2016年12月27日火曜日

AIM : M.I.A.



今年9月にリリースされたM.I.A.の5枚目のアルバム。本人曰く「最後のアルバムになる」ということだが、音楽活動は継続していくらしい。「アルバム」という枠に囚われず活動していくということであれば一安心ですが、ここでもアルバムというフォーマットが失われていくのに一抹の寂しさを覚える。ちなみにの話。先鋭的な政治アティチュードと、父親がテロ組織『タミル・イーラム解放の虎』メンバーで現在は戦闘中行方不明(Missing In Action = M.I.A.)という出自から、ここ最近は米国当局からも徹底的にマークされていた模様。

Skrillex、Diplo、ZAYNといったEDM/エレクトロ勢をコラボレーターに迎えているが、内容的にはこれまでの作品と比べてやや内省的なものを感じる。それはかつて自身が難民だったことと、現在のシリア難民問題がリンクすることにより、自己の内部へ向かった結果らしい。加えて、母親になったことも作用しているようだ。が、完成度は極めて高く、これまで培ってきたバングラビート〜ダンスホールの中毒性が効いている。

2016年12月22日木曜日

麺屋 登夢道 茅ヶ崎本店



湘南といえば「ラーメン二郎 湘南藤沢店」があり、茅ヶ崎では二郎インスパイア系の雄「菜良」が制している地域だが、昨今はやにわに混戦状態を呈している模様。というのも「麺屋 登夢道 茅ヶ崎本店」というお店が2014年に殴り込みをかけてきたからだ。他には平塚に「豚んち」という二郎系があるが次回の課題とし、まずは「登夢道」を訪問してきた。この界隈は住宅街ということもあって家族連れが非常に多かった。メニューは大別して味玉つき醤油味(登夢道めん)/みそ味/辛みそ味の3通りあったので醤油味を。麺量は大:1.5玉、中:1玉、小:半玉ということなので中をお願いした。730円也。




着席とともに無料トッピングを尋ねられたので「ニンニクヤサイ」をお願いしたところ、なかなか見目麗しい外観を誇る一杯が着丼。ロールしたブタはふわとして柔らかくてドリミーにとろけるが、もう少し肉々しいノックアウト感が欲しかったところ。ヤサイはクタ気味に茹でられたモヤシ中心だ。ニンニクは刻まれているというより、すりおろされたようなのでもう少し荒い粒度でも良かったと思う。



スープは「鶏ガラ豚骨系」を謳っている通り、ジャンク加減控えめのあっさりしたもの。麺は一般的な二郎系とは異なり、多加水でつるもちで柔らかくボリュームもそれほどではない。麺とスープの組み合わせが明らかに通常と一線を画しており、凪いでいる湘南の海のようにマイルドな味わいだ。…つまり悪く言えば「普通のラーメン」なのだ。総じて破壊力低めのファミリー向けで、それ故に二郎系の裾野を広げているのは確か。二郎系が一般的になっていくのは喜ばしいことだが、普通の人に訴求する二郎系は二郎系たり得るのか?という疑問が残ったのも事実だ。

住所:神奈川県茅ヶ崎市赤羽根95-2

麺屋 登夢道 茅ヶ崎本店ラーメン / 北茅ケ崎駅香川駅
夜総合点★★★☆☆ 3.1
昼総合点★★★☆☆ 3.1

2016年12月17日土曜日

Cheetah EP : Aphex Twin



Syro」以降に活動活発化している Richard D. James が突如としてリリースした最新作。80年代風の爽やかなジャケットを手がけるはデザイナーズ・リパブリック。

元々は Soundcloud 上での Richard の匿名アカウントが一部公開していた作品で、タイトルは英国のシンセサイザーメーカーである「Cheetah Marketing」に因んでいる模様。このメーカーが製造したアナログでヴィンテージなモジュール「MS800」を駆使しているそうなんですが、当方シンセサイザーに詳しいわけでもないので他作品との音色の違いはあまり分からず。そもそも虚言癖のある Richard のことなので、その情報が本当なのかすら不明。

確かなのは、復活以降の作品にも言えることなんだけど、音色がクリアかつ音圧が適切だということ。これは物凄く重要なことで、音の選び方が丁寧かつ無駄がないことがよく分かる。研ぎ澄まされているからこそ、作り手の意志・意図がダイレクトに伝わってくる。僕自身ここ最近はテクノ(特にIDM)へ真摯に向き合っているわけじゃないので、最新動向すら分からない状態なんだけど、一昔前に比べてシーンが一巡して落ち着いているように思う。本作はそんな停滞感のある IDM 市場に改めて喝を入れている。クリアに音が響き渡るからこそ中毒性が高く、脳内の隅々をクリアにする作用満点。ジャケットのように清涼感とユーモアが溢れ、下にある PV のように無邪気でありながら毒も持つ。本作によって IDM シーンがかつてのように活性化していくといいですね。

2016年12月14日水曜日

4EVER : Prince


4EVER : Prince


墓場荒らしビジネスに加担する気はさらさら無いんですが、殿下死後にリリースされたベスト盤を買わずにはいられない。ジャケットの美しさもさることながら、ブートレグ市場では有名だった未発表曲「Moonbeam Levels」が収録されているから。僕はブートレグに手を出さない主義なので、これは初めて耳にする曲。プリンス論で 西寺郷太 氏がプリンスの存在を「ショートケーキの上に納豆やミョウガをかけられた感覚」と書いたが、ご多分に漏れずこの曲も同じ感覚を兼ね備えている。 

「Moonbeam Levels」は1999レコーディングセッション時に収録された、ブレイク直前の変態エナジーが漲っている佳曲。いわば「Take Me With U」のようにラブリーでありながら捉えどころのない、殿下にしか作り得ないショートケーキ/茗荷ソングだ。

他に収録されている曲は「The Hits/The B-Sides」と大して変わらないけど、ワーナーと和解しているにも関わらず93年作品「Love Symbol」以降の曲が含まれていないのは理解に苦しむ。権利関係で未解決なところが残っているんだろうけど、これでは世間から「92〜93年頃にキャリアが終わった人」と思われてしまうじゃないか。殿下の闘争はこれ以降に先鋭化していったというのに。なお、音圧は従来のものよりも高くなっており、全体的なバランスが取れたものになっているのを申し添えておく。

2016年12月10日土曜日

「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック


「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック

この映画(過去の記事)を見終わって、腰が抜けるほどの衝撃と温もりを味わい、同じ週にもう一度観に行ってしまいました。映画をリピート鑑賞したのは人生2回目だと思う。広島弁は理解できないところがあったので、2回目は「日本語字幕版」を。2回目なんだから泣くわけないもんねっ、と舐めてかかっていましたが、オープニング曲「悲しくてやりきれない」が流れた瞬間に目から大量の水が(あちゃあ)。おいおい何だよ、映画に対する免疫ができているどころか、泣くという刷り込みができているじゃないか。それほどまでにコトリンゴの音楽は大きな役割を果たしているのです。

観終わってさっそくサントラを購入。まずジャケットが素晴らしくて涙(宝物にしたくなるレベル)。何度も何度も聴き返して、映画のシーンを思い出して号泣。何だろうねこれ、泣けるシーンはそれほどないのに泣いてしまう。ドリフ大爆笑のテーマで泣くなんて…くっ…(いや実は戦時歌謡曲の「隣組」)。終盤で流れる「みぎてのうた」、エンドロールで流れる「たんぽぽ」を聴いても涙腺決壊、困ったねぇ。すずさんは今どこで何をしているんじゃろうか。クラウドファンディングに参加した皆さんを紹介した後の、一番最後の最後が忘れられないねぇ。

2016年12月6日火曜日

麺や でこ


前の記事で「発展著しい武蔵小杉・新丸子エリアがラーメン激戦区となり」と書きましたが、シン・ゴジラが由比ヶ浜から再上陸して武蔵小杉のタワーマンション界隈に到達したのは有名な話。更には丸子橋まで投げ飛ばしてしまって、新丸子周辺は大丈夫なのかしら?と思ってましたが、前から注目していた「麺や でこ」は被害を免れた模様。らーめん/つけそば/まぜそばの3種を揃え、らーめんは醤油/塩/味噌の360度外交を繰り広げています。取り敢えずはフラッグシップメニューであろう特製醤油そばを注文します。1080円というなかなかいいお値段です。



ぱっと見ただけでもその味わいが鼻孔をくすぐる淡麗醤油系が着丼しました。薄く切られた豚ロースチャーシュー3枚と鶏胸肉チャーシュー3枚は期待を裏切らない。しっとりした味わい深さが食欲を増進させます。写真では見えませんが長い穂先メンマは実に柔らかく、味付け玉子は黄身が甘くて上質素材を使っているのがよく分かる。他に使われている具材は刻みネギや海苔など。




シルキーかつスムースな醤油スープは、淡麗ながらも丸みを帯びて奥深い。複数の醤油を使っているであろう複雑系カエシが、鶏ガラのコクと優雅なハーモニーを奏でているではないか。表面ツルリとした多加水ストレート細麺を持ち上げれば、上品でマイルドなスープがまとわりつき、口腔内に小麦の香りがそよいでくる。懐かしくもあり新しくもある、子供の頃に食べた昔々のラーメンに終わらない新次元感覚。これは深い、深いよ!常日頃ジャンクな麺ばかり食べていると味覚が麻痺するので、こういった麺を食べて味覚再確認するのがヨシ。神奈川淡麗系に終わりはないのを確認した。


住所:神奈川県川崎市中原区小杉町1-520-6

ホームページ:http://my-deco1.com/
麺や でこラーメン / 新丸子駅武蔵小杉駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8