2016年3月28日月曜日

Garbage 20th Anniversary Edition : Garbage



今年6月に4年ぶりの新作をリリース予定の Garbage。去年にはデビューアルバム(過去レビュー)の20周年記念盤をリリースしています。改めて説明するまでもなく、頭脳として機能する名プロデューサーの Butch Vig を中心に結成されたバンド。Butch Vig は Nirvanaの「Nevermind」や The Smashing Pumpkins の「Siamese Dream」を手がけた当世随一のプロデューサーとしても知られています。


久々に聴き返して思うのが、これほど完成度の高いデビューアルバムにお目にかかれるのは滅多にないという事。老練な Butch Vig が手がけているので当然なんだけど、デビュー以降20年以上経過してもバンドとしてのブレが全くない。ノイジーなギターを支えるエレクトロニクスな骨格、ポップネス炸裂なメロディ、そしてバンドのアイコンとして光り続ける Shirley Manson のデカダンスで妖艶なボーカル。この時点でバンドとしての方向性が完全に定まっている。

記念盤にはシングルのカップリング曲が収録されていますが、The Jam の「Butterfly Collector」がカバーされているのが興味深い。カップリング曲といえどもクオリティは総じて高く、アルバムの延長上として遜色なく聴けます。また、デジタル配信のみでリリースされた「Super Deluxe Edition」は何と全62曲!おびただしい数のリミックスワークスが完全収録されています。リミキサー陣は Martin Gore やら Adrian Sherwood やら Goldie やら Tricky やら Massive Attack やらぐっとくる人選。CD 2枚組の Deluxe Edition より Super Deluxe Edition を買えばよかったと後悔(買っただけで満足するだけなんだけどね)。

2016年3月24日木曜日

銀笹


銀座(といっても8丁目で新橋寄り)で打ち合わせた後、周辺のラーメン店を探したらこちらがヒット。昭和通りを超えて地味な路地裏にあるお店ですが、この界隈ではかなりの実力を誇っているらしい。おいしい塩ラーメンを食べさせてくれるようだが、塩ラーメンってシンプルなだけにお店の実力が分かるんだよね。どれどれ。




外で待っている間、おすすめの食べ方をじっくり観察。ラーメン食べて、薬味で味変させて、最後に鯛飯をを投入というのがおすすめスタイルだ。ならば鯛飯を頼んだ方がいいではないか、ということで一番人気の「銀笹 塩ラーメン」(850円)に「鯛飯」(350円)の食券を購入。しめて1,100円という銀座価格だ。




具材はエビが練りこまれた鯛つみれ、大ぶりの炙りチャーシュー、白髪ネギに水菜、隠れて見えないがメンマ等。まず特筆すべきが炙りチャーシューで、表面は香ばしく噛めばとろりと溶けるかのよう。この時点で尋常ではないクオリティを感じさせる。器に湛えられた黄金澄みきりスープは塩気がやや強いながらも、しっかりしたボディで旨味が全体を支えている。出汁に使われているのは魚介系(おそらく鯛なんだろうね)と鶏がら、野菜などをメインに使っているんだろう、複雑かつ上品で飲み応えもあり。このスープに鯛つみれが上手く調和しています。




表面つるとした麺は中細で縮れており、多加水で噛み応えはもちとしてコシがある。スープとの相性は抜群で、するするといけてしまう。うーん、こりゃ美味い。麺をある程度減らしたところで、薬味として供されたあおさや揚げた根菜などを投入。劇的に変化が見られたわけでもなかった。




鯛めしは優しい味付けで、香りが仄かに立ち上るもの。これにラーメンの残りスープを投入するのだが、ラーメンの器が注ぎやすいようになっているのが心憎い配慮。スープは塩分強めに感じたが、鯛めしと割ることでバランスが取れた味わいへと変化。さらさらと鯛の味わいを楽しむことができて、最後の一滴まで飲み干すことができる。これはもうラーメンの域を超えた上品さ加減だ。

銀笹ラーメン / 築地市場駅新橋駅汐留駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2016年3月20日日曜日

Hitnrun Phase Two : Prince

30年以上も殿下の尻を追い続けていると、かねてから思っていたことも麻痺してくるもんです。本作を聴いて、久々に改めて思いました。「この人は天才に違いない」と。



「HitnRun Phase One」(過去レビュー)からわずか3か月のインターバルを置いてリリースされた本作。Tidal や iTunes から配信されていますが、肝心のCDリリースが待てど暮らせど実現しない。アメリカやオーストラリアの一部では限定リリースされており、「手広くリリースするから待ってくれよなー!」なんて言ったくせに国内入手が極めて困難な状態。流通コストとの兼ね合いから広く作られることもなさそうなので、止むを得ず iTunes から購入しました。

全12曲のうち、一番下にあるトラックリストのリンク可能な5曲が既発、かつ「Stare」は去年夏に Spotify 限定でリリースされたもの。2011年以降に散発された曲ばかりで、僕が駄曲と切り捨てた「RocknRoll Love Affair」や「Screwdriver」まで収録している。気の抜けたタイトルといい、ジャケットといい、このやっつけ仕事っぷりは何なんだよーと全く期待していませんでした。が、一通り聴いてから「この人は天才に違いない」と今更ながらに痛感。何度こう思ったことか。渋谷陽一氏でさえ「天才としか言いようがない」と常々言ってるんだから、それ以上の言葉はない。


思えば去年のグラミー賞で「最優秀アルバム賞」のプレゼンターを務めたとき、極めて深いスピーチをしています。


「Albums, Remember Those? Albums still matter. Like books and black lives, albums still matter. (アルバム…みんな覚えてるかい? アルバムはまだ大事だ。本や黒人の命と同じように、アルバムは重要だ)」


米国ボルティモアでの黒人死亡事件への想いを楽曲「Baltimore」へと託し、今や死に体のフォーマットとなっているアルバムへの想いを重ねているじゃないですか。思えばアルバムというフォーマットに対して限りない愛着を示している殿下。「Lovesexy」では曲間信号をなくし(アルバムを1曲として成り立たせ)時代に抗いました。そんなアルバムに対する大きな愛情がここでも注がれていたのです。


個々では地味なトラック群ですが、このアルバムの中ではずっとそこにいたかのように適材適所に収録されています。それぞれが寄り添うかのようにアルバムフォーマットに収められ、曲一つ一つが持つ美しさが光り輝いており、アルバムを構成するに必要不可欠な要素として結実している。「HitnRun Phase One」がストロングファンクアルバムであったのに対し、本作はオールドスクールなソウルアルバムとして愛らしく輝いている。流れを持ったアルバムとはかくあるべき、という殿下の想いを感じ取り、心の底から感動しました。


思えば、膨大なお蔵入りトラックをアルバムに忍ばせ、新しい光を与える技は殿下にとってお手の物。ここでもその手法が生きているのです。こういう作品をCDで、いや、アナログで売ってくれればいいものを。


Tracklisting


01.
Baltimore
02. RocknRoll Love Affair
03. 2 Y. 2 D.
04. Look at Me, Look at U
05. Stare
06. Xtraloveable
07. Groovy Potential
08. When She Comes
09. Screwdriver
10. Black Muse
11. Revelation
12. Big City

2016年3月16日水曜日

From Farthest Known Objects : Surgeon



「Breaking the Frame」(過去レビュー)以来5年ぶりとなる、ハードミニマルの重鎮 Surgeon が新作をリリース。90年代中期以降、ハードミニマルの代名詞的存在として知られている Surgeon ですが、日本語盤の帯に『未知との更新、テクノは再び宇宙へと向かう』と書かれているのを見て不安に思ったのは僕だけではあるまい。Surgeon に大いなるインスピレーションを与えた Jeff Mills が2000年前後から宇宙志向になり、かつての作風を変えてしまったのは広く知られるところ。今月には東京フィルハーモニー交響楽団と共演するなど意欲的な試みを続けているが、やはりド変態ユーザはハードなあれをぶっ込んで欲しいのだよ。そんな Jeff Mills が正真正銘の宇宙人になってしまった今、すわ「Surgeonよ、お前もか」と思ったが、一聴して懸念は払拭された。

シンセサイザーがソフトウェア化されている今、マニアにとって新たな潮流となっているのがモジュラーシンセサイザーであり、マニアの頂点として君臨している Surgeon もモジュラーシンセにご執心のご様子。モジュラーシンセを簡単に説明すると、アナログシンセに搭載されている機能をモジュール化して、独自システムとして構築したシンセサイザーを指すらしい…が僕もマニアではないので詳しくはこういうページを参照して下さい(と逃げます)。

こういったアナログ機をいじっているときに「遠く離れた銀河からの電波信号を受けた」のが Surgeon で、この経験からインスピレーションを受けたのが本作。けれども Jeff Mills の荘厳な宇宙志向とは異なり、この作品に渦巻いているのはアナログのざらついた質感をもったテクノイズ。三つ子の魂百までというか、Surgeon のインダストリアルな重力は全く損なわれていなかった。アナログ要素が注入されたことでエレクトリック・ボディ・ミュージックでもあり、BPM がやや低めということでファットなグルーヴ感覚が重視されたノイズ・ミュージックでもあり、アナログとデジタルの融合により新たな地平へと達したエクスペリメンタル・ミュージックでもある。この重心低めの狂気あふれる作品は紛うことなき Surgeon であった。

2016年3月12日土曜日

麺屋みのわ

田園都市線の市が尾から小田急線の鶴川まで、車を走らせればそこは田園都市というより田園地帯。横浜、川崎、東京の端っこ同志がせめぎ合うローカルスポットですが、住宅街の中にはぽつぽつとラーメン店が散見される。例えば「竹の助」(過去レビュー)、例えば「立川マシマシ ロイヤルスープ」(過去レビュー)そして第三の刺客となるのが「麺屋みのわ」です。



見たところ、何の変哲もない住宅街にあるラーメン店。だがしかし、看板が黄色く染まっているところに注目してほしい。しかも店名の右側には赤字で「にんにく入れますか?」だとう?…そう、こんなローカルスポットにさえ二郎インスパイア系は存在する。すぐ近くに「立川マシマシ ロイヤルスープ」があることを考えると、やれやれ鶴川とはどういうところなんだい?と畏敬の念すら覚える。




食券機を見ると、看板メニューの「特製みのわラーメン」以外に普通の「中華そば」や「台湾まぜそば」「味噌ラーメン」「まぜそば」「辛味噌ラーメン」「つけ麺」など何でもありだ。「中華そば」以外に「ラーメン」なんていうのもある。一体何が違うんだい?家族連れの客層を考えるとこういうラインナップになったということだろう。「特製みのわラーメン」にニンニクヤサイアブラでお願いすることにした。




背脂が降り積もった一杯が着丼したが、一般的なヤサイに加えてたっぷりとしたほうれん草が添えられている!しかも味玉までついているお得さ加減!ほうれん草があるあたり、家系のDNAまで感じられるが、ここはやはり二郎インスパイア系と言っていいだろう。「にんにく入れますか?」の一言が一般ラーメン店と二郎インスパイア系を隔てる分水嶺だからだ。




ブタはいわゆる二郎系のそれではなく、一般店にあるようなガシっとした食べ応え。ばっちり茹でられたほうれん草は標準的な家系よりもたっぷり添えられており、これはなかなか嬉しいところ。ヤサイもクタ気味に茹でられており、これは可もなく不可もなくといったところ。味玉の黄身はとろり甘くて美味しいね。一通りの具材を減らしたところで天地返すと、うねりあるヤワ気味の太麺が顔を出した。


この食べ応えと甘みは二郎系というよりは太めの家系というところだなあ。スープはそれほど乳化しておらず、どちらかと言えば家系寄りのあっさり豚骨醤油で甘みも感じられる。食べ終えてもノックアウト感はさほどなく、二郎系と家系のハイブリッドといったところか。全体的なパンチ力が低いが、二郎系を食べ慣れていないファミリー層には丁度いいゲートウェイヌードルなのかも知れない。ご夫婦であろうお二人の接客は良かったので頑張ってほしい。

みのわラーメン / 柿生駅鶴川駅
夜総合点★★★☆☆ 3.5
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2016年3月8日火曜日

Ritual Spirit : Massive Attack



Heligoland(過去レビュー)から6年、ようやく Massive Attack に新たな動きが。元々は「Fantom」という iPhone アプリで先行公開されていたトラック群ですが、すぐさまデジタル配信でEPとしてリリースされました。iTunesだと800円ですが、amazon だと450円という値段。当然amazonから買って、差額でビールでも飲むよね。

この4曲でフィーチャーされているのがUK出身のヒップホップアーティスト達であるRoots Manuva、Azekel、Young Fathers、そして何とTricky!Massive Attack の前身である the Wild Bunch からの盟友として知られており、「Protection」(過去レビュー)以来22年ぶりとなる共演!今年は長らく廃盤だった The Pop Group の「For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?」がリイシューされるなどブリストル界隈が熱いなー。とは言っても、港町ブリストル発のベースミュージックがダブステップに取って代わられ、今となってはポストダブステップやチルウェイヴも沈静化しているのも事実。新しいうねりを本作以降から期待したいところではあります。

本EPはベテランならではの老獪ぶりというか、外れがないというか、簡単に言えば新鮮味がない。「Voodoo in My Blood」や「Take It There」は呪術的な妖艶さが黒光るものの、暗闇の深淵から鳴り響く音を期待するにはまだまだこれからか。この先も2nd EPやアルバムが届けられるようなので見守りたいと思います。

Tracklisting

1. Dead Editors (featuring Roots Manuva)
2. Ritual Spirit (featuring Azekel)
3. Voodoo in My Blood (featuring Young Fathers)
4. Take It There (featuring Tricky)


2016年3月4日金曜日

ラーメン ◯菅

「こち亀」のおかげで今や全国区となった葛飾区亀有。その昔、隣駅に住んでいたころは何の特色もない下町だったんですが、ここ最近はラーメン激戦区として知られるようになってきた。魅力的な有名ラーメン店が軒を連ねているが、正直言ってどこに行くべきなのか分からない。取りあえず両津勘吉の銅像を横目で見つつ駅前をふらふらしていると、行列ができているラーメン店を発見。看板が黄色いのが気になるが、取りあえず入店した。



食券機で「らーめん(680円)」を購入。他にも「つけ麺」やら「まぜそば」やら「まるとく」(麺量が160gと控えめで味玉がついてくるので、小食派におすすめとのこと)やら「みそらーめん」やら色々あるが、まずは基本に忠実で。どうやら通常麺と太麺を選べるらしいので太麺で。すると無料トッピングを尋ねられた…。




…そう!ここは亀有界隈では有名な二郎インスパイア系のお店。二郎本店での修業経験者が経営するインスパイア系の名店「いごっそう」出身の店主だとか。なるほど大いなる流れの支流が亀有にも到達しているということだ。脊髄が反射して、すかさずヤサイニンニクアブラをお願いしたところ、武闘派な一杯が着丼。




まず最初に言っておきたいのがブタの仕上がり。肉厚に切られたロール豚1枚にはジューシーな旨味が染み渡っており、ふわとろで柔らかくて神域へと到達している。青砥の「アカリケン」(過去の記事)もそうだが、葛飾区のインスパイア系は実にレベルが高い。もやし中心のヤサイはシャキとした茹で加減で、スープをかけつつジャクジャクと食べ進む。やや乳化したスープは実に丁寧に作りこまれおり、豚骨の旨みが溶け込みきって、カエシの甘みが実に旨い。天地を返して登場した麺はオーションを使った極太系で、ポキ寸前のわしっとした食べ応え。スープとのバランスが絶妙で、ボリュームを感じさせずズバズバいける。二郎本流のデロ麺とは趣を異にするが、下手な本流をはるかに凌駕しており、インスパイア系の中では上位に達しているレベル。亀有まで足を運んでまでも、食べるに値する一杯を発見した。

ラーメン ○菅ラーメン / 亀有駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8