2016年9月14日水曜日

The Ship : Brian Eno



今年4月にリリースされた Brian Eno の新作は「Lux」以来4年ぶりとなるが、本作ではタイタニック号の沈没をモチーフにしているとのこと。また、今年1月に逝ってしまった盟友 David Bowie に捧げられている模様。1曲目のタイトル曲は21分にも及び、穏やかな大海を想起させる。2曲目は3章で構成された組曲形式であり、美大生の頃にインスパイアされたという The Velvet Underground の「I’m Set Free」がカバーされている。

全編に渡り壮大なるアンビエントに支配されたアヴァンギャルドな実験作品ではあるが、それは現代における我々の心象風景を表現しているかのよう。冒頭では静かな船出を連想させたが、中盤のポエトリー・リーディングやスポークン・ワードの導入によって流れは変わっていく。それはまるで船頭の舟歌のようで、混沌と無秩序に支配された我々の不安を煽る。北海に霧がかったようなサウンドスケープが展開される中、終盤を引き継ぐのは天からの光のように我々を救済する「I’m Set Free」だ。これまでの Eno 作品のどれとも似ていない、物語性と連続性を感じさせる野心作であり、新たなる地平へと踏み出した大いなる一歩と取れる作品だ。

Tracklist 

01. The Ship 
02. Fickle Sun 
(i) Fickle Sun 
(ii) The Hour Is Thin 
(iii) I’m Set Free

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