2016年8月28日日曜日

麺喰亭 まんぷく


かつて新高円寺に「鶏とふじ」という二郎インスパイア系があった。いつか訪問しようと目論んでいたが、いつの間にか(2014年末とのこと)「麺喰亭 まんぷく」と店名を変え、世田谷区は梅ヶ丘へ移転していた。以前の記事で、世田谷区を「日本で一番、二郎密度が高いエリア」と言い切ったことがあるが、はからずもこれを実証したことになる。閑静な住宅街を歩けば「腹が減ったらうちに来い!!」という看板にぶち当たるが、やはりセレブリティは二郎系がお好き、というわけだ。




醤油らーめん(700円、350g)の食券を購入し、ヤサイニンニクアブラの無料トッピングをお願いしたところ、天高くそびえ立つ一杯が着丼した。食べる者に敗北感を与えるような物量だが、このボリュームこそ看板に偽りなし。デロデロに振りかけられたアブラを支えるモヤシ中心のヤサイ、厚めに切られたふわり柔らかいブタ、珍しい味付けニンニクで構成されている。




スープは二郎系に忠実な甘辛い味付けで、程よく乳化しており旨味あふれる。これに味付けニンニクを溶かしこむと、更なる深みが生まれて味がブーストされる。ヤサイを減らしたところで天地返せば、ぐりんぐりんに縮れた極太麺が現れる。そのコシ半端なく、ガチとしてむっちりムチムチな食べ応えで、この麺を噛みしめるだけで満腹中枢が悲鳴を上げる。ヒリヒリするような自分との闘いに打ち勝ち、どうにか麺とヤサイを全て食べ収める。さすればヤサイに降りかかっていたアブラがスープに溶け込んでおり、いい具合のとろみあるスープへと変貌していた。上澄みのアブラを回収してごちそうさまを告げた。うむ、間違いない一杯。


住所:東京都世田谷区梅丘1-9-11 梅丘コーポ101

麺喰亭 まんぷくラーメン / 梅ケ丘駅豪徳寺駅山下駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2016年8月20日土曜日

HYMNS : Bloc Party



前作「Four」から4年経過してリリースされた Bloc Party の新作を聴いたんですが、一聴して「これって Bloc Party なの?」って驚いた。全く違うバンドに思えたからだ。ボーカルすら違うように聴こえた。ドラムとベースを担当していたメンバー2人が脱退し、新メンバー2人を迎え入れたのは聞いていた。つまりバンドの半分が入れ替わったしまったので、かつてのケミストリーが明らかに失われているのです。

これまでの彼らと違って内省的で、前作で見られた攻撃的要素が控えめになっている。性急でつんのめるようなドラムワークは失われ、ざらりとエッジの効いたギターもない。その代わりにエレクトロな要素が復活しているが、フロントマン Kele Okereke のボーカルもどこか控えめでエモーショナルな感覚が損なわれている。そもそもリードトラックからして相当変態的なエレクトロミュージックで、迷走っぷりが否めない。

昔からのファンは失望しているだろうし(僕もそうだ)、どこかで今後の彼らに期待すらもしている。繰り返し聴いて、彼らのコア要素であるメランコリアでどこか救いを求めている自分がいる。ポストパンク・リバイバルの旗手であった彼らはここにはいない。屋台骨のドラムとベースが入れ替わると、グルーヴはここまで失われるものなのか…これは新生 Bloc Party の通過儀礼なんだ、そう思うしかない。

2016年8月16日火曜日

The Spoils : Massive Attack



Massive Attack の新作 EP が7月にデジタル限定でリリースされました。今年3月にリリースされた EP「Ritual Spirit」以来のシングルとなり、こちらも新しいアルバムに収録されるんでしょう。

タイトル曲「The Spoils」にフィーチャーされているのは、まさかの Hope Sandoval。サイケデリックバンド Mazzy Star のボーカルとして知られる彼女、ここでも妖気のある美しい魔性のボーカルを披露しています。Massive Attack の極北ともいえるダークで切ない世界が提示されており、彼らの新しいマスターピースになり得るトラックです。それにしても Shara Nelson といい、Tracey Thorn といい、Elizabeth Fraser といい、女性ゲストボーカルの選択が相変わらず巧みです。ちなみにPVにフィーチャーされているのはケイト・ブランシェット(んまあ、何て贅沢な)。

カップリング曲の「Come Near Me」にフィーチャーされているのは UK シンガー/ラッパー/プロデューサーである Ghostpoet。気だるいトースティングとボーカルが、極低音の響くエレクトリックダブにやたらと合う。この2曲だけでもおかわり何杯でもいける。年内リリース予定の新作に期待は高まる一方だ。


2016年8月11日木曜日

ラーメン二郎 茨城守谷店

前にも書いたが、俺は生まれも育ちも柏という生粋の柏っ子。せんべいと言えば「火山焼」、餃子と言えば「ホワイト餃子」、カレーと言えば「ボンベイ」、ラーメンと言えば「珍来」だ。そんな俺も取手にある高校に通い、多感な青春時代を過ごしたもんだっぺ。この日はノスタルジアに惹かれて、母校周辺をドライブすることにした。高速を使って一都四県(神奈川/東京/埼玉/千葉/茨城)を走破し、常磐道谷和原ICからろっこく(注)方面を目指す。途中で腹が減ったので、街道沿いのラーメン屋で腹を満たすことにしたっぺ。

(注)国道6号線、水戸街道のことを指す




したっけ(注)、俺を待ち受けていたのは…なんとラーメン二郎!郷愁を求めにやってきたのに、ラーメン二郎はことごとく生温い感傷を破壊する。茨城に来てまでラーメン二郎だなんて、やはりこの食べ物の呪縛からは逃れられないのか…というのは真っ赤な嘘だっぺ。二郎全国制覇の一環で守谷にやってきたまで。それにしてもこの辺りは随分変わったな〜。昔は山しかなかったのに、いまや瀟洒な家が立ち並ぶ住宅街だ。


(注)したっけ=そうしたら




地方特有の広い店内には待ち3人。いいタイミングで入店出来たとほくそ笑みながら、小ラーメン(700円)の食券を購入する。着席してからニンニクアブラでお願いする。他のお客さんの「ヤサイマシ」を見て危険を察知したから控えめに攻略しようと思った次第。こちらの店主、今はなき「ラーメン二郎 高田馬場店」で修行を積んだ方らしい。3人体制で手際の良いオペレーションを展開していた。やがて目の前に着丼したのは、頂上にふわふわコラーゲンが降り積む暴力的一杯。おっかねえなぁ(注)。

(注)おっかない=こわい



スープは標準よりもややカラメのもの。そいつをアブラとくた気味なヤサイにふりかけて、全体のかさをグイグイと減らしていく。ヤサイはキャベツ比率が高くて食べ応えもなかなかだ。やがて天地を返したところ、ヤサイの下に隠れていたブタが2塊、ごろりと顔を出してこんにちは。滋味深い旨味が肉の奥まで染み渡っており、適度な歯ごたえと柔らかさのバランスがえがっぺ(注)。

(注)えがっぺ=良い



グルエースとFZの旨味、豚骨のアブラが行き渡ったジャンクスープは、キリッと締まった醤油味。平打極太麺はつるりとした表面感覚ながら、オーションの持つデロな柔性とワシな剛性が共存している。無料トッピングのニンニクとアブラが隅々まで行き渡り、ジャンクこの上ない旨さ。全体的にしょっぺえ(注)ので、生卵を頼んでマイルドに仕上げる食べ方も提案したい。どうにか完食して、母校周辺へと車を走らせた。ニンニク臭を漂わせているおっさんがいたら、後輩諸君よ、それは私だっぺ。


(注)しょっぺえ、しょっぱい=塩辛い

住所:茨城県守谷市美園4-1-5 美園ビル1F

ラーメン二郎 茨城守谷店ラーメン / 南守谷駅戸頭駅稲戸井駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2016年8月8日月曜日

Atomic : Mogwai

子供の頃から戦争の悲惨さや核兵器の恐ろしさを教えられ、小中学校の頃は冷戦のさなかに核戦争の恐怖に怯え、高校生になるとチェルノブイリ原発事故で世界は終わると思い、大人になってから福島原発事故で絶望の淵に立たされた世代。もはや DNA レベルで、原子力が制御不能になった時の恐怖を知っている。




Mogwai の新作は英国 BBC 制作ドキュメンタリー番組のサウンドトラック「Atomic : Living In Dread and Promise」を編集したものであり、核そのものをテーマとした作品だ。ここには「Little Boy」や「Fat Man」と言った広島・長崎をテーマとした曲が収録されているものの、核エネルギーに対しての全否定というよりは、制御不能なプロメテウスの火を作った人類の業といったものが表現されている。原子の世界が持つ抽象的な美が、轟音ギター控えめのエレクトロニカ寄りな荘厳な音で表現されているのが特徴だ。


彼らは今年6月に広島公演を行い(オバマ大統領の訪問直後だ)、核兵器を含めた原子力に対する考察を提示した。原子エネルギーの完全撤廃という、簡単に回答が出ない議論はここではしないが、核廃絶が大きなうねりとなり、その中心が広島・長崎になっているのは事実。人類が背負った重たい十字架について再考するには、この作品がそっと背中を押してくれるだろう。

2016年8月4日木曜日

ファットン


梅雨明けの夏本番。こんな爽快な日はラーメンに限ると思い、前から行きたかった六角橋の「七連星」に足を運んだ。かつては二郎インスパイア系として誉れ高い「豚星。」があり、移転後は「いがみそ」がインスパイア系の襷を受け継いた場所。いまは「七連星」という名店「くり山」系列のお店が煮干しラーメンを食わせてくれるらしい。いつも不本意ながら二郎系を食ってしまう小生としては、たまには煮干し系も食べたくなるものだ。ラーメン並盛(750円)の食券を買ってカウンターに置く。壁に「ニンニク欲しい方、好きなタイミングでお申しつけください!!」と書かれていたので、条件反射で「ニンニクお願いします」と言ってしまったが…



ちょー!目の前に着丼したのは、どこからどうみても二郎系!煮干し系ラーメンじゃないのか!このお店は「七連星」じゃないのか!慌てて外に飛び出して店の名前を確認すると…



ファットン!どこからどうみても二郎系としか思えない店名が、手塚プロ制作のような文字で書かれている!「七連星」で煮干しラーメンを楽しもうと思ったのに、なぜ神は我に七難八苦二郎系の試練を与え給うのか…というのは例によって例の如く自作自演の演技である。説明しよう。「ファットン」とは「七連星」の後にオープンした、二郎系の中でも話題のお店。無料の野菜トッピングは受け付けていないものの、ヤサイは100%キャベツであり、矢継ぎ早に限定メニューを繰り出すお店なのだ。



なるほど看板に偽りなし。ファットな豚の腕肉が二つぶちこまれている。繊維質にそってすっと切れる柔らかさ、切れ目の奥にまで染みわたる旨味がたまらない。店は変われど、この場所にあった歴代二郎系の流れを受け継いでいるブタの旨さ。この肉を楽しむために、ミニラーメン+肉という注文の仕方もありだろう。



キャベツのみのヤサイというのも贅沢な気分を味わえる。甘辛いカエシのスープは、とろりとしたマイルド乳化系。上澄みにはアブラの旨味が溶けきっているが、ニンニクを溶かして更なる旨味を行き渡らせる。太麺はやや縮れが残ったストレート寄りのもの。ツルとしてモチとしてズバズバいける。並の麺量は300gであるもの、モヤシがないぶん暴力的な破壊力は控えめだ。二郎系の旨さを素直に楽しんで麺を攻略。上層部のとろみを回収してごちそうさま。どうやら「いがみそ」も「七連星」も「ファットン」も、「くり山」オーナーが裏で動いていることが判明。相変わらず六角橋は目が離せない。

住所:神奈川県横浜市神奈川区六角橋2-10-1
ファットンラーメン / 白楽駅東白楽駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8