2016年6月30日木曜日

Convenanza : Andrew Weatherall



問答無用の重鎮 Andrew Weatherall が初ソロ名義でリリースした「A Pox On The Pioneers」から約7年ぶり、続編として位置付けている「Convenanza」を今年1月にリリースしています。長いキャリアを誇りながらも、自分名義での作品を思い出したかのようにリリースする姿勢が実にユニークであり、既成の枠組みに囚われない活動が見事にパンキッシュです。

タイトルは Weatherall が昨年フランスの古城で主催した「Convenanza Festival」に因んでいるようで、「超越」を意味する儀式という造語らしい。「儀式」が夜に蠢くクラブという世界を意味しているのは明白で、ここで表現されている音は時代を「超越」した普遍的なもの。サイケデリックでダビーな響きを持ちながら、エレクトリックミュージックとは一線を画したB級的かつ場末感のある、どこにも属さないアンダーグラウンドミュージック。大量消費を目的としない、己に内在する確固たる世界観を表現したリアルな音。このような音楽を作る男は後にも先にも Weatherall だけだろう。この男がいる限り、真のクラブミュージックが死ぬことはないはずだ。

2016年6月26日日曜日

電気グルーヴ25周年記念ツアー「塗糞祭」



加齢臭漂うおじさん二人組が2014年にぶちまけた奇祭として知られる「塗糞祭」。この最終公演を収録した映像作品が極めて素晴らしい。観客がツアーグッズとして販売されていた塗糞刷毛を握りしめ、塗って塗って塗りまくっている狂乱状態が収録されています(ちなみに僕が購入した初回生産限定盤ではミニな塗糞刷毛が付属しており、自宅でとても重宝している)。

どうやらこの奇祭、おじさん二人のデビュー25周年を記念するツアーでもあったようで、ゆかりのあるゲストが矢継ぎ早に参加し、数々の歴代名曲を披露しています。

まずは初期メンバーのCMJKが登場し、今では演奏されることも極めて稀な「ビコーズ」、「マイアミ天国」、「Bingo!」で会場を温める。小島よしおネタで登場〜三瓶ネタで退場するというマニアな演出を散りばめた DJ Tasaka が後を引き継ぎ、クレイジーシットな「浪曲インベダー」、「ドリルキング社歌2001」を演奏する。そして Ki/oon Music 二大珍獣と言われたスチャダラパーが登場した時点で会場のボルテージは沸点に。そんな中、1,000円盗難疑惑に始まる ANI とピエール瀧の喧嘩が勃発したが、会場が固唾を呑むなかラップバトルで仲直り。心のベストテン第一位な「今夜はブギー・バック」で締めて、牛尾憲輔にボーカルを披露させるという無茶振りも。ただ、何故ここで「Twilight」じゃないのかは疑問が残るところ。

やがて「21世紀もモテたくて…」の演奏途中で「この公演だけのスペシャルゲスト」と前振りがあった鬼才 天久聖一 氏が登場。この公演直後にツイートされた画像(これとかこれ)でその出で立ちは予め分かっていたが、いざ目の当りにするとそのインパクトに驚愕する。本公演最大の見ものであるのは間違いなく、僕はこのシーンを抱腹絶倒しながら何度も何度も見返したよ。

次なるゲストは電気グルーヴ最大の貢献者ともいえる砂原良徳。「俺が畳だ! 殿様だ!」から始まるピエール瀧レパートリーを連打し、「ママケーキ」ではまさかのボーカルを披露し祝祭感に彩りを添える。

怒涛の終盤ではアップリフティングな名曲のシームレスプレイで、会場を興奮の坩堝へと陥れる。石野卓球自身のアンセムである「N.O.」は「無能の人」へと里帰りし、「電気ビリビリ」は「662 BPM BY DG」収録のオリジナルとしてプレイされる。もちろん大人の事情により、オリジナル歌詞であったところは聴き取れないようにエディットされている。それを差し引いても、おじさん25年の歴史を俯瞰するには間違いないクロージングチューンだ。彼ら歴代のライヴ映像の中でも屈指の名作であることも間違いない。

ちなみに相変わらずグダグダなMCは自主規制により、GO!皆川の「うんちょこちょこちょこ“ピー”」で伏せられまくっていることを申し添えておく。

Tracklisting

1. Opening
2. 電気グルーヴ25周年の歌(駅前で先に待っとるばい)
3. Mud Ebis
4. B.B.E.(Bull Beam Express)
5. Hi-Score
6. ザ・ケトルマン
7. ビコーズ
8. マイアミ天国
9. Bingo!
10. 浪曲インベダー
11. ドリルキング社歌2001
12. 聖☆おじさん
13. ANI vs 瀧
14 .瀧 vs ANI
15. 今夜はブギー・バック
16. 完璧に無くして
17. Flashback Disco
18. Baby's on Fire
19. 21世紀もモテたくて…
20. 俺が畳だ! 殿様だ!
21. ポパイポパイ
22. ちょうちょ
23. お正月
24. 富士山
25. ママケーキ
26. Shangri-La
27. モノノケダンス
28. Upside Down
29. Fake It !
30. スマイルレス スマイル
31. ジャンボタニシ
32. カメライフ
33. 無能の人
34. 電気ビリビリ 

2016年6月16日木曜日

Complete Music : New Order



Music Complete」で偉大なる復活を果たしただけでなく、5月には新木場スタジオコーストで単独来日公演を行い活発な行動をしている俺たちの New Order。今年3月には「Complete Music」全曲のエクステンデッド・ヴァージョンが収録された「Complete Music」がリリースされています。オリジナルのDLコードも入っているので、聴いたことのない人はこちらを買うべき。

注意して欲しいのが、リミックス・バージョンではなくて、エクステンデッド・ヴァージョンであるところ。原曲の持つ風合いを保ちつつ、音世界をさらに拡張させています(オリジナルの素晴らしさは前の記事で十分書き尽くしたつもりなので参照して下さい)。まさしくタイトル通り、オリジナルの完全形態として仕上がっています。思えば彼らは「Blue Monday」の頃から12"シングルへの対応を怠っていなかった。こうしてエクステンデッドなものが出てくるのも必然だったんだろう。

惜しむらくは音圧が低く感じられ、曲によっては音量が低くなってしまうことも。こうしたいい加減っぷりも彼らの魅力ではあるんだが。


2016年6月12日日曜日

めんや 参○伍



日本一のハイセンスタウン 六本木で一仕事した後、久々にラーメンでも嗜むか…と路地裏を徘徊したところ、行列ができているお店を発見。主軸となっているのがらーめんとつけめんで、超濃厚豚骨スープを売りにしているとのこと。メニューの中でも耳慣れない「三◯五郎」という、何かの記号めいたものを発見。680円の食券を買ったところ「ニンニク入れますか?」という耳慣れた質問が。脊髄が即座に反射して「ニンニクヤサイアブラ」という呪文が自動的に口から流れた。これはもしや…




二郎インスパイア系じゃないか!ギロッポンに来てまで二郎系を食う羽目になるとは、俺はどこまでもついていない男なんだー!ぽっぽ ぽぽぽぽ ぽっぽー!というのは真っ赤な嘘であることは賢明な読者諸君だったらお分かりだろう。2015年末以来のご無沙汰な二郎系だが、六本木を訪問するにあたって入念なリサーチを行い、このお店を突き止めたのだ。




見た目に圧倒され一抹の不安がよぎるが、クタ気味なモヤシ中心のものを食べ進むにつれ、不安は杞憂に過ぎないと確信。久しぶりの二郎系だったので臆してしまったが、かつての勢いを取り戻して順調にかさを減らしていく。ブタは本家のようにゴロとしたものではなく、薄めにスライスされたものだ。甘く味付けされており、柔らかいほどに煮こまれている。これはこれで味わい深いものだ。



超濃厚豚骨スープを謳っているものの、本家の持つパンチ力は感じられず、インスパイア系の域を出ないものだった。カエシにもっと攻撃性を与えてもいいのでは、と思った。極太麺は少々やわく、芯に若干のポキ加減が残るもの。本家へのオマージュは何となく伝わってくるが、再現性は低い。二郎系をメニューの一つとして用意しているので、片手間感は否めない。やはり1点に集中することも大事なのだ。

久々の二郎系ということもあって、完食することに集中してしまい、味わうことを疎かにしてしまったのは自分の反省点だ。やはり常日頃から食い続け、胃を鍛えあげなければならないと思った。


住所:東京都港区六本木7-13-10

ホームページ:http://www.menya305.com/
めんや 参○伍ラーメン / 六本木駅乃木坂駅六本木一丁目駅
夜総合点★★★☆☆ 3.6
昼総合点★★★☆☆ 3.6

2016年6月8日水曜日

Barbara Barbara, we face a shining future : Underworld



前作「Barking」からなんと6年ぶりとなる Underworld の新作。その間に Karl Hyde がソロアルバムを出したり、Brian Eno とコラボレーション作品を出したりと活動していたのでご無沙汰感はそれ程もなく。でもこうして聴くと二人のケミストリーが久々に感じられて嬉しくもある。

この作品のプロモーションで来日し、ミュージックステーションを始めとする各メディアに露出していたけど、やはり「Born Slippy .NUXX」の呪縛からは逃れらないんだなあ、と悲しくなってしまったり。そりゃあライヴで一番盛り上がる曲だし、彼らのキャリアを語る上で外すことの出来ない名曲だ。脱退した Darren Emerson もこの名曲に対して同じ忸怩たる思いを抱えているだろう。でもそれはそれ、新しい作品は別次元、という彼らの吹っ切れ加減がここからは感じられる。

ライヴ映えするような仰々しい曲は収められていないものの、大名作「Dubnobasswithmyheadman」に通じる繊細さ、簡素さがそこかしこに息づいており、極めてエモーショナルな作品に昇華されているじゃないですか。極限まで無駄を排除し、電子音楽としての機能美に満ち溢れたアルバム。ここまで己の道を極めると、潔いポジティヴィティすら感じてくる。こういう作品を傑作と言うんだろう。

2016年6月2日木曜日

Walking Wounded [Deluxe Edition] : Everything But the Girl



昨年リリースされた「Walking Wounded」(邦題:哀しみ色の街)のデラックス盤。オリジナル盤(過去レビュー)のCDがどこかにいってしまったので、改めて購入しました。今こうして聴き返すと、邦題もまんざらではない程、アーバニズムとメランコリーが漂っているなあと実感。


ポップフィールドの中でも、ドラムンベースを大胆に導入したのは彼らが初めてだったんだよなあ…と振り返ると、ジャングルという広義で言えば浜田雅功と小室哲哉のユニット H Jungle with t の方が先だった、という意外な事実に気がついたり。


デラックス盤では東京でのライヴ音源、アルバム未収録曲、リミックス音源がてんこ盛りとなっており、よりD'n'B色の濃いものとなっています。やはり印象的なリードトラック「Before Today」のリミックスが白眉となっており、ドラムンベースの貴公子と呼ばれた Adam F リミックスがクールな出来具合。このアルバムな好きな人はデラックス盤も所有すべき充実っぷりです。 


Tracklisting

[Disc One]


01. Before Today

02. Wrong
03. Single
04. The Heart Remains A Child
05. Walking Wounded
06. Flipside
07. Big Deal
08. Mirrorball
09. Good Cop Bad Cop
10. Wrong [Todd Terry Remix]
11. Walking Wounded [Omni Trio Mix]
12. Corcovado
13. Before Today [live in Tokyo, 1997]
14. Single [live in Tokyo, 1997]
15. Wrong [live in Tokyo, 1997]

[Disc Two]


01. Mirrorball [demo]

02. Flipside [demo]
03. Above The Law [demo]
04. Speeding Car Side On [demo]
05. Walking Wounded [Dave Wallace Remix]
06. Wrong [Mood II Swing Dub]
07. Wrong [Deep Dish Remix Edit]
08. Single [Photek Remix]
09. Single [Brad Wood Memphis Remix]
10. Before Today [Nellee Hooper unreleased 1996 Remix]
11. Before Today [Adam F Remix]
12. Before Today [Chicane Remix]
13. Before Today [Dilinja Remix]
14. Mirrorball [DJ Jazzy Jeff Sole Full Remix]
15. Corcovado [Knee Deep Classic Club Mix – Ben Watt vocal re-edit]