反映した後半まで、楽曲は実に色とりどりな輝きを放っています。その中でも変わらないのが、憂いのある静謐なボーカル。激情に流されず、日常の悲喜こもごもを静かに歌い上げる彼女の声はいつまでも支持したい。全く飾り気のないアレレな写真をジャケットに選ぶ潔さにも敬服(笑)。


2015年11月24日火曜日

SHIN


横浜 東神奈川〜白楽界隈のラーメン激戦区っぷりは異常とすら言えるもので、その中でも反町におけるしのぎの削り具合は注目に値する。ラーメン星印(過去の記事)から徒歩一分もしないところに人気ラーメン店が軒を連ねているからだ。その名も「SHIN」。


店内に入ると人情は女性オーナーが元気よく切り盛りしている。メニューの主軸は「らーめん」に「つけめん」、それと限定メニューの台湾まぜそば等。正直いってどれにすべきか迷うところだが、お店看板メニューの揚チキンめんを頼むことにした。


着丼までの間、お店のウンチクに目を通す。ダシには鶏がらや豚骨といった動物系、節や昆布といった魚介系、長ネギや生姜といった香味野菜系が使われているが、そのそれぞれに上質なものを使っている。カエシにもこだわりが感じられる。


手持ち無沙汰にビールを注文したところ、チャーシューがミニおつまみとして出てきたのが心憎い配慮。そういえば周りをみると常連さんが多いな。店主の人柄のなせる技か。


やがて、わらじサイズの揚チキンが搭載された麺が着丼した!衣はカリとして香ばしくスパイシー、肉そのものは柔らかくてジューシー、これだけでも胃袋が満たされそうだ。他に搭載された具材は筍を煮たもの(メンマじゃないらしい)、黄身がトロリと味付けされた玉子、刻みネギにナルト等。


スープは醤油ベースのシンプルなものながら、それほど淡麗でもない。ダシがしっかりとした骨格を形成しており旨味も十分だ。麺はフランスパン粉に使われる小麦を使っているとのことで、クヌプリとした食感とパッツリした茹で加減を楽しむことができる。食べるにつれ揚チキンの衣がスープに溶け込み、スパイシーさと塩加減と脂分が変化していくのも楽しい。心が温まるお店だね。

SHINラーメン / 反町駅神奈川駅東神奈川駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2015年11月21日土曜日

攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T. : Cornelius


攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T. : Cornelius

オリジナルアルバムを久しく出さず企画ものを乱発している Cornelius ですが、どの企画ものも Cornelius サウンド一色に仕上げてしまうあたりはこの人の凄いところだと思います。攻殻機動隊ARISEのサントラ(過去レビュー)に引き続き、「攻殻機動隊 新劇場版」のサントラもこの人のオリジナルアルバムと言い切っていい仕上がり具合。草薙素子の声を演じている坂本真綾がボーカルとして参加しており、清涼感のあるウィスパーヴォイスを披露しています。しかも坂本慎太郎を歌詞を手掛けるという異色のコラボレーション!それにしても、小山田圭吾ってカヒミ・カリィの頃からウィスパーヴォイスが大好きだよね。

他に楽曲参加しているのは Cornelius 自身も参加している高橋幸宏&METAFIVE(YMOチルドレンをがっつり集めているのが凄い)や、ショーン・レノン(本当のビートルズチルドレン)など。たぶん意識的だろうけど「Execution No.9」や「Involution No.9」という曲のタイトルにもにやりとしてしまう。

YMOのライヴなどでギタリストとして参加していることでも知られていますが、この作品でもクレイジーで前衛的な腕前を発揮。立体的な音響空間を構築したり、唯一無二のエレクトロニカを作り上げたりするだけでなく、ギタリストとしてもやるもんだなあ、と改めて感心。原作が持っている肉体とテクノロジーの融合性を独自に表現しています。


2015年11月18日水曜日

麺や食堂 246号店



厚木方面の温泉に行く前、近辺でラーメン屋を探していたら検索ヒット。神奈川県内でランキング上位の常連となっている老舗「麺や食堂」が支店をオープンさせていました。昼時ということもあって行列が出来ており、店内に入れば老若男女のお客さんが多数。半世紀前から営業しているということなので、地元で永らく愛されている名店ということなんでしょう。




一番人気の味玉そばを注文。澄み切った琥珀スープに使われているダシは煮干しや鰹節といった魚介系がメインで、啜った瞬間に魚介風味が口と鼻の中を通り抜ける。やがてしっかりした骨格の鶏がらダシ、選び抜かれた醤油を使っているカエシ、全体に香ばしさを添える香油によって、スープ全体は極上の上品さへ。極細ストレート麺が直線に横たわっている姿も美しく、このお店ならではのこだわった盛り付け方。具材はとろんとろんの黄身を誇る味玉、こりこり柔らかい極太メンマ、しっとり上品で柔らかい鶏と豚のチャーシュー、そして海苔。どれも品質の高さを感じさせます。




整然と真っ直ぐに添えられた麺をリフトアップすると、トルネード状に渦を巻いて投入されていることに気付く。丁寧な仕事っぷりに感動を覚えつつ、麺を啜って淡麗スープに最適化されたぱっつりな茹で具合にも感動。つるっとした表面でアルデンテな食感があり、香ばしい小麦の風味が吹き抜ける。中華そばの極北、神奈川淡麗系の極みとも言える上品な中華そばとはこのことだ。するする食べたが物足りなさを感じた。




そこで替玉100円。鶏チャーシューが添えられているが、こりこりした食感が残っていたのが気になった。これってこういうものなのかな?それとも茹で具合が足りなかったのかな?たぶん後者だと思うが、このあたりはオープンしたてのオペレーション不慣れによるものだと推察した。麺は替玉プラスすれば総ボリュームが丁度いい。シンプルで奥深く染み入るだけでなく、随所に素材と製法へのこだわりが感じられた。食べログ高得点も納得できる一杯で満足です。

ホームページ:http://www.santacala.com/menya_menu.html

麺や食堂 246号店ラーメン / 愛甲石田駅本厚木駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2015年11月15日日曜日

The Beatles 1


The Beatles 1

僕が意識的に音楽を聴き始めたのは1980年12月頃、小学6年の時だ。ちょうどその頃、ジョン・レノンが暗殺され、大人たちは大騒ぎしていた。子供だった僕は、ことの重大さを大して理解していなかった。

あれから35年経ったが、リアルタイム世代の声に耳を傾けると共通意見があった。「二人の大天才と二人の天才」という声だ。ジョン・レノンの死後、ジョン派となった僕はその声にほぼ同意していた。先日リリースされたこのベスト盤を聴くまで。

この作品は2000年にリマスタリングされたベスト盤を更に磨き上げ、美しくリストアされた5.1ch映像集を特典に付けたものだ。これまでリマスター盤をろくに聴いたことがなかったんだけど、ここでよく分かったことがある。「ビートルズの4人は二人の大天才と一人の天才、一人の超天才だった」ということだ。いうまでもく、超天才とはリンゴ・スターのことだ。ジョンでもポールでもない、申し訳ないがジョージでは全くない。何度でもいうがリンゴ・スターだ。

音にかかっていた靄が全て取り除かれ、リアルな音から聴こえてきたのは途方もないドラムの音だった。ドラムが技巧的とかそういうレベルじゃなく、このタイム感は誰にも真似ができない。デビュー当初からドラムテクニックが完成しており、「涙の乗車券」や「デイ・トリッパー」ではドラムを聴くことの快楽やスリルを教えてくれる。高橋幸宏がすさまじく影響されているのを改めて実感。二人の大天才の影で過小評価されてきた、超天才のドラムにぜひ耳を傾けてほしいと思う。


2015年11月13日金曜日

台湾(Day 7-8) - 台北(Taipei) -


帰国前日。MRTに40分ほど乗って、終点の淡水へ足を運びます。風光明媚な河口の街として知られてますが、ここも完全に観光ズレしちゃってます。晴れた夕方だったら景色も綺麗だったんだろうけど、全く天気に恵まれず。



MRTで市内方面に戻って新北投温泉へ。ここは欧米系観光客が比較的多い。我々日本人にしてみりゃ温泉なんて珍しくないんだけど、やはりぐつぐつとお湯が煮えているは神秘的なんだろう。



駅から坂を登った突き当たりにある「地熱谷」。



湯けむりがもうもうと立ち上っています。



温泉マークを見ると何故かほっとする。



40元で入れる公衆露天風呂。水着必須ということでわざわざ持ってきたんだけど、ちょうど清掃時間にぶち当たってしまった。待とうかと思ったが行列がすごいので諦めました。



その代わり、地元民しか訪れないという足湯へ。公園の一角にあり、タダで入れます。観光客がたくさんいる露天風呂よりも、ローカル色豊かなこちらの方が断然オススメ。



ホテルおすすめの台湾料理店「梅子」へ。名店として知られているそうで、かなりハイクオリティな台湾料理を楽しめました。



揚げた殻付きエビやら。



牡蠣の炒め物やら。



酢豚やら。台湾料理はあっさりした味付けなので、いくら食べても胃にもたれない。やはり美食の都だね。台湾ほど兄弟の絆を感じさせる国は他にない。大好きだよ、台湾。ありがとう、台湾。また来るよ。

2015年11月11日水曜日

台湾(Day 6) - from 高雄(Kaohsiung) to 台北(Taipei) -


この日は高雄→台北へ新幹線で移動。朝の新左営駅を出発します。東海岸が7時間以上もかかったのに対し、西海岸は最短90分で移動できる。



イカす!



マジで!



イカす!



座席配置も日本と同じ2列3列だ。乗り心地も日本と変わらない。あっという間に台北へ〜。



台北のホテルにチェックイン後は老街の九份へ。MRT「忠孝復興」駅からバスで約90分のショートトリップ。「千と千尋の神隠し」の舞台と言われていたが、ジブリ側は公式に完全否定。



海沿い山間部ということもあり、年間の9割は霧で煙っているらしい。ここも例の如く大陸系観光客に占拠されている。



マナーの悪い観光客に辟易したり、路地裏で犬の糞を踏んだり、雨に濡れた階段で滑ったり、頭上から火が点いたタバコが落ちてきたり……いいことが全くない。こちらのサイトでは観光ランキング1位だったが理解不能。ノスタルジー溢れるのは否定しないが、台北市内から90分だったら台南に行くのをお薦めするよ!



市内に戻ってから、ホテルお薦めの中華料理店「聚馥園餐廳」に足を運びます。ガイド本やネットでは知ることのできない地元の名店らしい。



空芯菜やら。



お店のお勧めエビチリやら。



アワビやら。



ふわふわにとろける豚の角煮やら。どの料理も正統派北京料理で、横浜中華街の1/2〜1/3ぐらいの値段で堪能できる。

2015年11月9日月曜日

台湾(Day 5) - 台南(Tainan) & 高雄(Kaohsiung) -


この日は高雄から台南へ日帰り旅行。あれ?旅行中なのに日帰り旅行って何?取りあえず宿の近くのMRT駅「美麗島」へ。世界で最も美しい駅の一つ、と言われてるだけあって中央部は必見。



だいぶ乗り慣れてきた自強号。高雄から台南まで約30分のショートトリップ。片道約400円ほど。 



程なくして台南駅へ到着。台湾由来の古都であり、大学もある学園都市。観光ズレしていないので、のんびり散策するにはもってこいの街だ。 





タクシーを拾って神農老街へ。ここは観光地ではなく、あくまでも居住地区。台湾の古都の中でも最深部にあたる、まさしくハート・オブ・台湾とも言える路地です。 



ちょいと散策すれば古いお寺に巡り会える。ここは台南でも最も歴史が古いとされる大天后宮



こちらは横浜中華街でもおなじみ関帝廟の総本山である祀典武廟。入口は小さいんだけど、奥に入るほど静謐な雰囲気が漂っている。



台南のシンボルとも言えるお城「赤嵌楼」。基礎部分は侵略者オランダによって建てられ、のちに楼閣が建て替えられた、歴史に翻弄された史跡。 



戦争前に建てられた林百貨店。今では高級デパートとしてリノベーションされてます。屋上には鳥居があったりと、かつての日本を髣髴とさせる名建築物。 



台湾を訪れた人は必ず食べるという問答無用の「度小月」。本店は台南だが、残念ながらこの日は休業中だったので支店へ。 



有名すぎて説明不要の担仔麺。もはや神格化されているので、絶品加減を求めるのではなく記念に食べるが如し。



台湾最古の孔子廟。街はスモールサイズながら、そんじょそこらに史跡やお寺がある。リアル台湾を感じたいなら、台北でもなく高雄でもなく、台南を訪れることをおすすめします。 



高雄に戻ってきてから旗津半島を目指す。MRTに乗ったら車内は萌え状態に。台南とのギャップを思い切り感じる。 



地下鉄終点の西子湾から歩いてフェリーに乗船。対岸の旗津半島に渡るが、既に夕方なのでぼんやりと港を眺める。「健康号」の向こう側に見えるのはランドマークの高雄85ビル。あれ、目を離した隙にロボットへ変型しそうだよね。 



晩飯は高雄最大の六合夜市へ。わらわらいる大陸からの観光客(特におばさん)に辟易する。前日訪れた瑞豊夜市の方がはるかに安くて旨い。大陸観光客は駅のホームで子供に脱糞させる、っていうネタを読んだことあるんだが、本当にその光景を目撃して驚いたよ。