2016年1月28日木曜日

Dodge and Burn : The Dead Weather



「Sea of Cowards」(過去レビュー)から5年ぶりにリリースされた(と言っても昨年9月リリース)、The Dead Weather の 3rd アルバムが妖艶かつ不穏な空気をたたえて凄すぎる。ロックンロールの正統的後継者である Jack White のサイドプロジェクトと捉えられているバンドですが、問答無用のロックンロール・グルーヴを大炸裂させ、サイドプロジェクトなんて片手間な感覚は全くなし。女性ボーカリストの Alison Mosshart を迎えているからこそバンドは呪術的に妖しい光を放っており、長期間に渡り継続的にレコーディングされた本作はこれまでで一番成熟した出来に。

時にはレゲエタッチになる Jack White が叩くドラム、Queens of the Stone Age の Dean Fertita が切り刻むブルージーなギター、The Raconteurs にも参加している Jack Lawrence のダウントゥアースなベース。彼らが紡ぎ出すバンドケミストリーにより、爆発的閃光を放つガレージロックが成立。方法論はオールドスクールなのに、放射される熱量はとてつもなく、佇まいはあくまでもクール。21世紀になってもまだロックンロールは死んでいなかった。Zeppelin が切り拓いたハードでメタリックな南部志向ロックンロールを、新たな形で呈示する彼らこそロックの未来なのだ。

2016年1月24日日曜日

ラーメン二郎 ひばりヶ丘駅前店


各地の二郎詣でをすることにより、未踏の地を訪れることがしばしばあります。中でも西武池袋線はよほどの機会がないと乗ることはなく、その中でも「ひばりが丘」駅は下車したこともない。とは言え、二郎本流の中でも最高峰と言われ、本家を凌駕する味でも知られるヒバジ。ここを訪問しなければ全店制覇への道も開かれないというものです。13:00過ぎに到着したところ、老若男女問わず10人待ちの列が。




ラーメン(700円)の食券をカウンター提示し、しばし待つこと「ニンニク入れますか?」のコールに対して「ニンニク ヤサイ少なめ」とレスポンス。最高峰の味を堪能するために、敢えて野菜を少なくしたのだ。すると、上層部がとろみがかった油膜で覆われた乳化スープ、高評価なブタを覆い隠したクタ加減が絶妙なヤサイ(しかもキャベツ比率高め)、ちょこんと鎮座しているニンニクが添えられた一杯が着丼。謙虚な姿勢が感じられるが、これから始まる至福のひと時への期待を煽るエクステリアを誇っている。




まずは、ポタージュかと錯覚するほどのスープが素晴らしい。脂分と野菜のミネラルが溶け込み、FZの味も押しつけがましくなく、比類なき乳化スープになっている。このスープにニンニクとヤサイを混ぜ合わせて喰えば、今にも昇天してしまいそうなトリップ感覚に襲われる。天地返しをすると崩壊寸前のヤワデロ豚、表面スルヌメ食感ヤワモチデロな平打ち麺が顔を出す。ごくごく飲んでしまいそうなスープとの幸福なマリアージュを楽しみ、最高峰の評判も頷ける味を堪能。二郎における全ての要素が高次元で拮抗しており、心ゆくまで至高の一杯を楽しんだ。とにかく素晴らしい。


住所:東京都西東京市谷戸町3-27-24

ラーメン二郎 ひばりヶ丘駅前店ラーメン / ひばりケ丘駅
夜総合点★★★☆☆ 3.9
昼総合点★★★☆☆ 3.9

2016年1月20日水曜日

★ : David Bowie



2016年1月10日 デヴィッド・ボウイ逝去。

その訃報は突如としてもたらされ、全世界が驚き嘆き悲しんだ(今も悲しみは続いている)。2日前の69歳の誕生日、「The Next Day」(過去レビュー)以来3年ぶりの新作をリリースしたばかりということもあり、突然のニュースに誰もが驚いたはずだ。NHKニュース7の冒頭に流れた映像はボウイで、その知らせはかなりのインパクトを持っていた。ただし、今振り返ってみれば突然ということではなく、ボウイらしい別れの置き土産を残して逝ってしまったのだ。

僕はといえば、映画「ブリッジ・オブ・スパイ」を見終えて帰宅した直後にそのニュースを知った。その映画はスピルバーグ監督による、ベルリンの壁構築直後における米ソの駆け引きを描いたスパイ映画。アシッドフォーク、グラマラス、アヴァンギャルド、ニューウェーヴ、インダストリアルと様々な変遷を遂げたボウイの中でも、とりわけ僕にとってはベルリン三部作時代のアヴァンギャルドなボウイが一番好きだった。だからこそ、あの日は余計に因縁めいたものを感じてしまったんだ。まさかボウイが死ぬなんて思ってもいなかった。ボウイも死ぬことがあるんだ、そう思ったらとても悲しくなった。

家に届いたばかりの新作タイトルは奇しくも「★(Blackstar)」。ジギー・スターダストは本当の星になったと思った。でもそれはボウイが仕掛けた予定調和だったに過ぎない。友人が「新曲 Lazarus の PV を今からみるといろいろ暗示はあったのに全然気づかなかった」と言ってたので確認したところ…これはもはや悟りとしか思えない内容だった(詳しくは自分の目で確認してほしい)。後追いで勘ぐるのは控えようと思っていたが、プロデューサーのトニー・ヴィスコンティの証言からして、置き土産を作ったのは間違いない。キリスト教における復活のアイコンである「Lazarus」というタイトルを冠した曲は「Look up here, I'm in heaven(見上げてごらん、僕は天国にいる)」という一節で始まり、「Oh I'll be free Just like that bluebird Oh I'll be free Ain't that just like me(僕は自由だ 青い鳥のように 僕は自由だ 僕みたいじゃないか) 」の一節で締めくくられる。

この曲に限らずアルバム全編を通して、人生の幕を引こうという強い意志が感じられる。それは悲壮的な感情ではなく、尋常ではない強靭なポジティヴィティだ。ボウイが元々持っているアヴァンギャルド性が現代ジャズの要素によって表明され、攻撃性がドラムンベースによって表現され、多くのミュージシャンに支持されている耽美性の源泉がふつふつと湧き出ている。この作品は紛れも無く、ボウイ史上の中でも最高傑作に入る部類だ。自分を演じ続けて、最期まで自分を演じきった男の姿がここにある。さようならボウイ、ありがとうボウイ。最期まで美しくて格好良かったよ。地球に落ちてきた男は再び宇宙に戻ってしまったが、スターマンになっても僕たちを照らし続けてくれるだろう。

2016年1月16日土曜日

泪橋



丹下拳闘クラブがあった山谷 泪橋。実は川崎市 溝の口にも泪橋が存在する。山谷の泪橋ではマンモス西が闊歩していたが、こちらの泪橋ではマンモスラーメンという二郎系な一杯を食わせてくれるのだ。元々は新橋に店を構えていたが、今では平塚とこの溝の口で移転営業している。溝の口駅から徒歩10分弱、住宅地にひっそりと佇んだ店だが行列は絶えない。




辛マンモスラーメン(850円)の食券を買ったところ「ニンニク入れますか?」といきなり聞かれたので、狼狽しながら「え、あ、はい」と答えた。普段ならニンニクヤサイアブラと即答するところだが、マナーが分からなかったので取りあえずニンニクのみ。おっちゃんよ…ヤサイマシには対応しているのかい?しばし待つと背脂と唐辛子が大量投入されたスープが湛えられ、でろんとした大ぶり豚バラ肉が2枚が搭載され、モヤシ中心の野菜の上に唐辛子が散りばめられ、刻みニンニクがガツと投下された一杯が着丼。見ただけで汗が噴出したが、あしたのために喰うべし!喰うべし!喰うべし!



デロとしたブタは非常に柔らかく、シャキとしたモヤシは歯応え十分。ご覧の通り、麺にはばっちりと唐辛子が絡みついているが、それほどの辛党でもない僕でもおいしく食べられる辛さ。背脂スープはそれほどの動物性を感じさせず、魚介の香りが仄かに漂う。太麺の硬さはガッチリしており、ポキ感さえ残っている噛み応えを楽しむことができる。そんなに辛くはないとは言っても、やはり顔全体からドバドバと汗が大量噴出してくる。ちなみにこの記事を書きながら、その時の感覚を思い出して、顔から汗をぼたぼた垂らしている自分に驚いた。マンモスラーメンと言いながらボリューム的にはそれほどではないものの、コク旨辛な味わいは食う者をノックアウトするに違いない。燃えたよ…まっ白に…燃えつきた…まっ白な灰に…


住所:神奈川県川崎市高津区溝口1-17-20

泪橋ラーメン / 溝の口駅武蔵溝ノ口駅高津駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2016年1月12日火曜日

Manbait : Regis



90年代半ば以降の、ハードミニマル愛好家の拠り所として機能し続けるのが Surgeon や Female であり、この Regis。無慈悲な鉄槌がフロアへドロップされる度に、ハードミニマルヘッズに阿鼻叫喚の雄叫びを上げさせたトラッカー第一人者。レーベル Downwards を主宰していることでも知られていますが、去年9月に Blackest Ever Black(BEB)からリリースされた編集盤が超絶的にすばらしい。過去に BEB からリリースされたリミックスワークス、および未発表音源がコンパイルされたアルバムとなっています。


90年代の4つ打ちハードミニマルではなく、マシンビートが無感情に打ち鳴らされたインダストリアル・テクノが中心。時には暗闇の奥底に蠢いているようなノンビートトラックも。それ故、フロア直撃型のフィジカル効果というより、脳髄直撃型のメンタル効果が凄まじい。全ての叙情性が排除され、漆黒の淵へといざなわれるようなエクスペリメンタルな音響はこの人ならでは。魂の堕落を追い求め、何の救いも求めないクレイジーシットな奴は聴くべき作品だ。ちなみに「Manbait Regis」で画像検索すると、マジでクレイジーだ。

2016年1月8日金曜日

アカリケン


第二の我が故郷 葛飾区はいつの間にかラーメン激戦区になっており、二郎インスパイア系もちらほらと点在する。今回訪問した「アカリケン」は青砥駅から徒歩圏内にあり、住宅地という場所柄もあり家族連れが目立つ。もちろんガチムチとした二郎系目当ての猛者も多いのは、この店主がラーメン二郎 品川店(過去の記事)の店主を務めたことがあり、数々のインスパイア系店をオープンさせた経歴を持つからか。



ラーメン(750円)に生卵(50円)を追加して注文。同時に聞かれる無料トッピングはニンニクヤサイアブラで。すると鋭角にそそり立つ見事なヤサイ山脈が、頂上にぷるぷるアブラを積もらせてご光臨。キャベツ比率が高くてクタ度合いも絶妙なヤサイへ、スープをちょろちょろとふりかけて全体のかさを減らす。スープはそれほど乳化していないものの、マイルドで旨味あってぐいぐいイケる俺好みのもの、ウンメ~ッ(habomaijiroさん風に)。



ヤサイを減らしてから天地返しをしたところ、太めに切られたローリングブタが顔を出したので生卵を添える。プリとした食感で、脂身は甘みすら感じさせる神域ブタが超ウッメェェェッ!卵の黄身とのハーモナイズが神域すら超える予感あり、身体全体で奮えながら無我夢中で喰らいつく(habomaijiroさん風に)。



太麺はエッヂが立って、ストレート寄りのムッチムチとした食べ応えで、最ッ高に俺好みでウンメ~ッ!卵が溶け込んだスープは更に旨味を増して、ゴクゴク完飲しそうな勢いになるほど奮えが止まらない。インスパイア系でこれほど完成度の高い、コクと旨み、ライト感覚とジャンク感覚が共存した汁にお目にかかったのは久しぶりだ、極ウッメェェェッ!(habomaijiroさん風に)。

住所:東京都葛飾区立石6-31-9

ラーメン アカリケンラーメン / 青砥駅京成立石駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2016年1月2日土曜日

レオナルド犬プリオ : 電気グルーヴ



明けましておめでとうございます。ブログを引っ越してから1年経ち(過去の記事は中途半端に移行中)、そもそもブログを開設してから10年近く経ちました。貴方の人生の役に立たない当ブログを今後ともよろしくお願い申し上げます。

さて、年末に「DENKI GROOVE THE MOVIE? 」を観てきたんですが、25年間もよく続いていると改めて感嘆。ここまで息の長いユニットになるとは想像していなかったんですが、25年も聴き続けている僕自身にも驚く。今ではCDのライナーを老眼鏡抜きでは読めないおっさんになりました。観客を見渡しても年齢層が高い。デビュー当時のファン層は10〜20代だったけど、彼らと同時にファン層も中年になっていることに気づく。このまま行くと、老人たちが電気グルーヴを聴いている時代が来るんじゃないか?

で、映画を見終わってからライヴ映像が観たくなり、当DVDを完全放置していた自分に気づく。2009年に買ってから封を切ってなかったんだぜ!BDじゃなくてCDが付属する初回限定盤DVDを買ったにも関わらず、CDすら聴いていなかったんだぜ!(ちなみに「人間も動物」も放置プレイからの黄金プレイにて未開封)

2008年ツアー「叫び始まり 爆発終わり」のSHIBUYA AXでの模様が3時間にも渡り収録されており、タイミング的には「Yellow」がリリースされた直後。故 Kagami 氏がサポートメンバーを務めているを見て、映画の中でも言及されていたなあ…としみじみ。「ぶーやんのツアー同行日記」という特典映像では Kagami が美味しそうにマカロンを食べていて、この半年後には逝ってしまうんだよな…とか。今や電気グルーヴのサポートメンバーとして欠かせない agraph こと牛尾憲輔が、楽器担当の裏方として紹介されていたり。CMJKの姿もちらほら映っていたり。見どころてんこ盛りです。


電気グルーヴ(Denki Groove) - CATV & 誰だ! [LIVE] from Buddhakiss on Vimeo.