2016年8月8日月曜日

Atomic : Mogwai

子供の頃から戦争の悲惨さや核兵器の恐ろしさを教えられ、小中学校の頃は冷戦のさなかに核戦争の恐怖に怯え、高校生になるとチェルノブイリ原発事故で世界は終わると思い、大人になってから福島原発事故で絶望の淵に立たされた世代。もはや DNA レベルで、原子力が制御不能になった時の恐怖を知っている。




Mogwai の新作は英国 BBC 制作ドキュメンタリー番組のサウンドトラック「Atomic : Living In Dread and Promise」を編集したものであり、核そのものをテーマとした作品だ。ここには「Little Boy」や「Fat Man」と言った広島・長崎をテーマとした曲が収録されているものの、核エネルギーに対しての全否定というよりは、制御不能なプロメテウスの火を作った人類の業といったものが表現されている。原子の世界が持つ抽象的な美が、轟音ギター控えめのエレクトロニカ寄りな荘厳な音で表現されているのが特徴だ。


彼らは今年6月に広島公演を行い(オバマ大統領の訪問直後だ)、核兵器を含めた原子力に対する考察を提示した。原子エネルギーの完全撤廃という、簡単に回答が出ない議論はここではしないが、核廃絶が大きなうねりとなり、その中心が広島・長崎になっているのは事実。人類が背負った重たい十字架について再考するには、この作品がそっと背中を押してくれるだろう。

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