2016年9月28日水曜日

K2.0 : Kula Shaker



もはや世間から忘れ去られた感すらある Kula Shaker ですが、今年2月にリリースした6年ぶりの新譜を猿のようにリピート厨。バカ売れしたデビューアルバム「K」(過去レビュー)から20年ですかそうですか。当時はオレ27歳だったけど、今は幾つだっけ(んご)。そのアルバムの次なるバージョンという意志を感じさせるタイトルだけあって、何度聴いてもじわじわくる仕上がりになっている。今年のフジロックに出演するなど日本での支持率は高いんですが、本国UKでは完全黙殺状態。普遍的な音作りなんですが、今の時代にそぐわないということなんでしょうか。

シタールの調べに導かれた呪術的なメロディは非常にスリリング。身を委ねていると太陽よりも高い高みに持っていかれるよう。彼らの持ち味である70年代サイケデリック感覚とアシッドな香りがそこかしこに散りばめられ、東洋志向の曼陀羅ぶりも気持ちいい。オリエンタル要素を支えるグルーヴィーな演奏も鉄壁だ。贅沢を言えば、もっと開き直って印度テイストを注入しちゃえば振り切った感が出たかも。例えばビートルズのサージェント・ペパーズにおける「Within You Without You」みたいな曲だけにしちゃうとかね。

2016年9月24日土曜日

ラーメン二郎 会津若松駅前店

いよいよ全国制覇が視野に入った二郎訪問。残るはあと5店舗となったが、地方に点在するためハードルが非常に高い。ここまで来ると二郎が食べたくて地方に行く、というよりはムキになってお遍路参りしている自分がいる。今回は福島県に唯一存在する会津若松店を訪問してきた。巡礼結願の向こうには何がある?と問われることもあるが、聖地を巡礼するのが目的というしかない。巡礼とはそういうものなのだ。



駅から近い路地に黄色い看板を見つけた瞬間、一気にボルテージが高まった。緊張している私をよそに、17:00オープン直後の店内は下校途中の学生たちや家族連れで和気あいあいムードだ。地方店はカウンター以外の席が設けられていることが多いが、ここはお座敷席が設けられており、地元JK 4人がおしゃべりしながら二郎を楽しんでいた。
店主は東京都下に点在する多摩系で修行を積んだ方とのこと。新小金井街道店八王子野猿街道店2めじろ台法政大学前店などおしなべてクオリティが高い多摩系だけに相当期待が高まる。


ブタのクオリティが高いと聞いていたので、小ラーメン豚入りに生卵を注文。席についた瞬間に聞かれた無料トッピングはニンニクで。着丼までの間に店内を観察したが、列の並び方が分からないお客さん、小さな女の子に取り皿で食べ与えるお父さんなど、都内店でみられる緊張感とは対極にある弛緩モードが非常に微笑ましい。ハッと気がつけば暴力的な一杯が着丼し、自分の中で一気に緊張が走る。



まずは分厚く切られたブタ達を生卵にひたひたと漬け、柔らかい食べ応えと芳醇なお味を楽しむ。あまりにも柔らかいので、卵に浸した瞬間にほろほろと崩壊していく。右手で箸を持ち、左手でピントの合った写真を撮るのは実に難しいが、崩壊する前にカメラに収める苦労を味わうとは!噂に聞いてはいたが、栃木街道店に比類するほどの神豚だ。



程よい加減に茹で上げられたモヤシ中心ヤサイを、甘辛くて適度に乳化したスープに混ぜ合わせて、順調に胃袋の中へと回収していく。やがてかさが減ったところで天地返すと、表面ツル目の平打ち太めストレート麺が顔を出す。小麦の香りが口内に広がり、豊かな大地の恵みを堪能する。そこに絡まった、人智の結晶ともいえるエフゼットとグルエースが溶け込んだスープ。自然と人間の力が織りなすハーモニーとは正にこのこと。ボリュームも中々なので、ブタを増やしてヤサイを増さなかったのは正解だった。会津若松まで足を運んでまでも、食す価値のある一杯だ。

ラーメン二郎 会津若松駅前店ラーメン / 会津若松駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2016年9月18日日曜日

GETAWAY : Red Hot Chili Peppers



John Frusciante が信頼を置くギタリスト Josh Klinghoffer。そんな彼が加入して作り上げられた「I'm With You」以来、5年ぶりとなる俺達の RHCP 最新作。この作品の評価がかなりの賛否両論になっています。プロデューサーに Danger Mouse が起用されていることもあり、音作りは極めてマイルド。酸いも甘いも噛み分けた彼らが大人になり、ファンク基調のロックは変わらないものの、哀愁を帯びた切ない作品になっています。

美メロ揃いなのでとても聴きやすい作品ではあるんだけど、かつての彼らが持っていた攻撃性は皆無。「母乳」の頃に持っていたやんちゃっぷりは全く無い。古くからのファンはこの頃の刷り込みが強いので、今の彼らを見ると非常におとなしく感じるんだろう。「母乳」がリリースされたのが今から27年前の1989年。その頃の若者は50歳前後だ(僕を含めて)。そりゃおとなしくなるか。

悪くはない。でもここ最近の彼らにあるような既視感たっぷり。大人になると攻撃性が薄れるのは RHCP でも同じことなんだろう。引き換えに得たものは洗練性と苦み。ロックはこうやって年老いていくのか。僕らがレッチリにまだまだ期待し続けるということは、ロックの次世代を担うパフォーマーが現れていない証左に他ならない。



2016年9月14日水曜日

The Ship : Brian Eno



今年4月にリリースされた Brian Eno の新作は「Lux」以来4年ぶりとなるが、本作ではタイタニック号の沈没をモチーフにしているとのこと。また、今年1月に逝ってしまった盟友 David Bowie に捧げられている模様。1曲目のタイトル曲は21分にも及び、穏やかな大海を想起させる。2曲目は3章で構成された組曲形式であり、美大生の頃にインスパイアされたという The Velvet Underground の「I’m Set Free」がカバーされている。

全編に渡り壮大なるアンビエントに支配されたアヴァンギャルドな実験作品ではあるが、それは現代における我々の心象風景を表現しているかのよう。冒頭では静かな船出を連想させたが、中盤のポエトリー・リーディングやスポークン・ワードの導入によって流れは変わっていく。それはまるで船頭の舟歌のようで、混沌と無秩序に支配された我々の不安を煽る。北海に霧がかったようなサウンドスケープが展開される中、終盤を引き継ぐのは天からの光のように我々を救済する「I’m Set Free」だ。これまでの Eno 作品のどれとも似ていない、物語性と連続性を感じさせる野心作であり、新たなる地平へと踏み出した大いなる一歩と取れる作品だ。

Tracklist 

01. The Ship 
02. Fickle Sun 
(i) Fickle Sun 
(ii) The Hour Is Thin 
(iii) I’m Set Free

2016年9月11日日曜日

ぎょうてん屋 町田店


神奈川県への編入が目される町田市を徘徊し、腹が減ってきたので目についた家系ラーメン店に入った。ごはん無料・おかわり自由という太っ腹ぶりで、メニューも家系ラーメン以外にいろいろと取り揃えている模様。取り敢えず食券機で大きく掲げられている「ぎ郎」というよく分からないメニューを購入した、一抹の不安を覚えながら…。さすれば無料トッピングを尋ねられたので思わず「ニンニクヤサイ 麺かため」と呪文を唱えてしまった。




むーん。ここは家系ラーメン店じゃないのか!この二郎系に仰天だ!はっ、「ぎょうてん家」が提供する二郎で「ぎ郎」なのか、うまく騙しやがってー!という予定調和な演技はここまでにしたい。着丼した瞬間、隣に座っていたカップルにくすくす笑われたので、恥じらいながらスープをヤサイにふりかけ始めた。キャベツ比率低めモヤシ中心のヤサイはクタ気味だ。スープは再現性の高い甘辛さながらもアブラ控えめでライトな味わい。ブタはロースを使用しており、甘く味付けされているものの柔らかさで言えば及第点といった按配だ。




ヤサイの物量に四苦八苦しながら、敗北感とせめぎ合って天地を返す。するとカエシを十分に吸い上げた極太麺がごわりと顔を出す。かためを頼んだ故に、食べる度にがしがしと噛みしめるが、この動作だけで満腹感がハンパない。にんにくが溶け込んだジャンクな味わいのスープが、箸をすすめる手助けをしてくれる。これはもはや食事という次元を超えた行為だ。かろうじて完食するも、やはり極太麺のかためはハードルが高くなる。それにしても家系ラーメン店でお手軽に二郎系が食べられる時代になったとは仰天だ。再現性もヨシ。


住所:東京都町田市原町田4-11-14

ぎょうてん屋 町田店ラーメン / 町田駅
夜総合点★★★☆☆ 3.6
昼総合点★★★☆☆ 3.6

2016年9月7日水曜日

From My Mind to Yours : Richie Hawtin


From My Mind to Yours : Richie Hawtin


テクノ界の酒サムライとして頂点に君臨し続ける俺達の Richie Hawtin。長きに渡って自身のレーベル Plus 8 を主宰していますが、設立から25年も経過したそう。このアルバムはそれを記念して2015年末にリリースされた2枚組。ここには本人名義だけでなく、Plastikman や Robotman、F.U.S.E. といった様々な名義でのトラックが収録されています。

そもそもアルバムが本人名義になっているのって久しぶりじゃないですか。なになにエポックメイキングなミックスアルバム「De9: Transitions」から数えると10年ぶり。本人名義のオリジナルアルバムを調べてみると…ない!これが初めてじゃないですか?!その事実からして、集大成的作品にして記念碑的作品であるのは間違いありません。

ここに収められているのは機能美に溢れたミニマルでアシッドなトラックばかり。引き算の美学が随所に感じられますが、あくまでもツールとして存在しているだけで、革新性は感じられない。トラックを複合的にミックスする Richie のプレイでは威力を発揮するんでしょうが、リスニング対象とするには物足りない。聴くものを覚醒させながら深淵へと誘う感覚は健在なんですが、あくまでも基本に立ち返った姿勢が感じられるだけ。やはり Richie は素材を縦横無尽に駆使するミックスで、イノベーターたる本領を発揮するのかしら。

tracklisting


01. Richie Hawtin - No Way Back
02. Childsplay - Stretching
03. Robotman - Simple Simon
04. F.U.S.E. - Them
05. F.U.S.E. - Close
06. Plastikman - Purrkusiv
07. Plastikman - Gymnastiks
08. Circuit Breaker - Systematic
09. 80xx - Creepr
10. Plastikman - Akrobatix
11. Plastikman - Cirkus
12. 80xx - Creatur
13. 80xx - Grindr
14. Plastikamn vs. F.U.S.E. - EXpanded
15. R.H.X. - Xtension

2016年9月3日土曜日

The Mountain Will Fall : DJ Shadow


The Mountain Will Fall : DJ Shadow


稀代の偏執的ヴァイナルジャンキーであり、レアグルーヴへの限りない愛情を表明し続け、アブストラクトヒップホップの概念を創り上げた男 DJ Shadow。サンプラーだけで制作したアルバム「Endtroducing...」(「世界で初めてのサンプリングのみで作られたアルバム」とギネスブック認定)から20年が経ちました。


あれから数々のアルバムをリリースしてきた中で、2006年の「The Outsider」ではハイフィーの大胆な導入により旧ファン層を驚かせたシャドウ。かつてのアブストラクトな要素が薄れていき、メインストリーム寄りになったシャドウはどこへ行くのか?というのが旧ファンの共通認識だったと思います。そして5年ぶりの新作で奴は帰ってきた、間違いなく!


どこから掘ってきたのか分からないドタドタしたドラムビートをサンプリングし、かつてのブレイクビーツな感覚が蘇っているじゃないですか。リードトラック「The Mountain Will Fall」のレトロフューチャートラックで鷲掴みされ、続く「Nobody Speak」では様々なフィールドのミュージシャンから熱い視線を浴びている Run The Jewels をフィーチャーし、マザファカな現代感覚への目配せも忘れちゃいない。シャドウの旗印であるメロウで哀愁漂うウワモノも全編に散りばめられ、なおかつマッシヴでファットな骨格が力強く支えまくる。


数年前、「未来的すぎる」という理由でプロモーターからクラブプレイを強制終了させられた出来事がありましたが、この時のDJプレイがホーリーシットに格好いい(リンクから聴けるので是非お試しあれ)。原点開始しながら、この時の経験を踏まえている最新型アブストラクトヒップホップを聴かずにはいられないよ。