2016年3月20日日曜日

Hitnrun Phase Two : Prince

30年以上も殿下の尻を追い続けていると、かねてから思っていたことも麻痺してくるもんです。本作を聴いて、久々に改めて思いました。「この人は天才に違いない」と。



「HitnRun Phase One」(過去レビュー)からわずか3か月のインターバルを置いてリリースされた本作。Tidal や iTunes から配信されていますが、肝心のCDリリースが待てど暮らせど実現しない。アメリカやオーストラリアの一部では限定リリースされており、「手広くリリースするから待ってくれよなー!」なんて言ったくせに国内入手が極めて困難な状態。流通コストとの兼ね合いから広く作られることもなさそうなので、止むを得ず iTunes から購入しました。

全12曲のうち、一番下にあるトラックリストのリンク可能な5曲が既発、かつ「Stare」は去年夏に Spotify 限定でリリースされたもの。2011年以降に散発された曲ばかりで、僕が駄曲と切り捨てた「RocknRoll Love Affair」や「Screwdriver」まで収録している。気の抜けたタイトルといい、ジャケットといい、このやっつけ仕事っぷりは何なんだよーと全く期待していませんでした。が、一通り聴いてから「この人は天才に違いない」と今更ながらに痛感。何度こう思ったことか。渋谷陽一氏でさえ「天才としか言いようがない」と常々言ってるんだから、それ以上の言葉はない。


思えば去年のグラミー賞で「最優秀アルバム賞」のプレゼンターを務めたとき、極めて深いスピーチをしています。


「Albums, Remember Those? Albums still matter. Like books and black lives, albums still matter. (アルバム…みんな覚えてるかい? アルバムはまだ大事だ。本や黒人の命と同じように、アルバムは重要だ)」


米国ボルティモアでの黒人死亡事件への想いを楽曲「Baltimore」へと託し、今や死に体のフォーマットとなっているアルバムへの想いを重ねているじゃないですか。思えばアルバムというフォーマットに対して限りない愛着を示している殿下。「Lovesexy」では曲間信号をなくし(アルバムを1曲として成り立たせ)時代に抗いました。そんなアルバムに対する大きな愛情がここでも注がれていたのです。


個々では地味なトラック群ですが、このアルバムの中ではずっとそこにいたかのように適材適所に収録されています。それぞれが寄り添うかのようにアルバムフォーマットに収められ、曲一つ一つが持つ美しさが光り輝いており、アルバムを構成するに必要不可欠な要素として結実している。「HitnRun Phase One」がストロングファンクアルバムであったのに対し、本作はオールドスクールなソウルアルバムとして愛らしく輝いている。流れを持ったアルバムとはかくあるべき、という殿下の想いを感じ取り、心の底から感動しました。


思えば、膨大なお蔵入りトラックをアルバムに忍ばせ、新しい光を与える技は殿下にとってお手の物。ここでもその手法が生きているのです。こういう作品をCDで、いや、アナログで売ってくれればいいものを。


Tracklisting


01.
Baltimore
02. RocknRoll Love Affair
03. 2 Y. 2 D.
04. Look at Me, Look at U
05. Stare
06. Xtraloveable
07. Groovy Potential
08. When She Comes
09. Screwdriver
10. Black Muse
11. Revelation
12. Big City

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