2016年7月31日日曜日

A Moon Shaped Pool : Radiohead


A Moon Shaped Pool : Radiohead


今年6月にリリースされた約5年ぶりの Radiohead 新作を聴きまくってます。というより自分の一部分の何かが、ひたすら聴くことを要求し続けている。前衛的なのに聴き易く、一部分の何かにすんなりと染みこんできます。これはもう、彼らの作品の中でも傑作の部類に入ると言い切っていい。そりゃあ衝撃性でいえば「KID A」にはかなわないものの、完成度の高さで言えば「OK Computer」に匹敵するレベル。


もはや彼らにとって欠かせない存在の Nigel Godrich によってアンビエントで幽玄な空間が強調され、エレクトロニカな風情を醸し出しながらも、バンドとしての肉感的な鼓動すら感じさせる。新たな高みを象徴するオープニング「Burn The Witch」から、ライヴアルバム「I Might Be Wrong」に収録されていた既発曲「True Love Waits」まで、全てが完璧で美しく予定調和のようだ。


哀しさと、前を向いている情熱の共時性。堕ちていく感覚がありながらも、救済すらも感じさせて掴みどころがない。ロックやエレクトロニカ、アンビエントは勿論、クラシック、ジャズやアシッドフォークからジャーマンプログレまで全ての音楽を消化し、Radiohead であることを提示した大傑作。今年のサマソニで伝説を作ってくれる予感すらある。


 


2016年7月26日火曜日

ラーメン二郎 荻窪店


全世界でポケモンGOが社会現象となり、多くのポケモントレーナーが外に繰り出している。こちとら流行りものには目もくれず、東日本全域に散らばった黄色いモンスター捕獲に精を出す毎日だ。今回はOGKB26として知られるモンスター捕獲のため、自宅からはアウェーの地である荻窪まで繰り出した。長らく休業状態であった彼の地は、桜台店で助手を務めた方が店長に就任し、2016年に再オープンを果たしたことでも知られている。




14:00頃に到着したおかげで、待ち時間0分で難なく着席。小ラーメン(700円)の食券を購入しカウンターでしばし待って「ニンニクヤサイアブラ」をオーダー。やはりモンスターとしか思えない奴が出現した。ここで注目したいのが助手を務める女の子。常に微笑みをたたえ作業しており、おそらく本流の中ではトップレベルの可愛さだ。そんな彼女が、最後にちょこんと頂上に載せたのがほぐし豚。常連向けサービスという話もあったが、小生は初見参ゆえ通常サービスと思われる。それにしてもARの世界で投擲したモンスターボールのように丸い。コラーゲンの塊のようなアブラもぷるんぷるんだ。




ツナのようなほぐし豚をホグホグと堪能する。ぷるぷるアブラを細かく粉砕して、ニンニクと一緒にスープに溶けこませる。ややパサツキ加減のブタをスープに浸して温める。上澄みたっぷりの乳化スープをヤサイにふりかけて味をつける。これぞ黄色いモンスターの攻略法なり。

ヤサイはややクタ目だがキャベツ比率も高くて申し分なし。かさを減らしてからスープに沈ませたブタを再度引き上げると、ガツとした食感のブタが持っているショッパウマな味と、黄金色スープの優しさがいい按配にハーモニーを織りなしている。やがて天地を返せば、新しいバトルのゴングが鳴るが如く、途方もない量のツル麺が姿を表した。グルーヴィーな縮れ麺はモチとしていながらも、わずかな剛性も保っている。

むう……いつもながら思うのが、心の中で敗北感とせめぎ合いながら無心に食らうこと、それが完食への道だということ。やがて乳化スープに浮いたアブラを全て回収してごちそうさま。日によって味のブレが報告されているが、荻窪店は間違いなく旨い。その味をじっくり堪能するためにも、マシは頼まず生卵ですき焼き風に楽しむのもありだろう。全モンスターのコンプまであと6店。道は険しい。

住所:東京都杉並区荻窪4-33-1

ホームページ:http://ogkb26.tumblr.com/
ラーメン二郎 荻窪店ラーメン / 荻窪駅阿佐ケ谷駅南阿佐ケ谷駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2016年7月22日金曜日

night thoughts : Suede


night thoughts : Suede


Bloodsports」から3年、Suedeの持つ刹那と耽美は永遠のものになってきた。作品毎にポジティヴィティとダークネスの比率が異なっているのは彼らの常だが、全作品を貫いている美学は徹底的に提示され続けている。その美学、つまりSuedeであることに拘りつつ、ダークで美しい世界を構造的に作り上げたのが本作だ。


個々のトラックがしなやかに形を変え、美しく寄り添いながら厳かに響いている。リプライズを繰り返す結果、作品全体が一つのコンセプトを持ったアルバムへと昇華している。アルバムを一つの作品として提示することで、楽曲が使い捨てのように消費されるシーンにアンチテーゼを示しているとしか思えない。緻密に練り上げられた全編を通して聴こえてくるのは、闇の深淵から、暗闇の海から浮かび上がってくる、咽び泣くようなメランコリアだ。再結成したバンドとは思えないほど、グラマーな感覚が増した傑作だ。

2016年7月18日月曜日

ぶた麺


君たちはブタメンを知っているか?そう、俺達のおやつカンパニーが提供する駄菓子で、ちびっこ達が小腹がすいた時に食べるミニカップラーメンだ。横浜は片倉町近辺で車を走らせていると、ブタメンにそっくりなキュートなキャラクターが看板に書かれているのを発見した。あの「ブタメン」をラーメンで再現しているのではないか?絶対そうだよね!そういえば小腹も減ってきたし!というノスタルジアに胸を膨らませて思わず突撃した。



ランチセット(ラーメン+納豆ご飯)700円というメニューも気になったが、ここは基本に忠実にラーメンの食券(770円)を購入。すると「ニンニクどうなさいますか?」と謎の質問をされた。え?おやつカンパニーのあれを再現するんじゃないの?ニンニクって何だブ〜?と思いつつ、口から流れてきたのは「ニンニクヤサイアブラ」という意に反する呪文。

さすれば小ぶりの丼にがっちがちに詰め込まれたモヤシ中心のヤサイ、上のレイヤーに搭載されたブタ、最上位レイヤーに振りかけられたアブラ。しかも別皿で供されたモヤシの山。おい!これはどうみてもちびっこの小腹を満たすアイツじゃないブ〜、二郎系だブ〜!というわざとらしい演技はここまでにしよう。この御店こそ2015年10月にオープンした、新進気鋭の二郎インスパイヤ系ラーメン店なのである。



これまで数多の二郎系を食してきたが、野菜が別皿で盛られたのは小生初体験である。やれやれこいつは小腹とかそういうレベルではなく、敗北感すら漂うレベル。そんなことを思っては全国のちびっこ諸君に申し訳がたたないので、取り敢えずはコラーゲンたっぷりのアブラがまぶされた大ぶりブタ2枚を喰らうと…脂身のポテンシャルを最大限に引き出したふわりとろりとした食感。こいつは品質高いよ!

ヤサイはモヤシ中心だがシャキ加減も申し分なく、ある程度減らしたところで天地を返せばムチリとした太麺が姿を表したブ〜。麺に「とこトン」こだわっているのか、つるりとした表面とガチリとした食べ応えが堪らないブ〜。スープは二郎系にしてはややあっさり目だが、カエシと背脂の持つ甘さが拮抗して旨い。麺を減らしたところで、別皿のモヤシを更にぶっこんで追い込みをかける。隣の客が心配そうに見守る中、男のプライドを掛けて平静を装いつつどうにか完食。ちびっこ時代はブタメンで育ち、大人になって立派な豚男(ブタメン)になった瞬間であった。

住所:神奈川県横浜市神奈川区片倉2-71-5
ぶた麺ラーメン / 片倉町駅三ツ沢上町駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2016年7月14日木曜日

Wow : Beck



僕たちの Beck が6月にリリースした新曲がやたらと良い。Beck ならではのユーモア感覚がそこかしこに散りばめられた、Beck しか作れない多幸感に満ちたヒップホップチューン。Beck の子供やその友達にデモを聴かせたところ、ちびっこ達が「絶対リリースした方がいい」と声を揃えたそう。それだけ光に溢れたトラックということなんだろう。去年の「Dreams」ともども収録される10月リリースの新作を占う上で、非常に重要な楽曲だと思います。

2016年7月10日日曜日

利尻昆布ラーメン くろおび


ここ最近、仕事で浜松町・大門エリアを通過することが多くなりました。その中でも高得点を獲得しているのがこのお店。言わずもがな、利尻産の昆布にこだわりぬいたスープを作っているのは間違いありませんが、全ての具材が少しずつ入ったという看板メニュー「くろおびラーメン」は1,000円といういいお値段。塩と醤油を選べますが、塩をお願いしました。



美しく盛られた一杯が着丼。バラとロースのチャーシュー2枚の前者はほろり、後者はしっとりとした食感で申し分ない出来。プリとした餡をつるつるの皮が包み込む海老ワンタンも上品だ。長い穂先メンマはびっくりするほど柔らかく、味玉の甘くて半熟な黄身も品質が高い。薬味に添えられているのは白髪ネギやクレソンなど。この時点で相当のこだわりが感じられる。



スープはなるほど吟味され尽くした素材を使っているのだろう、無化調を謳いながら奥深いスープワールドを演出している。単に利尻昆布だけではない、企業秘密とされる魚介系・動物系を駆使したダシは期待を裏切らない。塩味はごまかしが効かない味だが、繊細な中にもダイナミズムを感じさせる味を構築しているのはさすがだ。極細麺は多加水でするすると口の中に入っていく。全感覚を研ぎ澄まして味わいたい、滋味のある一杯だ。コストと値付のバランスの中で、どれだけチャレンジャーでいられるか?その問いに対する回答がこの一杯であり、1,000円という価格に対する判断は各々に委ねたい。僕はありだと思います。

住所:東京都港区芝公園2-3-8 赤門ビル1F
利尻昆布ラーメン くろおびラーメン / 大門駅芝公園駅浜松町駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2016年7月4日月曜日

Chaosmosis : Primal Scream



アルバム毎に作風やコンセプトをカメレオンのように変貌させてきた俺たちのプライマルズ。2008年の「Beautiful Future」以降は振り幅も大きくなく、安定感のある魔法のようなロックンロールを披露し続けている。そして「More Light」から3年ぶり、いよいよ年齢という足枷を感じさせない、妖艶でスリルのあるロックンロールをボビー・ギレスピーは手中にしたようだ。

ゴスペルの香り漂うリードトラック「Trippin' On Your Love」では名盤「Screamadelica」の再来を感じさせるが、単純に焼き直すだけでは終わらない。混沌とした世界や体制への共闘を呼びかけるが如く、セクシーかつ色彩豊かなハイエナジー・ロックンロールを叫び続ける。特に「Where The Light Gets In」で23歳女性シンガー Sky Ferreira を起用するあたりは中年親父の老獪な技を感じさせる。

各曲の方向性は節操が全くないが(それこそプライマルズ!)、ほぼ全編に渡り女性シンガーがフィーチャーされているので、ファッキンなエロスがそこかしこから迸っている、滴り落ちている。ぶれない、相変わらずぶれない。根っこにあるのはブルーズであり、パンクであり、ロックンロールであり、栄光を手にするまでの闘う姿勢だ。芸術とは自由であり、かつ闘いであることを再確認できる傑作であるのは間違いない。