2016年11月9日水曜日

Back in Time : Judith Hill



アメリカ人の父親と日本人の母親(そして二人とも音楽家だ)を持つシンガー Judith Hill。マイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」に出演し、逝ってしまったプリンスの最後の恋人であったことでも知られている。プリンスは「THIS IS IT」を始めとする数々の場で活躍している彼女の才能を見出し、デビュー作のプロデュースを手がけ、ソニーから大々的にリリースする予定だった。ところがプリンスがフライング気味にハイレゾ音源を無料配信し、ソニーと揉めてしまう。リリースはしばらく見送られ、結果としてまずはiTunes等から配信リリースされ、やがて2016年になってプリンスのレーベル NPG から CD がリリースされたのだ。

今となっては新品の CD 入手も困難なようだが、内容的にはプリンスの手腕が光りまくる素晴らしいものだ。Judith のアカペラから導かれスライ風ファンクになだれ込んでいくリードトラック「As Trains Go By」、隙間の美学が追求されたファンキーチューン「Turn Up」(「皆さん盛り上がりましょう、準備してください」と日本語で語りかける!)、ドラムとストリングスのみの最小構成による(例によってベースレスだ)「Angel In The Dark」の前半でまずやられる。この3曲はプリンスしか作れないだろう。

やがてオールドスクールなメロウバラード、ソウルチューン、ブルース等で全体のバランスを取り、彼女のボーカルが幅広い範囲で適用可能なことを知らしめる。繊細すぎるのでもなく、豪快でパワフルなボーカルでもない。「Wild Tonight」で披露するようなエキセントリックなボーカルスタイルも対応可能。この作品はそんな彼女の魅力を十分に引き出すことに成功しており、プリンスのプロデュース力を改めて痛感してしまう。

MJ とプリンスの両人に才能を見出されながらも、二人とも逝ってしまうという不運に見舞われた彼女の胸中はどのようなものなんだろう。これからの彼女の更なる活躍を心から祈っている。

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