2017年1月22日日曜日

Vulnicura Live : Bjork


Vulnicura Live : Bjork


2015年11月にラフ・トレードから限定リリースされた Bjorkの「Vulnicura」ライヴ盤。当然ながらその希少価値ゆえに瞬時ソールドアウト。その後 Amazon で販売告知されたものの、紆余曲折あり1曲減らして一般流通リリースされたのが2016年7月。ソロデビューして四半期が経とうとしているのに、未だ最先端で有り続け、世間の耳目を集めています。


本ライヴ盤の半数は「Vulnicura」の収録曲、残りは以前のアルバムから。以前の曲が何の違和感もなく溶け込んでいるのは、「Vulnicura」及び「Vulnicura Strings」をミックスしたArca や Chris Elms が関与しているからでしょう。有機的エレクトロニカの極北ともいえる、冷ややかで艶かしい音が増殖しています。オリジナルがやや内省的であったのに対し、本作では攻撃性やダイナミズムが感じられるのが素晴らしい。


Tracklist

01. Stonemilker (from Vulnicura)
02. Lionsong (from Vulnicura)
03. History of Touches (from Vulnicura)
04. Black Lake (from Vulnicura)
05. Family (from Vulnicura)
06. Notget (from Vulnicura)
07. Come to Me (from Debut)
08. Undo (from Vespertine)
09. I See Who You Are (from Volta)
10. All Neon Like (from Homogenic)
11. Quicksand (from Vulnicura)
12. Wanderlust (from Volta)
13. Mutual Core (from Biophilia)
14. Mouth Mantra (from Vulnicura)

2017年1月18日水曜日

COW / CHILL OUT, WORLD ! : The Orb



昨年10月にリリースされた The Orb 最新作は「キャリア史上最もアンビエントな作品」と銘打たれている。タイトルから言って The KLF の大名作「Chill Out」やピンク・フロイドの「原子心母」に対する何らかの回答、もしくはオマージュと取るのは自明。メンバーの Thomas Fehlmann が 「21世紀なんだから、みんな座してチルアウトするのがいいぞ、破壊的行動を続ける前にな(It's the 21st century and it seems like a good idea for people to sit back and chill the fuck out, before continuing to act destructively.)」とプレスリリースで語っており、アンビエントというよりはチルアウト的作品であるのは間違いない。

そもそもアンビエントとチルアウトに境目はあるのか?これは紛れもなく存在すると思う。アンビエントが無意識下の音楽であるのに対して、チルアウトは能動的鑑賞を促す作用を持っているからだ。ユーザの使用方法や感じ取り方によって左右されるものの、睡眠作用または覚醒作用のどちらかで定義付けされるとすれば、この作品は覚醒感に満ちている。

耳を澄ませばウルトラワールド的ダブ音響処理がなされながらも、牧歌的で多幸感溢れるサウンドスケープが累々と連なっているじゃないか。まぎれもなく90年から続いているイビサ的空間がここで再現されており、かつ世界へ変革を促すような振動に満ちている。盟友である Killing Joke の Youth、およびアンビエント界の巨匠である Brian Eno の実弟である Roger Eno も参加しており、ここ最近のチルアウト作品の中でも出色の出来に仕上げている。

※作品を聴きながら、隣に座ってる赤ちゃんを見つつ記事を書きました。この作品と赤ちゃんの組み合わせはとんでもない覚醒感がありました。

2017年1月14日土曜日

わたしが鳴こうホトトギス : 戸川純 with vampillia



年が明けてブログ更新意欲が全く薄れてしまったんですが、1/13(金)での恵比寿リキッドルーム 戸川純35周年記念LIVE「わたしが鳴こうホトトギス」を観ての衝撃を受けて更新する次第。

まずはこのアルバム、デビュー35周年を記念して2016年12月にリリースされたもの。「lilac」で共演した Vampillia がアレンジと演奏面で全面関与したセルフカバーアルバムで、個人名義では12年ぶりの新曲となる「わたしが鳴こうホトトギス」が収録されている。

これはもう新作と言っていいぐらいの刷新ぶりで、インダストリアルでノイズで甘美な Vampillia の演奏により過去の名作が完全アップデートされている。まずは「赤い戦車」の強烈なツインドラムで復活を印象づける。「好き好き大好き」では無垢な歌声から虹色のファルセットボイスを経て、ドスを効かせ「愛してるって言わなきゃ殺す」と脅す。「バーバラ・セクサロイド」や「肉屋のように」は Vampillia 抜きではこうならなかっただろう、美しい轟音が響くハードコアチューンへと変貌。「蛹化の女」では樹液のような粘着質インダストリアルビートが滴り落ち、現代モードへの目配せを忘れない。

「12階の一番奥」で孤独な魂を鷲掴みにし、「諦念プシガンガ」で純ちゃんの根底にあるであろう思想「諦め」を歌い上げる。「Men's Junan」ではロールしまくる吉田達也のドラムが甘美なヴァイオリンの調べ、唸りまくるノイズ、変貌し続ける純ちゃんのボーカルを支える。「わたしが鳴こうホトトギス」では「何年経つても鳴ひてゐやふ」と歌い続けることを高らかに宣言し、この曲を聴く度に涙が勝手に流れてしまう結果に。そして過去最高のピュアネスに満ちた「怒涛の恋愛」で再落涙。戸川純と vampillia が呼応し合った、邂逅のような化学反応を起こした傑作だと思う。

さて、前述のリキッドルームライヴは本当に素晴らしく、純ちゃんへの vampillia のリスペクト精神、純ちゃんを支え続けるオーディエンスの愛が満ち溢れた最高のライヴだった。途中でいきなりのうがい休憩で席を外し、残された vampillia の狼狽ぶりを見ても、それを支える観客たちの優しい眼差し。へろへろなMCで大丈夫かな?と固唾を呑んで見守るが、曲が始まった瞬間に会場の空気を一変させる純ちゃんのボーカル。「Men's Junan」でとちりまくっても演奏面でサポートするバンド。すべてが本当に美しくて、ライヴ中ずっと涙が止まらなかった。Twitterを見ると泣いていた人がかなり多かったことに気づく。間違いなく人生の美しい瞬間だったよ。

Setlist

01.わたしが鳴こうホトトギス
02.lilac 
03.赤い戦車
04.肉屋のように
05.好き好き大好き
06.蛹化の女
07.12階の一番奥
08.バーバラ・セクサロイド
09.諦念プシガンガ
10.Men’s JUNAN

アンコール

11.怒濤の恋愛
12.赤い戦車

2017年1月1日日曜日

らーめん 忍者


神田界隈に「世良田二郎三郎元信」の名残と思われる「ラーメン二郎 神田神保町店」そして「用心棒」と「影武者」という戦国浪漫トライアングルが存在するのは前に書いた通りだが、山手線外縁部にとうとう謎の刺客が姿を現した。その名は「忍者」。何故そのような屋号なのか?秋葉原界隈で着実に増加している外国人観光客へのウケを狙っているのか?外国人を二郎化することで世界進出を狙っているのか?忍者だけに狙いは全くわからないが、取り敢えず体制を整えて突撃した。




らーめん(730円)に無料トッピングのニンニクヤサイをお願いしたところ、平日日中の勤め人には不釣り合いな暴力的一杯が着丼した。キャベツ比率低めのモヤシ中心ヤサイはシャキ加減がちょうどいい按配。やや乳化したスープには背脂が溶け込んでおり、カエシがきりりと立っているインスパイア系王道の味だ。甘辛くで旨味もあって好感度のあるスープをヤサイに振りかけながら食べ進む。




一通りヤサイを減らして天地を返したところ、ごろりとした大ぶりブタが一塊表出。分厚いながらも柔らかく、味も染みていて食べ応えあり。麺はご覧の通り、ぐりんぐりんに捻れた極太凶暴系。ガチとした歯応えで噛みごたえも十分。麺のグルーヴを堪能しながらズバズバと食べ進めば、脳内に快楽物質が分泌されるのを覚える。先の「影武者」の関与が指摘されたり、ライバル店の謀略が取り沙汰されたりとネットでは様々な情報が転がっているが、まずは完成度の非常に高い一杯であることを確認した。


住所:東京都千代田区神田松永町17-3

らーめん 忍者ラーメン / 秋葉原駅末広町駅岩本町駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7